美遊兄と行く人理修復   作:Lychee

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VS竜殺し

ジャンヌは抵抗しても無駄だと悟りながらも彼女はその旗を構え続ける。その抵抗も虚しくジャンヌの身体を両断しようと大剣が迫るその刹那、

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

俺は間に合わないと判断し、ジャンヌとジークフリートの間に七つの花弁を展開させる。薄紅色のその花弁はジークフリートの大剣の勢いに負けず、火花を散らして彼の筋力とその盾の耐久性を拮抗させている。

「士郎!」

ジークフリートは魔力を更につぎ込み盾を粉砕せんとする。

その交錯は一瞬だ。しかしその一瞬が俺の意識を極限まで引き延ばす。その引き伸ばされた意識の中で、俺は彼のその大剣に俺の《目》を合わせる。

俺がその大剣に視線を合わせた瞬間、その構造を情報に変換して俺の脳に流れ込んでくる。

柄には青い宝石が埋め込められ、彼の魔力に反応しているのか淡く光っている。剣の柄に十字架を模したような意匠があり、その大剣には聖別されたかのような不思議な力を俺に意識させる。

それはかつての世界で観たあの|最強の聖剣《エクスカリバー)を俺に思い起こさせた。

そして、それを意識した瞬間に俺の脳にさらなる情報が流れ込んでくる。その大剣の内部を巡るエーテルに、それを円滑に循環させている内部構造、それを上手く扱えるだけの彼の技量。そしてあの剣を最大出力で展開した際のその威力。

 

「………くっ⁈」

あまりの情報量におれの頭がもう止めろと警告を発する。それと同じくしてジャンヌを守っていた花弁がその構造を破綻させていく。

 

俺の異変を察知したのか、ジークフリートの力が更に増幅した。時間にして3秒にも満たない迫合いで俺と彼の実力差をはっきりと感じる。

だが、俺の足りない技量を補うほど、この花弁の盾は優秀だった。

「ほら、退がるわよ!」

ジャンヌの身体をすくうようにマルタがジャンヌを回収して後方に退がる。その際に杖を高く掲げ祈りを捧げると、夜空の中ジークフリートの上空に光の輪が出現し、彼の身体をその輪から現れた光の柱が貫いた。

 

俺はそれを確認するとアイアスを消滅させる。そして、自分の手の中にとある剣を思い浮かべ、投影を開始する。俺の腕に装着されている赤の腕輪が淡く光る。俺の体から煙があがるが今は気にしていられない。借り物の力で俺は借り物の武器を作り出す。そこに高潔さなど存在しない。ただ俺は彼女を守る力が欲しい………それだけだ。

エミヤの知識と能力を用いて、基本骨子を構築し、その原理を模倣し、外殻でそれを覆う。俺は今の状況を打破するため、最強の剣を作り出す。

 

「………はっ!」

ジャンヌは自分の状況を確認することさえせず、マルタに抱えられながらもジークフリートの周囲に炎を展開させ彼を炎の檻に閉じ込める。

彼の姿が倒れることはない。そんな甘い実力ではないことを、先の観察で俺は思い知っていた。だからこそ俺は第二、第三の手を考える。

 

彼は自分のことをジークフリートだと言った。ニーベルンゲンの歌に登場する邪竜ファブニールを打ち倒した英雄。彼は竜の血液を浴び、その身体を不死身の肉体にした。だが、彼の人生は天寿を全うしたものではなかった。彼にもひとつだけ弱点があったのだ。

 

俺は両手に干将・莫耶を投影し、ジークフリートに投擲する。その夫婦剣はジークフリートの背後に回り込み、そのがら空きの背中を襲う。

「ふん!」

ジークフリートはそれに気づき炎を振り払って両方の剣を大きく打ちはらう。その瞬間に更に二対目を投影し、投擲すると同時に俺は走り出す。

 

干将・莫耶の性質を利用し、打ち払われた一対目が再度ジークフリートを襲う。更に空間に剣を投影しておき、それを一斉に射出させていく。

その全てをジークフリートは魔力放出を駆使して全て打ち払ってしまう。

その光景にくっとジャンヌが小さくうめく。だがこれが最後の攻撃ではない。

体の限界を超えた動きにジークフリートは立ち止まることを余儀なくされ、彼の動きが止まる。

その瞬間を俺は見逃さず、先程投影した剣に全魔力を乗せ、

 

偽・幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!」

 

俺の投影した剣は竜殺しの聖剣。エミヤの絶技である鶴翼三連すら避けられるかもしれないという不安に駆られた俺が生み出したのは、命を削るほどの聖剣の投影だ。俺だった部分が英霊エミヤに置換されていくのを感じる。血管が筋肉が肌がそして魔術回路に至るまで彼のものへと上書きされていく。

 

「ぐうっ………」

そこには言い表しようのない不快感と疲労が俺を襲うがそんなことは気にしない。何が何でも()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

「うおおおおおおおおおおああ!!!!!!!!!」

 

彼はそこに違和感があることに気づかない。それは彼が衛宮士郎だった頃の呪いに似た何かだ。その何かに気づくにはまだ彼が過ごした時間は少なすぎ、そして彼に寄り添うものはいなかったからこその弊害だ。彼はある呪いを振りほどいた気になっていたが、その呪いは世界を超えた今、また別の形となって彼を捕らえる。

 

 

ジークフリートは完全に虚を突かれた。見事なまでの技にジークフリートは目の前の少年に敬意を表すしていた。それ故に彼は魔力放出すら使いその絶技を受け止めてみせた。

そして少年の最後の一撃に全力を用いて受け止める所存でいたのだ。

そのために彼は二対目を打ち払った直後から魔力をためていた。

しかしその最後の一撃がジークフリートでさえも信じられないものだった。少年の手にはジークフリートの大剣であるバルムンクが握られている。

しかも彼はその大剣でジークフリートの宝具を打ち出してきたのだ。

少年の宝具の風圧にジークフリートは瞠目する。出力の違いこそあれこれこそまさに自身の宝具と同じもの。

 

ならば彼自身も相応のもので応えなければならない。

そう思った瞬間彼は見たのだ。少年の身体が燃えるように煙を出しその身体が何かに蝕まれているかのように何かにすり替わっていくことに。

その瞬間、ジークフリートの思考が雌雄を決することから彼を止めることに切り替わった。

 

故に彼は自身の内に溜め込んだ魔力を再調整しバルムンクに伝える。自分が何をしたいのか。そしてバルムンクは主人の意見に答えるようにその柄に埋め込まれている宝石が光る。

完全に体勢を崩され十分な姿勢から打ち出すことはできない。それすらも考慮した一撃で彼は迫る究極の一撃を打破するための一撃を生み出す。超至近距離まで来たその一撃を両方の目でしっかりと見据える。

自身の剣に感謝を告げ彼は剣を下段に構え、地面を抉るようにその剣を振り上げる。

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!」

威力を調整されたそれは士郎の全魔力を乗せた一撃と正面からぶつかり合い、ちょうど彼の腰ほどの位置で士郎の宝具とぶつかる。

 

至近距離での激突にジークフリートの不死身の肉体に傷がついていく。竜の因子を持つものに対して絶大な効果を発揮するその宝具はジークフリート自身には最も効果があると言っても過言ではない。

その鎧が剥がれ剣を支える腕が悲鳴をあげ血を噴出させる。

宝具は彼の肉体ギリギリまで近づいているが決して最後の一線を越えさせない。

ジークフリートはその激突の最中に体勢を整えていく。そしてついに彼は脚を一歩引いた。しかしそれは彼の敗北を意味したものではない。遂に彼の力を十全に振るえる姿勢に移行したのだ。

「はあああああああっ!!!!!!!!」

その二つの宝具はジークフリートが振り上げるのに合わせるように上空へと流れていく。

 

 

 

 

夜空の中を二人の宝具の風圧が伝わっていく。夜中をにワイバーンたちに襲撃されていた村や襲撃途中のワイバーンがその風圧に命を絶たれる。

それは竜の因子を持つ歌姫やヤンデレ気質の少女にまで伝わっていく。

「ちょっと!何よ今のビビっとした感覚⁈まさかアンタがやったんじゃないでしょうね蛇女⁈」

「それはこちらのセリフですわね蜥蜴女」

 

彼女ら一行にもその衝撃と影響は届いていた。

「先輩!ワイバーンたちが次々と墜落していっています、これは一体⁈」

「こちらでも観測したよ。すごい魔力値がここから北の方で発生したみたいだ!」

「とりあえずそこまで向かってみよう。蛇が出るか蜥蜴が出るかってね」

「そこは鬼が出るか蛇が出るかじゃないのかい、リッカちゃん?」

「なんとなく口に出ちゃったんだよね」

「マシュさんリッカさんこの事態の何かが把握できるかもしれませんし行ってみましょう!」

「そうだね!じゃあ行こうかマシュ、ジャンヌ!」

 

 

そして彼の邪竜にも

「Grrrrrrr……」

 




読んでいただきありがとうございます
この回はジークフリート戦と、美遊兄の歪みについて書かせていただきました。衛宮士郎だった頃の歪みとはまた違う自分の世界とは異なる世界に来てしまった美遊兄だからこそ生み出してしまった歪み。
そこを彼自身が気づいていけるのか、今後の展開に期待して頂けると幸いです。
評価感想お待ちしております。
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