「あ!帰ってきたみたい。王様ー、彼が目を覚ましたよー!」
アストルフォがそう言って手を振っている方角を見ると、そこにはマルタとカトリーヌそして白を基調とした鎧を身に纏う青年が歩いてきていた。
「おう、報告ご苦労アストルフォ!俺たちもちょうど情報交換が終わったところだったんだ。」
王様と呼ばれた青年の声は明るい。聴くものに元気を与えるような声だ。
「あんたは?」
「俺の名前はシャルルマーニュ。シャルルマーニュ12勇士っていうのを聞いたことはあるか?アストルフォやローランなんかを臣下置いていろんな冒険をした男、それが俺だ」
「シャルルマーニュ……」
俺もその名前は聞いたことがある。美遊のために買った本の中には歴史書の他にも冒険奇譚なんかも買っていたから、詳しいことは忘れてしまったが名前や何を成したかはだいたい覚えている。
「すまない。俺も自己紹介が遅れた。俺の名前は衛宮士郎。魔術師だけどマスターとしての役割には期待しないでくれ。」
「へえ、英霊じゃあなかったのか。それにしてはあのジークフリートと対等に戦ってるように見えたけどな。」
「あんなのは全然対等なんかじゃない。むこうは完全に手を抜いていたように思えたしな。」
「いやいや士郎は結構いい線いってたと思うよ?僕がジークフリートと戦っても3分くらいでやられてると思うから。」
アストルフォは首を振って俺を労ってくれるが、実際に英霊二騎と戦ってみた今なら分かる。俺一人じゃ英霊となんて戦えないことがわかってしまった。
「ほら士郎はそんな顔しないの。私にとっては士郎もマルタさんも私なんかじゃ全然かなわない力を持ってるんだから、悲観的になりすぎちゃダメよ」
「ああ、ありがとうカトリーヌ」
カトリーヌはそういって俺の方を軽く叩く。カトリーヌはジークフリートと戦っていた時には近くにはいなかったはずだけどマルタやジャンヌから大まかな流れは聞いていたみたいだ。
そこでカトリーヌがきょろきょろと辺りを見回して、
「そういえばアイツは?」
「アイツってジャンヌのこと?」
「えっ……ジャンヌ?」
「ん?ああ、もしかして今までジャンヌの名前を知らなかったの?」
「ええ…今初めてあいつの名前を知ったわ」
アストルフォがジャンヌの名前を出した時、俺はしまったと思った。
確かに俺たちはカトリーヌに…というかこの時代の人たちに彼女がジャンヌダルク。まあ、正確には違うけれど…ジャンヌの記憶の一部をもった存在だということを隠してきた。それは彼女のことを知られるとほぼ確実に混乱が起きると考えたからだ。
この時代にいたジャンヌダルクは数日前に処刑されたのだ。
そんな人物が身近にいたなんてことになったら噂が広がり、敵側に噂を広めた人たちが狙われるかもしれない。そのことを懸念して今までジャンヌのことは黙っていたのだ。
でも、カトリーヌはオルレアンまで連れていってくれる大切な仲間になった。それなのに名前すら知らないっていうのは不便だし、なにしろ仲間はずれみたいだしな。
カトリーヌになら教えておいてもいいだろう。
俺がそう思った時だった。マルタが頭を抱えて俯いているのを俺は見てしまった。
「どうしたんだ?」
マルタは俺の袖を軽く引っ張り、カトリーヌ達の声が聞こえてこないくらいのところまで離れた。
「まずいことになったわ。」
「どういうことなんだ?今アストルフォがカトリーヌにジャンヌの名前を教えたことと何か関係があるのか?」
「ええ、大いに関係があるわ。だってジャンヌダルクとカトリーヌは姉妹なんですもの。」
俺の思考が数秒停止した。そしてカトリーヌを見て、もう一度マルタに顔を戻す。
「本当に?」
「ええ、本当よ。カトリーヌの保護者の方にそのことを聞いたの。カトリーヌは小さかったらしいからほとんどジャンヌのことは覚えていないらしいけれど、それでも姉妹の絆っていうのは私はあると思うの。」
「でも、特異点を修復するとその特異点の人たちの記憶は書き換えられるんだろ?」
「誰よそんなことを言ったのは?」
「世界がそんなことのために労力を割くわけないでしょ。特異点を修復したところで人の記憶は残り続けるし、死んだ人は生き返らない。これが世界の法則なんだから」
もしかすると、俺はこの旅で最大級の爆弾を引き当ててしまったのかもしれない。
読んでいただきありがとうございます。
カトリーヌを書いたのは久しぶりだったので、初期よりキャラが違っていたらごめんなさい。
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