美遊兄と行く人理修復   作:Lychee

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ゴーストタウンの鮮血令嬢

俺はマルタにこのことをジャンヌには伝えないようにと散々言い含められ、俺はシャルルマーニュとジャンヌと共に一足先にオルレアンの偵察へと向かっていた。

 

 

カトリーヌはアストルフォによく懐いていて側から見ていてとても微笑ましい。ジャンヌははカトリーヌを置いて行くべきではないかと言っていたが、俺たちとこれだけ共に行動している以上、万が一襲撃されるかもしれないということで俺たちの一団にいる。この組み合わせにしたのはマルタがカトリーヌとジャンヌを遠ざけるためだ。この時代を生きている人間には自分たちのような超常の存在を知るべきではないという意見に俺も賛同し、ジャンヌもこの編成に文句を言うことはなかった。もっとも妹だということをジャンヌは知らないのだけれど。

 

偵察の道中にワイバーンと戦闘になることはあったが、シャルルマーニュの力は凄まじくはっきり言って、ジークフリートと張り合えるほどの実力を持っているだろうことがわかる。

彼は本当に王であったのかと思うほどのフランクさで

「俺のことはシャルルって呼んでくれ」

なんてことも言ってくる。はっきり言って本当に王様だったとは思えない。

ジークフリートは俺が目を覚ましたことを知ると、俺に謝罪をして仲間に加わった。しかし、すぐに何か気配がすると言って一人でどこかへと行ってしまった。

最後まで俺のことを気にかけていてくれたが、アストルフォやマルタが付いているからということでそちらの方に向かってもらった。

その時にジャンヌのことや俺たちの現状についても話しているので、カルデアに連絡がつくようなことがあれば、こちらの情報を報告すると言ってくれた。

マルタの話では彼もオルレアンに最終的には向かうと言っていたので、途中で合流できるだろうということだ。

 

 

そしてそれは俺たちの前に姿を現した。

俺とジャンヌとシャルルマーニュの偵察班がパリの街、その入口に到着した時だった。

「おい、何だこの気配は?サーヴァントとも魔術師とも違うこの気配は一体なんだ?」

俺たちを出迎えたのは出店の人々やそこに住んでいる人々でもなくただの住宅街だった。人の気配どころか生物の気配すら感じない。パリは俺たちの予測もつかないゴーストタウンとしてそこにあった。

その中でも特に異質なのが街の至る所に存在する井戸だ。

いや、正確には井戸があったであろう場所だ。

 

びび割れた地面の中心に大きな穴が空き、地下から水が噴出し、辺り一面に水をまき散らしている。水を汲むための桶のようなものが散乱しているためかろうじて本来の姿を思い起こさせる。

パリ全ての井戸を確認したがどこも同じような状況で俺達は思わず息を飲んだ。

これは明らかに異常事態だ。

パリといえば、フランスの生活や文化を支える主要都市であり、間違ってもこんなゴーストタウンではない。

「急いで戻ろう。そしてこの事態について話し合いたい」

「そうだな。俺も士郎の意見に賛成だ。このパリの惨状は尋常じゃない。明らかに外的要因が原因だとしか考えられねえ」

俺たちはうなずき合い、もと来た道へと引き返そうとしたその時だった。

 

「あら、こんな所にまだ人がいたのね?いえ、人はそこの坊やだけみたいだけれど。たった今来たところだけれどこれは来たかいがあったというのかしら……ジャンヌダルク?」

「……アサシン!」

冷酷さを伴った声にジャンヌが叫ぶ。

そこには赤のドレスを身につけ、そのドレスを覆うように薔薇のツルが巻きついている。仮面を装着し、その素顔を覆い隠した女性が気配もなく俺たちの背後に立っていた。

両手には何も持たず楚々とした仕草がどこか貴族の令嬢のようでもある。

「アサシンの気配遮断スキルか。まさか俺の索敵から逃れるほどとは思わなかったぜ。」

「私の気配遮断スキルはそこまで良いとはいえないのだけど…あなたの索敵スキルが穴だらけなのではなくて?」

ジャンヌが続くように

「そういえばアストルフォが王様は脇があまいからっていつも臣下に怒られてたって言ってたけれど?」

「そういうことは言わないもんだろ⁈あのまま済んでれば俺もかっこいいままで終われたのに!」

「まあ純正のサーヴァントがその調子じゃあ私にあったのが運の尽きなのかしら?」

「今のだけで判断するのは時期尚早ってもんだぜアサシンの姉さん。人は見かけによらないっていうだろ?」

シャルルマーニュは剣の鍔に手をかけたまま相手の動きを探っている。軽口を言いながらもそこには最大限の警戒をしているあたりは流石英雄というところだろうか。それに相手はこちらへの敵意をみじんも隠そうとはしていなかった。

アサシンのサーヴァントであろう女性は俺とジャンヌをあまり重要視していないようだ。

いや、正確に言えば俺とジャンヌとはまた見方が違うような気もする。

 

このままではすぐさま戦いになってしまいそうなので俺は軽く咳払いをしてシャルルマーニュたちの会話という名の探りあいを打ち切った。

「一つ聞きたいんだけど、この街の人間がどこに行ったか知ってるか?」

俺の質問に先ほどの雰囲気からさらに場が凍りつく。

「知っているか………そうね。確かに私はこの街の人間がどこに行ったのか知っているわ。だけど知っていたからってあなたたちに教える義理はないわよね」

「そうだな。じゃあ質問を変えよう。……この惨状はおまえがやったのか?」

「それに関してはノーと答えてあげるわ。だってもし私がやるんだったらこの辺りにはきっと血の海が広がって私は乙女たちの鮮血を浴びて踊り狂っているもの」

その返答を皮切りにアサシンの様子が変わっていく。

「この街にいた全ての娘たちの血をたっぷり貯めて血の海(ブラッドバス)で私は若返る!

その仕草一つ一つに蠱惑的な何かが入り混じり、飢えるように手を喉元へと向かわせ体全体へと這わせていく。息遣いが荒く、目が恍惚と狂気の色に染め上げられる。

 

「そんなお預けをされた私の前に一人の少女がいる。…なら私がすることなんて一つしかないわよねえ?」

女性が手を振り上げる。その瞬間にシャルルマーニュがジャンヌを突き飛ばした。

「うっ!」

突き飛ばされたジャンヌが軽い呻き声をあげる。

「ぐうっ!!」

そしてジャンヌを吹き飛ばしたシャルルマーニュはさらに苦痛の声を露わにしていた。

俺がそこを見るといつのまにか巨大な棺が現れており、まるで食らいつくようにシャルルマーニュの左腕を挟み込んでいた。

棺の下からおびただしい量の血液が流れている。人であれば明らかに死につながるであろう出血量だが、シャルルマーニュは顔を青白くさせながらもなんとか堪えている。

「シャルル!!」

「あら、気配を悟らせないように棺を忍ばせたのに、今度は気づけたのね」

「へっ、このシャルルマーニュ、一度受けた攻撃は二度はくらわねえ!」

「不愉快だわ。こんなことなら最初から棺で血を絞り出しておくべきだったわ!」

シャルルマーニュへと接近するアサシンを俺は夫婦剣を使ってなんとか食い止める。

アサシンはいつのまにか両腕に鉤爪のようなものを仕込み、俺との間に火花を散らした。

「アサシンなのになんて筋力だ!」

今の俺はエミヤの力を内包している状態だ。即ち聖杯戦争の三騎士にも及ぶほどの筋力を誇っている。しかし、それでもなお押し負けている。

しかもどんどん力が強くなっているようにも感じる。

何かからくりがあるのか?

俺は思考をフル回転させ記憶を辿る。アサシンの言動に何かヒントが……

『血の海が広がって……』

『鮮血を浴びて……』

「……若返る!」

横目にシャルルマーニュを見る。

ジャンヌが必死に棺をこじ開けて、シャルルマーニュが解放されたようだ。シャルルマーニュの腕は見るも無惨にぼろぼろであるが切断されているのではなく、穴が空いているような負傷の仕方だ。

そこで俺はもう一度棺を見る。本来の役割を終えて、消えようとしていたが、俺は確かにそれを見た。

そしてその鮮血が徐々にどこかへと吸われるように消えていくのを。

そして脳内に保存された歴史書を紐解いていく。

あの棺。構造。鮮血……少女。若返り。

そして俺はこのアサシンの正体に一筋の光を見出した。

「ジャンヌ!シャルルマーニュを止血してくれ。こいつの真名がわかった!こいつはエリザベート・バートリー、ヴラド三世とともに吸血鬼の代名詞となった反英雄だ!」

 




読んでいただきありがとうございます。
少し長くなってしまいましたかな。
次はアサシン戦です。
評価・感想お待ちしております。
誤字修正してくださっているみなさま本当にありがとうございます。
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