美遊兄と行く人理修復   作:Lychee

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VSアサシン

真名が判明したことである程度の対策を立てることができる。

しかし、彼女は物語に出てくるような英霊ではない。人として生き、人として死んだ者には弱点と言えるものはないと言ってもいいだろう。

だから、今回つかなければいけない点は、彼女の特異性の一つである『吸血鬼』のモデルの一つであるという点だ。

 

物語上の吸血鬼はかなり定義が曖昧だと言っていい。昔、屋敷で読んだ本の中に吸血鬼などの幻想種について書かれた書物があった。

真祖と呼ばれる規格外の化け物は太陽光やニンニクなどといった物語に描かれる吸血鬼のような弱点はないと記されていた。そして不死身である。そんな化け物が俺の目の前に現れた時点で確実に俺は死んでいるだろう。

 

では、アサシンはどうか?

彼女は史実としてその人生を生き、死んだという記述があることから、エリザベートバートリーとしてなら死んでいる。

では、カーミラとしてなら。それでも彼女は消滅している。

その死に際は杭で心臓を打たれたことだ。

おそらく、カルデアの資料で読んだ英霊のスキル『無辜の怪物』による変異だと考えられる。

そのスキルさえ無効化できれば奴を倒せる。

倒せることさえ分かればいい。

この時点で俺の中から撤退の文字はなくなった。

 

()()()()()()()()()()()()、俺はこいつを倒す。

 

シャルルマーニュのあの傷ではすぐさま戦線復帰は難しいだろう。

ジャンヌはこの行軍の最中に調子が良くなってきたと言っていたけどまだ実戦で試したことがないためまだ不安定だ。

それにもしジャンヌが傷を受けたら、アサシンはさらにその凶悪さを増すだろう、

 

「ほらっ!戦闘中に考えごととは余裕があるってことかしら!」

「くっ……」

俺の思考を妨げるように、アサシンは血の棘のようなものを俺に飛ばしてくる。俺はそれをかわしていくが、思考を纏められない。

「これでも喰らえ!」

ジャンヌは遠距離から炎を打ち出してアサシンを牽制してくれている。しかし、アサシンは空中から棺を呼び出しジャンヌをその毒牙にかけようとしてくるため、はっきり言って弄ばれているような感覚だ。

そして何より予想外なのが、このアサシンかなり速い。敏捷性がA級サーヴァントなみだ。

おそらくシャルルマーニュの血液を取り込んだことによりある程度の補正がかかっているのだろうが、その補正が切れる前にこちらがやられる。

俺は弓を投影し、アーチャーとしての千里眼を用いてアサシンを射抜こうとするがその敏捷さに目は追いつけるが体が追いつかない。

 

かつての世界で間桐慎二が夢幻召喚(インストール)したアサシンとは比べ物にならないほどの敏捷性だ。

俺が近づこうとすればアサシンは血の棘を使って遠距離から攻撃を行い、弓で射ようとすればその敏捷性で縦横無尽に駆け回る。

 

このままではジリ貧だ。刺し違えるどころか圧倒的な力の差で叩き潰される。

ならばと俺はエミヤから譲り受けた赤の腕輪を用いて投影を開始する。この腕輪の能力は投影をする際にエミヤへの置換を遅らせる効果、そして構成材質や構造を保存してくれるという俺の未熟な技術を十分に補ってくれる効果を持つ。

しかし、俺が始めて投影するものにはあまり効果を発揮しない。二度目の投影で大幅に置換をカットできるのだ。

ジークフリート戦ではバルムンクを投影するのは初めてだったため、俺の全身が一気に置換されてしまったのだろう。

だが2回目の今なら話は別だ。

読み込ませていた剣の記録を腕輪から取り出し、投影過程を大幅にカットする。

腕輪が紅く光り輝き、俺の中へ語りかけてくる

《『構成材質想起』『構造想起』工程を大幅に短縮しました。次の行程に移って下さい》

その声に少し驚きながらも俺は投影を完成させていく。

もちろんアサシンが俺の状況を放っておくはずもなく、その敏捷性を用いて俺に肉薄しようとする。

 

しかし、彼女の鉤爪が俺へと突き立てられることはなかった。俺とアサシンとの間に大振りの槍が突き刺さる。

「この槍は⁈」

「ようやく逢えたわねアサシン。いいえ、エリザベート・バートリー」

声とともに姿を現したのは、ピンクの髪に大きな角、スカートの下からは黒い鱗に覆われた尻尾を振り、年齢は俺よりも年下に見える少女だ。

その視線はまっすぐにアサシンを見据え、強い意志を感じる。

「あなたには私が分かるわよね。」

「ええ、分かるわ。他の誰にも分からなくても私には分かる。その忌々しい顔。罪から逃げ、私という存在を切り離した女だもの」

アサシンは杖を強く握り締め、その仮面を反対側の手で取り払った。そこから出てきたのは、青白い顔色の美しい女性。

 

少女とは身長も体格も異なる。しかし、その目が…交差し合う瞳が似ていた。

「そこの子豚、こいつの相手は私がしてあげるから、さっさとそれを作り上げなさい。じゃないと私がこの女を殺してしまうわよ」

少女は俺に一瞥をくれると、地面に刺さった槍を抜き取る。

「あまりにも少ないオーディエンスだけど、いいわ、とっておきのスペシャルライブを見せてあげる!」

「黙りなさい!そんな夢を見ているところが私は嫌いなのよ!」

 

 




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