「とりあえず自己紹介から始めましょう。私の名前はマシュ・キリエライト。カルデア所属のデミサーヴァントについ先ほどなった者です。そして私の右隣にいる方が藤丸リッカ私のマスターです。そしてさらにその右隣にいる方がオルガマリー・アニムスフィア。私たちが所属しているカルデアという組織の所長を務めている人物です」
薄い紫の髪で右目を隠した少女が自分たちが何者であるのかを説明し、ロマニ・アーキマンというサポーターがいること、そしてカルデアが何を目的とする組織なのかを簡単にだがわかりやすく説明してくれた。
俺の貧困な語彙力で言い換えてしまうとカルデア はまさしく『正義の味方』と言える存在なのだろう。
かつての俺が…そして切嗣が目指した存在が今まさに俺の目の前にこうして立っている。俺がかつての世界で全より一をとった後に本物の正義の味方を見つけてしまうとは何とも皮肉な話だ。
胸の内に様々な感情が芽生える気配を全て無視して俺は目の前の人たちに自己紹介をする。
「俺の名前は衛宮士郎。この冬木に…いや、正確にはこの世界ではない冬木にいたんだ。」
俺もこれだけの時間をかけて理解したことがある。それは俺が世界を超えたということだ。俺が美遊という聖杯に願った願望によっておそらく美遊は世界を渡ったのだろう。そしてその聖杯の力が美遊とリンクしていた俺にも働いて今この世界に来てしまったのだろう………と考えた。美遊もこの世界に来ているのでは?なんてことも考えたが今のこの魔力量から考えてほとんどその線はないだろうと考えた。
「ちょっと待って?あなたはこの冬木の人間ではないの?」
「ああ、俺はこの冬木の人間じゃあない。クー・フーリンにも話したがまず俺がかつて体験した聖杯戦争とはそもそものやり方が違う」
「万が一だけど士郎の聖杯戦争のルールが変わっちゃってその弊害としてこの町がこんなことになったってことはないの?」
俺はリッカからの質問に首を横に振る。
「それもないな。この町には絶対にあるはずのものがないんだよ」
「それって?」
「クレーターだよ。町の中心部から発生したバカでかいクレーターがこの町にはない。それに雪も降ってないしな」
「雪なんて12月や3月でも日本の気候なら雪が降らないなんてこともあるんじゃないかしら?」
「12月?何を言ってるんだ、雪が降るのはほとんど1年を通してだろう?」
その言葉に俺を除く全ての人間の顔が強張った。
「……まさか本当に世界移動者?それにそんな世界の状態から考えられるとしたら世界の行き止まり……剪定事象からの抜け出して来たってこと?それじゃあ既に彼の世界は…なんでこんなことが続くのよ。国連からの出向者も来ていたっていうのに………」
オルガマリーが何かぶつぶつと言っているが声が小さくて聞き取れない。他の人間も依然として強張った顔のままだ。
そんな状態からいち早く抜け出したのはやはりというべきかクー・フーリンだった。
「まあ、今考えるのはここからどうやって帰るのかってことに集中しようぜ。こいつもこの様子じゃあどうやって帰るのかもわかんねえんだろうからお前たちがそのカルデアで保護してやればいい」
という言葉によってなんとかこの場は収められたようだ。
そして、俺たちはオルガマリーの決めた作戦によって行動を開始する。俺とキャスターはアーチャーの排除にあたる。オルガマリーさんリッカ、マシュは大聖杯を守っているセイバーの偵察俺とキャスターがアーチャーを倒し次第セイバーとの交戦に入るという作戦だ。
作戦開始は俺がまともに戦える状態になる30分後。
俺が吹き飛ばされたバーサーカーについては基本的に大空洞から動くことはないらしいそんなところに行ってしまうとは俺もつくづくついてない。
今はアーチャーが俺たちを………というか、俺を狙い撃ちにしないようにするためにキャスターとオルガマリーが牽制をしてくれている。
俺の側にいるのはリッカとマシュだけだ。
「ねえ、士郎の家族ってどんな人だったの?」
時間になるまでの暇つぶしにリッカは俺に聞いて来た。
「俺の家族は………そうだな。親父に…妹がいたよ」
俺はリッカとマシュに俺と親父と美遊のことを俺たちが美遊のことを願望器として使おうとしていたことを除いて話した。
「そっかあ。士郎も父子家庭だったんだね」
「も、ということは先輩もそうだったんですか?」
「うん、そうだよ。私の家族はお父さんとお兄ちゃんの二人。お母さんは私が10歳くらいの時に病気で亡くなっちゃったんだ」
「すみません!余計なことを聞いてしまって……」
「ううん。マシュが謝ることじゃないよ。それにもう乗り越えたことだから」
「リッカの家族はどんな…人たちだったんだ?」
俺はどんな関係だったのか?と聞こうとしてやめた。これはきっと俺と美遊の関係について掘り下げて聞いて欲しくなかったからだ。
自分で言っておきながらなんてずるい人間なのだと思ってしまう。これもきっと逃げなのだろう。
俺は美遊ともしも再開したら、もう一度『お兄ちゃん』と呼んでもらえるのだろうか?
そんなことを考えているうちにリッカは既に話し始めていた。
「私はね、お母さんの連れ子だったんだ。それで3歳年上のお兄ちゃん
がお父さんの子供だったの。お父さんと最初に会ったときは7歳くらいだったかなずっと優しくて大好きだった。お兄ちゃんは最初の頃は無口で全然話してくれなかったんだけどね」
リッカは自分のことを淡々と話していく。そういう風に話していけるのはきっと彼女の中でもう折り合いがついているからなのだろう。
マシュの方を見てみるとどうしたらいいのかとまるでこちらに助けを求めるかのように俺の方を見ている。
俺はマシュにアイコンタクトを送って話しの続きをちゃんと聞くように促す。俺の合図にしぶしぶといった風にマシュはリッカの言葉に耳を傾けた。
「お母さんが死んじゃった時はさ、私すごく荒れててお父さんとかお兄ちゃんにひどいことも言っちゃったんだ。『あんたたちなんか私の本当の家族でもないくせに!』って。そう言ったら今までほとんど話したこともないお兄ちゃんが私のことを抱きしめてくれてさ、こう言ってくれたんだ……」
幼い頃のリッカの言葉は俺にも突き刺さる言葉だった。というか似たような言葉を俺も美遊に言われたんだったか…確か俺があのとき言ったのは…
「『俺はリッカのお兄ちゃんだからな』」
その言葉は名前の部分こそ違ったが俺がかつての世界で美遊に言った言葉の一部だった。
「『俺はリッカのお兄ちゃんになったんだからお前の辛いことも一緒に背負ってやる』って今思い出してみるととってもくさいセリフなんだけどね。あの時の私はそう言われてわんわん泣いちゃってさ。そんなことがあってからはもうシスコンお兄ちゃんの完成なわけですよ。私に何かあったらすぐに『どうかしたのか?』とか聞いてくれるし、私がちょっとメールで迎えに来てって送ったら速攻でバイクに乗って来てくれるし、プレゼントが欲しいなあって言ったら………もうわかるでしょ?」
そう言ってリッカは悪い顔で笑った。
けれど彼女が兄のことを話す時は確かに今までに見たどんな顔よりも嬉しそうに笑うのだった。
その顔を見て俺とマシュは顔を見合わせて笑いあった。
俺の知らない世界で美遊がこんな風に素敵な笑顔でいられますように。そんな願いも付け加えておくべきだったかな。
今回の話はいかがだったでしょうか。リッカの設定はいろんな作品で追加されてはいますが自分としてはリッカは普通に幸福な生活を送っていた女の子という風にしていきたいと思いました。
今回の物語も楽しんでもらえたら幸いです
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