それではどうぞ。
リッカと英霊たちに指示を出して戦わせているのが見える。英霊たちの攻撃はどれも強力で、迫り来る竜牙兵やゴーストたちを次々に撃退していく。
何度かの戦いの後、シミュレーションが終わりリッカに続きマシュやほかの英霊たちが俺たちのいる部屋に入り込んできた。
先に出てきたリッカとマシュが、俺に気づいたのかこちらに駆け寄ってくる。
「士郎!もう体はいいの?」
「士郎さん!もう体は大丈夫なんですか?」
マシュとリッカがほとんど同じタイミングで俺に話しかけてきた。俺は2人を安心させるように軽く口元に笑みを浮かばせると、
「ああ、いつまでも寝てはいられないからな。ロマンから2人がここにいるって聞いて様子を見に来たんだ。」
そう告げた。と、そんな俺たちの間をすり抜けるように黒い鎧の女性が出口に向かってすすんでいく。
「ちょっと待ってくれ。君はあのときのセイバーだろう?お礼を言わせてくれ。」
そう言って俺は彼女を呼び止めたのだが、
「何の話だ?」
そう言って部屋から出て行ってしまった。
「そんなに落ち込むことはねえ。さっきの戦闘シミュレーションでも野郎はマスターの嬢ちゃんと、ほとんど話をしてなかったからな。」
「ああ、あの状態の彼女は、はっきり言って気難しい。嵐が過ぎ去るのを待つように必要なことを伝える程度で十分だろう」
そう言って話しかけてきたのは、青いタイツを着たランサー、クー・フーリン。そして赤い外套をまとったアーチャー、エミヤだ。
「本来の彼女のあり方を私たちは知らないが、あれは一種の反転状態――セイバー、いや、アルトリア・ペンドラゴンオルタとも言うべき存在だろう。」
「クー・フーリンたちが戦った聖杯戦争は、アルトリアはあの姿じゃあなかったってことなの?」
「いや、とある聖杯戦争でやつはあの状態になった。その時の冬木の聖杯戦争では俺は早々に退場しちまったんだが、カルデアの召喚システムでは、自分が戦った可能性のある聖杯戦争のすべての記録が俺たちの頭の中に入っている。」
「そして私たちが退場した後の記録もすべて所持しています。」
英霊たちの話にするりと蛇のように入り込んできたのは、紫の長髪に目隠しをした女性だ。
「今のあなたとは初めましてですね衛宮士郎。私はライダー。カルデアでは、メデューサとよんでください。私も彼らと同じく冬木の聖杯戦争を戦った者です。」
目隠しをしていて表情がよく見えないがその口元にはかすかな微笑が見えた。彼女も俺とはちがう俺と会ったことがあるのだろうか?
「今回召喚されたサーヴァントは冬木の聖杯戦争に召喚された方々ということになるのでしょうか?」
マシュが英霊たちに
「いえ、そういうわけではないですね。今回召喚されたサーヴァントはマスターが冬木の地で遭遇したサーヴァントが全てです。その証拠にバーサーカーやアサシンは召喚されていないでしょう?」
「そういえばそうだね」
「アサシンの野郎は俺が先に座に送り返してやったからな」
「それでアサシンの奇襲が起こらずに済んだんですね」
俺たちがなるほど、と納得しているとダ・ヴィンチが「これは英霊召喚についての補足なんだけど」と前置きをして説明に加わった。
「英霊召喚の術式は一人の英雄をクラスという型に押し込めて召喚するものだからね。クー・フーリンやアーサー王なんかは本来ランサーやセイバー以外のクラスにも合致する英雄たちだ。だけどクラスに当てはめられた以上はそのクラスに最も見合った宝具を持った状態で召喚される。」
「なるほど、他の逸話を持っているサーヴァントの方々にとっては弱体化しているともとれるんですね」
「そういうこと。まあ、ライダーのクラスになると他の宝具をしこたま抱えて召喚されるサーヴァントもあるみたいだけどね」
英霊たちからのある程度の説明が続くが、俺の思考はそれからさっきのセイバーへと向けられていた。どうにも俺にはあのサーヴァントが気になってしまうようだ。
俺はそこでエミヤが何かを頷いたのを見逃してしまっていた。
「どうしたの、エミヤ?」
「いや、衛宮士郎。セイバーの方が気になるのなら奴と何か食事でもしながら会話してきたらどうだろう。どうやら今の貴様にはあまり説明が身に入らないようだからな」
俺は考え事の最中に声をかけられたからか、ビクッと肩を震わせた。
「すまない、話を続けてくれ」
「ううん、結局は私もアルトリアのマスターとして話をしなきゃいけないから、その時用に何か軽食でも用意してくれると嬉しいな」
「………それじゃあいって来るよ」
俺はそう言ってシミュレーションルームを後にしたのだった。
「………まったく自分との戦いの記憶があるかと思えば、今度は自分自身と一緒に世界を救うことになるとはな」
「冬木のお前が今のお前を見たらなんて言うんだろうな」
「まさか私も士郎ともう一度会うとは思っても見ませんでした」
「自分との戦い………なんかかっこいいね!」
「よせよせ、碌なものじゃないぞ」
「まさに経験者は語るだな」
「黙っていろランサー」
セイバーを探しながら食堂も探していたんだが、まさか食堂にセイバーがいるとは………
俺は一度深呼吸してから食堂に足を踏み入れる。
「セイバー、よかったら何か食べないか?それでも食べながら何か話でも………」
「私の機嫌などとるな。臣下が死のうと、人々が苦しもうと、もちろん仲間が1人死のうと何も感じない女だからな」
「そうか、でも俺が死ぬことと、今何かを食べることは別に関係ないんじゃないか?」
セイバーは俺の方を一瞥すると黙り込んでしまった。俺はそれを肯定と受け取って厨房に入り、何があるかを見てみる。
「うん、これならサンドイッチくらいなら作れるな」
サンドイッチは別に特別難しい料理というわけではない。パンの中身をこだわろうと思えば手の込んだものになるが、カルデアの食糧事情を考えるとあまり豪華なものを作るべきではないだろう。ここは簡単に葉物野菜とベーコンのサンドイッチでいいかな。
そうと決まれば俺は早速調理に取りかかった。
〜〜〜〜〜約30分後〜〜〜〜〜
「うん、完成だ」
気づけば厨房にサンドイッチを作った時のいい匂いが充満していた。
セイバーの方を見てみると、先ほどよりも厨房の方に1席分寄って来ている。
「出来たぞ、セイバー」
そう言って俺は皿に盛りつけたサンドイッチをセイバーの前に置いた。
俺の言葉にセイバーは俺とサンドイッチを一瞥した後、黙ってサンドイッチを手にとって食べ始めた。食べた瞬間少しだけ目が開いた気がしたけど気のせいだろうか。
セイバーはあっという間にサンドイッチを1つ平らげ、2つ3つと平らげ、皿に乗っていた全てのサンドイッチを綺麗に食べてしまった。
あ、今ちょっとしゅんとしたような気がする。
「おかわりはいるか?」
という俺の問いかけに対してセイバーはコクリと頷いた。
俺は少し嬉しくなって意気揚々と厨房に戻っていった。以前は美遊に料理を作ってたんだけどな。
確か料理を食べてもらったのも最後はあの雪の降った日に桜は俺の家で……………。
いや、考えるのはやめよう。今はただセイバーに喜んでもらう。それだけでいいじゃないか。
俺はおかわり分のサンドイッチを皿にのせてセイバーの元に持っていった。
それもセイバーはあっという間に食べてしまった。
「それじゃあもう一皿持って来るから」
「いや、もういい。衛宮士郎。………そのサンドイッチ…美味しかった」
「それならよかった。」
「以上だ。私はもう出るぞ」
そう言って出て行こうとするセイバーを俺は呼び止めた。
「俺はセイバーの知ってる俺じゃあないけれど、それでも俺はセイバーのことを仲間だと思ってるから」
「そうか」
それだけ言って部屋から出て行ってしまった。それでもとても小さな声だったけれど、俺にはそれで十分だった。
その会話を合図にしたかのように。リッカたちが食堂に入り込んできた。
「士郎!私たちにも何か作ってー」
俺はリッカたちがおそらく聞き耳をたてていたのであろうことを察しつつも頷いた。
「サンドイッチの残りがあるけどそれでいいか?」
「うん、じゃあそれでお願い!」
「了解」
それから各々がテーブルにつき俺の作ったサンドイッチを片手に談笑にふけっていた。
雪の降る日に桜に何があったのか気になる人はプラズマイリヤ・ドライの7巻をご覧下さい。
それと、今回後半で出てきたサンドイッチですが、衛宮ご飯にて登場したサンドイッチを意識して書かせていただきました。
興味がある方はぜひ衛宮ご飯を見てみてください。
宣伝みたいになってすみません笑
それからお知らせなのですが、これから第1章オルレアン編に入っていくのですが、自分の構成上オルレアン編に出てなかったサーヴァントも出す予定なのでそこのところをご了承下さい。
評価・感想・誤字報告いつでも待ってます。
次もなるべく早く更新したいと思っているのですが、1週間以上かかってしまってもどうかこの作品を見捨てずにいてくれると幸いです。
それではまた次回で。