神様さえ、知らない場所へ。   作:Artificial Line

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私はムカついた。
舐めているのかと、そう思った。

だけど―――それは驚愕と困惑に塗りつぶされた。


【Act-1-3】上位者の常識と、一般人の常識には差異がある

彼、月の香りの狩人改め

狩人アリーヤが手続きを行うのを、ルヴィリアスは横で見ていた。

 

たった半年でC+ランクまで上り着いた彼女は、端的に言って優秀な探索者である。

通常E-ランクからスタートする新規探索者だが、帝都貴族の彼女とはいえそれは同じであった。

世間一般ではE-~D+までの4ランクが初級探索者。

C-~B+が中級探索者。

A-~S+が上級探索者と呼ばれている。

ランクを一つ上げるのに早くて半年、通常は2年前後かかるということを考えれば、彼女の優秀さは実感しやすいだろう。

もちろん上のランク帯へ上がれば上がるほど昇格の条件は厳しさを増していく。それは高ランクであればあるほど、そのランク帯の数は減っていくということでもある。

そも高い死亡率を誇るこの界隈では、E-から昇格する以前に死亡することなどざらであった。

 

彼女、ルヴィリアスの戦闘スタイルは俗に魔術戦士と呼ばれるものに分類される。

剣技と魔術を織り交ぜ、トリッキーな戦術に主眼を置いたスタイルだ。

その性質故スタミナ切れを起こしやすく、魔力が枯渇すれば戦闘力が半減することがこのスタイルの弱点ではある。

だがそれを差し引いても短期決戦での爆発的な瞬間火力は特筆に値するものだ。

彼女は魔術戦士の中でもエンチャント型というものに分類されていた。

 

自らの得物に炎や魔術的なエンチャント(強化)を施し、高い瞬間火力を実現している。

 

ルヴィリアスは間違いなく、優秀な探索者であった。

彼女にはその自負と自覚があったし、周囲の探索者や管理局からも一目置かれている事実もある。

 

それ故に狩人、アリーヤの能力について懐疑的になってしまうのは致し方ないのかもしれない。

 

メイからトロールを瞬殺したという話は聞いていたが、彼女はそれを実際に見たわけではない。

敬愛する主を疑うということは決して無かったが、それでもルヴィリアスにとってアリーヤの実力は未知数であった。

そもメイが何故、この怪しい男をクランに誘ったのかはかりきれてはいないのだ。

きっと私達人間には理解できない、何かを見たのだろうという事はわかる。

それはアリーヤからメイ達神族にも似た香りがしていることからも、なんとなくではあるが察せられる。

幾分その匂いは血なまぐさすぎるが。

 

きっと私達人間には理解もできない考えがあるのだろう。ルヴィリアスはそう結論付け、一旦思考を中断した。

 

ちょうどアリーヤも登録の手続きが終わったようである。

 

「アリーヤ様ですね。かしこまりました。これにて探索者登録は完了です。ランクはE-からのスタートとなります。世界の果てへの探索に赴く場合は十分に準備して、細心の注意をお願いします」

 

受付嬢にアリーヤが軽く礼を言って、席を立つ。

ルヴィリアスも彼に習って受付嬢へ感謝の言葉を述べた後席を立った。

 

「これで探索者登録は完了ね。後は装備の準備か。これから私の"同僚"になるんだから、情けない姿を晒さないでよ」

 

彼女は顎に指を当て、思案しながらアリーヤにそう話す。

最初こそ噛み付いていた彼女であるが、ここまできてしまえばもうどうこう言っても仕方あるまい。

ならば"同僚"として割り切って接するのが合理的である、というのが彼女の心情であった。

それに、無自覚ではあるが、クランの先達として初めての後輩ができたというのに内心ワクワクしていたのだ。

いままで殆どがソロ、或いは主たるメイと二人で探索を行ってきた彼女にとって、

他のクランのようにパーティを組んで探索を行うというのは一種の憧れでもあった。

 

さて、彼の装備品はどこで調達するか

ルヴィリアスはそんなことを考えていると、アリーヤが口を開く。

 

「ああ、もちろんだ。それと装備品については問題ない」

 

ルヴィリアスはそう言った彼を、怪訝な表情で見上げた。

大柄なアリーヤを見上げるのに加え、彼の顔はマスクで隠されている為

その表情を見ることは叶わない。

だがなんとなく不敵に嗤っているような気がした。

 

たしかに彼の装束は普段着とは違い、戦うことを想定したようなものに見える。だが鎧などに比べて、防御力は間違いなく劣るだろう。

武器も"ジュウ"というものを下げてはいるが、まさかそれだけで探索に赴くつもりだろうか?

彼女はこの半年で世界の果ての危険性を理解している。

"ジュウ"の性能はよくわからずとも、一本だけでなんとかなるほど甘い場所ではないと解っていた。

 

故に、彼女は僅かに苛ついた。

あの場所(世界の果て)の危険性も解っていない奴が、何を言っているのかと。

 

その彼女の考えは只人相手ならば正しいだろう。

そもルヴィリアスは()()というものを知らないのだ。彼が駆け抜けてきた苦悩も。

故にその苛つきも致し方ないものであるし、当然であった。

 

「装備については問題ない?―――あんた、そんな装備であの場所(世界の果て)がなんとかなると思っているの!?ふざけないで!!」

 

若干の殺気すら込めながら、彼女はそう叫んだ。

周囲の探索者や職員は何事かと、彼女達を見やる。

 

上位者たるアリーヤは何故彼女が怒っているのか、すぐに察した。

 

ああ、確かにこの身のまま装備は必要ないとか言っても舐めているのかと思われるのは仕方のないことだろう。

であれば。

 

「ふざけてなどいないさ。もう()()()()()からな」

 

彼の返答に対し、ルヴィリアスは更に目を細めて睨みつける。

その後の言葉はなんだ?これ()があるか?もしそうだとしたら、メイ様の意向を反故してしまうことになるが

この場でこの甘い思考の男を叩き斬ろう。

 

そんな物騒な思考を彼女は奔らせる。

 

ルヴィリアスは彼の実力や能力を知らない故、そう思ってしまうのは致し方ないことであった。

周りの人々は口を出しては来ないが、きっとルヴィリアスのことを支持しているだろう。

 

だが。周りが知ろうが知らまいが彼は()()である。

彼がその右手を虚空に上げた瞬間、ルヴィリアスを含めた周りの人間は驚愕することになった。

 

「―――この通り武具は持っているのさ。舐めてなどいない。もし勘違いをさせてしまったのならすまなかった」

 

彼の手には銀色に輝く"剣"が握られていた。

無骨ながらも、美しい刀身を持つその剣は、素人目にも業物だということが理解できる。

それに同時に彼の背へ担がれるように出現した鉄製と思われる巨大な鞘。その美しいレリーフに多くの者の視線は釘付けになる。

 

周囲のルヴィリアスを含めた人間は驚愕していた。

見たこともない"剣"。巨大な鞘。

だが、それ以上に―――

 

「なんだ!?あの男剣なんて持っていなかったよな!?」

 

「錬成の魔術か!?詠唱なんて聞こえなかったぞ!?」

 

「錬成だとしたらなんて腕だ…あの剣をみろ!()()()()()()()()()()()

 

周囲が一気にざわめきたつ。

狩人たるアリーヤにとっては当たり前の、血の遺志の恩恵による武器の格納。

だがそれは、この世界の人々にとって例外を除けば未知の業であった。

 

彼が普段使っている得物(ノコギリ鉈)ではなく、その"剣"を手にとったのには理由がある。

この世界の人々にとって()()()()()()武器だからだ。

 

―――ルドウィークの聖剣

あの世界(ヤーナム)ではそう呼ばれて居たものが、彼の手には握られていた。

 

 

ルドウィークの聖剣

 

特に医療教会の狩人が用いる「仕掛け武器」

 

教会の最初の狩人、ルドウイークが用いたことで知られ

銀の剣は、仕掛けにより重い鞘を伴い、大剣となる

 

ルドウイークを端とする医療教会の工房は

狩人に、老ゲールマンとは別の流れを生み出した

より恐ろしい獣、あるいは怪異を狩るために

 

 

「あんた…何者よ…?」

 

ようやくルヴィリアスの口からこぼされた言葉は

明らかに困惑と驚愕を孕んでいた。

 

 

 

 

 

 

先程の出来事からしばらくして。

ルヴィリアスとアリーヤは世界の果ての浅部へと赴いていた。

 

アリーヤが

 

『それでは見に行こうか』

 

などと何事もなげに言い放ったためである。

それに対しルヴィリアスは、先程の衝撃から復帰しきれておらず

 

『ええ…』

 

と返すことしか出来なかった。

ただ、彼女のアリーヤに対する懐疑心はひとまず薄れていた。

いや、疑問も疑念も多大に高まったのだが、彼の実力に対する懐疑心はなぜだか薄れていた。

それは見たことも無いような()()()()を眼の前で見せつけられたせいであろうか。

それとも『行こうか』といった彼の背後に何かを幻視したような感覚のせいだろうか。

 

だが彼女にその自覚はない。

()は只人である彼女には、何かを幻視した感覚は感じられても

それを見ることは叶わなかったのだから。

まあ現状の彼女がもし、メイのように彼の過去(悪夢)を見てしまったら間違いなく発狂するだろうが。

 

現在管理局では先程の光景を見ていた探索者達と職員によるざわめきはより一層その激しさを増していた。

 

曰く、"あれは錬成の魔術だ!"だの

"だとすれば最上位の魔術師だぞ!?"だの

"閃光のルヴィリアスが連れてきて只人ではないとは思ったが、アイツは一体誰だ!?"だの。

"ルヴィリアス嬢とアイツはどんな関係だ!?まさかスマイリーの新人か!?"だの

 

もっぱら彼、狩人アリーヤについての話題であった。

だがそんな事を二人が知るはずもない。

 

そもメイがルヴィリアスに対し、彼の業を伝えていればこんなことにはなっていなかったかもしれないが

後の祭りである。

 

ルヴィリアスとアリーヤは、世界の果てとの境界に設置された関所で登録証を見せ、世界の果てへと歩みを進めていく。

しばらく色のない霧が続いた後、その先に広がっていたのは―――自然に飲まれつつある遺跡群であった。

 

「ここが世界の果ての最浅部。奥に進むに連れて強力なモンスターが増えてくる。この辺りは探索者もいっぱいいるだろうからまだ安全よ」

 

彼女の話を黙ってアリーヤは聞いている。

 

世界の果ての探索率は3%にも満たないらしい。

それはこの世界の果ての性質に起因していた。

 

その性質というのは、ある日突然見たこともない土地が流れ着いているかのように出現するというものだ。

また討伐したはずのモンスター達が、気が付くと復活しているのだという。

 

別世界の英雄(不死人)が聞けば"ロスリック"や"吹き溜まり"といった単語が聞こえてきそうな性質である。

 

「じゃあ少し進んで見ましょうか。正直さっきのあなたの業を見てまだ困惑しているのだけど、それは帰ってから聞かせてもらうことにするわ…」

 

若干疲れたような表情でルヴィリアスは呟く。

それに対しアリーヤは嬉々として遺跡群を目に焼き付けていた。

 

"美しい"それが彼の心に満ち溢れた感情であった。

空では太陽が大地を照らしており、緑はみずみずしい生命の息吹を感じさせる。

それに飲まれつつある遺跡群。とても幻想的な光景だった。

あの悪夢ではこんな光景を見ることは出来なかった。絶望と狂気を飲み込み、進み続けることしか出来なかった。

この世界()はすべてが美しい。人の営みも、この光景も。

 

「―――っえ!ねえ聞いているの!?おーい!?」

 

ルヴィリアスが傍らで叫んでいる。

どうやら感動を噛み締めていたあまり、彼女の言葉を聞き逃していたようだ。

アリーヤは彼女へ向き直り、短く謝罪する。

 

「ああ、済まない。この光景に少々感動してしまっていてな。美しい景色だ」

 

「…やっぱりあんた変わっているわね。いくら美しいとは言っても上級探索者ですら気を抜けば一瞬で死ぬ世界なのよ?」

 

「それでも、さ」

 

「ふーん…まあいいわ。これからは私の"同僚"なるんだから、この辺は案内したげる」

 

ルヴィリアスとアリーヤは歩みを進める。

 

「ここが探索者達の簡易休息所。であっちが捨てられた教会って呼ばれてる建物。あの建物を抜けると更に深部へとつながっている道にでるわ。まあE-の探索者は、制限されて入れないけど」

 

彼女はぶっきらぼうに案内しつつも、内心は嬉々とした感情が戻ってきていた。

いまの私、最高に先輩らしい!

そんなことを思い浮かべた彼女は、途端に恥ずかしくなって首を振る。

 

アリーヤはといえば、彼女の案内を真摯に聞きつつその目に隠しきれない喜色を浮かべていた。

だがその喜色は、次の瞬間には消え失せる。

代わりに灯るは、明らかな警戒を浮かべた宇宙の瞳。

 

「それで、向こうに見えるのが時計塔って言われている建物で…どうかした?」

 

どうかしたのか、そう問かけるも彼からの返答はない。

 

 

そこで彼女は気が付く。

―――彼の雰囲気が一変したことに。

 

掴みどころの無い男であると感じていたが、それでもこのように全てを飲み込む深淵のような空気を感じさせる男ではなかった。

それが昨日からという短い時間ではあるが、彼と接したルヴィリアスの認識であった。

 

だが。その姿を見た瞬間、ルヴィリアスの心臓が跳ね上がる。ドクドクと、バクバクと。彼女の鼓動はその動きを一層早めた。

恐怖を感じる。なんだこの恐怖は。なんなのだこの男は!!

 

怒気とも闘気とも違う。一番近いのは…そう。()()だ。

匂い立つような濃厚な死臭。血臭。そして()()()()

あまりの変わりぶり、そして彼から漂い初めた様々な匂い。

 

彼女はその背後に、形容しがたい化物(上位者)を幻視した。

 

困惑と恐怖が彼女を襲う。だが持ち前の精神力でそれらをなんとか抑え込む。

彼女にとっては初めての啓蒙であった。

 

一息付き、自らを奮い立たせて彼が睨みを効かせている視線の先へ目を移した。

だがしかし。そこにはただの森が広がっているだけである。

 

「……ただの森じゃない、なにか見つけたの?」

 

やっとの思いで、ルヴィリアスは言葉を出す。

 

「―――獣の匂いだ…匂い立つなぁ…」

 

彼の独り言のようなつぶやきにルヴィリアスは疑問符を浮かべる。

彼女がなにかを言おうとした瞬間、

恐怖を覆すような、しかし全身の毛が逆立つような声色でアリーヤがつぶやいた。

 

「―――来るぞ」

 

直後、森の木々がなぎ倒されるような音と数名の絶叫が聞こえてくる。

そしてようやく―――ルヴィリアスも彼の雰囲気が一変した理由に気がついた。

 

直後森から勢いよく転がり出るように出てきたのは数名の男女。

あの鎧は――確かクラン・ヘイティアの標準装備であったはず。

 

「急げ!早く逃げろ!!!」

 

転がり出てきた男女のうち、最も背の高い茶髪の青年がそう叫ぶ。

 

恐怖の表情を貼りつけて出てきた彼らであったが、その顔はさらなる恐怖で上塗りされ固まってしまった。

彼らの視線の先にいるのは―――アリーヤ。

 

アリーヤから滲み出る形容しがたい空気にのまれ、ルヴィリアスと同じように彼らの心に恐怖が満ち満ちる。

先程までなにかから逃げていたことも忘れてしまったかのように、彼らはその場に恐怖で縫い付けられた。

 

そして数瞬の後。彼らの背後の木々が大きく吹き飛ばされ何かが現れる。

捻れた角、獰猛の実体化ともいえそうな凶悪な顔。そして逞しい巨躯とその両手に持った斧のようなもの。

 

その存在が現れた瞬間、アリーヤの空気に飲まれていた彼らがハッとしたような表情で逃走を再開した。

 

ルヴィリアスはその巨躯の姿を見て、思わず目を見開く。

そして叫んだ。

 

「牛頭の悪魔ッ!??何で!?深部でしか確認されていないはずなのに!」

 

クラン・ヘイティアの彼らが何から逃げていた理解する。

上級の探索者が4人パーティを組んでやっとっていう存在を相手に、CやDランク帯であろう彼らに勝ち目なぞあろうはずもない。

 

そしてルヴィリアスもそれは同じである。

今の彼女では、()()()()()()()

故に彼女はアリーヤへと叫ぶ。逃げるわよ!!と。

 

だが彼女の叫びが口から漏れる事は無かった。

 

アリーヤは目にも留まらぬ速さで牛頭へと駆け出していく。

こちらに逃げてきていたヘイティアの面々と一瞬ですれ違い、右手に握ったルドウィークの聖剣を突き出す。

 

「何やってんのよあのバカッ!?」

 

すでに彼に感じた恐怖心は薄れていた。

それは彼の意識が明確に牛頭へと移ったが故であろうか。

 

それよりもルヴィリアスの感情をしめていたのは焦り。

いくら実力が未知数で、見たこともない業を操るとは言っても、探索者なりたての新人が()()で勝てるような相手じゃない!!

 

だがしかし。彼女のその考えはすぐに覆されることとなる。

 

迫りくる牛頭に対して、真正面から突き出されたアリーヤの攻撃。

普通に考えれば自殺行為だ。大質量で迫る相手に対し、正面からの一撃など。

 

()()なら。

 

「――ッ!!」

 

声にならぬ叫びを上げながら繰り出されたアリーヤの一撃。

それは通常の武具など受け付けない硬質の牛頭の体表を、()()()()()()貫いた。

 

『グオオオオオオオオッ!?』

 

牛頭の絶叫がこだまする。

あまりの声量に、ルヴィリアスも、そして一先ず彼女の元まで逃げてきたヘイティアの面々も耳を塞いだ。

 

真正面から牛頭の腹部に剣を突き刺したアリーヤは、そのまま剣から手を放し牛頭の股下をスライディングのようにすり抜ける。

 

一瞬で背後をとった彼であったが、今の一撃で剣を突き刺してしまったが故に

"彼の右腕には武器がない!"

 

「「不味いッ?!」」

 

ヘイティアの青年とルヴィリアスの声がハモる。

二人共中級の探索者であるが為に、武器を手放してしまうというのがどれほど危険なことか理解していた。

 

牛頭は激痛に鼻息を荒くしながら、ゆっくりと振り返る。

対してアリーヤはというと、マスクの下で獰猛な笑みを浮かべていた。

 

ああ、やはり獣がいるではないか。

であれば狩り尽くさねばならん。人に先を示した上位者(狂人)として。

何より――狩人として。

 

牛頭がその巨大な斧を振り上げる。

対してアリーヤは、見上げるような形となって、左手に持つ獣狩の短銃の照準を牛頭の頭に合わせた。

 

牛頭がその巨大な斧を振り下ろす。

数瞬後には、アリーヤはただの肉塊と成り果てるだろう。

 

ルヴィリアスはそう直感し、思わず叫んだ。

 

「避けてッ!!!!!」

 

バーンッ!と。彼女の叫びに応えるようにして、辺りに聞いたこともない破裂音が鳴り響く。

 

思わず彼女たち(ルヴィリアスとヘイティアの面々)は耳を塞いだ。

 

そして牛頭とアリーヤの方に視線を戻した時、彼女達は驚愕する事になる。

 

「ッ!!」

 

尋常ならざる膂力と巨躯を有する牛頭が、()()()()()()()()()()()()()()

 

「Good night,human」

 

大きく体勢を崩した牛頭に対して、狩人(アリーヤ)は右手を手刀のようにし、勢いよくその腕ごと牛頭の腹部へと突き刺した。

尋常ではない硬度を誇る牛頭の体表。それを冗談のように引き裂き彼の腕が牛頭の体内へと侵入する。

 

そのまま臓物をグチャグチャにかき乱し、ドクドクと脈動するモノを勢いよく引きずり出す。

 

牛頭から大量の鮮血が噴き出し、アリーヤの身体を返り血で真っ赤に染め上げる。

そして巨躯の身体はドシンッ!という音と共にそのまま後ろへと倒れた。

 

後に立つは巨大な心臓を右手に握りしめたままの血塗れの狩人(アリーヤ)のみ。

 

「こんなものか」

 

何の感情も感じられない、そんなつぶやきが聞こえた後、彼は右手の心臓を興味もないように投げ捨てた。

そして牛頭に突き刺したままであった剣を引き抜き、ルヴィリアスたちに顔を向ける。

 

「大丈夫だったか?」

 

何事も無かったかのような声色で、彼はそう問いかけてきた。

 

ルヴィリアス、そしてヘイティアの面々はその光景にただ唖然とするしか無かった。




予想以上に長くなってしまった。
牛頭のデーモンくん友情出演です。
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