神様さえ、知らない場所へ。   作:Artificial Line

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愛しい我が後輩たちを、私は全力で支えよう。


【Act-1-6】感情の解氷と出会い

「てあッ!」

 

ルヴィリアスが握るレイピアでモンスターを一閃する。

その一撃で首を弾き飛ばされたモンスターは崩れ落ち、周囲には濃厚な血の匂いが立ち込めた。

 

「おお~!ルヴィリアス!また腕を上げたんじゃないかい?」

 

メイが嬉しそうに声を上げる。

ルヴィリアス、メイ、アリーヤの三名は現在世界の果て浅部を歩いていた。

 

理由は先日の会話(前話)の後、ルヴィリアスが寝た後にメイが言った言葉だ。

 

『アリーヤ。君のここ一ヶ月の功績は確かに素晴らしい。でもね、私達はクランだ。家族になったんだよ。君の今までの戦いは夢で確かに知っている。でもね、だからといってルヴィリアスを連れずにソロで探索ばっかりしていたんじゃクランの意味もないだろう?いつもとは言わない、でも彼女とパーティを組んで探索に赴くこともして欲しいんだ。だって家族なんだからさ!』

 

アリーヤはそれを聞いて少しハッとした。

 

『ああ。そうだな、すまなかった。思慮が足りていなかったな。ここでは私は"()()"では無かったな』

 

彼はあの悪夢の中でパーティを組むことは多々あった。だがそれは鐘の音に共鳴した別世界の狩人との協同だ。

パーティでの連携と言うよりもそれぞれ超人達が各々に敵を屠っていただけといった方が適切かもしれない。

彼は悪夢での癖が抜けずについソロで人跡未踏の地まで攻略してしまったが、それでは前の世界となんら変わりないではないか。

 

折角"()()"にしてもらったのだから、それなりの動き方もあっただろう。

 

アリーヤは自らの思慮不足を理解し、こうして彼女らと探索に赴いている。

上位者へとたどり着き、人類へ夜明けをもたらした彼は、だが確かに人らしさを手に入れ(取り戻し)つつあったのだ。

 

であれば後輩(人類)達を支えよう。彼はそう思い、まずは一番身近であり"()()"であるルヴィリアスへ自らの業を伝える事を決めたのだった。

業といっても狩人の戦い方を教えるわけではない。

もっと基礎的なこと。戦場での心構えや考え方だ。

 

ルヴィリアスの戦い方をここ数日見てきた彼は、正直な話彼女の強さに驚いていた。

世界の果ての中部程度に蔓延る有象無象であれ、モンスターを相手に臆せず向かっていく姿はまさしく"()()"という通称に恥じぬもの。

だが経験の浅さ故か、その戦い方にはまだ無駄が多い。

初めこそ反発のしていたルヴィリアスだったが、アリーヤの的確な指摘と強さにその態度を徐々に軟化させていき

一週間でその関係は師弟とも言えるものまで発展している。

人一倍の向上心を持ち、聡明な彼女にとってアリーヤの教えは間違いなく有益なものだった。

 

「ありがとうございますメイ様。しかしメイ様までわざわざ世界の果てへおいでなさらくとも良いのですよ?危険な土地ですし…」

 

「アリーヤくんからルヴィリアスの成長を聞いてね!思わず見てみたくなったのさ!うん!確かに素晴らしい成長だ!」

 

それに対してルヴィリアスは顔を赤くし、アリーヤを見やる。

だがアリーヤはそのルヴィリアスの態度を微笑ましいモノを見るような目で見ていた。

 

「そんな目で見るな。ルヴィリアス、今の太刀筋は素晴らしかった。私の教えた事をよく吸収しているな。流石だ」

 

アリーヤの言葉を受けて、ルヴィリアスは更に顔を赤くし『ナァッ!?』と声を上げて固まる。

それを何のことも無いような優しい視線で"()()"は見ていた。

 

しばらくの後

だけど…。メイはそう言葉を呟く。

 

「私の強さを忘れたのかいルヴィリアス?幼少の君へ魔術を教えたのは誰だったかな?」

 

悪戯心を覗かせたような表情でメイはそういった。

対してルヴィリアスは少し呆れたような表情を浮かべ

 

「メイ様の強さは十分に理解しています。でもそれとこれは別の話です」

 

「まあまあ~!固いこと言うなよルヴィリアス!…っと、また別のモンスターが現れたようだね」

 

ゾクリとするような表情でメイは視線をずらす。

その先からは絶叫と木々を薙ぎ倒す音が聞こえてきていた。

既にアリーヤは目を細めて音の方向を睨みつけている。

手にはノコギリ鉈と獣狩りの短銃が握られ、即座に戦闘に対応できる状態だった。

 

「少年の声が聞こえる。恐らくはモンスターに襲われているのだろう」

 

「少年の声…?"()()()()"!メイ様!」

 

「そうだね。ルヴィリアス、君はどうしたい?」

 

試すような視線でメイはそう問いかける。

 

「もちろん!助けに行きましょう!」

 

「そうこなくっちゃ!アリーヤ!準備はいいかい?」

 

「とうに出来ているさ、急ごう」

 

三人は音の方向へと駆け出す。

新たな出会いへと向けて。

 

 

 

 

「クゥッ!?」

 

"()()()()()()"が振るった鉈を寸前の所で得物の剣で受けとめる。

しかし尋常ならざる山羊頭の膂力に耐えきれる筈もなく、銀髪の少年の小柄な身体は大きく吹き飛ばされた。

 

「ガハッ!?」

 

大木に叩きつけられ、少年の口からは少量の血が溢れだす。

だがすぐさま横へローリングし、山羊頭の追撃をなんとか避けた。

 

山羊頭の巨大な鉈が先程まで居た巨木を難なく切り裂き、地面を抉っているのが少年の視界には写った。

 

あれの直撃を受ければ間違いなく即死だ。

 

すぐさま立ち上がり得物のショートソードを構え直す。

少年の軽鎧の肩部にはEランク探索者の証明である緑色のエンブレムが煌めいていた。

傍目からみても少年は駆け出しの探索者であろうことは明白だ。

 

「なんでこんな浅部に山羊頭が!?」

 

少年は管理局のアドバイザーの言葉を思い出す。

 

『世界の果てはその深部に行くに連れて生息するモンスターは強大さを増していきます。浅部でも十分危険な土地ですが、中部からはまさに全くの別世界です。"()()()()()()"や"()()()()()()()()()"と呼ばれる強力なモンスターが多数出現することが確認されています。なので私が許可を出すまでは決して中部へは赴かないこと?よろしいですね?それよりも早く入れてもらえるクランを探すべきです。ソロでなんとかなるほど甘い場所ではないのですよあの世界は』

 

説教部分まで思い出してしまったが、それでも確かに山羊頭の出現は中部からだと言っていたはずだ。

ではいま相対している敵は山羊頭では無いのか?そんなことは無いはずだ。アドバイザーから聞かされていた特徴としっかり合致している。

何かしらの要因で中部から浅部へ着てしまったと考えるのが妥当だろう。

 

だがそんな考えに至ったというからなんだというのだ。問題はこの状況をどう切り抜けるかだと言うのに。

少年は自身の思考を頭の隅に追いやり眼前の山羊頭を見据える。

 

いまの自身の力(Eランク)では山羊頭に対して傷を負わせることも難しいということを少年は理解していた。

そも山羊頭はCランク帯の探索者が数名集まってようやく互角に戦える相手なのだ。

 

では逃げるか?恐らくそれが最適解だが状況はそれを許してくれなかった。

そも人の身の少年よりも山羊頭のほうが何倍も基礎能力は上である。

それはいくら小柄で俊敏性に長けている少年でも脚力では叶わない事を意味している。

 

脇目も振らず逃げたとしても追いつかれて殺されるのがオチだ。

 

であれば取れる行動は一つ。

戦いながら少しづつ引き、他の探索者が気づいてくれるのを祈るだけである。

端的にいって手詰まりであった。

 

「それでも…やるしか無い!」

 

少年は剣を構えて山羊頭へと駆け出す。

一度攻め、相手の反撃の隙に一気に後退する。そのために。

山羊頭の懐へ潜り込み得物の剣を一閃する。

 

「グオオオオオオッ!!」

 

だがその判断は間違いであった。

 

それをバックステップで回避した山羊頭は即座に鉈を少年へと振るう。

一段目は身をかがめなんとか回避した少年であったが、二段目に飛んできた鉈の一撃を回避する事はできず

大きく吹き飛ばされる。

幸いにして寸前の所で剣を滑り込ませ直撃は回避したものの、それでも尋常ならざる一撃の勢いが少年の身体を襲った。

 

肋骨が悲鳴を上げ、口からは血が溢れ出し、ガードに用いた剣は粉々に砕け散る。

吹き飛ばされ落下した衝撃で左腕はあらぬ方向へと曲がり、足の骨にもヒビが入った。

 

眩む視界で何かを幻視する。

最愛の姉の後ろ姿。いつも強くて自分を守ってくれた"()()()"。

姉に憧れて、会うためにこの街へと来た少年が見た走馬灯。

 

薄れゆく視界の向こう側では、山羊頭がゆっくりとこちらへ歩み寄っているのが見えた。

 

『いやだッ!しにたくない!死にたくない!”()()()()()()!!”』

 

内心でそう叫ぶ。

言葉を吐くことももはや叶わず、ならばせめてと少年は眩む視界で山羊頭を睨み続けた。

 

「ハアァ―――ッ!!」

 

美しい女性の声が耳に聞こえた気がした。

同時に蒼い閃光と美しい金髪が彼の視界へと映り込む。

 

甲冑を身に纏った少女の後ろ姿、それに黒革のコートに身を包んだ大柄な後ろ姿。

次いで自分の身体を包む優しい手と薄緑の髪。

 

その光景を最後に、少年の意識は闇に落ちていった。

 

 

 

「山羊頭!?なんでこんな浅部にいるのよ!!」

 

「事情はともかく、いるならば討伐せねばならんだろう。メイ、少年の様子は?」

 

「意識を失っちゃったみたいだけど生きてるよ!治癒の魔術を施す!」

 

「任せた。さてルヴィリアス、ここ一週間で教えた成果を見せてもらうぞ」

 

「言われなくてもッ!!」

 

ルヴィリアスの言葉を聞きゆっくりと頷いた狩人(アリーヤ)は一気に駆け出す。

右手にはノコギリ鉈を、左手には獣狩りの短銃を携えて。

 

ここ一週間で学んだのはなにもルヴィリアスだけではなかった。

狩人の戦いは基本独りでの狩り。

いままで独りでの狩りを続けてきた彼にとってもパーティでの連携を考えるいい機会だったのだ。

 

一瞬で肉薄したアリーヤに山羊頭はその巨大な鉈で迎撃しようとする。

だがその瞬間。山羊頭に蒼色の閃光が直撃した。

 

ルヴィリアスの魔術による一撃だ。

アリーヤがルヴィリアスにとって一番不足だと感じ取ったのは魔術詠唱と剣術の使い分け。

 

ならば"パーティ"として彼女の詠唱時間を自らが稼げば良い。

もちろんいずれ1人で立ち回れるようにならねばいけないが、お互いを補完し合うのがパーティだろう。

 

無論"狩人"にとってそのような協同など本来は不要である。

 

なぜなら狩人の戦い方は個人で完結しているからだ。

同じかそれ以上の実力を持つ他の狩人ならいざしらず、ルヴィリアスの実力では"狩り"の足枷にしかならない。

 

強大な獲物を独りで狩り続けてきた"彼ら"にとって味方なぞいないも同じだったのだから。

別世界の狩人との協力でもそれは同じであった。

各々が同じ世界で狩りをしている。ただそれだけだった。

 

「グオオオオオオオ!?」

 

魔術の直撃を受けた山羊頭の絶叫が轟く。

 

アリーヤはそれでもその足枷を"()()"とした。

それは"()()"を得た上位者(狩人)獲得(取り戻)した確かな人らしさだった。

 

何の因果か、人々が普通に生活をする美しき世界()を見ているのだ。

であれば()の成長を支えず何が上位者であろうか。

 

「流石だルヴィリアス」

 

彼は賛辞を口にしながらノコギリ鉈を振り抜く。

山羊頭の体表に接触する直前に変形させられたその刃は、いとも容易くその肉を切り裂いた。

 

「グアアアアアアアアアアア!?」

 

獣の絶叫がこだまする。

この激痛を与えた眼前の存在を許すまいと、山羊頭はあらん限りの力で左手に構えた鉈を振りかぶった。

 

だが、視界に入ってきたのは"()"と、その先に広がる闇。

 

「good-bye,"H()u()m()a()n()"」

 

直後に"()"から炸裂する爆音と光。

銃口から放たれた水銀弾は、いままさに鉈を振り切らんとしていた山羊頭の頭部へ命中し、その体勢を大きく仰け反らせる。

 

マスクの下で獰猛な笑みが浮かび上げ、"()()"はその右手を山羊頭へと突き刺した。

内蔵をめちゃくちゃにし、臓物を引き抜く。

 

後に残るはビクビクと痙攣する山羊頭の死骸と、血塗れの狩人のみだった。

 

「いつ見てもえげつない技ねぇそれ…。絶対痛いわ本当に…」

 

ここ一週間で最早見慣れた狩人の姿を、ルヴィリアスは少し嫌そうな表情を浮かべて眺めていた。

 

「いいものだぞこれ(内蔵攻撃)は。貴公もいずれやってみるといい」

 

「ぜっっっっっっっっっっっったいに、いや!!」

 

彼らの掛け合いを、メイは苦笑いで見ていた。

既に少年への治癒魔法による処置を終え、膝枕で寝かせている。

 

「と、とにかく二人ともお疲れ様!一度管理局に報告をして本拠地(ホーム)に戻ろう!治療は施したけど、少年の怪我もあるしね!」

 

「わかりましたメイ様。その子の身元などはわかりますか?」

 

「首に探索者証明証がかけられていたよ。名前はルイス・カーチスだね。どうやら無所属みたいだよ」

 

アリーヤが少年改めルイスを抱え、3人+1人はホームへと足を進める。

これがルイス・カーチスとスマイリーの面々の出会いであった。




犬のデーモンのお付き、山羊頭くん友情出演
キャラを出揃えるのに苦労してストーリーが進まない。

まだまだ出したいキャラはたくさんいるんだよなぁ…(白目)
とりあえずぼちぼちお話が動き始めます。

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