とある男性と結月ゆかりの穏やかな春の出来事。縁側で桜を眺める二人。ゆかりはふいに、隣にいる彼に教えてもらった桜の話を始める。その時彼は…
登場する男性とゆかりさんは結婚または同居している、という設定です。閲覧する際はご注意ください。
また、ボイロ要素が皆無となっております。
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※「pixiv」様にも投稿しています。
春。
庭の桜は五分咲き、といったところか。所々に見える蕾は、自らの春を待つように風に吹かれている。私はそれを、縁側に座り眺めていた。
「隣、いいですか。」
ああ。何度も聞いた伴侶の声。それを聞いた彼女は私の横に持ってきた盆を置き、その横に座った。
「お団子とお茶です。お茶は熱いですから、気をつけてくださいね。」
ありがとう。私は茶の入った湯呑みに口をつける。舌先に触れてしまい体が少し驚いてしまう。
「ふふ、格好つけないでください。あなたが猫舌なことは知っているんですから。」
茶という言葉に反応した喉が水分を求めている。仕方なく私は串に刺さった団子に手を付ける。
「それ、お隣から頂いたんです。なんでも花見用のお団子を作りすぎたらしくて、今朝家まで来て持ってきてくださって。」
そうか、今度お礼に何か持っていこうか。団子を一つ食べ、彼女に告げる。
「ええ、じゃあ、次の買い物の時に買ってきますね。あなたはこういうの、苦手でしょう?」
ああ、助かるよ。もう一つ団子を口に入れ、一つ残った団子を皿に置いて湯呑みの茶をすする。
「桜、綺麗ですね。」
ああ。
「この桜、五分咲きですね。一つのまとまりの半分だけ咲いてます。」
よく知ってるじゃないか。
「前に、教えてくれたじゃないですか。」
そういえばそうだったかな。
「あなたが教えてくれたことは全部覚えています。」
じゃあ、桜の花言葉を知っているかい。
「ええ、もちろ……っんです、けど…」
どうしたんだい。
「……もしかしなくても、私をからかっていますよね…!」
そんなことは無い、私がたまたま教えたのを覚えていたのがこれだったんだ。
「忘れるはずないでしょう!だって、これは…」
彼女の頬がほんのりと赤く染まっていく。あの時を思い出す。
「これは、あなたの……んもう、言わせないでくださいよ…!」
すまない、そういえばこれは、君に愛を伝えるために、私が使っていたかもしれないね。
「…!や、やっぱり覚えてるじゃないですか!」
忘れるわけないだろう、私の初めての告白なんだから。
「…はい。」
そうつぶやくと彼女は俯いてしまった。少し、からかい過ぎただろうか。
「…さい。」
ん、何か言ったかい。
「…教えてください、桜の花言葉…。教えてくれないなら私―――」
なにか言おうとしていた彼女の口を私の口で塞ぐ。彼女の顎を持ち上げ、少し身体を寄せて、盆の湯呑みを倒さないように。
「んーっ、んーっ!」
彼女が私の肩を叩く。苦しかっただろうか。重なった口を離す。
「…あなたって人は…!もう、知りませんからね!」
彼女は立ち上がり、台所の方へ向かう。すまない、ふざけすぎたよ。
「そうですね、それで私は怒っています。」
これは参った。どうすれば、許してくれるかな。
「まず、そこにあるものを食べて、こっちに持ってきてください。そのあと、外出するので、服を着替えてください。そうしたら…」
今まで背を向けていた彼女がくるり、とこちらを向く。紫色の髪がやわらかく揺れ、先ほどの驚いた顔や脹れた顔ではなく、花のような綺麗な笑顔が見えた。
「お花見に行きましょう、あの場所に。お料理は作ってあります。そこで教えてもらいますからね、桜の花言葉。」
花のような笑顔ではなく、小悪魔のような笑顔だったようだ。今度は私がからかわれる番らしい。
少し、強い風が吹く。桜の花弁が2枚、盆の上にふわりと乗った。残った団子を食べ、風で冷えた茶を飲みほし台所へ向かう。今日一日は、彼女の言いなりだろう。
今日一日は、この桜を八分咲きにしてみせよう。
いや、これからも、ずっと―――
桜の花はね、八分咲きで満開と言われているんだ。
そうだ、桜の花言葉を知っているかい。
桜の花言葉は『純潔』、『優れた美人』。君のための言葉のようだ。
どうだろう、私は君という花を枯らせはしない。だから、君は。
その八分咲きの笑顔を、私にずっと見せてはくれないか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
もうそろそろ4月になりますね。なので今回は「桜」をテーマにゆかりさんと、人生を共にしている男性のお話を書いてみました。
僕はゆかりさんと共に桜を眺めていたいですね。
本当は連載を始めた小説を書かなければならないのですが、どうしてもこの短編を書きたくなってしまいました。連載小説はR-18小説ですが、もしよかったら読んでみてください。この小説投稿時点では、1話しかできていませんが。