2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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107話 惜・憤

 「随分人が少ないな」

 「そりゃ皆OSにハマってるからね。まぁその内戻ってくるでしょ」

 「それはそうだろうけど…なんつーかな…」

 

 今シュユとリズが居るのはレプラコーン領の採掘場だ。とは言ってもこの土地を購入したのはシュユであり、既にここら一帯は彼の所有地という事になるのだが。

 いつもならもっと多くの人で賑わうこの採掘場も今では閑散としている。目当ての鉱石が埋まるポイントに誰も居ないのは良い事だが、なんとなく虚しいのも事実。ここは場所争いからの乱戦が風物詩になっていた事もあり、すんなり目当ての物が掘れる事が虚しいのだ。

 

 「何と言うか虚しいものだな、シュユ」

 「サクヤか。珍しいな、シルフのトップがこんな所まで」

 「どこぞの灰色シルフが色々引っ掻き回してくれるからな、ソイツが私達とは袂を違うものとしている事を説明しなければならんのだよ」

 「随分と迷惑なヤツだな。顔が見てみたい」

 「ハハハ、こっちを見てみろ」

 「言われてるぞ、リズ。見てやれよ」

 「いや、アンタにでしょ。あたしレプラコーンだし」

 「マジレスは止めてくれよ…」

 「運営が飛行を無限にしてくれたから、ここに寄ったんだ。まぁ…ここもこんなものだとは思っていたが」

 「こんなもの?」

 「そうだ。全盛ならばこんな少なくはなかったろうに」

 「いずれ戻ってくるわよ。…どうせ、ね」

 「そう、だな。私は帰るとしよう、仕事があるのでな」

 「あぁ、じゃあな」

 

 掘った鉱石を鑑定していたリズは恐らくハズレだったであろう石を投げ捨て、言い聞かせる様に言った。

 

 「そう…あたし達は()()()()()なんだから、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「里香、アンタおかしいよ」

 

 以前から親交の有った友達に、そう言われた。学年的には2年離れてしまったが、それでも会って遊ぶ程度の繋がりはまだ有った。

 だがALOをプレイしていると知られた時、言われたのはその言葉だ。それもそうだ、里香の時間を奪い命の危機に晒したのは紛れも無いSAO、つまりVRMMORPGには変わりない。それでも同じジャンルの、しかも前線に出られるビルドにしているなど、常人からすれば異常そのものだろう。

 確かに始めた理由は明日奈から誘われた事も有る。だが、それだけでは無いのも事実。里香は半ば依存していた。里香だけではない。和人も明日奈も、里香も木綿季も詩乃も悠も、本名ではなく新たな自分として生きていけるこの仮想世界に住んでしまった。だから抜け出せない。SAO生還者がVRゲームに帰ってきたのは馬鹿だからとか、そんな理由ではない。単純に怖いのだ。現実と、そして仮想世界で作り上げたもう1人の自分(アバター)が崩れてしまう事が。

 それを里香は理解している。していても抜け出せないのだ。情けないと思うし愚かだとも思う。それでも未だに縋る自分を誤魔化し、そして笑顔で友達も誤魔化すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「リズ、大丈夫か?」

 「ったたた…ボーっとしてたわ」

 「仕方無いな…ホラ」

 

 軽い治癒魔法を小声で詠唱してリズに掛ける。これも運営が変わった事の恩恵で、本当に初歩中の初歩の魔法なら詠唱無しでも使える様になったのだ。因みに魔法スキルの習熟度が上がれば少しずつ他の魔法の詠唱も短くなっていくらしい。シュユはそれなりに魔法を使う為、割りかし詠唱をスキップ出来たりする。対するキリトは魔法スキルなからっきしなのだが。

 

 「なんか嫌な事でも有ったのか?」

 「変に鋭いわね。…隠しても仕方無いから、言うけどね」

 

 その話を聴いたシュユは目を瞑って俯く。その表情は目深に被った帽子と鼻まで覆い隠している襟のせいでよく判らない。リズは何であんなに襟を大きく造ったのかと自分とシュユに憤慨する。要望も要望だが作る方も作る方だ。

 

 「…ね、アンタは何で戻ってきたの?」

 「何で?」

 「昔は殺人鬼だの犯罪者だの、好き放題言われて街中では手錠を着けなきゃ歩けないっていう条件で1番危ない最前線に送られてさ。それで生きて帰ってきても犠牲者が出たらアンタのせいって罵られてたじゃん。そこはユウキとかシノンが黙らせてたみたいだけど、少なくとも幸せでは無かった。そうじゃないの?」

 「…まぁ、そうだな。人を殺したのも事実だし、オレはそれが正しいと思って戦ってた。その結果、オレは殺し屋だの狂人だの、好き勝手言われてアイツら…いや、皆に迷惑掛けたな。戻ってきた理由か…やっぱり、あの2人に笑顔でいて欲しいからなのかもな」

 「え?」

 「ほら、オレ達は学校2年遅れだろ?オレもだけど何だかんだ2人も人見知りだからな。元の学校の今の学年の人達とはあんまり仲良くなれないと思う。でも、お前らなら大丈夫だから。命を預けたお前らとなら笑えるし、そんなお前らとの関わりを断つのは嫌だった。オレはユウキとシノンに笑って貰えるならどんな事でもやる。だから、その為に戻ってきたんだ」

 「そう…」

 

 リズは薄ら寒さを覚えた。ユウキとシノンへの想いと覚悟を語るシュユの目に陰りは無く、心の底から2人の為を想ってこの仮想世界に戻ってきた事が解る。()()()()()リズはシュユを畏れた。今言った行動原理の中にシュユが存在しない。幾ら好きとは言え、そこまで他人の事だけを想って行動できるものだろうか。

 もし、2人がシュユを忘れてしまった時どうするのか。リズはふと湧いた疑問を口にしようとしたが、どこか恐ろしい。リズはその疑問を口にする事無く、改めて武器の話題に持っていくのだった。

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