2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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10話 屋内戦(殺意のオンパレード)

 3日後、フロアボスの居る場所に向かう。シュユ達3人はマップを見ただけで地形は変わっていないと見抜き、先に行く事も出来たがキリトとアスナもパーティメンバーである都合上、ディアベル達とペースを合わせていた。

 と言うのも、アスナのレベルがボスと戦うには不安が残るレベルだったからだ。雑魚との戦闘ならばレベルが安全マージンギリギリでも回復と回避重視の立ち回りでゴリ押せるのだが、ボスはそうもいかない。第1層にポップするネームドのどれよりも強く、そして体力も多い。体力が多いという事は自然と戦闘時間も長くなるので集中力が切れ、被弾してしまい、その動揺が動きと思考を固め、立て続けに被弾して死に至る。

 

 「――なんて、見た事無いけどな」

 「どうしたんですか、シュユさん。で、1つ聴きたいんですけど」

 「いや、何でも無い。で、聴きたい事って?」

 「いえ、別に大した事じゃないんですけど、なんでユウキを肩車してるんですか?」

 

 そう、アスナのレベル云々を考えている間――というより、このフロアボス攻略に出発した時から彼はユウキを肩車していたのだ。これはふざけているのではなく、実際は考えがあっての行動なのだが、やはり周りから見れば奇怪な行動にしか見えないのだろう。

 重ねて言うが、この行軍はアスナのレベリングを兼ねている。そしてアスナは細剣(レイピア)を使うと決めており、キャラ構成(ビルド)も絞られ、STRよりAGIとDEXを重視したステータスになる。(ただ、アスナはゲーム初心者であるが故にアルファベット3文字で表されるステータスの意味が分からず、放置されていたのには驚いたが)という事で迷う事も無いので効率を求め、肩車をしているのだ。

 このゲームのMOBは視界に入るか何かしらの騒音の元に居るプレイヤーを攻撃対象に定め、攻撃する。その視界の範囲や聴覚の範囲は系統と種族により違うが、人型のMOBは視界が広く、聴力も平均的だ。動物系は種族にバラつきこそあるが、聴力が優れている。音は攻略メンバーの足音で大丈夫だが、多くの視界に入るには身長を高くした方が良い。そして肩車された人の視界も通る為、アスナとキリトに場所を教えられる。

 この方法をシュユが考案した際、シノンとユウキはどっちが肩車されるかで揉めたのだが、2人の会議の結果ユウキが乗る事になった。因みにその顛末をシュユは知らない。

 

 「――っていう訳だ」

 「アスナ、キリト。4時方向から敵2体、亡者兵だよ」

 「了解、まずは俺が...!」

 

 キリトは駆け出し、長剣を振りかぶる亡者兵の身体にソードスキルの一撃を叩き込む。使ったのは【ホリゾンタル】、横一閃の一撃ががら空きの亡者兵の胴を斬り裂き、亡者兵の体力バー全てを消し飛ばす。が、ソードスキルを使った後に僅かにある硬直時間により動けなくなる。それを知っていたキリトはアスナに向けて言う。

 

 「交代(スイッチ)!」

 「え...す、スイッチ...?」

 「嘘だろ!?」

 「....初心者って、そこまでかよ」

 

 シュユはアイテムストレージから【スローイングナイフ】を取り出すと、ソードスキル【シングルシュート】を使う。通常の投擲でもそれなりの威力を持つナイフは亡者兵の右手に突き刺さり、亡者兵は仰け反る。

 

 「アスナ、トドメを」

 「あっ、うん!」

 

 がら空きの頭を細剣でぶち抜く、クリティカル判定の一撃は亡者兵を簡単にポリゴン片に変えた。レベルが上がったのか、ユウキのアドバイス通りにAGIとDEXにポイントを振り分けている。

 

 「アスナ、スイッチっていうのは交代の合図で、前衛と後衛を入れ替える時に言うんだ」

 「なんでそんな事を言うの?」

 「えっと、それは...う~ん、何と言うか...」

 「前衛がこれ以上攻撃できない、とか隙を埋めて欲しい時が有るからだ。前衛で突けない隙も後衛なら突ける時もあるし、何より回復の隙を埋められるのが大きいな」

 「ポーションは飲み切らないと無駄になるからね。薬草系は直ぐに効果は出ないし、やっぱりポーションの方が便利なんだよ」

 「フィールドなら薬草も悪くはないのだけど、ボス戦になれば即効性が大丈夫になるし、何より一撃が命取りになるかも知れないしね。アスナはそれなりにVITにステを振ってるからまだ良いけど、そこの目付き悪いのは一切VITに振ってないからね」

 「体力の多さに甘えるのは性に合わないんだよ。...っと、敵か。ナイフで動きを止めるから、トドメを頼むよ、アスナ」

 「は、はい!」

 「敬語は要らないんだけど...」

 

 不意打ちのナイフにより大きくよろけた亡者兵の胸に、アスナの細剣が突き刺さる。だが、まだ削り切れない。剣を引き戻し、身体の中心に剣を構えて突きを放つ。派手なライトエフェクトが走り、亡者兵は破砕音を響かせて砕け散る。細剣のソードスキル【リニアー】だ。

 

 「アスナ、ソードスキルを使う時はしっかり自分で動かないとダメだよ。それじゃ本来の速度が出せないから」

 「でも、勝手に動くし...」

 「そのアシストに加えて、しっかり自分でも動くの。そうすると格段に技が早くなるし、威力も大きくなるよ」

 「そうなのね...分かった、やってみるわ」

 「その前にボス戦だ。着いたぞ、【迷宮区】に」

 

 聳え立つのは鉄の塔。この最奥にフロアボスが居り、倒せば次の階層へと進むことが出来る。既にマッピングは終わっているので、テスターではない筈のキバオウが先頭を務めている。一切警戒せず、ズンズンと進むが、1人の男の叫び声で振り返らざるを得なくなる。

 

 「うわぁぁぁぁ!?やめろ、死ぬ!死んじまう!!嫌だ、俺はまだ死にたく――」

 

 男の声が途切れた代わりに、破砕音が聴こえた。ゲームオーバー、死んだのだ。哀れな彼が引っ掛かった罠は単純な角待ち、死角になる場所に隠れていた亡者兵が彼の腕を掴み、3体の亡者兵が佇む場所に引きずり込んだのである。攻略に参加したという事はそれなりのレベルだっただろう。しかし、3体に...たかが3体にリンチにされ、死んだのだ。ボス攻略にも参加せず、フィールドにもポップする雑魚に。

 

 「ヒッ――」

 「狼狽えちゃ駄目だ!彼の遺志を引き継いで、俺達がボスを倒すんだ、そうだろ?」

 「....そ、そうだ...すいません、ディアベルさん」

 「いや、仕方無いさ。人の死を見聞きして動揺しない方がおかしい」

 (オレへの嫌味か?)

 

 と、一瞬考えるが、裏表の無いリーダーを()()()()()ディアベルが嫌味を言える訳が無いと気付くと、ユウキの足を優しく2回叩く。意味は解っていたのか、不服そうな表情を一瞬浮かべ、それでも仕方無いとは理解している彼女はシュユの肩から降りる。

 巨大な扉、つまりフロアボスの居る場所へと辿り着いた。ディアベルが演説を始めるが、シュユ達には興味無い内容で、キリトはアスナにまだゲーム用語の解説をしている為、話を聴いていない。

 

 「――じゃあ、行くぞ!」

 

 扉を開け、中に突入する。現れたのは巨大なコボルド。そしてその取り巻きが1()0()()()()()()()()()。体力バーが3本現れ、バーの上には王冠の様に名前を戴く。

 

 【Gill Fang The Cobalt Load(コボルドの王)

 

 取り巻きの【ルイン・コボルド・センチネル】が全員走り始める。10を超えるその行軍は正に中規模なパーティだが、ディアベルの号令のお陰で動揺するプレイヤーは居らず、それぞれセンチネルと戦闘を始めた。

 その奥ではボスが斧とバックラーを構え、悠々と歩いてくる。どこぞの英雄王の様に堂々と歩いてくるその様は確かに王の風格を纏っており、ディアベルが次の号令を出さざるを得ない程の威圧を放っていた。

 

 「タンク隊、ボスの攻撃を止めるんだ!アタッカー隊は取り巻きは程々に倒しつつ、ボスを攻撃!ボスを倒せば取り巻きは多分消える、だからあまり取り巻きには構うな!」

 

 その言葉の通りに、戦うプレイヤー達はボスに攻撃を始める。後ろに来るセンチネルに時たま攻撃を加えるが、基本はボスにターゲットを絞っている。

 

 「シュユ...」

 「あぁ、不味いな。βテストの時と変わってる...」

 

 シノンの懸念は簡単な話、βテストの時と変わっている事だ。βテスト時、センチネルの湧く数は3体固定で、今の様に10体も湧かなかった上にアグレッシブに動くとは言えない取り巻きだった。しかし今は走り回って攪乱、攻撃範囲に入ったプレイヤーに攻撃を加える程になっている。

 流石にダメージが足りない。そう思うとシュユはハンドサインで突撃を指示し、ボスへの攻撃を開始する。

 

 「アンタら、勝手な真似すんなや!」

 「ディアベルは兎に角後ろで偉そうに野次飛ばすなら戦え!」

 

 センチネルは身長が低い。という事でAGIが高いユウキとシュユはセンチネルの頭上を飛び越え、シノンは槍を棒高跳びの様に使ってボスへの最短距離を突っ切る。脚を斬るが、体力バーは少し削れたものの怯まずにボスは斧を振り下ろす。ボスのサイズなら手斧なのだろうが、プレイヤーからすれば大斧を優に超えるサイズだ。シュユは横に回避するよりも懐に入る事を選択し、股抜きの様にスライディングでボスの背後に回る。

 シノンは斧を振り下ろし、地面から斧を引き抜くボスの隙を狙い、眼球を突く。クリティカルダメージが入り、1本目の体力バーの20%まで削る。シノンに狙いを定め、バックラーを構えつつジリジリと迫るボスの頭上から、高速で落下してくる紫紺の影に気付かずに。

 

 「ハァァァァァァァ!!」

 

 ユウキは何とその身軽さを生かし、()()()()()ボスの頭上へと跳躍、その落下の勢いと上段突進ソードスキル【レイジスパイク】を使ってボスの1本目の体力バーを消し飛ばして見せた。

 

 「グアアァァァァァァァ!!」

 

 ボスの獣の咆哮。センチネルに青いパーティクルが付与され、更に近くに居たユウキに一瞬の硬直を与える。が、ユウキに焦りは無かった。

 

 「スイッチ!」

 「了....解ッ!!」

 

 ユウキは思い切り左に飛び、ボスの攻撃範囲から逃れる。そしてアスナとキリトが現れ、同時に左足を連続で斬り付ける。左足だけを執拗に狙われた結果、ボスは膝を地面に着け、更にユウキの攻撃により割られた兜の中が見えた。弱点かも知れない頭が露出している。それを見付けたディアベルは号令を掛ける。

 

 「アタッカー隊、畳み掛けろ!」

 「「「「オオオオオォォォォ!!!」」」」

 

 この攻めで倒す、という意気が形を成し、彼等はボスの元へ殺到する。シュユ達は一旦離脱し、体制を整えていた。ボスの2本目の体力バーはみるみる内に削れていき、そして最後のバーに突入した。タンク隊はセンチネルがボスの元へと行けない様に進路を塞ぎ続ける。

 ダウンが終わり、引き返すプレイヤー達。離れれば攻撃手段は無い。そう解っているからだ。が、こんな単調ならばボス戦は簡単だ。しかし、そうもいかない。

 ボスは自らの装備していたバックラーを右手に持ち、思い切りフリスビーの様に投げたのだ。油断していたプレイヤーはバックラーの側面に付いていた刃に身体を両断され、ポリゴン片となって命を散らす。そのバックラーは外ならば弧を描いてボスの元へと戻るのだろうが、狭い室内では壁に突き刺さるに留まった。

 

 「よし、行くぞ!後は俺が――」

 

 隙が出来た、そう感じたディアベルは自らの剣を抜いて突撃する。最後のバーも残り少ないからこそ、そして確実にLA(ラストアタック)ボーナスを狙っての行動だ。ボスは腰にマウントしている剣に手を伸ばした。それは【ノダチ】、第1層では見れない、上の階層で初めて現れる武器だ。

 ソードスキルと同じライトエフェクトをボスの刀が纏い、ボスはそれを振り抜く。居合いの様に放たれたソレはディアベルを斬り裂き、なんとその向こうにいる数人まで斬り捨てて見せた。ディアベルのステータスはVITが高めなのか直ぐには死なず、徐々に消えていくバーを眺めていた。

 

 「大丈夫だ、今回復を――」

 「...これは、君が使うんだ。...ハハ、LAを獲ろうとして突っ込んだから、こうなった。君も、気を付けろ。そして...このゲームの、攻略を....」

 

 破砕音、そしてディアベルが消える。戦いの途中に思考を止める訳にはいかない、とキリトは割り切ってボスを見るが、それが出来ない者が居た。アスナだ。SAOが始まって初めて目の当たりにしたゲームオーバー(人間の死)に支配され、思考も身体も硬直してしまったのだ。それを見逃す程、ボスは甘くはない。

 シュユもシノンもユウキも間に合わない。が、キリトはどうにか間に合った。剣で刀を力任せに弾き、どうにか直撃は避けた。が、武器は限界を迎えて砕け散った。武器が無ければ戦えない。それを知っているキリトは焦り、そして取れる手段が何もないと知ると絶望に包まれる。

 ボスの行動で戦線は崩壊、士気は駄々下がりでもう攻略の続行は難しい。そう、思われた。

 

 「....はぁ、温存しておきたかったけど、背に腹は変えられないか」

 「そうね。まぁこれでボーナス貰うのも悪くはないでしょ」

 「結局バラすなら、今でも同じでしょ!取り敢えず、ボス倒そうよ!」

 「あ、キリト。お前はコレ使ってくれ。オレにはもう不要だ」

 

 シュユはキリトにアニールブレードの所有権を譲渡すると、装備画面を操作して違う武器を装備する。ユウキもシノンも、現時点で3人しか持たない分類の武器を。それはユニークウェポン、唯一無二の、最高の性能を誇る武器だ。

 ユウキは黒騎士からドロップした【黒騎士の黒剣】、シノンはハイデ騎士からドロップした【ハイデ騎士の雷槍】、そしてシュユは【葬送の刃】、別名『ぶっ壊れ』を装備し、ユウキが言った。

 

 「βテスト第1層最速攻略パーティの実力、見せてあげるよッ!!」




 あ~^ペースが落ちてきたんじゃ~^
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