「やり方はどうするの、ユウキ?」
「決まってるでしょ?ボクたちのやり方なんてさ!」
「確かに、変に変えるより安全だな。という訳で――」
シュユは武器を大鎌に変型、そしてユウキを刃の部分にユウキを乗せる。そして――
「――行ってこい、ユウキ!」
「了解!!」
思い切り鎌を振り抜いた。STRに補正が掛かっている彼の渾身のスイングは上に乗るユウキを軽々と投げ飛ばし、弾丸の様な速度でボスの元にユウキを送り込む。そしてユウキは右手に握る黒剣を横一閃に振り抜いた。
今までのやり方とはつまり、ユウキを前衛に置いてシノンとシュユがアシストに回るやり方だ。が、ダメージディーラーは全員であり後衛も全員。何を言ってるのか分からなくなるが、簡単に言えば全員攻撃に全員防御、全員支援というそれぞれの判断に任せたやり方だ。幼い頃からずっと一緒に居る3人だからこそ、やれるやり方だ。
シュユはステップを繰り返し、ボスの攻撃を回避しつつ逃げるプレイヤーを追い掛けるセンチネルを大鎌の一撃で倒していた。動物系MOBに特攻が付与される葬送の刃は攻撃の範囲が広く、大鎌は1対複数や巨大な敵を得意とする。だが、逃げるプレイヤーを優先的に狙う様にプログラムを組まれているのかシュユから離れていく。彼はナイフを左手にアイテムストレージから取り出すと投げ付ける。頭を貫通したナイフはレベルの差も有り、センチネルの体力バーを消し去った。
ユウキは絶える事の無い連撃でボスの体力を削っていた。ユウキ本人のSTRは低いのだが、塵も積もれば山となる。何も剣術を知らないデタラメな剣技だからこそ、彼女は自分に最適化された剣の振り方で振っていた。ボスのノダチが足元を薙ぎ払う。前転で回避、振り向く時に【ホリゾンタル】を使用し、振り向きの勢いを全て剣に伝えて振り抜く。先程までターゲットは分散していたが、ここで完全にユウキに対象を絞ったらしく。攻撃が激化する。叩き潰す様に振り下ろされるノダチを側転で回避、足元に向かうが
後ろから黄色のライトエフェクトが眩く光る。これはソードスキルの光ではなく、シノンの槍に付与されている雷属性によるものだ。突きからの槍をバトンの様に手で回転させると遠心力を乗せた薙ぎ払い。更にその振り切った勢いを無理矢理地面に当て、棒高跳びの様にまた跳び跳ねる。空中専用の、落下速度と高度により威力に補正を掛ける中位ソードスキル【ジャンプ】を使う。地上で使うと高く跳躍するワンアクションが必要になるソードスキルで、PvPならば使い物にならない技だがPvEならばかなり有能な技となる。ボスの肩を足場とし、更に高く跳躍したシノンは兜が割れ、露になった頭に槍を突き立てる。落下の速度はかなり有ったとはいえ、堅い頭蓋は槍の侵入を最低限に抑えた様だ。引き抜こうとするが、ボスがそれを押さえ付けて頭上のシノンを掴もうと手を伸ばす。
「させるか....!」
その手をシュユが肩口から斬り落とす。助走の勢いのままに幅跳び、ボスの肩に刃を引っ掛ける様に当て、思い切り下に下ろしたのだ。稲を刈る様に刈り取られた左手は地面に落ち、ポリゴン片に姿を変える。激昂し、ノダチを構えて【カタナ】のソードスキルを使おうとするボスに彼は大鎌を構え、力を溜める事で対抗する。
「あ、アイツ何する気なんや....死ぬで、アイツ」
ボス対プレイヤーの一撃勝負。そんな事をすれば普通なら武器が砕け散る、ないしはそのまま死亡。例え生き残っても体力は風前の灯火で武器の耐久力も僅かだろう。
凛、と鈴の様な音が響く。その音が響いた直後、溜めた力を全て解放したボスは凄まじい速度の振りでシュユの首を斬り飛ばさんと迫る。彼はそんな絶体絶命の危機にも臆さず、身体を地面に近付ける。つまり腹這いの1歩手前の体勢になった。後ろ髪を何本か斬られた感覚でノダチが通過した事を感知したシュユは全力を込めてその大鎌を横に振り抜く。流石はボス、硬直時間をその力で無理矢理に短縮、バックステップで毛皮に1本の傷を付けられる程度の被害に抑えた。だが、これはソードスキルではない。故にシステム的な硬直時間は無く、更に前にステップ、縦振りを叩き込む。
体力バーを少し削った事を確認すると、シュユは後ろに跳んだ。その隙を埋める様に現れたのはシノンだ。流れる様な槍捌きがボスを襲う。突きに始まり、石突きで殴り、柄で攻撃を流しつつ薙ぎ払いを入れる。そして単純な突きの速度と威力をブーストするソードスキル【スティンガー】を使用してボスの身体奥深くに槍を突き込む。雷の属性がボスの体力を削るが、シノンの手からはこれで武器が消える。
「アカン、あの女の子死ぬで!」
「残念だけど、死なないわ...よ!」
彼女が腰から抜いたのは
「ユウキ、頼むわよ!」
「人使いが荒いねシノンは!ボクは非力なんだから....さぁ!」
距離を離し、体制を整えようとしたボスに飛び込む紫紺の影。ユウキだった。彼女は助走をつけて加速し、そのままシノンの槍を掴んで力任せに引き抜く。それが体内から攻撃された判定になったのか、体力バーの殆どが消し飛ぶ。そしてダウンするボスだが、シュユはセンチネルを狩っておりユウキは槍を持っていて速度が出ず、シノンはメイン武器の槍をユウキが持っている以上、火力が出ない。
しかし、忘れてはならない。このパーティのメンバーはこの3人だけではないという事を。
スイッチ、という言葉が出る前にキリトとアスナの2人は走り出していた。アスナは【シューティングスター】、キリトは【ソニックリープ】という突進系のソードスキルを発動させ、一撃加えるとラッシュを仕掛ける。が、ステータスが不足していたのか、あと5%程の体力が残った。行動が変わり、センチネルとボスが足元の地面を粉砕する。巻き上がる土煙と吹き飛ぶ瓦礫に被弾したのはアスナだった。しかも不運は重なるもので、直撃したのは頭だった。脳を揺さぶられる感覚を味わったアスナは歪む視界と歪む真っ白になる思考の中、茫然と振り下ろされるノダチを眺めていた。
(...あぁ、私、ここで死ぬんだ)
不思議と取り乱しはしなかった。徐々に近付くその刃はVITにポイントを殆ど振り分けていないアスナの体力を消し飛ばすだろう。諦めた様に――いや、諦めて目を閉ざすアスナ。だが、そのノダチが届く事は無かった。
「ぬぅん!!」
色黒で屈強な男が、迫るノダチを大斧で弾き飛ばしたからである。ソードスキルを使用していないボスに対して、男はソードスキルを使っているとは言っても既に犠牲者が出ているこの状況で、振り下ろされる巨大なノダチのプレッシャーに殺されずに、ボスの剣を弾き飛ばす。これがどれだけの勇気を必要とするのはこの場の全員に理解できた。男は振り向き、言った。
「今だ、ぶちかましな、2人とも!」
「っ、うおおおおォォォォオオオオ!!!」
「...っ、はあああァァァァァ!!!」
2人の渾身の一撃が、ボスの身体に直撃する。が、まだ足りない。あと1ドット、それだけ削ればボスは倒せる。そう直感したキリトは貧弱な自分の拳を、ボスの身体に叩き付けた。
『YOU GET THE LAST ATTACK BONUS!!』
「え...?」
「LAおめでとう、キリト」
「いや、でも削ったのは3人だし、俺が貰うべきじゃ――」
「――まあまあ、受け取ってよ。ボク達には
ユウキは自分が握る黒剣を指差し、笑う。あの激戦を乗り越えても刃こぼれをしていない。流石はユニークウェポンか。
「さて、第2層だな。じゃあ――」
「――アンタらは化け
「...オレを化け物って言うのは構わないがな、キバオウ。この2人の事を含めてみろ。オレはお前を――」
シュユは大鎌の刃をキバオウの首にあてがい、告げる。
「――狩るぞ」
あまりの気迫と殺意に固まるキバオウを尻目に、シュユは確認する。
「...キリトとアスナは解散で良いんだな?」
「あぁ、俺はそれで良いかな」
「あ、それなんだけど、シュユ。ボクはアスナと一緒に行動したいんだ。良いかな?」
シュユは驚いた。特に用事が無ければシュユから離れる事が無かったユウキが自分からシュユとの別行動を宣言したのだ。親離れならぬシュユ離れか、と親の様に寂しさと嬉しさを感じていた。
「いや、その内戻るからね!?アスナは危なっかしいから、ボクが着いてなきゃって思っただけだから!絶対に戻るからね?」
「...そうか、それなら嬉しいな。で、シノンは?」
「まぁあなたと一緒に行動かしらね。...あの人達は進まないらしいし、第2層までは一緒に行動しない?」
「そうだね。シュユ成分を沢山貯めとかなきゃ!」
彼等は肩を並べて第2層へと進んでいく。死闘を乗り越えたとは思えない穏やかさを醸し出し、笑って。そんな彼等を眺め、キバオウは言った。
「なんでや....βテスターだからそんな余裕なんか...?そんなのチートや、チーターやろ!」
「βテスターのチーター...【ビーター】だ!」
この時、アスナを除いた4人はこの汚名を背負う事となった。まだ注目されていないキリトはまだしも、シュユとシノンとユウキはもう1つ異名を付けられた。
ユウキは『絶える事の無い剣技』から【
槍のソードスキルは某大百科を見ても載ってなかったのでオリジナルになります。とは言え、今回はFFから持ってきたのがありますが。これからもそういう他のゲームやアニメから持ってくるソードスキルが出ますので、そこの所をご了承下さい。
....槍なのにソードスキルってどうなの?(今更)