2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 前作と比べて文字数が全体的に多い。これって、勲章ですよぉ...?(ねっとり)


16話 戦い

 「フロアボス攻略を手伝って欲しい?」

 「あぁ、君の力が必要だ。手伝ってくれないか、【狩人】シュユくん?」

 「アンタ程の実力者がオレ程度の攻略組予備軍に助力を求めるとはな、【聖騎士】ヒースクリフ」

 

 既に半年は使っている一時的なホームに訪れたのは巷で噂のKoB団長、最強のプレイヤーと名高いヒースクリフ本人だった。後ろには副団長であるアスナが控えている。ヒースクリフ曰く、ユウキはギルドのホームで戦闘員と訓練をしているらしく、ここには来ていない。

 

 「かの有名なKoBの戦闘員の連携にオレ程度の力が加わった所で焼け石に水だと思うんだが?」

 「既に無視できない数の死人が出ている。下手なプレイヤーを出す訳にもいかないが、その点君達2人は一流だ。そうでなければ勧誘には来ないさ」

 「.....中々遠回しに言ってくれる。つまり、そっちは自分達のギルドメンバーをみすみす死なせたくないからフリーのオレ達を死ぬ可能性が大きいフロアボス攻略に行かせる訳だ。そもそも、交渉のイロハがなっちゃいない。出直してくれ」

 

 ヒースクリフは驚いた様な表情を浮かべている。実際、シュユの顔つきはゴロツキも同然の強面だ。そんな彼が理路整然と自分達の本当の意図をこの場でぶちまけ、しかも交渉のイロハがなっていないとも指摘されたのだ、驚きもするだろう。

 そんな中、後ろで控えていたアスナが机を叩き、声を荒げる。

 

 「四の五の言わずに協力しなさいよ!あなた達は脱出したくないの!?」

 「そう声を荒げるな、アスナ。オレは協力しないとは言ってないぞ。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()と言っただけだ。肉体言語でも悪くはないが――」

 

 彼は眼光を鋭くし、殺意を表層に出して言う。

 

 「――死んでも後悔するなよ」

 「ヒッ.....!」

 「....アスナ君、止めたまえ。シュユ君も、殺気を納めてくれると有り難い。確かに私達の交渉の仕方が悪かったな、済まない」

 「じゃあ出直して――」

 「――では、これからは交渉のテーブルに着こうじゃないか」

 「.....何?」

 

 ヒースクリフは空気になっていたシノンとシュユに交渉のメッセージを送る。

 

 「私達が払える報酬は2人合わせて100万コル、()()()()()()()

 「100万が、最低額...ですって?」

 「その通りだ」

 

 100万コル、途方もない額だ。レベリングがてらにマラソンをしても1ヶ月はゆうに掛かる金額で、規模的には中位相当のKoBでは捻出する事が難しそうな額ではあるが、KoBはギルドの中でも収入がハイリスク・ハイリターンの攻略系ギルドだ。フロアボス攻略戦に参加した者からある程度コルを徴収すれば簡単にそれぐらいは貯まるだろう。だからこそヒースクリフは100万を最低額としたのだが。

 

 「そしてフロアボスからのコルは君達の物で、ドロップアイテムやLAボーナスも君達の物だ。これは元々の私達(KoB)の規則だから破るつもりはない。これでどうかね?」

 「......ふむ」

 「....シュユ、どうするの?この条件、ハッキリ言って破格よ」

 

 たった2人のプレイヤーに提示する様な条件ではないのだ。自分達の稼ぎはそのままに、KoBからも相当額のコルを貰える。そんな破格の条件だが、裏を返せばそれだけ危険であり死亡のリスクが高いとも言える。彼だけなら即答でYESなのだが、シノンは別だ。

 が、彼女の性格からして断る事は許さないだろう。恋愛的な特別扱いは喜ぶシノンでも、戦闘的な特別扱いは許さないのだ。元々シノンが交渉担当であればシュユは従うだけだが、シノンがシュユにやってくれと頼んだのだ。危険度が高い故に渋々ではあるが、シュユは承諾した。

 

 「...分かった、請け負おう。攻略はいつだ?」

 「そうだね...私達は今月と来月は受けた被害の補填をする事がメインになるだろうから、再来月、1月の上旬でどうかね?」

 「分かった。シノンは大丈夫か?」

 「えぇ。大体はあなたと予定は一緒だしね」

 「と、言う訳だ」

 「細かい日時は追って連絡しよう。それでは、共に戦う日まで生きてくれよ、2人とも」

 「そっちもギルドの経営が倒れない様に頑張る事だな」

 「フッ、そうするとしよう。行こう、アスナ君」

 「...は、はい!」

 

 2人は白い装束を翻して去っていった。そしてシュユは溜め息を1つ溢し、呟いた。

 

 「.....疲れた....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縦斬りを【葬送の刃】の剣形態でガードする。が、フェイント代わりの軽い一撃は簡単に弾かれ、サチは一瞬甘くなったシュユのガードに追撃の【バーチカル】を振り下ろした。シュユはそれを右斜め前方に進んで剣を斜めにする事でサチの剣を受け流し、生まれた隙を突いて右手に握る剣を首に突き付けた。

 

 「...また負けた」

 「βテストから片手剣を使ってるのに、そう簡単に勝たれて堪るか。...まぁ、槍よりも使えてはいるんじゃないのか。槍は読みやすかったからな」

 「それ、地味~に傷付くんだけど」

 「はいはい、悪かったな」

 

 手頃な石を見付けるとシュユは座る。事実、もうサチに教えられる事は教え終わったのだ。これからはサチが自分自身で技術を自分に合う形に最適化していくしか無い。初めは組み手の最中に悪い箇所を指摘していたが、現に最近は組み手をして勝敗を決めるだけになっている。もうこれ以上は互いの時間を喰うだけだとどちらも解っているのだ。

 

 「私さ、明後日から少し上の階層を冒険する事になったんだ。もう攻略も終わってるけど、マージンギリギリの場所」

 「...へぇ」

 「皆も乗り気だし、私も頑張りたい」

 「そうか、それなら死ぬ気で踏ん張れよ。攻略を始めたらもう自己責任なんだからな」

 「分かってる。...でもちょっと不安なんだ。だから、少しだけ勇気を...くれないかな...?」

 

 そう言ってシュユのコートの裾を握るサチは震えていた。やはり怖いのだろう。常人より恐怖を感じにくいシュユでさえ、前線に立って敵と相対する時には若干の恐怖を感じる。誰だって命の残量(HPバー)が見えている状態はプレッシャーだし、通用するか分からない階層ならばそのプレッシャーも倍になるのだから。

 そんなプレッシャーを、人一倍臆病なサチが感じているのだ。押し潰されそうで、でも他人に相談はしにくいのだろう。どれだけ気を許した仲間でも、自分の弱さをさらけ出すのは難しい。それを、ただ戦い方を教えられるだけという薄っぺらい関係のシュユに見せているのだ。これを突き放せる程、シュユは鬼畜ではない。

 シュユはアイテムウィンドウからペンダントを実体化させ、サチの空いている左手に握らせる。

 

 「これは...?」

 「装備効果で【オートヒーリング】が付いてるペンダントだ」

 「こ、こんなの貰えないよ!」

 「誰がお前にやるなんて言った?」

 「....え?」

 「その冒険の間だけ貸してやる。だから、次の週に返しに来い」

 「....じゃあ、私もシュユに預けておくよ」

 

 そう言ってサチが渡してきたのは短剣だった。少なくとも販売品ではなく、クエストクリアの報酬でもなかった。

 

 「ギルドの皆と倒したネームドからドロップした短剣なんだ。思い出のこの武器、シュユに預かってて欲しいの」

 「....仕方無いな、預かってやるよ。絶対に取りに来いよ?」

 「うん、任せて。...じゃ、また来週ね」

 「あぁ...また、来週」

 

 そう言って彼女は街へと入っていく。その背中にシュユから貰った勇気を背負い、少しだけ胸を張って走っている。シュユはそれを見た後、走ってホームへと戻っていくのだった....




 サチちゃん可愛い(ノンケ)
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