2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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17話 死

 「おっ、宝箱(トレジャーボックス)発見!中身は何だろうな~」

 「ダメだよ、それ開けたら――」

 

 キリトを含めた【月夜の黒猫団】は迷宮の攻略をしていた。リーダーであるケイタは本当のギルドホームを買う為に別行動だ。そんな中、仲間の1人が宝箱を見付け、小部屋へと入る。それを追う様に全員が小部屋に入ると、その仲間が宝箱を開ける。サチは嫌な予感から制止するが、もう手遅れだ。宝箱の中身は空で、小部屋の入り口は閉鎖され密室に。大量の敵がポップし、取り囲まれる。

 

 「【モンスターハウス】だ!皆、陣形を乱すな!」

 

 そんなキリトの叫びも、取り乱したメンバーには届かなかった。初めてと言える、マージンギリギリの冒険。そんな中で誰も想定していなかった密室での多勢に無勢。レベルを偽ってギルドに入ったキリトなら兎も角、レベル相当の知識しか持たない仲間3人はパニックに陥り、その実力を発揮する事無く殺されてしまった。

 そんな中、サチは敵を見据えて剣を抜く。身体を深く沈めて前にダッシュ、剣を敵の1体に突き立て、そこから【ホリゾンタル】を発動。剣を突き立てた1体を倒すと離脱、後ろを振り向いて武器を振りかぶる敵に片手剣連撃系ソードスキル【シャープネイル】を当てる。倒したか確認する間も無く左右同時に足元を薙ぎ払う敵の武器を跳躍して回避、【ソニックリープ】を発動して右の敵の頭をブチ抜いた。

 だが、調子が良かったのもそこまでだった。ソードスキル発動後の硬直の隙を突かれ、背中に一撃貰ってしまう。無理矢理体勢を立て直して剣を構えるが、しゃがんでいるサチを叩き潰すかの様に上から5体の敵が武器を振り下ろした。それを無様に転がって回避するが、その先にも敵が居た。その敵を【ホリゾンタル・アーク】で斬り捨てるが、もう限界だった。背中に走る鈍い衝撃、広がる不快なダメージフィードバック、そして急速に減っていくHPバー。

 ポーションを飲む時間はもう無い、既に死は確定している。倒れる自分に手を伸ばす黒ずくめの剣士。彼へ感謝を告げようとするが、口を衝いて出てきた言葉は、誰に向けたものだったのだろうか。

 

 「.....ゴメンね、――」

 

 目の前に現れる『You Are Died.(あなたは死にました)』というウィンドウ。無機質で無感情な筈のそのメッセージは、その裏で誰かがサチを嘲笑っている様にも感じた。そして、サチの意識は2度と浮かぶ事の無い闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「.......来ないな、サチ」

 

 シュユはいつも通りの時間に、サチとの集合場所に来ていた。冒険が長引いているのだろう。迷宮内はメッセージ機能が封じられるし、隅々まで探索すればかなりの時間を消費する。流石に攻略済みの迷宮の為、そこまで時間は掛からないだろう。そう思ったシュユはサチを待ち続ける。

 

 「......まだ、か」

 

 メニューを呼び出し、時計を見れば既に2時間は待っている。それでも入れ違いになるのは面倒なので、まだ待つ。

 

 「..................」

 

 彼女から預かった短剣が、何故か重く感じる。実体化した訳でもない、ストレージ内に収納している筈だが、何故か重く感じる。

 

 「...........日が、明けた」

 

 目を瞑って待っていた。目蓋越しにも分かる仮想の日光が、この狭い世界を照らす。とうとうサチは来なかった。

 まさか、と思った。こんな世界だ、有り得ないとは言い切れない。だが、彼女の性格的に遅れるとは思えない。調子に乗りやすいどころか臆病で心配性なサチ、そしてぶっ続けの探索は死亡のリスクを跳ね上げると知っている筈のキリトが居ながら、その結果は有り得ないとシュユの限られた感情が言っている。

 第1層へと走る。その間にも理性が最悪の結果を冷酷に告げ続ける。その結果から逃げる様に速度を上げ、デスゲームと化したSAOでは使われる事の無い形骸化した部屋である【蘇生者の間】に足を踏み入れる。そこには巨大な金属の碑である【生命の碑】があり、SAOプレイヤーの全員の名前が刻まれている。そして死んだ者の名前には横線が引かれ、死亡原因が表示される。

 彼はそこに辿り着くと、食い付く様に碑を読む。やっと目当ての人物――サチの名前を見付ける。だが――

 

 『Sachi

 「.......嘘、だろ」

 

 その名前には斜線が引かれていた。つまり、サチは死んだ。その事実が叩き付けられ、戸惑うと共にハッキリとしない感情が彼を包む。サチは死んだのだ。

 

 「.....................」

 

 涙は出ない。泣けないのだから、哀しめないのだから、涙など出ない。彼の足は勝手にサチと出会った平原へと歩みを進め、そして彼女を運んだ宿屋へと歩いていく。NPCの主人はシュユの事を見ると、言った。

 

 「よう!あんたの部屋は綺麗にしてあるぜ!」

 「.....は?」

 

 彼は宿屋など使っていない。コルを払った覚えは無いし、ここを使ったのはサチを運んだ時だけだ。理解が及ばない、そう思っているシュユを見て部屋を忘れたと勘違いした宿屋の主人はシュユの腕を掴み、ある部屋へと連れていくと「ここがあんたの部屋だろ?しっかりしてくれ」と言い残して自分の業務に戻っていった。

 その部屋は以前サチを運んだ部屋だった。想い出を振り返る様に部屋を見回すと、質素な机の上に不釣り合いな結晶を見付ける。その結晶は【記録結晶(レコード・クリスタル)】と呼ばれるアイテムで、映像や音を記録できるというアイテムだ。通常なら勝手に見聞きされない様にロックを掛けておくのだが、この記録結晶はロックされていない。デリカシーに欠けるとは思いながらも、彼は記録結晶を使用した。

 

 『シュユがこのメッセージを聴いてる時は、多分私は死んでると思います。シュユに勇気は貰ったけど、やっぱり不安なので初めて話したこの部屋に、メッセージを遺します。

 私が死んだらシュユは哀しんでくれるかな?いつも無感動なシュユが哀しんでくれてるなら、それだけ大きな存在になれてたんだなぁ、って思うよ。シュユは無表情で強面だけど、本当は優しいって知ってる。でもシュユは強いし、割り切れる人だから私の死を哀しんでくれるのかは解らない。でも、少しでも私を友達って、大切だと少しでも思ってくれるなら、頭の片隅に私の事を覚えてて欲しいな。このデスゲームの中で生きて、そして死んだって。

 初めて会った時、シュユは私に実力は無くても勇気は有るって言ってくれたよね。当たり障りの無い励ましより、私にとってはハッキリ言ってくれたシュユの言葉が何よりも励ましてくれたよ、ありがとう。

 これで恩返しになるかは分からないけど、ペンダントを作ってみたの。この結晶が置いてある机の引き出しに入ってるから、着けてみて欲しい。何の効果も付いてないし不出来だけど、装備しなくても持っていて欲しいな。でもその分、私の祈りが籠ってるから、何かの拍子にシュユを守ってくれるかも?

 ...あ、まだ時間が余ってるね。じゃあ、私が好きなこの歌を贈ります。ちょっと自信が無いからハミングだけど、最後まで聴いてくれたら嬉しいな。~~♪』

 

 サチがハミングしているのは『赤鼻のトナカイ』だった。始めの歌詞は覚えているものの、シュユはサビを知らない。それでも暖かみのある、そんなハミングだった。

 引き出しを開ければ、不格好なペンダントが入っている。インゴットを加工したのか、ペンダントにしては厚みがあるし絵柄のクロスした大鎌と剣はお世辞にも良く描けているとは言えない。価値なんて大したものではない、サチに渡したあのペンダントの方が100倍近く高く売れるだろう。

 それでも彼はそのペンダントを装備した。このペンダントに宿るサチの想い、祈りを連れていく為に。つくづく自分らしくないと理性が嘲笑う。そんなガラクタに何の意味が有るのだ、と。

 彼の感情は嘲笑う理性に応えた。この行動は損得(尊徳)勘定(感情)で割り切れるものではないのだと。

 

 「.....サチ」

 

 シュユはメール画面を開き、ある人物にメッセージを飛ばす。自分がこんな不確定で現実味の無い事をすると思っていなかったと、どこか客観的に苦笑する自分が居た。

 彼は何も告げずに宿屋を出る。だが、彼の背中は何かに別れを告げた様な、そんな感じがした...




 シュユ「...何だ、この空間は?」
 
作「私の気紛れで発生するメタ空間です。初回お試しって事でYouを呼びました」
 
 シュユ「ふ~ん...続くのか?」

 作「私の気紛れと読者の皆さんが良いって言ってくれたらね」

 シュユ「まぁ、別に良い。と言う訳で、皆さんこの雑談が良いか悪いか感想をくれ」

 作「私の台詞を!?」

 シュユ「次もよろしく頼むぞ」

 作「それも私の!...あー、次回もよろしくです!」
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