21話 臆病な鍛冶士
死の恐怖に直面した時、咄嗟に動ける人間はどれだけ居るのだろうか?
「ぁ、あぁぁぁ....」
少なくとも、この少年は咄嗟に動ける人間ではなかった。第35層の【迷いの森】のエネミー【キリング・ベアー】の咆哮に耐えられず、腰を抜かしている少年の先に待ち受ける未来は、誰が見ても明らかだった。
「誰、か.....助け――」
振り抜かれる腕を見て、彼は助けを求めた。
「大丈夫か?」
御都合主義の様なタイミングで現れたのはシュユだった。これはプレイヤーからの依頼を受けており、それを達成する為に待機していたのだが、現在進行形で死にかけている少年を見付けたので乱入したのだ。
攻撃を受け止め、【ホリゾンタル・スクエア】をがら空きの胴体に叩き込む。レベル差が激しいからか、一撃で体力バーは消し飛んだ。
「アレだけで動けなくなるならフィールドに出るのは止めた方が良い。見た所
「――スゴい.....カッコいいです!!あの、僕と専属契約を結んで貰えませんか!?」
「.......は?」
最近、呆けた声を上げる事が多くなったシュユである。
「――という訳で、シュユさんを僕に下さい!」
「どういう訳よ!?」
「シノン、落ち着け。お前も、自己紹介を飛ばして誤解を生むような言い方は止めろ」
「あ、はい!僕はカーヌスって言います!シュユさんの腕前に惚れて、専属契約を結ばせて貰おうと思ったのですが本人がシノンさんに訊けとの事だったので、押し掛けさせて貰った次第です!」
少年――カーヌスは興奮した様に鼻息を荒くしてシノンに迫る。が、目的はシュユの専属契約だ。決断をシノンに任せる所が何ともシュユらしい。
専属契約、というのは鍛冶士が使える機能の1つだ。鍛冶士は1人だけに専属契約を申請する事が可能で、プレイヤーも1人だけ専属の鍛冶士を雇う事が出来る。専属契約を交わした鍛冶士とプレイヤーは武器強化や修復の成功率に補正が掛かり、更に費用も安くする事が出来る。
しかしこの機能が知られていない要因には、SAO内での慢性的な鍛冶士不足にある。鍛冶士になるにはスキル枠を1つ消費しつつ、更に【インゴット加工】や【
しかし、プレイヤーの鍛冶士にはNPCの鍛冶士とは異なり、しっかりとした明確な利点がある。それは【オリジナルウェポン・メイク】、通称【OWM】と呼ばれる機能だ。これは読んで字の如く、武器種に縛られずその鍛冶士オリジナルの武器を造る事が可能になるスキルで、その特異性はモンスタードロップにも引けを取らない。そのプレイヤーのスタイルに合わせたオリジナルの武器を造れる事から汎用性と応用性は高く、有能な鍛冶士はプレイヤーの多くに必要とされている。あわよくば専属契約を、と願うプレイヤーも少なくはない。
「...別に、私は構わないわよ。女の子じゃないし」
「ホントですか!?」
「あなたが【OWM】を使えるならね。シュユと専属契約を結ぶんだから、それくらいは必須よ?」
「勿論、使えますよ!見てみて下さい!」
カーヌスはアイテムストレージからアイテムを実体化させ、机の上に置く。それは刀なのだが、飾りが施される事が多い鍔には何も無く、ネジの様になっている。流麗かつ美しい外見の物が多い刀としては珍しい部類に入るだろう。
「これは何?」
「【千景】です。見ての通りカテゴリーは【カタナ】なんですけど、基本的には鞘に納めずに使います」
「刀の持ち味はクリティカル率と居合いの速さだろう。それを殺してまで抜刀し続けるメリットが有るのか?」
「よくぞ訊いてくれました!この【千景】はなんと、納刀するとある仕掛けが起動するのです!」
カーヌスが一旦【千景】を装備し、鞘に刀身を納める。すると、鞘から
「「.....え?」」
「この武器は納刀すると、秒間で少しずつ割合ダメージを喰らってしまうのですが威力を底上げ出来ます!解除する時は1度ソードスキルを使うか振る時に一瞬手に力を籠めれば大丈夫ですから、安心して下さい!」
抜いて見せた刀身にはダメージエフェクトが液体の様に纏わり付いており、禍々しさを醸し出している。彼が力を籠めて血振るいをする様に千景を振れば、ダメージエフェクトは霧散して元の変哲の無い刀身に戻る。
そしてシノンとシュユは直感する。この鍛冶士は【
実は【OWM】は言う程簡単な事ではなく、かなり緻密な計算と鍛冶士本人の腕が問われる神業的な行為なのだ。先ずは武器のコンセプトとそのコンセプトを実現するのに最適な武器種を考える。そしてソレを考え終われば、次は刀身や刃のサイズ、持ち手の長さなどを決める。これは1ミリ変わるだけでも使い心地が変わる為、非常に気を使う。そして最後にして最大の関門が武器の素材だ。特異性を持たせようとすれば自然と素材も貴重になり、製作難度が上がってしまう。つまり、プレイヤーの力量と鍛冶士の力量が釣り合わなければ強いオリジナルウェポンは造れないのだ。
「...少し試させて貰えるか?」
「ここで、ですか?」
「いや、フィールドで」
フィールドに出ると、早速千景を装備して納刀する。ダメージエフェクトが噴き出し、視界の隅の体力バーが僅かに減っていく。割合的には0.8から1%ずつだろう。それを意識の端へと追いやり、彼は近くに居た鳥型のエネミーに斬り掛かる。今見たのはダメージ量ではなく、自分の体力バーだ。先程は減っていた体力バーが今では右端に、つまり全快している。
これは以前のニコラス戦の際に解放された【リゲイン】の効果だ。ダメージを受けた時に減った体力分だけ体力バーがの色が薄くなり、色が濃いバーと薄いバーに分かれる。その際、色が薄い体力バーは敵を斬る度に回復していき、上手く斬り続ける事が出来ればダメージを無かった事に出来る。時間経過で色の薄いバーは減っていき、濃いバーの右端に辿り着くか新しくダメージを喰らうとリゲインは出来なくなる。
シュユが確認したのは千景のスリップダメージがリゲインで回復できるか否か、そして使い心地がどうかだ。その結果は――
「....ふん」
「どう、ですかね?」
「これからよろしく頼む、カーヌス」
「っ、ハイッ!!」
契約成立だった。この時から、カーヌスはシュユの専属鍛冶士になったのだった。
サチ「あ、今回は私なんだね。まさか出られるとは思ってなかったよ」
作「メタ空間の力は偉大」
サチ「そうなんだ....。あ、前書きで評価の事言ってたけど、作者さんって評価を気にする人なの?」
作「いや、全く」
サチ「えぇ....」
作「そもそも低評価と批判前提で書かなきゃ、私の作品なんて載せられるもんじゃないしね。まぁ評価はモチベには関わらないけど、好んでくれる人と嫌いな人の尺度って感じで考えてる」
サチ「じゃあ、嬉しかったり残念だったりはしないの?」
作「高評価だったら嬉しいし、低評価ならこの人には合わなかったんだなって思うよ。私の話だし極論だけど、二次創作なんて自己満足だしね。私は私のやりたい様にやるだけだよ」
サチ「でも本当は?」
作「評価は良いけど支援絵書いてくれたら嬉しいです(素直)」
サチ「...欲の塊だね」
作「私は絵を描けないからね、仕方無いね♂」
サチ「そ、そうなんだ。取り敢えず、今回はここまでです」
作「次回もよろしくお願いします。あ、絵を送ってくれたらモチベが上がります」
サチ「なんで綺麗に締めずに言っちゃうかな」つ槍
作「え、ちょっと待って。死ぬ、逝っちゃうから。私でも流石にそれは――」
サチ「ていっ」プスッ
作「Oh....」(絶命)