2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 書きたい欲が満たされない...


22話 優しさと愚かさと

 ある日の昼下がり、第55層の街【グランザム】の観光に1人で来ていたシュユは突然後ろから抱き着かれた。剣を抜こうとするが、街中は相手にダメージを与えられない安全圏である為、害は無いと思い出したシュユは後ろを向く。見覚えのあるアホ毛と紫がかった黒い長髪、装備は見た事は無かったが、それ以外の特徴と突然抱き着いてくる人物はシュユの知り合いの中では1人しか居ない。

 

 「...流石にそれは驚くぞ、ユウキ」

 「だってこんな所にシュユが居るんだもん。飛び付かずにはいられないよ!」

 「まぁ、別に良いけど」

 

 シュユの背中に(うず)めている顔を上げ、ニッコリと満面の笑みで返事をしたユウキを見て、変わりは無いと分かる。最強のギルドと名高いKoB、その副団長を務めているのだ、少しくらい堅苦しくなっているかも知れない、と思っていた分少し意外だった。が、2人の副団長の内もう片方は真面目さが服を着て剣を振っている様な人物であるアスナだ、ユウキが変わっていないのも納得できる話だ。

 

 「大方、ボクの仕事はアスナがやってるとか思ってるでしょ」

 「そんな事は無いな、うん。ユウキは頑張ってるな、偉い偉い」

 「えへへ....って、軽くあしらわないでよ!」

 「ソンナコトナイヨー」

 「もう隠す気無いよね!?」

 「バレたか」

 「流石のボクでも分かるよ。シュユの棒読みはビックリするぐらい抑揚が無いもん」

 「そんなにか?」

 「うん」

 

 シュユの棒読みは実況動画などで良く見る様になった饅頭と同じ程度に棒読みだ。無表情かつ一切の抑揚が無いので、ユウキでなくても分かる。

 ユウキはシュユから離れると、表情を引き締める。これからの話は幼馴染みではなく、KoBの副団長であるユウキとしての話だ。

 

 「ここ最近、プレイヤー狩りが多くなってるって知ってる?」

 「プレイヤー狩り?」

 「うん、高レベルプレイヤーを集団で狩るの。基本的にグリーンプレイヤーが削って、最後にレッドプレイヤーがトドメを刺す。もしも取り巻きがオレンジになったら、黒鉄宮で【免罪】してグリーンに戻すっていうのが手口」

 「多人数で狩ればオレンジになる確率は減るし、オレンジになる回数が減れば【免罪】の費用も抑えられる、か...」

 「そういう事だね」

 

 【免罪】というのはオレンジとレッドのカーソルになったプレイヤーがコルを払う事でグリーンカーソルに戻れるという文字通りの行為だ。その掛かるコルがかなり高額であり、1度だけならまだしも2度、3度と続けば必要なコルは膨れ上がり、いつしか罪人から脱け出す事は出来なくなる。オレンジでも厳しいが、レッドになると非常にコルが高額になる。だが、レッドまで行ったプレイヤーは基本的に罪を改める事は無い。何故なら人を殺しても何も思わない、むしろ嗜虐性が高くなるからだ。

 そもそも、人殺しと知らせるならばオレンジカーソルの必要性は無い。だが、それでもオレンジカーソルが存在するのはこのデスゲームの中で、人殺しになる事を止めさせる為だ。オレンジもレッドも同じ扱いを受けるデスゲーム内で、ゲーム側がしてくれる数少ない通告、オレンジカーソル。金額が高く設定されているのもまだ犯した罪を窃盗か傷害で留まらせる為に有るのだが、その最後通告を無視して人を殺した者はもうマトモな人には戻れないと証明しているのと同じなのだ。

 

 「シュユなら大丈夫だと思うけど、気を付けてね。ボクはこれから会議だから、もう帰るね」

 「あぁ、ユウキこそ気を付けて」

 「うん、またねー!」

 

 パタパタと慌ただしく去っていくユウキに、やはり変わっていないと感じているとメールを受信した事を知らせるマークが点滅する。届いたメールを見れば、カーヌスが一緒に来て欲しいと言っていた。やる事は無いので、了承の旨を伝えるとカーヌスが居る第30層に転移門を使って転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「別に、千景じゃなくても良いんですよ?」

 「気に入ってるんだ。【カタナ】の熟練度上げもしたいしな」

 「槍とかも有るのに...」

 「オレが使うのは大体片手剣とかカタナみたいな、STR補正よりDEXに補正が掛かる系統だ。ステータスもDEXに寄せてある」

 「ふむふむ、分かりました。じゃあ技量系統の武器を重点的に造ってみますね」

 「それで頼む。それで、何か狩るのか?」

 「この階層の森にポップする【エルダー・ギガトレント】の実を幾つか回収したいんです。ただ、AGIが高くないと取れなくて...」

 「任せろ、AGIには自信が有る」

 「じゃあ、お願いしますね」

 

 森の中に入り、30分くらい歩いただろうか。目の前に顔の付いた大木が生えており、その大木にはしっかりと体力バーと固有名詞が記載されていた。つまり、ネームドエネミーという事だが、流石にこのサイズのネームドを狩るのはカーヌスを守りながらでは無理がある。なので、狩るのは諦めて指示通りの実を回収する事に専念する。

 一応シュユのステータスはAGIとDEXを重点的に強化しているのだが、念の為に【葬送の刃】を大鎌形態にして駆け出す。前方から枝が凄まじい速度で伸びてくるが、大鎌の一振りで枝を斬り捨てると体勢を低くして走る速度を上げる。そして跳躍、幹に足をしっかり付けると大鎌の切っ先を幹に突き刺し、思い切り反動を付けて登っていく。1ヶ所に一番多く、それでいて低い場所を見付けるとシュユはそこの果実をもぎ取り、トレントの枝から飛び降りた。

 この高さから落ちれば落下ダメージで死んでしまうが、シュユは大鎌を普通の木に引っ掛けて落下の勢いを殺して着地する。肩に違和感が走るが、ダメージにはなっていないので無視だ。

 

 「逃げるぞ、カーヌス!」

 「え、どうしてですか!?」

 「まだタゲが外れてない!枝に刺されて死にたくなければ走れ!」

 「それは流石に勘弁です!」

 

 カーヌスは全力で走る。森は走り慣れているのか、その足取りに迷いは無く転ぶ事もなく、森から脱出する事が出来た。

 

 「ふぅ、中々スリリングな体験でしたね。もう1つ行きたい場所が有るんですけど、シュユさんは来ますか?」

 「ふむ...まぁ、暇だし着いていくか」

 「じゃあ転移結晶使いますね」

 

 カーヌスの肩に手を置くと、カーヌスと共に光に包まれてどこかに転移する。街並みに見覚えは無いが、雰囲気的にここが第1層の【はじまりの街】だという事は察しが付いた。

 カーヌスは歩き出し、教会の様な建物へと歩いていく。ドアを叩くと、シスター然とした格好をした女性が現れる。カーヌスはシュユを手で示し、何かしらの事を喋り(恐らく紹介したのだろう)身振りで自分の元へ来るように伝える。従うと、女性に挨拶される。

 

 「初めまして、灰色の【狩人】さん。私はディーテと言います。カーヌスを専属にして頂き、本当にありがとうございます」

 「初めまして、ディーテさん。私はシュユ、戦いしか能が無い者ですが、カーヌスと専属契約を結ぶ事になりました。彼の腕前を殺さない様に精進していきます」

 「フフ、敬語は要りませんよ。どうぞ入って下さい、子供達も喜びます」

 「子供達?2人は夫婦なのですか?」

 「違いますよ、シュユさん。ディーテは戦えない子供のプレイヤーを無償で養ってるんです」

 

 訊けば、彼女は幼くしてSAOにログインしてしまった子供達を保護して養っているらしい。シスターの格好をしているのは実際のディーテも熱心なクリスチャンであり、この神が居ない世界でも神への信仰を忘れない様に、と自らの戒めを含めての事らしい。

 

 「みんな、聴いて!攻略組のシュユさんが来てくれたの。お話を聴かせてくれるらしいから、迷惑を掛けないくらいにお話を聴かせて貰って!」

 

 すると、本当に幼い子供達がシュユの元に駆け寄ってくる。その勢いと数に少し後ずさるが、気を利かせた子供達の1人が椅子をシュユの後ろに置いてくれたので観念し、ぶつけてくる質問に1つ1つ応対していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「つ、疲れた...」

 「お疲れ様です、シュユさん。でもスゴく珍しいんですよ?教会の子供達は人見知りなので、あんなにグイグイ行くなんて考えられませんでした。シュユさんが好い人だって解るんですかね?」

 

 元々お喋りな方ではないシュユが解放されたのは2時間程が経過してからだった。たった2時間かも知れないが、喋り慣れていない彼は既にグロッキーだ。

 苦笑しながらシュユを労うカーヌスに、シュユは問う。

 

 「カーヌス、あの教会に援助してるのはお前だな?」

 「....流石にバレますか」

 「別に、咎めるつもりも止めるつもりも無い。だが、これから援助を続けられると思わない方が良い。悪い事ではないが、それは恵まれない者からすれば自分に無い物をひけらかしている様にも見える。...下手をすれば、お前が刺されるぞ」

 

 言い方こそぶっきらぼうだが、シュユは純粋にカーヌスを心配してこの言葉を掛けたのだ。ぶっきらぼうだが、これが限度なのだから仕方無い。

 シュユの言葉にカーヌスは応えた。その声音に、揺るがない覚悟を籠めて。

 

 「解ってはいます。でも、僕は彼女を見捨てる事は出来ないんです。鍛冶士(スミス)になるって話した時に、馬鹿にしないで真剣に聴いてくれて、なけなしのコルで武器とこのハンマーを買ってくれた彼女を見捨てるなんて、僕はしたくない」

 

 カーヌスがシュユに見せたのは使い古されたハンマーだ。鍛冶士の魂とも言える、鍛冶の時に使用するハンマーを持つカーヌスの手は小刻みに震えていた。他人の感情を察する事が苦手なシュユには何故震えているのか解らなかったが、その言葉に偽りが無い事くらいは理解できた。

 

 「...惚れた弱味、ってヤツか」

 「え!?そ、それは、その....」

 「図星か。安心しろ、バラしはしない」

 「あ、ありがとうございます...」

 

 顔を真っ赤にして照れるカーヌスを見て、シュユは思った。自分の専属が守りたいモノなのだ、ならば自分も多少は背負っていこう、と。

 

 「明日、鍛冶でも見ますか?」

 「....そうだな、見せて貰うとしようか」

 「では、用意しておきますね」

 「そうしてくれ」

 

 そう言って、2人は解散した。しっかりと明日の約束を交わして。




 作「書きたい欲が治まらないでゴザル」

 シュユ「ゲストの使い回しが早いな」

 作「仕方無いでしょー?まだ出てきてないキャラが沢山いらっしゃるんだから」

 シュユ「ここってメタ空間なんだろ?逆に考えるんだ作者。出しちゃっても良いさ、と...」

 作「ハッ!(気付き)」

 シュユ「気付いたか、作者。つー訳で、使い回しは避けろよ」

 作「私が話すんじゃなくて君をメインにしてゲストを呼べば良いのでは?」

 シュユ「その手が有ったか...!」

 作「それは後で考えるか。...えっと、次回もよろしくお願いします!」
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