「悠、早く早くー!」
「待って、そんなに急ぐと――」
「いてっ。アイタタタ...」
「ほら、転んじゃった。大丈夫?」
「うん!悠が居るから大丈夫!」
「ありがと。じゃあゆっくり行こう。お母さん達、置いてってるしね」
『彼』の名前は
元々の『彼』はSAOシリーズの事を知っていた。となれば、ヒロインである彼女の事を知っているハズだが、そんな様子は見せず、子供らしからぬ落ち着きで彼女を抑えていた。何故なら彼は
「木綿季、何をしようか」
「んっとね....ボク、砂のお城作りたい!」
「分かった。じゃあ頑張ろうか」
悠は両親からバケツとスコップを貰い、砂の城の作成を始める。そうは言っても基本的には木綿季の手伝いやアドバイスに徹し、自分から気付いて手を出す事は有っても主導は木綿季だ。常に木綿季が楽しむ事を第一に考えている。
木綿季は本来天涯孤独の身である。姉は新生児の頃に服用した血液製剤の血液提供者が後天性免疫不全症候群、通称AIDSに感染していた。つまり、AIDSを
実際の実態はそんな奇跡と偶然の産物ではなく、娯楽に餓えた神の仕組んだ
「できたー!」
「やったね、木綿季!...結構時間も経ったし、お母さんも呼んでるし、帰ろっか」
「えー?まだ遊びたいよ...」
「明日も来られるし、何よりそろそろ入学だよ。幼稚園みたいにはいかないんだし、我慢しようね」
「むー....悠が言うなら、我慢する...」
「うん、そうしよう。じゃあ帰ろっか。お母さんの晩御飯も待ってるし、ね?」
「うん!」
砂の城を壊して砂場を片付けようとした悠だったが、視線を感じてふと右を見る。木綿季は悠の手を見詰めて、今にも泣きそうな顔でいる。そんな彼女を見て、壊すという考えを敢行する程悠は頑固でもなければ鬼畜でもない。壊そうとした手を引っ込め、木綿季と手を繋いで家路に着くのだった...