2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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29話 最強(邪道)

 「この鍵、どこの鍵なんだろう?」

 

 ユウキは【はじまりの街】の宿屋でそう溢した。シュユの右手に着けていたプレイヤーホームの鍵は鈍く輝き、ただ無機質に射し込む夕陽を反射していた。シノン達は武器の修理も兼ねてアスナの友人の鍛冶士(スミス)の元へ向かったのだが、ユウキは着いて行かなかった。何故なら、修理しても意味が無かったからだ。

 

 「....折れちゃった、かぁ」

 

 第1層でシュユから貰い、今までユウキの相棒として敵を斬り続けた【黒騎士の黒剣】は先刻までのシュユとの戦闘で、完膚無きまでに破壊されていた。剣の状態を示すウィンドウには、修復不可能のアイコンが瞬いていた。

 SAOの武器には耐久力が存在する。だが、あまり知られていないのが耐久力には2種類存在するという事だ。1つ目はウィンドウにも表示される【総耐久力】、2つ目はウィンドウには表示されない【瞬間耐久力】だ。瞬間耐久力は時間による自動回復があるが、総耐久力は鍛冶士による修理でしか回復しない。

 瞬間耐久力は総耐久力の身代わりと言えるもので、瞬間耐久力が無くなれば総耐久力が減っていく。武器によりそれぞれの耐久力にはバラつきがあり、総耐久力が多い武器の代表は両手剣で、瞬間耐久力が多い武器の代表はカタナだ。片手剣はバランス良く耐久力が振り分けられている。瞬間耐久力が無くなっても総耐久力が減るだけだが、総耐久力が無くなれば武器は壊れてしまう。まだ直ぐに修理すれば再び使える様になるが、先刻のユウキの様に無理を言わせれば武器は修復不可能になり、破棄するかインゴットにするしかなくなってしまうのだ。

 ただ、折れた剣は攻撃力とリーチは半減するものの、使えない訳ではない。修復不可能になれば、サブとして使う事も1つの手段だったりする。

 

 「...聞き込みだよね、調べ事の基本は。行ってみようか!」

 

 折れた剣の事は置いておき、ユウキは外に出た。誰に訊けば良いのか分からないこの状況下でも、ユウキは動かずには居られなかった。ユウキは自分がシノン程冷静に物事は判断出来ないし、シュユ程頭は切れない事を解っている。だから行動するのだ。考える事はするが、それは目の前の事。小難しい(未来)の事は2人に任せているのが最も効率的なやり方と解っている。だからそうするのだ。

 

 「--、--!!」

 「...ん?」

 

 路地裏の方から大声が聴こえた。ユウキは気になったから、そこへ向かう。そこには数人の男に囲まれる女子供数人が居た。子供達は1人の女性に隠れる様にして、女性は子供達を庇う様に男達に立ち塞がっていた。そして男達が纏う鎧はALF、通称『軍』と呼ばれる組織のものだ。決してよろしくない噂を良く聞く軍に囲まれている女性を放っておける程、ユウキは器用な生き方を心得ていなかった。

 

 「ねぇ」

 「あん?」

 「流石に男大勢で女の人1人囲むのは、マナー違反じゃないかな?」

 「はぁ?何言って--」

 「--しつこい男は嫌われるよ!!」

 

 折れた剣の一撃は安全圏の保護ウィンドウに遮られる。が、足元に走った皹に足首を挫いたのか倒れた男を冷やかに見詰めるユウキに、殺気を感じたのか男は走って逃げていった。ユウキの殺気は取り巻きに移り、当てられた取り巻きは逃げた男を追っていった。

 

 「あ、あの、あなたは....?」

 「ボク?ボクはユウキ、よろしくね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「スゴいね、ディーテは。ボクも他のプレイヤーと同じで自分が生きるのに精一杯なのに、子供達を護ろうとするなんて」

 「そんな事は有りませんよ。きっと、罪を犯した人にも優しさは有る筈なのです。ただそれを実行に移せるか否か、それだけの話ですから」

 「それを実行に移せるのが充分にスゴいんだよ、ディーテ」

 

 ディーテが持つ教会の中で会話をしているユウキ。思い出した様にストレージから鍵を実体化すると、ディーテに見せて駄目元で訊いてみた。

 

 「この鍵なんだけどさ、どこの鍵か分からない?」

 「この鍵.....もしかして、カーヌスの....?」

 「知ってるの!?」

 

 食い付いたユウキを見て、やっと正気を取り戻したのか、ディーテは咳払いして話し始める。それも、憶測に過ぎない話なのだが。

 

 「私の知り合いのホームの鍵かも知れません。鍛冶士だったんですよ。確か、専属契約を結んで下さったプレイヤーさんが居たとかで、ここにも来てくれましたよ」

 「その、契約したプレイヤーの名前は?」

 「シュユさん、でしたね」

 

 ビンゴ、そして最悪だ。鍵の説明を見れば、ホームの所有者はシュユになっていた。つまり、元々の所有者であるカーヌスは死んでいる。譲渡して貰ったとも考えられない事も無いが、シュユが鍛冶士をやるなど考えにくい。だから、だからこそユウキは--

 

 「....ねぇ、ディーテ」

 「どうしました?」

 「その工房の場所、教えてくれないかな?」

 

 その事を、隠す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここが工房ね.....ホントだ、開いた」

 

 鍵を鍵穴に差し込む様な動作をすれば、呆気なく扉は開いた。しっかりとドアを閉めて中に入ると、乱雑に置かれた紙の束が目に飛び込んでくる、壁には数々の武器が掛けられており、奥の扉が工房に繋がっているのだと大体察する事が出来た。

 設計図に見える紙には図面と機能、武器の使用者の理想的なキャラ構築(ビルド)が書かれている。その中には変態的とも言える武器もあり、変わり者だったのだろうか、とユウキは苦笑して部屋を見回す。そして特別にユウキの目を引いたのは、厳重に固定された一振りの剣だった。見たところ、軽量片手剣のカテゴリに入るだろう。黒と紫に彩られたその剣は、妖しい輝きを放っていた。

 

 「....この剣、は....」

 

 何故か手に取ってしまった。剣を固定していたボルトは呆気なく床に落ちてゴトン、と音を立てた。ユウキの右手に収まるその片手剣は異様な程にフィットしていて、そして軽かった。剣が収まっていた向こうの壁には穴が空いており、そこには【記録結晶(レコード・クリスタル)】が埋まっていた。指で触れば固定されていなかったのか、コロンとユウキの掌に収まった。ロックされていないと分かると、彼女は迷わずに内容を聴く事にした。

 

 『この記録結晶の音声を聴いているという事は、僕は死んだか鍵を落として家を漁られたんでしょう。でも、家捜しなんてする人はこんな古い記録を知ろうとはしない、そう信じて僕はこの音声を遺します。

 この記録結晶の手前に固定されている剣は、僕が会った事が無い人の為に造りました。彼を、シュユさんを止める為の手段として』

 「え....?」

 『あの人の武器は、ハッキリ言って真正面から渡り合おうとするのは不可能です。そんな事をすれば、どんなに頑丈な武器でもいずれ破壊される。シュユさんの【葬送の刃】の耐久力は瞬間耐久力と総耐久力、どちらも化け物クラスに多いんです。

 でも、もしも彼が道を違えてしまった時に、抑止力が無ければ彼は墜ちていくだけです。シュユさんは強い。でも、誰よりも矛盾に満ちていて、それでいて()()()()()()()()()()()()()()()()。放っておけば、いずれ自分で壊れてしまうでしょう。ですから、僕は彼を止める為に剣を打ちました。

 変形武器、仕掛け武器職人である僕がかつて打ち、SAOを騒がせた10本の剣。今では前線で使える程のスペックを持たない為に忘れられましたが、僕はあれ以来普通の武器を打つ事は止めました。でも、彼を止める為に使って貰えるなら、本望です。仕掛け武器職人の僕が打った、最強にして邪道のこの片手剣を使って、どうか彼に光明を届けて下さい。.......頼みましたよ、()()()()()

 

 彼の、カーヌスの遺言とも言える記録は、これで終わっていた。彼は予見していたのだ。シノンよりもユウキよりも、誰より危ういバランスで居たのはシュユであり、何かが有れば壊れてしまうと。それが解っていたからこそ、カーヌスはユウキにこの剣を託そうと思ったのだ。1度話した事のあるシノンではなく、1度も会った事が無いユウキに。武器の相性的にもシノンよりユウキの方が勝機が有るだろう。でも、ユウキは暖かい気持ちを剣から感じた。何も打算が無い、純粋にシュユを想って打った遺作。それを使って、シュユを止めようと誓った。

 

 「止めるよ。ボクが、シュユを」

 

 彼女はカーヌスの遺作--【聖女の祈剣】を腰に下げると、どこかへと歩き出した。自分の勘が導く、シュユが居るかも知れない場所へと。




 アスナ「ヤンデレ要素、薄くないかな?」

 ユウキ「流石に今の所じゃ出せないからね。元々日常を書くのが苦手な作者だから、仕方無いと言えば仕方無いのかも」

 アスナ「暗い展開なら出てくるのに?」

 作者『だからごちうさ書くの諦めたんですよ』カンペ

 アスナ「書こうとしてたんだ....」

 ユウキ「ま、結局はボク達に落ち着いたんだし、許してあげよう!」

 作者『ありがたき幸せ』カンペ

 ユウキ「さて、そろそろ締めようかな?」

 アスナ「そうね。じゃあ行くよ、せーの--」

 ユウキ・アスナ「「次回もお楽しみに!!」」
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