アスナ「シノのんとユウキの、女の子同士の決闘!どっちが勝ってもおかしくないよね!」
シュユ「まぁ、腕前も同じくらいだしな。しかも負けられない戦い、眼が離せないな」
アスナ「と言う訳で、どうなる36話!?」
火花が散る。それは比喩的な表現ではなく、事実シュユの構える片手剣とユウキが振るう剣がぶつかり合い、火花を散らしているのだ。甲高い金属音が鳴り響き、防ぐ為に構えた右手にはビリビリと衝撃が伝わってくる。
ユウキのバーチカル・スクエアをホリゾンタル・スクエアで相殺する。シュユの武器的に手加減して攻撃を加える、などという真似はやりにくいし、そもそもユウキ相手に手加減など愚の骨頂だろう。そんな事をすればこちらが斬り殺される。短い硬直の後、放たれる突きを葬送の刃に付属する大鎌の柄で往なしつつ、シュユは舌打ちする。
元々口達者ではないシュユが、今のユウキを言葉で止められる訳がない。どうすれば良いのかなど、そんな答えは出てこない。ユウキの殺意の対象が自分なら、シュユは喜んでその命を差し出す。しかし、その対象はシノンであり、ユウキがシノンを殺すなど到底容認することはできない。その逆も然り。シュユにとって大事なのはユウキとシノンであり、そのどちらにも優劣は存在しない。優柔不断にも思えるだろうが、それが事実なのだ。
容赦なく振るわれる剣を捌いている最中、ユウキの拳がシュユの腹部にトン、と
「シュユにはボクだけが居れば良いんだよ!シノン、キミは要らないッ!!」
「残念ね、私の事はちゃんと覚えてたのよ!あなたこそシュユに必要とされてないんじゃないの!?」
シュユが距離を取った隙に、シノンとユウキが戦いを始めていた。エネミーに向ける様な、しっかりと体重を乗せた一撃。相手を殺す為の一撃は当たれば死にかけるのは当然、
シュユは片手剣形態の葬送の刃を構え、介入しようとするが弾かれる。当然、それはSTRに補正が乗っていないからだ。2人は互いを殺そうとすれども、シュユを殺そうとはしていない。それは当然、シュユと添い遂げたいと願っているからであり、その願いを達する為にシュユを巻き込んで殺してはならないからだ。
止めようにも、大鎌形態で戦おうとすればそのSTR補正の高さから致命傷を負わせてしまう。千景で戦うにしても、止めるには素の状態の千景では威力に不安が残る。と言うより、カタナはクリティカル能力が高く耐久力が低い為、あまりこの局面には向いていない。だから片手剣形態の葬送の刃で戦っているのだ。
「ッ、クッ!!」
「つぅッ!!」
2人の得物がぶつかり合い、互いの身体を弾き合う。間髪入れずに飛び掛かり、再び鍔競り合いの形に持ち込む。殺傷部位的に鍔競り合いではユウキの方が有利だが、槍はDEX寄りだが中々のSTRを要求される武器種だ。シノンは地力でユウキを押し込む。まだどちらも体力は減っていないとは言え、この均衡がどれだけ続くかは誰にも解らない。
実際問題、シノンとユウキと戦う場合、シュユはかなり不利な対面なのだ。シュユは戦いの最中に
だが、それは得物を用いた真っ向勝負に限る話だ。元よりシュユのスタイルは剣1本で道を斬り拓くスタイルではなく、数多のアイテムを用いて道を造り出すスタイルだ。シュユはアイテムストレージからミスリルの鎖と石ころを取り出すと、先端に石ころを結び付けた鎖を両手に持ち、2人に向けて放り投げる。成功するかは一種の賭けだったがそれは補正も加わったDEXのお陰か、鎖は思い通りの軌道を描いて2人の武器を握る手に絡み付く。
「「シュユッ!?」」
「いい加減に....しろッ!!」
全力で鎖を引き寄せ、2人の体勢を崩すと【歩法】の初級ソードスキル【アクセル】を用いて単純な直線の短距離ダッシュを行う。シュユは2人を抱き寄せ、そのまま地面をゴロゴロと数メートル転がっていく。ダメージこそ無いが、先程の熔鉄デーモンとの戦いの余波で炭化した草が服や身体に付着し、3人の身体を黒く染める。シュユは展開した柄に刃を装着し、STRに補正を変更して2人を押さえ込む。その間にも2人は暴れるが、シュユは決してその手を緩めない。
「離してよ、シュユ!ボクは--」
「そうよ、私は--」
「--うるさい!さっきから2人だけで話を進めるなッ!!」
「「...ッ!?」」
2人は目を見開き、驚愕に表情を染める。滅多に--いや、1度も自分達に怒鳴った事が無かったシュユが声を荒げたのだ。しかも、自分達を強引に押さえ込んで。
「オレは確かに2人に命を捧げた!だけどな、オレに関する事で2人が殺し合うなら、オレは自殺する!!」
「それなら私は後を追うわ!私は--」
「--なら仲良くしてくれよッ!!」
シュユの悲痛な叫びが木霊する。そして、シュユは一言漏らした。
「オレだって死にたい訳じゃないし、2人に死んで欲しくもない....!」
「シュユ....」
その表情は鍔付きの帽子のせいで見えないが、涙は流さないにしろ哀しんでいる事を理解するぐらい2人には造作もない事だった。自分達の手を押さえるシュユの手は震えている。当然だ。大人っぽく見えるとは言え、それはただ
「.....もう大丈夫。ごめんね、シュユ。鎖、取ってくれないかな?」
「....分かった」
「ありがと。....ちょっと、なんてレベルじゃないけど動揺しちゃった。やり過ぎたし、落ち着くべきだったね。本当にごめん、シノン」
「...ううん。私もあなたとの戦いに乗らず、止める事に全力を尽くすべきだった。お相子よ」
シュユが哀しむのなら、これ以上続ける理由は2人には無い。確かに互いを邪魔だと思う事も無いとは言えない。だが、想い人が望む事がユウキとシノンが仲良くして暮らす事なら、2人は喜んでそうするだろう。元より、家族なのだから。
「....戻ろう、家に」
「だね。今度はシノンも一緒に、ね」
「勿論、着いていくわよ。まぁ前にシュユと暮らしたのだから、その分と思えば良いしね」
3人は歩き出す。満身創痍、疲れきったその身体で自分達の家に。今この時だけの僅かな共生かも知れない。だが目の前の幸せを噛み締める為に、3人は歩む。3人は若者、見えぬ先の事を思っても変わらないのだから、行き当たりばったりになろうとも、歩んでいく。