2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 シノン「前回のあらすじのコーナーね」

 ユウキ「前回はボク達が和解したね!まぁ、和解って言えるかは怪しいけど」

 シノン「次回から攻略にブラボやダクソの要素を絡めていくらしいわよ」

 ユウキ「ふ~ん。じゃあ取り敢えず、どうなる37話!?」


37話 非人道と殺人者

 「あのフィールドボスを【パニの町】に誘い出し、全員で叩きます。何か異存は?」

 「待ってくれ!あんたはNPCを犠牲にしてボスを倒そうってのか!?そんな馬鹿な真似--」

 「--私達と違って、復活する命です。1度や2度死んだ所で、大した事は無いでしょう」

 「なっ...!」

 

 第56層攻略会議での会話だ。【犯罪者(オレンジ)狩り】と呼ばれるプレイヤーの鎮静化と抑止力としてプレイヤーネームを公開、更にKoBが先頭に立っての治安の強化と維持を終えて数週間が経ち、やっと攻略を再開した。

 現在は凄まじい堅さと攻撃力を持つフィールドボスの攻略法としてアスナが立案した、NPCが暮らす町にボスを誘い出し、NPCを攻撃している所を攻略組が全員で叩くという方法を提示していた。しかし、それに真っ向から反対したのがキリトだ。が、ここは攻略組とは言え殆どのメンバーがKoBのメンバー。旗色は悪いとしか言えなかった。

 

 「そんな人道的、非人道的という面で話していては攻略は進みません。今はそんな事より--」

 「--他の命を軽視して自らの保身に走る、か。悪くないな」

 「....あなたは....」

 

 会議室代わりになっている洞窟の壁に寄り掛かり、腕を組むプレイヤー。第1層から変わらない灰色の服装備に背中に背負う特徴的な柄、鍔付き帽子を目深に被るそのプレイヤーは現在最も恐れられ、そして最も命の価値を知るプレイヤーだった。

 

 「必要最低限の犠牲(コラテラルダメージ)を容認できる様になるのは指揮官としては悪くない。でも、人間としてはどうなんだろうな」

 「....何を言いたいのか、分かりかねますね、シュユさん」

 「第3層から第9層まで続く、エルフの連続クエストを受けた事があるヤツはこの中で居るか?」

 

 突然問いを投げ掛けられた面々は少しざわつくが、その殆どが有るか無いかを互いに問うものだ。しかも殆ど全員がクエストの達成如何は兎も角、受けた事が有る者だった。当然と言えば当然、今はβテスターも与り知らぬ領域に達した為に大体のプレイヤーと変わらないが、第3層から第9層に関してはβテスターが先の領域を知る時代。その時に発行されていた指南書にはこの連続クエストの事が書いてあり、当時に直せば破格のクエスト報酬を狙い、攻略組に居るメンバーの大部分はこのクエストを受けてきたのだから。

 それを大体知っていたシュユは話を続ける。

 

 「なら、自分が味方した陣営のNPCと話した事は有るだろう」

 

 それは当然だ。クエストを進行するにはクエストNPCと話さなければならないし、与えられる部屋に案内して貰うにも風呂に入るにも飯を食うにも近くのNPCに言わねばならないのだから。

 

 「それを踏まえた上で訊こう。()()()()N()P()C()()()()()()()?」

 

 普通のゲームのNPCならばソレが出来る者は腐る程居る。何度話し掛けても同じ言葉しか返さない存在を、人は殺す事に罪悪感を覚えられない。何故なら、同じ言葉しか返せない違った存在としか捉えられないのだから。

 だがSAOは違う。商人NPCが分かりやすいだろう。普通のゲームなら何度行こうが「いらっしゃい、何を買う?」しか言わないだろう。しかし、SAOは何度行っても同じ台詞を聴く事は殆ど無い。同じ、と言っても僅かに同じなだけで全く同じ言葉を放つ事は無い。極めつけがサービスだ。通えば通う程に『おまけ』して貰えるかも知れなくなる。常連として認定されれば定価から数%だが割り引きして貰える。完全ランダムの不定期イベント、そう言うのは簡単だ。だが、こちらの姿を認めた時に満面の笑みを浮かべてイチオシの商品を薦めてくる者の姿を見て、「これはNPC」と断じる事が出来るプレイヤーはどれだけ居るだろうか?

 その辺りの街を走り回って遊ぶ子供も、その無邪気な笑みは予めプログラムされたNPCとは思えない。正に『命』を持つと思える程、自然で人間臭い。少なくとも、犯罪者よりは人間らしいとシュユは思っている。

 

 「それを言う前にお前はただの人殺しじゃないか!【犯罪者狩り】なんて御題目が無けりゃ、大量殺人犯なのはどっちだよ!NPC(アイツら)は死んでも生き返るんだ、副団長の言ってる事は間違ってないだろ!?」

 「ッ、あなたは....!」

 「落ち着け、シノン。彼の言う事は確かだ。オレは紛れもない犯罪者狩りだったし、犯罪者とは言っても人を殺してきたのは事実。ああ言われても仕方無い」

 

 シュユは右手に蒼い鈴の様なアイテムを実体化させると、シュユを追求したプレイヤーの肩に大鎌形態に変形させた葬送の刃を首筋に当て、告げる。

 

 「今公表するが、オレは10秒以内なら死者を蘇生できるアイテムを持っている。だからキミはNPCと同じ状況と言える。だから、1()()()()()()()

 「そ、そんな事すればあんたはレッドの仲間入りだぞ、それでも良いのか!?」

 「コルなら沢山持ってる、【免罪】の準備も万端だ。...あぁ、安心してくれ。殺しには慣れたからな」

 

 もしこれをしているのがキリトだったなら、「お前に出来る訳がないだろ!?」と虚勢を張る事が出来たかも知れない。しかし、目の前に居るのはシュユだ。シュユのカーソルは未だに緑のままとは言え、このSAOでもトップに入る程に人を殺したプレイヤーである事は変わらないし、だからこそ彼の言葉には他の誰も持たない説得力が有る。首筋に当たる刃のひんやりとした感触が、尚更恐怖を掻き立てる。

 

 「シュユ、止めて」

 「ユウキ...分かった」

 「...黙って聴いてたけど、ボクも反対だな。SAOはどこまで行ってもフェアだし、NPCを1つの命と認めてる。そんな事をした時のペナルティが有るとも知れないし、多分ボク達は何か核心を見逃してる。だから、もう少し探索期間を長くしても良いんじゃないの、アスナ?」

 

 アスナは俯いて少しの間だけ押し黙る。ユウキの言葉には筋が通っていたし、アスナだって連続クエストを受けた身だ。ここまで言われれば、探索期間の延長を命じるのは当然だろう。

 手頃な石に座って溜め息を吐いたアスナに、シュユは言った。

 

 「戦う仲間を『駒』や『数』としか見られなくなったら、ソイツはもう人じゃない。それを覚えておくと良い」

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