2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 烏羽「前回のあらすじだね」

 ユウキ「あれ?名前は?」

 烏羽「ババアに細かいこと突っ込むんじゃないよ。ホラ、さっさとあらすじ言いな」

 ユウキ「前回はボクと皆が別れて、それでおばあちゃんと会ったんだよね」

 烏羽「まあそうさ、褒めてあげよう。さぁて、44話はどうなるのかね」


44話 シノン編 悪夢とやつし

 「っぅ.....ここ、は....?」

 

 シノンが目覚めたのは洞窟の中だった。近くに【灯り】が有ったので灯してみるが、使える機能はアイテムボックスと売買機能(ヤーナム独特の商品しか買えないのだが)だけで、肝心の転移機能は使えなかった。

 視界の右下に表示されるエリア名は【悪夢の辺境】。辺境という名前の通り、今までシノンが見てきたエリアの影も形も無く、酷く歪な景色が広がっていた。壁には人の頭骨の様な模様が彫り込まれ、外に出てみれば墓石の様な岩が沢山有る。しかも、血の様な粘性のある液体が糸を引いている岩も有り、少なくとも居心地の良い場所ではない事は確かだろう。

 狼の様なエネミーが座っている。シノンは息を殺して足音を消し、ゆっくりと近付くと一息に槍を心臓のある辺りに突き刺し、刺さったエネミーの身体を蹴って無理矢理槍から外す。僅かに体力は残っていたが、それなりに高さのある所から下へと落下した為、呻き声と共に死亡したのを確認した。

 

 「中々な腕前だな」

 「あら、ありがとう。....で、あなたは?」

 「取り敢えず、まずはその槍を突き付けるのを止めてくれ。流石にいい気分にはなれない」

 「危ないって言わないのは余裕の顕れって事で良いのかしら?」

 「さぁ、それはそっちの受け取り方次第だろう?」

 

 岩に腰掛けていたのは襤褸切れを纏った男だ。喉元にはシノンのアルスターの槍が突き付けられているものの、男の声音には全くと言って良いほどに逼迫した様な空気は見受けられない。たかが飼い犬に手を噛まれた程度、と言わんばかりの余裕ぶりだった。そんな彼に対して敵対し続けるのは面倒になったのか、シノンは槍をゆっくりと下げた。

 

 「ハァ....あなた、友達少ないでしょ」

 「友など、狩人には不要なものだ。...いや、自我を保つ為にも、必要なものか」

 

 襤褸切れの様なフードの奥にある彼の瞳は誰かに似ている気がする。だが、どこかが違う。

 

 「横にずれておけ」

 「え、えぇ...」

 

 彼の言葉通りに横にずれる。その瞬間、彼の手には刀身が大きく曲がった剣が握られていた。その剣を振ると弓となり、矢が射られる。放たれた矢はシノンの背後に足音を潜めて迫る狼人間型エネミー【ローランの銀獣】の頭を撃ち抜き、その息の根を止めた。

 脅威的なのはその照準速度だろう。彼のソレは規格外な程に速く、そして正確だ。SAOに存在しない遠距離攻撃とその正確さ、そして剣である事から剣の腕が(なまくら)である事は確実に有り得ないだろう。戦いになれば、確かに負けるのはシノンだ。

 

 「中々に面白い眼をしている。理性で人が殺せる眼だ」

 「私が、人を殺す?そんな事しないわよ」

 「どうかな。人が人である事は難しいが、獣に堕ちるのは容易い。...まぁ、あんたはそこまで堕ちないかも知れんがな」

 「....?意味が解らないわ」

 「あんたは人を殺せる人間だ。それも怒りや恨みの感情ではなく、単純な損得勘定で殺せる眼をしている。だからこそ気を付けろ。少なくとも、あんたの近くに居る狩人はそれを望まんだろうからな」

 「あなたはシュユを知ってるの!?」

 「新米の名前はシュユと言うのか、覚えておこう。あんたからは狩人の匂いがしてるだけだ。まだ青い、目覚めもしてない狩人のな」

 

 確かに、周りからはクールやら冷静やら、はたまた無感情系とも言われた事がある。でも、だからと言って人を理性で冷酷に殺せるかと問われれば答えはNOだ。少なくとも、そこまで人間としての尊厳を捨てている訳ではない。

 

 「じゃあ、俺は行く。ここには血に酔った狩人も居る上に上位者の寝床もある。気を付けた方が良い」

 「あなた、名前は?私はシノン」

 「ふむ、結構似ている名だな。俺はシモン、また会う時も人で居たいものだな」

 

 そう言ってシモンは崖から飛び降りる。追い掛けて見下ろそうとするが、一応はNPCだ。そういう演出だと割り切り、この歪な悪夢を改めて睥睨する。取り敢えずは、ここを脱出する事から始めなければならない。シノンはアルスターの槍を構え、前へと進んだ。

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