ユウキ
特典により救済。AIDSを発症している原作からは一変、病気など1つも持っていない健康優良児になり、天涯孤独の身になる所を秋崎家の子供となる。現実では序章で言われた通り、授業中の態度は決して優等生ではないが悠が教えている為成績は優秀。誰にでも分け隔てなく接する性格からか、先輩後輩同級生問わず人気は高いが、自他共に認める悠大好きな為に告白はされない。
SAOダイブ前はこっそり母親から料理を教わっていたりする。しかしまだ満足なレベルには達しておらず、悠に食べさせた事は無い。
SAOダイブ後は当初シュユ達と行動していたが、途中アスナ達と行動を共にし一時シュユ達とは別行動。現在は合流したがヤーナムでは逸れてしまった。
依存系ヤンデレ。依存度はまだ途上、大体中の下くらい。
「正に悪夢ね。頭がおかしくなりそう」
イカの様な軟体動物型のエネミーや狼男、顔が無いゴーレムの様なエネミーを倒し続け、シノンは溜め息を吐いた。アイテムの在庫はまだ余裕が有るものの、精神的な余裕は無い。回復アイテムが残っているのは偏に【アルスターの槍】の効果によるエネミー撃破時の回復のお陰だが、擦り減った精神を回復してくれる訳ではない。
この【悪夢の辺境】では散々な目に遭った。アイテムに続く道に硬貨が置かれていたので近付いてみれば(決してアイテムに釣られた訳ではない)、誰にされたかは判らないが崖から突き落とされ、毒の沼を突き進む事になった。身体を蝕む毒を解毒剤をガブ飲みして打ち消すが、次は複数のゴーレムから大きな岩を投げられ、全力疾走を余儀なくされる。
その先には脳みそに目玉が付いた様な女性型のエネミーに凝視され、頭がおかしくなりそうになりながらもエネミーを倒してシステム的な面の体力を回復。今のシノンはその先で見付けたエレベーターで休んでいた。道中の敵は全て殺し尽くされている為、敵襲の心配は無い。それでも気を抜けないのがこの悪夢の辺境なのだが。
「ここまで一切血に酔う事無く無事にここまで来るとは、予想外だったな。ほおずきも殺したのか、大したものだ」
「ほおずき?」
「脳みそ女だ。ヤツに見られた者の殆どが発狂するんだがな」
「確かに気持ち悪かったけど、発狂する前に倒したのよ。それより、あなたのその姿を見てる方が発狂しそうよ」
事実、今話し掛けてきているシモンの服装は襤褸切れが返り血に染まり、肝が細い人が見れば飛び上がって驚くと思える程だ。それも、本人の顔が見えない事が助長しているとシモンは気付いているのだろうか?
「ん、人にはそうそう会わないからか、身なりに気を遣う事を忘れがちだな。悪い」
「別に、気にしてないわ。それを言うなら私だって酷いものでしょ?」
「フッ、違いない」
シモンの状態に負けず劣らず、シノンの服装もかなり酷いものだ。返り血に染まり、近付けば濃密な血の匂いが鼻腔を突く。濡れたインナーが地肌に張り付く不快感すら慣れてしまい、綺麗な髪も血が固まってバリバリだ。こんな状態を『彼』が見れば、即座に髪のケアに取り掛かるだろう。
「どうだ、この場所は?」
「最高の居心地ね。特に毒沼と気持ち悪い軟体動物が素敵だと思うわ」
「勘弁してくれ、俺だって皮肉を言いたい訳じゃない。…まぁ、そんな皮肉を言えるのなら大丈夫だろう」
「あの、獣がどうだかって話?」
「まぁな。お前は
「…ねぇ、それって――」
「――気を付けろ。お前が向かう先に居るのはこの悪夢に巣食う落とし子だ。一筋縄ではいかないぞ」
シモンは前会った時と同じ様にシノンの前から姿を消す。もう追い掛けても無駄だろう。シノンは槍を支えにして立ち上がり、恐らくボスエリアである場所へと向かう。休む前に見た時は1体敵が居た筈だが、そこには何本かの矢が突き刺さっており、シモンが狩ったという事実が残っていた。こういう不器用な所はシノンに『彼』を思い出させる。会いたいと思うが、今は
地面に突き刺さる無数の柱に、巨大な塔。完全ではないとは言え円形の広場だ、確実にボス戦だろう。そう思った矢先、巨大な物体が空から降ってくる。ずんっ、と身体の芯まで響く様な重低音と振動、巻き上がる土埃に目を開けた時、『ソレ』はシノンの目に映った。
【アメンドーズ】
2本脚で地に立つ、複腕の化け物。頭は今アイテムストレージに入っている扁桃石に似ており、まるで赤子の様にこちらを見ている。と思った瞬間、アメンドーズの頭に無数に有る瞳が開く。シノンは左斜め前方に駆け出し、思い切り飛び込む。アメンドーズの頭から照射された光線は地をなぞり、その軌跡に爆発を起こす。当たれば大ダメージは免れないだろう。
「硬ッ…マトモな攻撃は通らないわね」
ガラ空きの胴体に槍を突き込むが、硬い皮に阻まれて切っ先が身体を貫く事は無かった。即座に飛び退くと、その場に大質量の胴体が叩き付けられる。シノンは怯まずにその頭に槍を突き刺す。すると、身体と比べれば異様に柔らかい頭を抵抗無く貫いた。
声にならない悲鳴が響き、アメンドーズは頭を振り乱す。そして力任せに地面を叩くと、それだけで地面は揺れてシノンのバランスを少しだけ崩す。それを察知したのかどうか、アメンドーズはシノンの身体を掴もうと手を伸ばす。
「私の身体に触っていいのは、シュユだけなのよ!!」
【歩法】の中でも1、2を争う程使い勝手の良いソードスキル【ラピッドステップ】を使用。その場に残像を残す程の速度で回避、更に振りかざされた手に向けて槍系ソードスキル【レイシーズ・ラトナビュラ】を使う。その場で2回転して薙ぎ払い、更に神速の8連突きを見舞うという槍系ソードスキルの中でも大技のこのスキルの全攻撃を当てる。
細く長い腕はそこまで皮膚が硬くなく、槍はしっかりと腕を貫く。怯み、掌を地面に近付けた事をシノンは確認すると、槍をアメンドーズの掌に突き刺し、地面に縫い付ける。高いAGIにモノを言わせて長い腕を駆け昇ると跳躍、落下の勢いを加えた
「―――、―――!!!!」
「あなた、自分の腕を…!」
力任せに槍を引き抜き、シノンを振り落として自由になったアメンドーズは自分の2本の腕を根本から引き千切り、1番攻撃に使う前腕の2本腕で引き千切った腕を剣の様に持つ。その間にも背中からは絶えず血が地面に滴っており、だだでさえ濃い血の臭いが更に濃くなった。
まるで赤ん坊だ、シノンはそう思う。巨大かつ異形の見た目にそぐわず、ただ癇癪を起こした幼子の様な印象を受けるのだ。
引き千切った長大な腕は振り回すだけでも遠心力と凄まじいであろうアメンドーズの膂力が加味され、シノンの防御程度なら貫通してシノンを殺して余りある威力を持つ。掠り傷で減った体力をポーションを飲み干す事で回復し、ラストスパートを掛ける。
ランダムに振り下ろされる無数の乱打を躱しながら進み、アメンドーズの身体の下に入り込む。長いリーチは長過ぎる故に、自分の近くの敵を攻撃するのには向かない。シノンを攻撃する手段を持たないアメンドーズは天高く飛び上がり、シノンを踏み潰さんと迫る。
「――ッ、ハアアアァァァァッ!!」
シノンは地面に石突を突き立て、穂先を天に向ける。槍を下から支える様に屈んだ次の瞬間、槍の穂先が消失する。それは決して折れた訳ではなく、シノンが天へと向けた刃はアメンドーズの柔らかい頭へと突き刺さっていたのだ。凄まじい勢いで減っていくアメンドーズの体力バーとアレスターの槍の耐久力。凄まじい荷重により減り続ける耐久力に怯む事無く、シノンは烈迫の気合を込めて槍を突き出す。
次の瞬間、手からは槍が消失しシノンの頬を血の雨が濡らした。目の前からはもう、アメンドーズの姿は消えていた。
「…倒した、のね」
目の前に現れた【灯り】に、初めてアメンドーズを倒したという実感が湧いてくる。死にそうになって倒した訳ではなく、むしろ体力はかなり余裕が有る。だが、ボスを倒してもどこか空虚なのは何故なのか、今のシノンには解らなかった。
灯りを点し、座っているとどこからか馬車が現れる。広場の中央で止まると、音も無く扉を開けている。まるでシノンが乗る事を待っているかの様に。
「………」
シノンは立ち上がり、乗る事にした。一人掛けのシートはまるで王族が座る椅子の様に柔らかく、乗り心地は保証されているだろう。シノンは馬車に揺られながら、ゆっくりと目を閉じた……
いやぁ、原因不明の発熱に見舞われたせいで投稿が遅れてしまいました。申し訳無いです。皆さんも体調管理には気を付けて下さいね。