2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 ユウキ「今回のキャラ紹介は皆大好き、自称頼れる兄貴分のクラインだよ!…え?シュユはどうしたのかって?…勘の良い読者さんは嫌いだよ」


 クライン

 人情深く、肝心な時はかなり頼りになる兄貴分という点は原作と変わっていない。原作と比べると不安定な本作のキリトの事を非常に気に掛けており、良く様子見がてらにキリトを遊びや食事に連れ出している。
 シュユとも面識が有る。初対面はクリスマスイベントの時で、それ以来頻繁とはいかないが同じカタナ使いという事で付き合いを深めていたりする。因みに、シノンとユウキがシュユを好いている事は知っているが、当のシュユが2人の好意の捉え方を間違っている事に気付いている人物でもある。それから、ユウキとシノンに協力していたりする。


51話 シノン編 氷雪の廃城

 ガタゴトと揺れる馬車の中、外から吹いてくる冷たい空気に目を覚まされる。見れば、目の前の扉は完全に開け放たれ、そこから入ってきた雪と冷えた空気がモロに自分に当たっているではないか。若干苛つきながら足元を確認し、ゆっくりと外へと出る。

 

 「大きい城ね…最悪」

 

 今のシノンにメインウェポンは無い。ダガーはあくまでサブであり、道中を乗り切れる性能も耐久も無い。手に入れた【小アメンの腕】という武器は特殊な武器で、どちらかと言えば重量級に分類される武器なのでシノンが扱うには不安が残る。

 

 「…やるしか無いのよね」

 

 小アメンの腕を肩に担ぎ、城門へと向かう。手を触れる前にまるでシノンを迎え入れる様に扉はゆっくりと開き、人が1人入れる程度の隙間を開ける。完全に開かないのはどこかが凍結しているからなのだろうか?まぁ、時間の無駄と言えばそれまでなのだが。

 恐らく雪が降っていなければ緑豊かだったであろう庭へと出る。そこにはシノンよりも大きいノミが何匹も闊歩していた。腹に溜まっている赤い液体が何なのか、想像には難くない。そして自分が吸われればどうなるか、解らないシノンではなかった。目も鼻も大して良くないのか、【隠蔽】と【気配遮断】を併用すれば簡単にすり抜けられた。演技をする様な知性が有るとは思えないので、気付かれてはいないのだろう。

 城へ入る門を開けると、後ろからノミが飛び掛かってくる。それを最低限のサイドステップで避けると、小アメンの腕を振り下ろす。先端の鉤爪が生きているかの様にのたうち、叩き付けの後に追撃を加え、ノミの血液を撒き散らす。もう1度小アメンの腕を叩き付けると、ノミはポリゴンとなって消え去った。やはり使いにくい、そう思いながら担ぎ直して城内に侵入する。

 室内は暗く、そして寂れていた。庭には手入れされた跡がなく、こんな立派な城の入り口も荒れ果てていたのだからそれも当然か。

 ひたすら柱を磨く召使いの姿をしたエネミーを叩き潰す。耐久はあまり無いのか、その一撃だけで血とポリゴンを散らして消え去った。他にも召使いは居るのだが、近付いても襲い掛かる素振りを見せない為、階段へと進む。

 

 「それにしても寒いわね…これじゃ――ッ!?」

 

 たった一瞬気を抜いた途端、シノンの左後ろからナイフが振り下ろされる。咄嗟に階段を転がって回避、全身を包む様な不快なフィードバックを無視し、襲い掛かってきた敵を見やる。フードを目深に被り、祈る様に組んだ手にはナイフが握られている。シノンは体勢を低くして突進、【穿牙】を当てる。吹き飛ぶ間もなく体力バーは消し飛び、全く声を上げずに消え去る。ダメージは本当に極僅か、にも関わらずシノンは膝をつく。余りにも寒過ぎるからだ。

 SAOは仮想世界だ。だがナーヴギアは脳にアクセスし、触感や音、映像や匂いを本当の現実の様に伝える。それがSAOの最大の特徴であり醍醐味だが、デスゲームになれば話は別だ。しかもヤーナムの様に血がダイレクトに描写される場所ならもっと酷い事になる。敵を倒す度に生温かい液体が身体を濡らし、鉄臭い臭いが鼻腔を突き刺す。そして何より、今感じている肌を突き刺す様な寒さは確実にシノンの精神力を削り、身体の熱を冷ましていく。以前シュユが実践した仮想脳が感じるアバターの疲労を精神力で捻じ伏せて何十キロも走破した様に、感覚を強靭な精神力で捻じ伏せる事も出来ない事ではない。が、生半可な事では無い。何度も言うが仮想とは言え現実なのだ、現実を思い込みで変えるなど正気の沙汰ではない。

 そして、【狩人の悪夢】の突破で疲れ切ったシノンにはこの寒さに打ち克つ事は難しかった。倒れ伏して気絶したら最後、女性型のエネミーに殺される。そうは思うものの、瞬きの度に重くなっていく瞼と薄れゆく意識には抗い難く、ゆっくりとその瞼を閉じた…

 

 「あの悪夢を突破したシノンと言えど、疲労には勝てないか?…それも仕方が無い、か。少しの間なら任せておけ、露払い程度なら変わってやれなくもないさ」

 

 ヒュンッ、という風切り音が連続して聞こえる。だが、閉じられた瞼を完全に開ける事は叶わず、音でしか状況を判断出来ない。だが、その中でシノンは現れた人物の名を呟いた。

 

 「シ、モン……?」

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