2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 シュユ「今回の紹介はシリカだな。つっても、この作品じゃまだチラッとしか出てないから、あんまり実感は沸かないな。ま、このコーナーは作者の考えた設定を垂れ流してるコーナーだから、何でも良いか」


 シリカ

 あまり変更点は無い。使用武器は短剣だが原作でキリトに貰った物ではなく、カーヌスから贈られた可変武器を使っている。ピナはシュユにも懐いている。カーヌスが死んだ事を知らないまま、今は攻略組に入れる様に無理のないレベリングに勤しんでいる。


53話 シュユ編 発狂

 夢も見ないまま目が覚める。周囲を見回しても景色に代わり映えは無く、代わりに咽返る様な血の匂いが鼻の奥に突き刺さる。現実世界では嗅ぐことの無いであろう濃厚な血の匂いを(くさ)いと感じなくなっていた自分に、正に化け物ではないかとシュユは苦笑する。

 シュユが装備している物は鎧ではなく服だ。装備は血でグショグショに濡れており、じっとりと湿っていて重い。脚を動かす度にぬちゃり、と粘着質な音を立て、周囲の環境も相まって不快感を募らせるには充分だった。

 立ち上がると、後ろに少しふらついた。頭を振ってスイッチを切り替えると、前を見る。コンデションは最悪の一歩手前、と言った所か。最悪でないだけマシだ、そう割り切ってシュユは進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハッ、ハッ…クソ、面倒なエネミー配置しやがって…」

 

 シュユの足元には人型のエネミーが2体、血を流して転がっていた。1体は首を刈り取られ、もう1体は上半身と下半身が斬り離されてされていた。シュユは広がり続ける血溜まりに膝をつき、荒い呼吸を吐き出している。

 ゼロモーション・シフトこそ使ってはいないが、良く分からない遠距離攻撃持ちと近接武器持ちの組み合わせは倒せない訳ではないが、非常に厄介だった。葬送の刃のバフが無ければもっと苦戦した、或いは死んでいたかも知れない。

 前に進むと巨大な祭壇が有る。上から鎖で繋がれている所を見ると、エレベーターになっているらしい。が、生憎シュユは鍵になる物は所持していない。また引き返す事になるのか、シュユは辟易した。その瞬間、目の前にナニカが落ちてくる。反応する間もなく、腹部を殴られ意識を手放してしまう。せめてもの抵抗に、襲撃者が纏うマントを引き裂いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び目を覚ました時、目に映ったのは巨大な螺旋階段だった。青みがかった液体が薄く広がり、その中に脳が肥大化した様なモノが何かを捜す様に手を右往左往させていた。

 シュユは殴られたからかフィードバックが続いている腹部を押さえ、何かを捜すモノへと近付く。流石に液体の中を歩く気にはなれず、普通に床を歩いて向かった。

 

 「なぁ…なぁ…助けてくれよ。俺の目が…俺の目を、捜してくれよ…」

 

 音を聞き付けたのか、そう話し掛けてくる。シュユはボロ布を実体化させると青みがかった液体に浸す。ジュッ、と音を立てて少しずつではあるがボロ布は短くなっていく。少なくとも人体に害は有るだろう。そんな液体の中に落としたであろう眼球が残っているとは考えにくい。シュユはアイテムストレージに仕舞っていた葬送の刃を取り出し、大鎌形態に変形させると一息にその大鎌を横一閃に振り抜いた。

 

 「えっ…あ、なん、で…」

 「………嗚呼」

 

 きっと眼は見つからなかった。だから殺して、救った。その筈だ。その中に快感など一欠片も有りはしない。だがシュユの口角は吊り上がったまま、下りる事は無かった。身体の奥底から突き上げてくる様な快感が脳髄を刺激する。抑えられない、今なら何だって出来る、そんな全能感に浮かされる。

 

 「フッ、クヒッ、ヒャハハはハハはハははハ!!!!!」

 

 大鎌を握り、走り出す。螺旋階段の途中には先程葬ったモノと同じ様な姿をしたエネミー(獲物)が居た。有るか判らない眼でシュユを視認すると、叫び声を上げて殴り掛かってくる。シュユは更に笑みを浮かべ、狂笑と共に大鎌を振り回す。

 

 「死ね!殺す!オレが喰ってやる!だから死ね、早くシネよォォォォ!!!ケヒャハハハハハはハはハハハは!!」

 

 階段から血が滴る。死体が転がり、返り血が自身を濡らしていく度に正気が削れていくのを感じる。が、鎌を振るうのは止めない。笑い声に釣られたエネミーを狩り、更に笑みを深めていく。

 シュユは大きな扉を見付けた。恐らくは先に進む為の扉なのだろうが、その扉に階段が繋がっていない。故に、どこかでギミックを作動させなければならないのだろう。が、今のシュユはマトモではない。シュユはアイテムストレージに入っているレアリティが低い剣を投擲、螺旋階段の中心にある柱に突き刺すと刺さった剣目掛けて跳ぶ。剣の上に着地したシュユは踏み込んだ衝撃で剣が折れる程の踏み込みでもう1度跳び、先に進むドアを飛び蹴りで半ば破壊する様に開ける。

 そこは庭園だった。見慣れない花が咲き乱れ、中心には現代芸術の様な、少なくともシュユには理解ができない造形の柱が立っている。普段のシュユなら警戒しながら進むが、今は違う。花を踏み荒らす様に進む。まるで敵が出ても構わないと言わんばかり――否、むしろ出てこいと思っていた。

 

 「アハァ…♪」

 

 現れたのは青い人型エネミー。ゲル状の身体に自分より大きな身体、目に光は無く理性が有る様には思えない。大きな歩幅で着実に迫ってくるエネミーを視認したシュユは醜く笑って恍惚の吐息を漏らす。

 次の瞬間、エネミーは吹き飛んで柱に叩き付けられた。シュユが【アサルトステップ】で加速、エネミーが反応する前に【穿鬼】を当てたのだ。千景を納刀、抜刀して斬り刻む。が、途中でポリゴンとなって消えてしまう。もう死んだのか、そう嘆息するシュユの頭上から拳が振り下ろされる。咄嗟に反応したシュユは回避し、殴ってきたモノを見やる。そこには先程殺した筈のエネミーが殴り終えた姿勢をキープしており、その背後には同じ様な造形のエネミーが2体。更に柱に叩き付けた筈のエネミーが復活していた。

 

 【失敗作たち】

 

 幾らか体力バーは減っているが、それも全体からすれば少量でしかない。だが、シュユは怖気づかない。むしろ好都合と笑ってみせた。

 

 「そんなに死にてェのかァ…?でもオレは無抵抗なマグロは嫌いなんだよ。抗え、そして――」

 

 シュユはゼロモーション・シフトを使用、大鎌を振りかぶる状態で言った。

 

 「――オレに、殺されろ!!!ヒャハハハハハハハハハ!!!」

 

 凛、と鈴の音が鳴る。その瞬間に大鎌を振り抜くと寒天か何かを斬った様な感覚と共に刃が失敗作の1つを斬り裂く。だが、構わず殴り掛かってくる失敗作に見切りをつけてシュユは千景を納刀しながら他の失敗作へと向かう。抜刀からの斬撃はシュユの血液と刃が失敗作を斬り刻み、瞬く間に体力バーを削っていく。

 だが、いつもの様な精密かつ繊細な使い方ではない。カタナに分類される武器は刃を立て、しっかりと斬らなければ威力に補正が掛からないどころか耐久力の減衰に補正が入り、ただでさえ壊れやすい武器種だと言うのにもっと壊れやすくなってしまう。それでも壊れないのは打った鍛冶士の腕と血液で無理矢理補強しているからなのだろう。

 

 「グァッ…!!」

 

 背中に当たったのは鈍い拳ではなく、失敗作の内1体が放った光線だ。()()()()()()()に耐えながらもシュユは振り向く。そこには手を上げて空を仰ぐ失敗作の1体が。RPGに良くある魔法的なものか、そう結論付けるとシュユはアサルトステップを使用、その後にソニックリープを発動。持ち替えた葬送の刃に胴体の中心をブチ抜かれた失敗作はポリゴンになって弾け、そして直ぐに復活する。

 あと全体の体力は僅か、ならば畳み掛けるしか無いとシュユは斬り続ける。が、何かがおかしい。その違和感に気付いた時、シュユの側頭部を凄まじい衝撃と痛みが襲う。舌打ちをしながら後方へ下がると、先程まで自分が居た場所に立て続けに隕石が降ってきた。自分の体力バーをチラリと見やると先程の一撃だけで半分程削られていた。それでもシュユの笑みは消えない。むしろ内心ではもっとやってみせろ、などと命知らずとしか言えない様な事を思っていた。その中にユウキとシノンの事など残っておらず、ただ戦いの悦楽のみが在った。

 

 「しゃらくせぇ!!」

 

 辺りが暗闇に包まれたせいで、どこから飛んでくるか判らない隕石を見えているかの様に回避、何かと交信する様に両手を上げて動かない失敗作の1体に手刀を突き刺し、そのまま内臓を引き千切るかの如く腕を横に振り切る。【失敗作たち】の体力がゴッソリと減り、その代わりにシュユの減少していた体力がリゲインによって回復する。

 隕石を降らせる事を止めた失敗作たちはシュユに殺到する。速度はゆっくりだが、巨体が近付いてくる迫力に加えて必ず殺すという気持ちが見える(気がする)のでプレッシャーが尋常ではない。だが、シュユは逃げない。どころか()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「楽しかったぜェ…!冥土の土産に、持ってけやァァァァァ!!!」

 

 刃が血液を纏い、その進路上のモノ全てを斬り捨てる。無常紅吹雪、諸刃の刃が失敗作たち全てを薙ぎ払い、体力バーを消し飛ばす。上半身と下半身に強制的に別れを告げさせられた失敗作たちはポリゴンへと還り、シュユに多量の経験値を齎す。

 背後で扉が音を立てる。恐らくはロックが解除されて開くようになったのだろう。シュユは貴重なエクスポーションを開けて中身1本嚥下すると、瓶を投げ捨ててカタナを肩に乗せて歩き出す。首の節をボキボキと鳴らして歩く様子に、以前の様な雰囲気はもう無いも同然だった…




 失敗作たちが弱くないかって?…だって、弱いんだもん。実際、DLCボスで唯一初見クリア出来たの失敗作たちなんですよね。何周しても失敗作たちで死ぬ事が無いので、個人的に全ボス中最弱だと思ってます。
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