2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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5話 暴走と擦れ違い

 「ずっと好きでした、悠くん。その、私と付き合って下さい!」

 

 また時間は飛んで中学校の放課後、珍しく悠は木綿季と詩乃ではない女子と行動を共にしていた。名前はレイナ、小学校に入学してからずっとつるんでいる男女グループの1人だ。

 そんな彼女に、悠は告白されていた。そしてとても驚いていた。悠は感情が制限されてはいるが、人の感情を察する事が出来ない訳ではなく、勿論レイナからそれなりの好意を受けている事は分かっていた。しかし、彼はその好意をあくまで『友人』としての好意であるとしか思っておらず、まさか『恋人』としての好意に変わっているとは、全く思っていなかったのである。

 彼女の外見のレベルは決して低くない。それどころか、かなり整っておりファンクラブとは行かずとも彼女を狙っている男子も少なくはなかった。彼が普通の、一部を除いた人間に好意を抱ける人間なら二つ返事で快諾しただろう。だが、彼の返事は――

 

 「...ゴメン、オレはキミと付き合えない」

 

 NOだった。それもそうだ。恋愛感情もデメリットの範囲内、例えレイナがどれだけ悠の事を好いたとしても、彼が彼女に抱ける感情は友情止まりだ。そんな状態で付き合ったとして、起きるのは小さな擦れ違いだけだろう。

 キスをしても何をしても、ときめいたりドキドキするのはレイナだけ。悠はドキドキもしなければ興奮もしない。そんな小さな擦れ違いが起きた結果に有るのは不満の爆発だ。そしてレイナの心に深い傷を刻むだろう。そう、これは優しさすら制限されてしまった悠の精一杯、()()()心配した彼の結論なのだ。

 しかし、それで納得出来るのなら告白などしないだろう。潔いサッパリとした気質の彼女がココまで粘る事が珍しく、彼は罪悪感を感じていた。

 

 「――やっぱり、木綿季なの?」

 「は?」

 

 ココでの「やっぱり」というのは悠が好意を抱いている人物を聴く言葉なのだろう。流石の悠でもそれは理解できる。しかし、予想外の言葉に彼は疑問符を浮かべ、実際に口にしてしまった。

 

 「じゃあ詩乃?...付き合った年月で言うなら木綿季だけど、()()()()()()()()()悠くんの事は大好きなんだよ?()()()()、木綿季にも負けないくらい大好き。それでも、ダメなの?」

 「.....あぁ」

 「どうして?せめて、理由を聴かせて欲しいの」

 

 悠は悩んだ。彼女の為だと言う事も考えた。しかし、それではレイナに責任を被せている事になる。それは悠が断る理由を正直に答えるよりも深く傷付ける事となる。そう思った悠は断る理由をぼかしつつ答える。自分を悪者にしても、友達を傷付けたくはないのだ。

 

 「オレはキミを恋愛対象として見られないんだ。友達としてしか見られない。悪いけど、オレはキミとは付き合えない」

 「...ハッキリ言ってくれてありがと。そういう所が好きだったんだよ、悠くん。時間取らせてゴメンね、じゃ、明日からは友達。良いね?」

 「...あぁ、また明日」

 

 目の端に涙を浮かべ、小走りで去る彼女を追おうかと一瞬考える。しかし、彼女にはしっかり気持ちを整理する時間が必要だ。そこに自分が行った所で解決はしないし、むしろ与えるのは悪影響だけだろう。そういう結論に至った悠は敢えて追わずに、時間をずらして帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―翌日―

 

 

 

 「このクラスの秋崎ってヤツ、顔貸せよ」

 「ねぇ悠、あの人達知り合い?私は知らないけど」

 「ボクも知らないなぁ。誰?」

 「オレも知らん。まぁ良いだろ、ちょっと行ってくる」

 「気を付けて、悠。良からぬ感じがするし」

 「ん、警戒はしておく」

 

 廊下に出れば、普通の人ならたじろぐくらいの男子生徒が居た。が、別に怖くはない(強盗事件の時と比べれば、だが)ので普通に後へ着いていく。

 到着したのは体育館と校舎の間、窓からは死角になって見えない上に先生も滅多に通らない、何とも良からぬ輩が目を付けそうな場所。ソコで男子生徒に囲まれ、視界がむさ苦しい感じになる。怖くはないが、何とも詩乃と木綿季が恋しくなってしまう。

 

 「で、何の用ですか、先輩方?同級生も居るみたいですが」

 「アァ?決まってんだろオイ、なんでよぉ――」

 

 癖っ毛の先輩が放った言葉は、滅多に驚かない彼を呆けさせるには充分な衝撃を伴って放たれた。

 

 「――レイナちゃんを振ったんだよ」

 「.....はぁ?」

 「まぁ振ったのは100歩譲ってやらぁ。だけどなぁ、何で泣いてるレイナちゃんを追っ掛けなかったんだって聴いてんだよコラァ!」

 

 流石の悠でもカチンと来た。激怒までは行かないが、多少苛つく程度には問題ない。彼女の気持ちは彼女だけのもの。レイナに聴いて「追い掛けて欲しかった」と言われれば悠は今からでもレイナの所へ行き、謝っただろう。だが、先輩が言うのはただの推測、勝手な誤解に過ぎない。彼女が心を痛めて下した事を勝手な推測で侮辱された、その事実が滅多に木綿季と詩乃の事以外では怒らない彼を怒らせるには充分だった。

 

 「――れよ」

 「アァ?」

 「黙れよ、自分から告白も出来ないヘタレ共が寄って集って僻みか?レイナがお前らに行ったのかよ、オレに追って欲しかったのかって。お前らが聴いたのか、レイナ自身に!!」

 「そんな訳ねーだろ!だけどな、普通は――」

 「何が普通だ!?オレは確かにレイナを振った。だから距離を取ったんだよ!オレが行って良い方向に傾くか!?アイツが立ち直れるか!?....それも分からない馬鹿だから、レイナに告れねないんだろ。自分達の勝手な妄想でしか他人の心情を計れない臆病者(チキン)が」

 「ンだと!?テメェ、ふざけんなよ!!」

 「悠!?ちょっと、何をして――」

 「邪魔だ、部外者は消えろ!」

 

 キレた悠の言葉にキレた先輩は悠の胸ぐらを掴み、殴ろうと右手を振り上げる。それをタイミング悪く来てしまった木綿季と詩乃が目撃し、木綿季はそれを止めようと先輩の肩を掴む。が、気が立っている彼は咄嗟に木綿季を突き飛ばし、尻餅をつかせてしまう。

 

 「ってて.....」

 「....貴方、最低ね」

 

 詩乃が駆け寄り、木綿季を立たせてスカートに付いた砂埃を払う。だが、彼はやらかしてしまった。悠の前ではやってはならない事を、悠の目の前で。しかも、詩乃に不快感を抱かせた。やってしまったのだ。悠の逆鱗に触れるどころではない、悠の逆鱗を引き剥がしたと同じ行為を。

 

 「――おい」

 「っ、んだ――ゲファッ!!」

 

 悠は先輩を呼び、振り向いた所を右ストレートで打ち抜く。鍛えられた身体が生み出す力は先輩の身体に伝わり、体勢を崩して尻餅をつかせるには充分だった。普通ならこれで終いだろう。そう、()()()()()()()

 悠は先輩に歩み寄り、胸ぐらを掴んで言った。

 

 「テメェ、木綿季に何をした?」

 「突き飛ばしただけ――ゴッ!?」

 「あ゛ぁ゛?んだとオイ、もう1回言ってみろよ」

 「だから、ただ――ガッ!!」

 「聴こえねーよ」

 

 理解が及んでいない彼の腹部に一撃、悠の質問に答えた彼の鳩尾に一撃入れる。それだけでは終わらず、四つん這いで倒れ伏す先輩の腹部を蹴り上げ、倒れた所で背中を踏みにじる。悠の靴が先輩の制服に土の汚れを付けているが、そんな事を気に出来る程先輩は余裕が無かった。

 

 「なぁ、何か言う事は無いのか?」

 「ご、ごめんなさ――」

 「言うのはオレにじゃねーだろ、誰に言うんだ!?」

 「...悠、もう止めなさい。これ以上は見ていられないわ。貴方が悪者になるのは、何よりも嫌なの。私のヒーローは貴方だけ。だから、もう止めて欲しい」

 「...詩乃」

 「ダメだよ、悠。そんなに怒っちゃ。ボクの為に怒ってくれるのは嬉しいけど、悠が怖くなるのはイヤ。ボクは大丈夫だから、行こ?」

 「....分かった。先輩、オレもやり過ぎました、すいません。オレもレイナの気持ちを汲み取るべきでしたね」

 「っづう...俺も、悪かったな。そこの嬢ちゃんも、突き飛ばして悪かった」

 「ボクは大丈夫だよ。怪我も無いしね」

 「行きましょ。そうだ、公園にクレープ屋さんが来てるらしいの。行かない、悠?」

 「オーケー。あんなザマを見せちゃったし、奢るよ」

 「やったぁ!何食べよっか、詩乃?」

 「そうねぇ...まぁ、行ってみてから決めましょ」

 「お手柔らかに頼むよ」

 

 彼等は先輩達を置いて、楽しく談笑しながら去っていった。あの怒り狂い方から2人の言葉で即座に冷静になれるのは、流石悠と言った所か。彼の行動原理は専ら木綿季、詩乃が第一だ。故に、他ならぬ彼女達に頼まれれば何があろうと遂行する。

 因みに、身体を鍛えているのも前に詩乃がボソッと「男性は筋肉質な方が好きね...ゴツすぎても嫌だけど」と言っていたのを聴き、彼女達を護る為にもゴツくなり過ぎない様に身体を鍛えているのだ。元々華奢な悠だが、少し肩幅が広くなっていたりする。

 そんな事は置いておき、彼等は公園に来ていたクレープ屋でクレープに舌鼓を打っていた。尤も、悠は財布の中を見て苦笑いを浮かべていたのだが。




 一途な狂戦士《バーサーカー》系主人公が悠くん。
 書いてると先輩の方が主人公に向いてるのでは、と思った今日この頃。
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