2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 シュユ「今回の前回のあらすじのコーナーはお休みだ。その代わり、後書きで寄せられた質問に作者が答えるから読んでくれると有り難い。じゃあ、69話を楽しんでくれ」

 作者『そう言えば、誰かに何か言う事が有るのでは?』

 シュユ「あぁ、そうだったな。…ハッピーバースデイ、シノン」

 シノン「…ありがと、シュユ」

 作者『ホいつの間に!?』

 シュユ「某蜘蛛男ネタは要らねぇよ…」

 シノン「改めてよろしくね、読者のみんなも。もう1度言うけど、69話楽しんでね」


69話 ギセイ(サツガイ)

 「このまま行けば倒せるぞ!皆、あと一息だ!!」

 「「「「「「オオオオォォォォ!!」」」」」

 

 キリトの声で攻略組全体が奮い立つ。ヤーナムでの戦いぶりから、今のキリトはアインクラッド攻略の象徴となりつつあった。ヒースクリフと並ぶ、死者を出さない英雄に。

 57層フロアボス攻略は順調に進んでいた。今回のフロアボスは途轍も無く巨大な樹だ。攻撃は単調で、枝の振り下ろしと種子バラ撒き、地面から雑魚を創り出すなど、3つのパターンしか持たない。数人は種子攻撃に被弾してしまったが、それ以外の殆どのメンバーはノーダメージで事を進めていた。

 そして残りの体力バーが1本になった時、異変は起こった。

 

 「アグッ!?いきなり、何…!?」

 

 ユウキは背中を斬られたのだ。K()o()B()()()()()()

 

 「ち、違うっ…俺じゃない!なんで…誰か止めてくれぇぇ!」

 

 その斬った本人ですら、自らの身体に起こった異変に着いていけてない様だ。彼は立派な両手剣は振り回し、自分の味方を斬り付けていた。そんな彼に続くように、次々と仲間を攻撃する者が増えていく。最終的には12人程が狂った様に武器を振り回していた。

 

 「クソ、いきなりどうしたんだ!?」

 「キリト!どうする、一旦退却すんのか!?」

 「…いや、もう少しで削り切れる。ボスを倒せば沈静化する筈だ!クライン、ヒースクリフ、行くぞッ!!」

 「私が枝を止める!2人はボスを叩いてくれ!」

 「このクライン様に任せとけ…よ!!」

 

 クラインの一閃が枝を斬り払い、キリトの連撃が幹を削る。ヒースクリフはその盾で枝の攻撃を防御し、【神聖剣】のチャージを始める。攻防一体のユニークスキルである神聖剣は盾で防いだダメージをそのまま剣での攻撃に乗せて返すカウンター系のスキルだ。どんな攻撃でも防げばそっくりそのままの威力が相手に返る、最強クラスのスキル。それを惜しげも無く使う【最強】と呼ばれるプレイヤー、それがヒースクリフだ。

 数多の枝の攻撃を人間離れした反射神経と予測で防いだヒースクリフは走る。後ろからポーションが投げられ、加速する。シノンが投げた【俊敏のポーション】の効果だ。

 悔し紛れに放たれた様な枝での突きを盾で防ぎ、袈裟掛けに剣を振るう。紅いエフェクトに包まれた剣は豆腐を切る様に滑らかに幹を斬り裂き、ボスの体力バーを消し飛ばした。

 

 「ありがとう、ヒースクリフ。あとクラインも。これで取り敢えずは――」

 「ア、ああぁああぁ嗚呼ああぁ!!!!!」

 

 沈静化したかな。そう言おうとした時、1人のプレイヤーに異変が現れる。叫び声を上げ、天を仰いだそのプレイヤーの大きく開かれた口から()()()()()。苗木の様に細かったのは一瞬で、その直後には凄まじい勢いで成長し瞬く間に大樹と呼ぶに相応しいものに変貌した。それも、()()()()()()()()()()()

 

 「なっ…!?」

 「ボスの復活!?有り得ない、そんな事有ったらもう…!」

 

 シノンの声を嘲笑う様にその大樹は自分の名前を掲げる。視界に映るその名前はとても単純な名前で、そしてその意味を本当に理解したシノンとアスナは絶望感に囚われた。

 

 【The Selfish Queen(我儘な女王)

 

 どれだけ我儘で愚かしい女王とて、女王には変わりない。故に、()()()()()()()()()。そしてその影武者すら女王の一存で決まってしまう。何故ならその女王は『我儘』なのだから。

 

 「オメェら、あの種には当たるんじゃねぇぞ!!多分アレが原因だ、そうだろキリト!?」

 「あぁ、アレ以外には考えられない!(タンク)も気を付けろ、鎧の隙間からアバターの素体に当たったら多分ああなるぞ!!」

 

 本来のボスは弱い。しかし、影武者候補に指定する種子での攻撃は面倒な事この上ない。何故なら薄暗いこの空間で親指1つ分程の大きさのそれなりの速さで飛来する種子を躱すのは難しいからだ。そもそもの反応値が高かったり勘がズバ抜けているキリトを始めとした攻略組トップとそれ以外の構成員では被弾率も身軽さも違う。

 

 「こういう敵ってのは1度しか復活できないもんだろ!もう1度削り切るぞ!!」

 

 性に合わないと拒んでいた全身鎧(フルプレート・メイル)を着込んだエギルが壁部隊を率いてボスを削る。壁役は主にVITとSTRにポイントが振られており、足こそ速くはないが火力も耐久も充分だ。故に凄まじい勢いでボスの体力は減っていき、それと反対にプレイヤー達の体力は全く減らない状況となる。

 

 「あぁ、嫌だ、嫌だァァァァァaaaaaa!!!」

 

 しかし、それでも状況は好転しない。1度きりで終わるなら我儘とは言わず、ただの『おねだり』だ。だがボスはどこまで行っても『我儘』で、だからこそ民衆(プレイヤー)に恨まれる。なれば、その憎悪の的となる女王には影武者も数多く必要になるものだ。

 そう、種に当たって暫くした者は逃れられない。カーソルはプレイヤーのままだとしても、その本質はエネミーになってしまう。

 

 「クソ、どうすれば――」

 「――こうすれば良いんだろう?」

 

 1人のプレイヤーの首が宙を舞い、直後にポリゴンとなって消滅する。キリトの目の前には大鎌を携えるプレイヤーが立っていた。そしてそのプレイヤーのカーソルは、緑から赤に変わってしまった。

 

 「我儘な女王を殺そうと1番に蜂起した者は畏怖の対象になって、味方に殺されるものだ。かのジャンヌ・ダルクもそうだった。なら、その役回りはオレで良いんだ」

 「そんな、シュユなの!?」

 「…そうだよ、シノン。無事で良かった」

 

 自分が閉じ込めていた筈だ、という衝撃。そして閉じ込められていたにも関わらず彼は自分が無事で良かったと安堵した、そんなシュユの異常とも言える優しさにシノンは何故か薄ら寒さを覚えた。

 

 「全員、黙って見てろ。…恨むなら恨め、お前ら(影武者)にはその権利が有るんだから」

 

 シュユの真正面に立っていた者の心臓に、短剣が突き刺さる。その次の瞬間にはもうそのプレイヤーの首は刎ねられていた。背後から襲い掛かる者には後ろを見る事無く肘打ちを繰り出し、仰け反った瞬間に瞬時に持ち替えた大鎌で首を刈る。これで3人目だ。

 シュユを除いた全員が戦慄した。シュユの冷酷さ、対人戦闘に於ける異様な読みの正確さ、そして人殺しという行為への躊躇いが無く手際が良い事に。

 両刃剣に戻した落葉で斬り上げる。その鎧でゴリ押したプレイヤーが叩き潰そうとメイスを振りかぶるが、シュユは柄になっている短剣で首筋を斬り裂き、消える前の脱力したプレイヤーの身体を掴んで横から迫る2人に向かって放り投げる。纏めて倒れた2人の心臓に剣を突き刺し、トドメを刺す。

 

 (落ち着け、駄目だ。暴れるなよ、クソッタレ…)

 

 しかし、余裕の有る戦闘からシュユの脳内はかけ離れた状態にあった。人間の三大欲求である食欲、睡眠欲、性欲。シュユは今まで鋼の精神で女性らしくなっていく幼馴染(シノンとユウキ)に欲情しない様にしていた。しかしヤーナムでそれが崩れ、食欲と性欲が混ざり合い、混沌とした欲求になってしまったのだ。ソレを満たせる血の遺志も今は摂取出来ず、更にシノンが犯した監禁のせいで節制すら難しくなっている。

 それを今はプレイヤーとの戦いの中に在る事で、封じ込めた筈の獣性が露わになりつつある。痛覚遮断機能が働いていないのか痛みに叫び、死を拒む叫び声がシュユの脳を蝕んでいた。瞳が蕩ける程、深く。

 自らを抑え、それでも影武者になってしまったプレイヤーを殺していく。流血表現こそ無いが、つい先程まで協力していた仲間が殺される様に皆は目を背ける。それでも殺戮は止まらない。そうしなければ、どうしようもないのだから。

 

 「ァ、――」

 「ッ!!!」

 

 最後の影武者を殺した時、シュユの耳元で何かが囁かれる。それを聴いたシュユは目を伏せ、そして落葉に【発火ヤスリ】で炎属性を付与すると凄まじい連撃をボスに加える。恐らく炎が弱点だからだろう、先程の壁部隊より少し遅い程度の速度で体力バーが減っていく(1人の火力としては異常なレベルだ)。最後に分割した落葉の長剣の方でヴォーパル・ストライクを放ちボスの体力を消し飛ばす。

 幾万のポリゴンが視界を覆い尽くし、その中に嫌味ったらしく現れる『CONGRATULATIONS!!』の文字。2人を影武者として、10人を犠牲にしておいて『おめでとう』とは。

 誰も話さず、静まり返る空間で音が聴こえた。

 

 「――ごめん、なさい」

 

 怯える幼子の様に一言、それだけ呟くとシュユはボス部屋から逃げ出した。呼び止めようとしたユウキは、シュユの顔に浮かぶ怯えた表情に躊躇ってしまう。見慣れぬシュユ表情と周りの者の顔に浮かぶシュユへの憎悪と畏怖が混ざり合った表情に、一抹の不安を感じながらも止められなかった。




 どうも、作者です。今回は直接寄せられた質問、『血の遺志と啓蒙について』お話しようと思います。

 1つ前の章はSAOではなくブラボ要素を盛り込んだものでしたが、フロムゲーの特徴として個人の解釈で分かれる設定があります。それについての質問ですね。
 その質問が血の遺志と啓蒙が貯まるとどうなるか、そしてその違いについてです。
 ブラボの世界には【医療教会】と【ビルゲンワース】という2つの勢力があります。この2つの勢力の目的は同一のもので、『上位者に近付くこと』…つまりは人より上の存在に成る事なんです。その手段の違いが血の遺志と啓蒙なんですね。
 道中で出て来た、ボスを含めた敵は本当はヤーナムの住人でした。犬や鴉は流石に違いますが、毛むくじゃらの狼も実際は人間だったんです。まぁこの話は大して関係ないので知り合いのブラボプレイヤーに頼むかサイトを見て自分で考察してみて下さい。面白いですよ?

 それでシノンとユウキとシュユですが、この3人は発狂していました。1番分かりやすいのはシュユ、次点でユウキ、狂ってるかどうか怪しかったのはシノンですね。
 この血の遺志と啓蒙、上位者に成るにはこのどちらもバランス良く溜めないといけないんです。偏ると結果的には獣になってしまいます。
 全員、途中まで同じような道のりでしたから最初は変わりありませんでした。しかし、3人の√に分かれてからは違います。

 先ずはユウキです。ユウキは『悪夢』と名前の付く場所には殆ど行ってません。ですがシュユと離れ離れになった事で単独先攻の無理な攻略を続けて敵を殺し続けて、啓蒙に対して血の遺志を溜め過ぎてしまったのです。
 私の独自設定で【輸血液】を使うと血に酔いやすくなります。アイリーン戦で輸血液を使用し、更に月の魔物戦で血を浴びたせいで獣と上位者絶対殺すウーマンになりかけた訳ですね。

 次にシノンです。シノンはシュユと同じく孤軍奮闘していた訳ですが、シュユとユウキとは異なりサーチアンドデストロイではなく必要に応じて敵を倒していました。更に『悪夢』系の場所に行った上にカインハーストという呪われた廃城に行きましたね。
 そこはブラボ本編に於いて貰える啓蒙が多めで、しかもシノンはボスも全て討伐しています。ブラボの啓蒙の多くは新たなステージに辿り着く、或いはボスと対面する事で溜まるので、シノンは啓蒙の溜め過ぎによる発狂をした訳です。

 最後に主人公、シュユです。シュユは不安になる事は有っても途中まで正気を保ってましたが、【実験棟】の脳みそ患者を倒した時に血の遺志と啓蒙のバランスが崩れ、血の遺志による発狂。圧倒的な強さで【失敗作たち】を撃破、次のボスである【時計塔のマリア】に挑みます。
 しかしマリアは口移しでシュユに血を飲ませ、記憶を無理矢理読ませてしまいます。そしてその血から啓蒙を得たシュユは発狂から戻り、正気を取り戻した、という訳です。(実はこれが本当の意味でのファーストキスだったりします)

 シュユとユウキは暴力的に狂い、シノンは理性的に狂っていた訳です。因みに正気に戻らなかった場合シュユとユウキは暴虐の限りを尽くした末に獣になり、シノンは自分が獣に成るのを自覚し、ひっそりを姿を消した末に獣になります。行く末は同じ、という訳ですね。
 因みにシノンは私が覚えている限りですが輸血液を使ってなかったりします。血で狂ってないのはそういう要因も有ります。


 取り敢えずはこんな感じですかね。更に詳しく知りたい場合、メッセージボックスにその様な内容を送って頂ければしっかりとお答えさせて頂きます。
 それでは、これからも本作をよろしくお願い致します。
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