アスナ「作者の見積もりだとSAO編は50話くらいで終わるらしかったんだけどね…」
キリト「そもそもヤーナム編だけでも30話近くあるんだから終わる訳ないだろうに」
アスナ「まぁ、それでもぼちぼちやってくらしいよ」
キリト「エタらなければ何でも良いけどな。さて、じゃあ記念する訳でもないけど70話、楽しんでくれよ?」
57層攻略後、アインクラッド内の情勢は変わった。大きく分けてシュユ擁護派、排斥派だ。簡単に言えば57層での殺害は不可避の事でありその実力を活かして攻略を進めるという言い分が擁護派。排斥派はどんな理由が在ろうと殺人は殺人、黒鉄宮に叩き込んでしまおうという言い分だ。
そのどちらにも共通するのはシュユへの恐怖だ。擁護派も結局はシュユの徹底的な管理を前提に話を進めており、どちらに転ぼうとシュユに今までの様な完全な自由はもう有り得ない。ユウキとシノンはそれを重く受け止め、そして暴走していた自分達を見直し、直していく事を決意した。
シュユが起こした事は少なくとも、この2人が変われた事は良い事だったのだろう。その代償に、自身が追い込まれているのだが。
「ユウキ、大丈夫?」
「ありがと、シノン。…いつも傍に居る人が居ないのって、寂しいね」
「シュユ…フレンド機能も
今は既に60層を突破している。が、未だにシュユの目撃情報は無く、半ば指名手配の様に貼り紙が貼り出されている始末だ。2人はシュユを捜しながらも無為な日々を過ごしていた。
「…メール?」
「どうかしたの?」
「このメール、鍵が掛かってる。もしかしてシュユが…?」
「何か暗号文とかは有るの?」
「『汝が信じる存在、その拠り所を記せ』って。シノン、分かる?」
「それ、あなたに送られてきたのよね。多分ユウキ関連の事なんだろうけど…」
ユウキが信じる存在、それは他でもないシュユだろう。だがその拠り所とは?そうシノンは思考する。が、ユウキは思い付いた様にホロキーボードを使って文字を打ち込む。
「判ったの?」
「うん、多分だけどね。ボクが信じてるのは確かにシュユだけど、もう1つだけあるんだ。…まぁ、心から信じてるかって言われるともう微妙なんだけどね」
「…まさか、キリスト教の事?」
「うん。その拠り所は予想だけど――」
「十字架ね」
「そう。だけど明らかに文字数が多いし、だからって
ユウキはホロキーボードのENTERキーを押し、パスワードを確定する。すると電子音で再現されたカチャリという音と共にメールのロックが外れ、中のメッセージを見る事が出来るようになった。
「パスワードは
「メール、私にも見えるようにしてくれないかしら?私も読みたいし」
「勿論。はい、可視表示オンっとね」
パーティメンバーにのみ適応出来る、本来は見えない筈のメニューを可視化する。これによりシノンはユウキに送られたメールを読む事が出来るのだ。
『60層の突破、おめでとう。世間は随分とオレの事で混乱してるみたいだな。ここでユウキに…いや、多分シノンも見てる筈だよな。だから2人だけに教えよう。10層の平原にある岩、そこに今日の0時に向かう事にする。誰かを連れて来るも良し、この情報を嘘と断じて来ないも良し。オレは逃げも隠れもしない。どうするかは、君達次第だ』
「…シノン、どう思う?」
「嘘じゃない事は確かね。シュユの事だし、確実にそこに居ると思うわ」
「だよね。で、どうする?」
「2人で行きましょう。多分、あっちもそれが本望だと思うしね」
「了解、準備しとくね」
「私もそうするわ」
2人は準備を始める。万一、戦闘になったとしても良いように、武器の手入れも欠かさない。そう、シュユと戦う事になっても連れ戻すと、決意した。
死ね、死ね。オマエは赦されない。だから死ね。
「……うっさいなぁ…」
怨嗟の声が頭に響く。今まで殺めてきた存在全てが自身を否定し、そして死の淵へと誘う。彼は暗闇の中、そんな声に耐えていた。目の前には妖しい光を放つメール画面。
「来てくれるかなぁ…2人とも。他の奴等は居ないだろうけど、来たら殺せばいっかなぁ…」
狂っている。
「そうだ、花束を…あったあった。うん、萎れてない」
狂っている。
「嗚呼、待ち遠しいなぁ…早く0時になれよ。もっと時間を早くしても良かった?いや、それじゃケチな男って思われるかな?」
狂っている。
「嗚呼…早く
もう彼は、狂っている。