2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 ユウキ「いつの間に、お気に入り登録数が750件を超えてたよ!みんな、ありがとう!!」

 シノン「評価ポイントも1000を超えてたしね。本当に、感謝しかできないわ」

 ユウキ「もう夏休みが終わっちゃって、少し投稿頻度が下がっちゃうかもだけど、これからも読んでくれると嬉しいね」

 シノン「読んでくれるわよ、当然」

 ユウキ「…ホントは不安な癖に。取り敢えず、これからもよろしくね!」


71話 it's every time, you hurt yourself with knives

 「来たんだね、2人とも。来てくれて嬉しいよ」

 「シュユ…」

 「随分印象変わったんじゃない?随分と、ね」

 

 岩に腰掛けるシュユはいつもの彼なら似つかわしくない、純粋な笑みを浮かべていた。その瞳に光は無い。

 

 「オレさ、気付いたんだ。人を殺して初めて。オレは2人が好きだ。愛してる。2人が手に入るなら何を捨てても構わないって。他の誰の目にも触れさせたくないって」

 

 彼は饒舌に語る。壊れた感情のタガでは今のシュユを抑える事は出来ない。

 

 「でもオレ達がヒトである以上、少しでも離れなきゃいけない時も有る。オレはそれに耐えられそうにない。だからさ――」

 

 シュユは落葉を分割し、両手に持つと立ち上がる。その姿勢全体から、殺意が滲み出ていた。

 

 「――2人を殺して1つになれば、未来永劫一緒に居られる。オレが殺されれば、2人の中でオレは生きる。だから()し合おう。良いだろ?」

 

 2人の視界から消えるシュユ。ゼロモーション・シフトだ。ユウキは勘で、シノンは予測で後ろからのシュユの斬撃を躱す。シュユは空振った剣を眺め、そして口角を吊り上げる。こうでなきゃ、と言わんばかりに。

 ユウキは慈悲の刃を変形させ二刀流に、シノンはシュユに弓矢は相性が悪い事を悟り、まだ少し重いが弓剣を剣モードにして相対する。

 シュユがもう1度視界から消える。後ろを警戒するシノンだが、その予想の裏を掻いて現れた先はシノンの懐。左手に握る短剣を突き出すが間一髪躱され、更に伸ばした腕に容赦の無い反撃が向かう。シュユは振り下ろされる剣の先に右手の長剣を挿し込み、流してユウキの隙を作る。が、それをカバーする様に放たれた矢が追撃を阻み、シュユは体制を立て直す事を余儀なくされた。

 しかしその程度で止まるのは曲がりなりにも狩人として上位者を狩った者には有り得ない。シュユは左手の短剣で上位突進系ソードスキル【ウルフバイト】を使い、距離を詰める。技後硬直が発生する前の一瞬に右手の長剣で【シャープネイル】を使って硬直を消す。が、ソードスキルの隙を突いた一矢が背中に突き刺さる。

 

 「痛いなぁ…ねぇ、痛いよシノン」

 「まさかあなたっ、痛覚遮断機能が…!」

 「そんなの、もう機能してないよ。だから当然痛い。でも、そんな痛みもキミ達から与えられるなら至福の感覚さ」

 「ちょっと居なくなったら、マゾになっちゃったんだ…ね!」

 

 大きく踏み込んだユウキの斬撃を体捌きだけで回避、シュユは左手の短剣をユウキの首筋に突き刺そうとするが、咄嗟に後ろにステップする。シノンの射撃も間に合わないタイミング、それなのにシュユは攻撃を中断したのだ。

 

 「クッ、流石シュユ…強いね」

 「昔から真剣なシュユには1度も勝てなかったわね、そう言えば。やっぱりシュユが1番強いわ」

 

 シュユは何度もユウキとシノンにゲームで負けている。だが、それは接待プレイだと2人は知っていた。彼が本気でゲームをプレイした時、2人は例え2人掛かりでシュユと戦ったとしても勝った時は無かったのだ。

 

 「ボク達から攻めるのは論外だし、どうしようか」

 

 SAOに来てからはシュユが能動的に攻めていたが、本来のシュユの戦法はカウンターなのだ。敵の攻撃を受け流し、隙を作り出して手痛い反撃を与える。道具をフルに使って自分の土俵に引きずり込み、焦った敵を蜘蛛の様に絡め取って喰らう、それが本来のシュユの戦闘スタイル。故に2人は攻めあぐねていた。迂闊に攻めれば殺られるのは自分達なのだから。

 

 「…私達はあなたを連れ戻しに来たの。だからお願い、戦うのはもう止めて」

 「オレに戦うのを止めろって?難しい事を言うなぁ、シノンは。もうさ、戦ってないと気が触れそうなんだよ」

 「え?」

 「解るかなぁ、ユウキィ?ずっと頭の中で声がするんだ。死ね、赦されない、こっちに来いってね。それにホラ、見てくれよ。オレの手、どれだけ洗っても拭いても血が落ちないんだよ」

 

 落葉を両刃剣に戻して片手を空け、見せるシュユの手に血など付着していない。ただ、血が滲んだ包帯が雑に巻き付けられていた。だがそれは防具の装飾で、シュユの手に血が付いている訳が無いのだ。何故ならここは通常の階層、ヤーナムと違って流血など無いのだから。

 

 「なぁシノン、オレの事閉じ込めて色んな事をしてくれたんだ…オレのワガママも聴いてくれて良いじゃないか」

 「シノン、そんな事してたんだね…」

 「あなたも似たような事したでしょ」

 「ずうっと聴こえるんだよ…寝てる時も、今でも、頭ん中で死ね死ね死ね死ねと…もう、疲れちゃった」

 「シュユ…」

 「2人は人間を殺した事が有るか?人型NPCとかじゃない、普通のプレイヤーを。オレは今でも覚えてる。去年の冬、【聖竜連合】の構成員を殺した。それから少しして、オレンジ(犯罪者)を殺し続けて、やっと人殺しを止めたと思った矢先に10人くらいだっけ?まぁ、それくらいのプレイヤーを殺した。誰もオレを傷付ける事無く、オレは相手を殺したんだ」

 「でもそれは全部仕方無いって、前に話したじゃない!あなたは罪人でも何でもない!あなたはあなたよ!」

 

 その言葉を聴いたシュユは笑みを深め、上を向いて包帯を巻いた右手で自分の顔を覆う。そして2人に問い掛ける。

 

 「なぁ2人とも、()()()()()()()()?」

 「…どういう意味?」

 「『オレ』が誰だか、たまに判らなくなる時が有るんだ。オレは『シュユ』なのか『秋崎悠』なのか、はたまた『狩人』なのか『バケモノ』なのか。『未熟な狩人』って呼ばれた事も有ったな。…教えてくれよ。オレは、誰だ?」

 

 再び向き直ったシュユはユウキに飛び掛かる。ユウキは長剣を防ごうと構えるが、シュユは握る剣を手放してユウキの首筋を掴む。シノンがカバーに入るが体術で敵う訳も無く、地面に倒されて組み伏せられる。短剣を手放したシュユはシノンの首も掴み、狂った笑みを浮かべる。

 

 「ッツ…グッ…」

 「力、強っ…」

 

 当然だ。シュユはVIT(体力)にポイントを殆ど振り分けていない。装備条件になり得る可能性を考慮して最低限は振り分けているものの、攻略組を基準として考えればその体力総量は非常に低い。第一線どころか第二線の予備軍と呼ばれる攻略組にも劣る。だがその分、他のステータスは他の攻略組と比べると非常に高い。葬送の刃のバフが加わればそれはより顕著になる。そんなシュユが全力で2人を組み伏せれば、抜け出せないのは当然なのだ。

 

 「もう疲れた。こうして殺さずに拘束するのも、本当はとんでもない我慢してるんだぜ?どれだけ想っても、強くなっても護れないモノはある。だからさ、どうにかしてくれよ。オレを殺しても良い、だから頼むよ」

 「――カハッ。あなたは…『秋崎悠』よ」

 「え?」

 「あなたは、『シュユ』でも『バケモノ』でもない!!あなたは秋崎悠、シュユなんて偽りの名前でしかないのッ!!」

 

 本来、名前というのは呼ばれ続ける事で自らを『自分』と定義づけるものだ。故に、自分で名前を付けても呼んでくれる人が居ないのならそれは『()』で、名前など必要ない。

 名を呼ばれなければ、いつしか人は名前を忘れる。例えそれが、10数年呼ばれてきた名前だとしても。それでも1年近く呼ばれなければ自分の本名(リアルネーム)偽名(アバターネーム)が混在し、自分を見失うには充分だ。特に、あまりの負荷に記憶が壊れやすい彼なら尚更だ。そして幾ら達観し、人よりも感情の起伏が()()()()()シュユ()も、本来は10代の少年。自分が誰か解らなくなるその恐怖に、自壊する事で耐えるという選択を無意識下でしてしまうのは必然だったのだろう。

 だがシノンは断言した。彼はシュユではない。あくまで彼は『秋崎悠』なのだ、と。

 その言葉にシュユは手の力を緩めてしまう。拘束から抜け出したユウキがシュユに飛び掛かり、馬乗りになって押し倒す。STRが高かろうと、人1人分の負荷を掛けられつつ素早く動くのは難しい。ゼロモーション・シフトを使おうにもユウキはソレを十全ではないとは言え扱える。いつもなら切り札となるゼロモーション・シフトは、少なくとも今は悪手であった。

 

 「どれだけ悠が狂っても、ボク達は悠を否定しない!!絶対に、どんな事が有っても!!」

 「それで、この世界(アインクラッド)の人が赦してくれると!?ハッ、綺麗事も甚だしい!!」

 「全員に赦して貰う必要なんて無いッ!!ボクは、少なくともボク達は悠を愛して、赦し続けるッ!!」

 「っ、黙れェェェェェ!!!!!」

 

 悠の、2人に向けて初めて発露させる本気の怒り。その怒りと戸惑い、他の混ざりながらも決して混同しない感情が世界を変える。木綿季(ユウキ)の想い、シノン(詩乃)の想い、(シュユ)の強い感情がカーディナルシステムですら干渉出来ない空間を生み出し、3人はそこに引き込まれた。

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