2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 キリト「作者が最近勇者であるシリーズを読み始めた」

 アスナ「…それで?」 

 キリト「ほぼ確実に次の次の作品は勇者であるシリーズのどれかになる」

 アスナ「バンドリの小説も、あまり長くはしないらしいしね」

 キリト「さて、本当に長くならないのかね」

 アスナ「そんな事は置いといて、74話楽しんでね!」


8章 A girl called failed work
74話 娘、現る


 「圏内事件、ね」

 

 シュユはそう零した。つい先日、圏内で人が殺される事件が起きたらしい。SAO全体を揺るがす大事件になりかねなかった事件だったが、その種は装備が壊れるエフェクトに合わせて転移結晶を使ってワープするだけというもの。案外見落としがちなその種を見破り、それに連なる事件を解決したのがキリトとアスナだと言うのだからシュユは驚いていた。前の下ネタの一件で心象は悪くなったと思うのだが、事実は小説より奇なりとはこの事だろう。

 シュユが居るのは48層。ある鍛冶士に呼ばれたので来ているのだ。恐らく、と言うよりほぼ確実に怒られるのだろうとシュユは思っている。辟易しながらドアを開けると轟音が耳を貫いた。

 

 「やぁぁぁぁっと顔出したわねアンタぁぁぁあ!!!」

 「……………」

 「前もあたし言ったわよ!?武器をもっと大事に扱いなさいって!!」

 「違う、オレは大事に使った。ただ何故か折れたんだ」

 「何をしたか、言ってみなさい?」

 「…?ボスの甲殻を割る為に差し込んで思いっ切り梃子の原理で横に倒しただけだが」

 「普通の武器じゃそんな無茶は出・来・な・い・の!!」

 「…千景はその程度じゃ折れなかったけどな」

 「あの武器は…ハァ、アンタはあの武器の強さと異常さを解ってないみたいだし、説明したげるわ。そこ座んなさい」

 

 一通りの不満はぶちまけたのか、落ち着いた彼女は椅子をシュユに差し出す。この鍛冶士(スミス)の少女の名前はリズベット。シュユの武器を整備する鍛冶士であり、自分が作った渾身の武器を次々とシュユに折られるという苦労人でもある。

 

 「良い?そもそも鍛冶士で【OWM】を使える人自体が希少なの。整備と普通の武器造るだけなら要らないし、取得しても色んなスキルの熟練度を上げないと使い物にならないスキルだから」

 「じゃあリズは凄いヤツだったのか。悪かったな」

 「そうよ。全く…アンタもキリトのヤツも、あたしを便利屋かなんかだと思ってるとしか思えないわ。…それで、OWMが人気じゃない理由はもう1つ有るの。言っちゃえば、苦労と性能が見合わないから」

 「そうなのか?」

 「えぇ。設計も能力も、しかもカタナで言えば拵えまで考えなきゃならないのに、他の市販武器とか雑魚から落ちるドロップより強い程度で、ユニークウェポンと比べると性能は格段に落ちる。その辺の武器より少し強いくらいね」

 「じゃあコイツ(千景)は?」

 「一言で言うと『バケモノ』ね。ホント、訳分かんないわ。そもそも納刀したらスリップダメージと引き換えに刀身を強化とかいう発送がブッ飛んでるわよ。どれだけの試行錯誤とレア素材を注ぎ込んだのか、予想も出来ないの。…ホント、SAOの全鍛冶士が目指すプレイヤーなの、カーヌスさんは」

 「…そうか」

 

 既にカーヌスは死んでいる。その事は既に周知の事実だ。だからこそカーヌスが遺した武器を持つ者はとても少なく、未だに最前線でも活躍できるポテンシャルのあるソレは畏怖すら集める逸品だ。強化試行回数も大抵は2桁、変形して武器種すら変えられるその汎用性も凄まじい。

 今の所確認されているカーヌスの遺作はシュユの千景、シリカの【名無し】とSAOのどこに有るかも判らない数本の変形武器。そしてプレイヤーメイドの剣として未だ最高ランクを誇る10本の剣だ。その中にユウキが持つ女神の祈剣も含まれている。

 

 「だから修理も難しいんだけど…。見た事無い素材が沢山よ、この要求アイテム」

 

 攻略組のシュユですら知らない素材が幾つかあるアイテム欄を目の前に提示される。そうでもしないと切り抜けられなかったのは事実、シュユはそう割り切っている。

 

 「まぁ千景の修理はどうにか進めてくとして。この落葉、これもエゲツない性能してるのよ。どんな運してたらこんなユニークウェポンがポンポコ手に入るのやら」

 「その分苦労もしてる。むしろこれじゃ足りないくらいだ」

 「ハイハイ、分かったから。で、落葉の分かった事ね。まずこの武器、分割するとそれぞれ長剣と短剣になる。独立した武器種になるから両手で違うソードスキルを使えるの」

 「まぁ、それは大体分かってた。使ったしな」

 「それから体力が0に近付く程攻撃力上昇の付与効果(エンチャント)に加えて2つとも武器の先端は純刺突属性…言っちゃえば細剣(レイピア)並の威力の突きが使えるわ。刀身の部分は純斬撃属性で、長剣の峰は純打撃属性。落葉1つで殆どの武器の仕事が出来るわ」

 「強いな。万能手(オールラウンダー)的な役割のオレにはピッタリだ」

 「…アンタ、最近は専ら攻撃手(アタッカー)の方でしょうに。あと1つ、これだけは注意しなさい」

 「なんだ?」

 「葬送の刃と違って落葉には不壊効果(デュランダル)は無いの。折れる時は折れるし、全損も有り得るわ。そうなればあたしにも何も出来ないから、覚えといて」

 「…了解、善処はする」

 「信用できない言葉ランキング上位勢よ、その言葉」

 「…………じゃ」

 

 逃げるようにリズベットの店を後にするシュユ。これからの予定をタスクで確認するまでもなく、しっかりと予定は覚えている。22層に向かい、購入する家を選びに行くのだ。転移結晶で転移しようか迷う所だが、転移門まではそう遠くない為全力疾走して向かう事にする。全力疾走とは言っても、手錠のせいで速度は落ちているのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (さて、迷った)

 

 迷ってしまった。今居るのは22層の北西部。待ち合わせは南西の方角なので正反対の方角だ。シュユは変な所で案外ポンコツだったりする。

 恐らくフレンドの機能を使ってユウキ達が捜しに来るだろうが、わざわざ来てもらうのも悪い。木の天辺に登って見回そうとした時、少女の様な人影をシュユは見た。

 

 「キミ、そこで何をしてるんだ?」

 

 だが少女は答えない。年齢にして10歳全戸といった所だろうか。少女は熱に浮かされた様にフラフラと歩き、前のめりになる。直感的に倒れると感じたシュユは駆け寄り、手錠で繋がれた手でどうにか支える。

 どうにか鎖で繋ぐタイプの手錠にならないものか、とシュユは思い、この手錠をチョイスしたヒースクリフに恨みの念を送る。ガッツリ手を繋がれるタイプの手錠なので日常生活が不便極まりないのだ。

 どうしようもない。メニューを開いて時間を確認すると、まだ2時間程集合時間には猶予があった。楽しみにし過ぎて時間を確認していなかったのは失敗だが、今は好都合だ。抱きかかえるのは流石に『もしもしポリスメン?』となってしまうので膝枕にしておく。そしてシュユはステータス画面を開き、何にポイントを振るか熟考するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん…ぅん…」

 「目が覚めたか?」

 

 少女が目を覚ます。片手で目を擦っている所を見るとまだ眠いのだろう。シュユの顔は正直に言うと強面で、小さい子が怯えるのは普通にある事なのだが少女は怯える事無く、たった一言口にした。

 

 「お父様…?」

 「…………娘?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――と言う訳で、オレの娘だ」

 「誰とそんな事したの?ねぇシュユ、ボク達というものがありながら誰と?誘われたんでしょ?どこのどいつに誘惑されたの?教えて、教えてよねぇ。今からソイツの所に行って四肢ぶった斬った後に後悔させて殺すんだから――」

 「落ち着きなさい、ユウキ。仮想世界じゃ子供は作れないし、そもそも手錠も外せないのにそういう事はしないでしょ」

 「……手、震えてるけど?」

 「…気のせいよ」

 

 シュユに肩車されている少女はシュユの頭を抱えてバランスを取っている。シュユは脚を掴んで固定する事が出来ないので、少女が自分でバランスを取るしかないのだ。

 髪の長さはユウキとシノンの中間、肩甲骨の所まである。色は白で、まるで雪の様に輝いている様にも見える。しかもキレかけたユウキに怯えていない所を見ると中々に神経は太いらしい。そもそも太くなければ初対面の男を父呼ばわりは出来ないのだろうが。

 

 「キミはどこから来たんだ?」

 「…分かりません」

 「名前は?」

 「…有りません。私は、不必要で失敗作なので。名前は要らないと言われました」

 

 虐待なのだろうか。だとしたらこの丁寧な口調も親の機嫌を損ねない為と解釈すれば頷ける。シュユは気に食わないな、と思う。親は子を産んだのならしっかりと愛を注ぐべきで、それを放棄するのなら結婚も子作りもするなと思っている。その義務を果たさない大人を世界のクズと断じているシュユは少し腕に力を入れる。それが外そうとしたと手錠が誤認したのか、少しだけ体力が減る。やってしまった、と思った直後にユウキが鍵を手錠に差し込み、腕が自由になる。

 

 「この辺には多分ボク達しか居ないし、別に良いよ」

 「そっか。ありがとう」

 

 シュユは少女を降ろすと、その頭に手を置く。

 

 「なぁ、こんなのはどうだ?」

 「…何がですか?」

 「なに、簡単だ。オレ達の娘にならないか?」

 「え?」

 「キミは失敗作でもなけりゃ不必要でもない。しっかりここに在る命、それだけでキミは在るべき命だ。それに、今オレはキミを必要としてる。キミが自分を要らないって言うなら、オレは必要だって叫ぶよ。それぐらいの覚悟はある。だから、オレ達の娘になってくれないか?」

 「でもっ、そこのお2人は…」

 「ボクは構わないよ〜。むしろキミみたいに可愛い子ならウェルカム!」

 「私も同じよ。シュユきっての願いだし、あなたが失敗作じゃないっていう事も同意出来るしね」

 「でも…」

 「でもじゃない。親の所に帰りたくなったら帰れば良い。だけど、少しの間オレ達と親子になってみないか?」

 

 少女は少しの間考える様に俯くと、小さな声で言った。

 

 「お願い…します…」

 「よし!じゃあこの家買うか」

 

 シュユはダンジョンドロップ、その上レアドロップの赤い転移結晶を使って権利書を売買出来るNPCの店に向かうと即金で家を購入。手錠も外れているので屋根に登ると全力で駆け、枝を乗り継いで再び湖に辿り着く。その時間はおよそ5分。ステータスの無駄遣いこの上ない。

 

 「…無茶苦茶です、お父様」

 「慣れた方が良いよ、うん」

 「そうね。日常茶飯事だし」

 

 その間にシュユはログハウスの扉を開け、3人を手招きしていた。何だかんだ、1番新居を楽しみにしているのは彼だったのかも知れない。

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