「どうだ3人とも、SAOのβテストをもぎ取ってきたぞ!」
「え、スゴいよお父さん!それって倍率何千倍とかなんでしょ?」
「下手したら万行くかもって友達が行ってたけど、どうやったの?不正は良くないと思うわ、父さん」
「....父さんは一応ゲーム開発会社の社長だよ、2人とも。SAOの開発元兼スポンサーのレクトとも懇意にしてる。オレ達がゲーム好きだって知ってるから、無理言って権利を獲得したんじゃないかな」
「ハッハッハ、そ、そんな事は無いぞ悠!さ、βテストは時間も有限だ。早くやってみなさい」
「ありがとうお父さん!大好き!」
「本当に凄いわ。...見直した。ありがとう、父さん」
「どういたしまして、だ。娘達からの感謝の声、嬉しいぞぉ!!」
「父さん、口に出てる。...でも、ありがと。オレ達の事を想ってこんな無理して、あといつも仕事頑張ってくれて、ありがとう」
悠達は部屋に戻り、【ナーヴギア】を装着して視界に映るガイドに従って自分の身体を触るなどのキャリブレーションを行う。
因みに、彼等3人の部屋は同じ部屋だ。元々悠と木綿季が一緒の部屋で、詩乃が秋崎家に来たという一種の転機と思い、桜と椚が部屋を3人別にしようかと提案したのだが、木綿季と詩乃は「別に構わない」と回答し、悠もそれに従って同部屋を了承したのだ。一応区切りはしてあるのだが、2人はそれをガン無視して悠のスペースに居たりする為、やはり意味は無いと悠は思っている。
「フィッティング終わったー?」
「あー、ちょっと待ってくれ。あと少しで...終わった」
「私も丁度終わった所よ。キャラメイキングに進みましょうか」
「オッケー、じゃあ行くよ。せーの――」
「「「リンク・スタート!」」」
3人同時に、仮想の現実へとダイブする式句を口にする。どこかの深層へと潜っていく様な光が視界を包み、目の前にメッセージウィンドウを表示する。
『Welcome to the 【Sword・Art・Online】』
その飾りっ気の無い文字は、初の仮想現実入りを祝福した言葉なのだろう。しかし、悠には違う意味に感じた。どこかで誰かが「もう戻れないぞ」という言葉を皮肉に「ようこそ」と言い換えてほくそ笑む、そんな感じがした。
「外見はこんな所で良いか。...にしても、流石は仮想現実と銘打つくらいだ。キャラメイクの密度が凄い。で、名前か。【ユウ】で....いや、多分木綿季は【ユウキ】だろうし、被るなコレ。......じゃあ、この名前で良いな。さて、行くか」
キャラメイクが終了すると、街の広場に放り出される。両手をグーパーして感覚を確かめると、確かに現実の身体と大差無い様に感じる。
「あ、ゆ――」
「ちょっと、リアルネームは駄目よ」
「あ、そっか。えっと....【Shuyu】だから、シュユ?」
「そうだ。...で、そっちは案の定【Yuuki】、ユウキか。ん、そこの変わった髪の色をしてるのは名前、ちょっと捻ったんだな。【Sinon】...シノン、ね」
「ねーシュユ、なんでその名前なの?【ユウ】はダメなの?」
「ダメではないけど、ユウキと被るじゃん。それは不便だし何か嫌だし、名字と名前組み合わせてシュユ。そんな感じだな」
「.......悠はボクと名前被るの、嫌なんだぁ....ふ~ん」
「ま、嫌ってのとはちょっと違うんだけど。このゲームだとチャットじゃなくて声掛けが連携の主な手段だろうし、名前2文字被るのは不便だろ?言い方が悪かった、ゴメンな、ユウキ」
「...うん、許してあげる」
と、いう感じのやり取りがあった。一言で許すと言ったユウキだったが、その心中は穏やかではなかった。
(スゴいよぉ悠!ちょっと不機嫌になっただけなのに直ぐに謝ってくれたし、ボクと名前が被るのが嫌な訳じゃなかったんだ!嬉しい、嬉しい嬉しい!やっぱり悠は一番だよ!あぁ――)
「――キ。...ユ、キ。ユウキ!」
「ふぇっ!?」
「どうかしたのか?VR酔いしたならもうログアウトして――」
「違う違う!ちょっと考え事をしてたの。で、何の話してたの?」
「このβテストの目的、どうしようかって話よ。まったり雰囲気を楽しむのか、それともガッツリ攻略するのか」
「決まってるでしょ!やるなら一番!目指せβテスターの中で一番攻略を進めた人、だよ!」
「...だそうよ。まぁ私もやるなら一番が良いわね」
「じゃあそうしよう。幾ら自分の身体を使うとは言え、SAOがレベル制MMORPGなのは変わらない。先ずは――」
「レべリング、そうでしょ?」
「そう。じゃあ適当な狩り場を見つけに行くついでに道中のMOB狩ってレベル上げようか」
彼等は【はじまりの街】から出て、レべリングを始めた。3人のゲームセンスは並ではなく、全員ゲームは上手い方だ。ユウキは反射神経や反応速度が速く、逸早くSAOに適応した様だ。シノンはFPSなどの射撃系統、特に精密射撃が得意なのだが、やはり一芸に秀でれば他の分野にも応用が利くのか、槍とダガーを使い分けつつ敵の弱点を正確に突くという一撃必殺の戦い方をしていた。シュユは何でも出来るが広く深く、大抵の事のある程度までは出来るが、狭い範囲を突き詰めた人には遠く及ばない。が、彼は神から貰った【リアルラックの向上及びVR適性S】というメリットがあった。彼はレアドロップが落ちやすく、また、今はそんな概念は無いが、VRゲームに於いては反応値が異常に高い。その地力で全員と肩を並べていた。
鉄の城【アインクラッド】、その第1層を最速でクリアした3人。その時間を見れば、そろそろ夕飯の時間だった。
「そろそろ晩御飯だし、一旦終わりね」
「え~?もっとやろうよ~」
「駄目だ。あくまでコレはゲーム、現実の時間を壊すべきじゃない。節度を持って楽しく、これが父さんの教えだろ?」
「...シュユがそう言うなら、分かった。シノンも言ってるし。じゃあ、落ちよっか」
「そうね」
手を上から下に下ろすとホロウィンドウが現れる。その中からログアウトの項目を見付け、ログアウトする。一気に現実に引き戻され、仮想よりも現実に違和感を感じる感覚。彼はそれに、言い知れない恐怖を感じていた...
また原作変えてるよこの作者...(軽蔑)