「【軍】のリーダーを見つけて欲しい、ねぇ」
「内容的に、完全に自業自得なんだけど。なんで内ゲバにボク達が付き合わなきゃ…」
「その代わり、凄い対価を突き付ければ良いのよ。キバオウは他多分どこかに財産を隠してるだろうしね」
「お父様とお母様達が悪どいのです…」
1層の隠しダンジョンに、3人は居た。これはキリト達から頼まれた依頼であり、形式的とは言え報酬もある為やっている。キリト達がユリエールなる人物から軍のリーダーであるシンカーが隠しダンジョン内で行方不明になり、【生命の碑】に斜線が引かれていない為拘束されているという事で依頼を受け、二手に分かれる為にこうなったのだ。2つある入口の内1つを4人は受け持っていた(4人と言えど、ユノウは戦えない為実質3人なのたが)。
まるで中世のロンドンの
それでも被弾はせず、片手間でエネミーを片付けていく手腕は凄まじい。シノンの精密な射撃にユウキの疾い斬撃、そしてシュユは殆ど使わない大剣を2本背負っていた。
「ねぇシュユ、その大剣はなに?二刀流でもするのかしら?」
「まさか。1本ずつしか使わないよ。一応ユニークウェポンなんだけど、難点が有ってな。リズが『アンタなら大丈夫でしょ』って事でオレが実験台になったんだ」
「実験台…今度、リズとはお話をしなきゃね…」
「程々にな。オレが了承してる部分も有るんだから」
スキルを取ったは良いが放置していた大剣スキルだ。むしろ熟練度が上がるのなら万々歳なのだが、この2つの大剣はどちらもピーキーな性能であり、あまり正直に喜べないのが現状だ。しかも大剣とは言いながらも片方は特大剣であり、本当に使えるのか怪しい所ではある。
「うぇ、またカエルだ…ホント悪趣味だよ、このダンジョン…」
「確かに斬ってて気持ちは良くない…な!!」
背中から大剣を抜き放ち、横薙ぎに振るう。それだけでカエルの胴体は2つに分かれ、直後ポリゴンとなった。しかもこれは片手持ちの威力で、両手持ちなら更に威力が上がるのだから笑えない。
更に進むと、広い空間があった。その中心には巨大な甲冑の様な物があり、微かに蒼い光が揺らめいていた。ユウキとユノウは気付かなかったが、シュユとシノンは直ぐに気付いた。いつかのエリアボス討伐時、シノンがソロで挑みシュユが倒したあのボスにそっくりだと。
そしてその甲冑は動き出した。蒼き光は焔となり、まるで炉で燃える石炭の如くその甲冑を動かす。傍らに突き刺さっていた剣を引き抜き、シュユ達に相対する。ソレは焔の色こそ違えど、形は全く同一だった。名は【熔鉄デーモン】。鉄すら熔かす焔を内包する
「ユノウ、これを被ってなるべく暗い所に隠れてろ」
「父様…」
「大丈夫、私とシュユはアイツを1回倒した事が有るんだから。安心して、ね?」
「シノン母様…」
「またボクは除け者ー?ちょーっと傷付くなぁ。でもユノウもアレは見た事無いから仲間外れではないね。良かった良かった。…じゃあユノウ、取り敢えずアレ、倒してくるね」
「ユウキ母様も…。頑張って下さい、父様母様。信じてますから」
「娘に信じられちゃ、やらない訳にはいかないな。…殺るぞ、2人とも」
熔鉄デーモンの刺突をシュユは最低限、2人は散開する様に回避するとシノンは弓剣を弓に変形させ矢を放つ。が、蒼い焔の熱で刺さる前に切っ先が融けてしまい、ダメージは殆ど入らない。それを見たユウキとシュユは壁に置いてある水瓶を体当たりで破壊、中に入っている水を浴びる。これでシステム的には火に耐性が付与され、気分的にも暑さが和らいだのだ。
以前の熔鉄デーモンは体力がある程度まで減ってからスリップダメージを付与していたが、今回の熔鉄デーモンは初めからスリップダメージのオンパレードだ。
だがその程度の事で戦えないのなら攻略組の、それもトッププレイヤーに名を連ねる事は出来ない。ユウキは壁を利用して跳躍、ソニックリープを使って突進を繰り出す。頭を斬られた熔鉄デーモンの体力バーはほんの少しだけ減少し、怯んだ訳でもない故にユウキに反撃を加えようとする。そうはさせまいと突っ込むのはシュユだ。背中に背負う特大剣を地面に突き刺し、大剣を持って疾駆する。一瞬だけ構えると、ソードスキルとは別の
「――中々に上出来だろ、シノン?」
「――えぇ、最高よ、シュユ」
熔鉄デーモンの胴体に、一際太い矢が突き刺さる。その矢には矢筈に火薬が仕込んであり、凄まじい速さで突き刺さっていた。刺さってもなお加速を続けるその矢はシノンの2本目の矢が突き刺さり、
これがシノンに与えられたユニークスキル【矢製造・改造】だ。素材を必要とし、レシピが無く成功率はDEX依存というこの使い難いスキルはあらゆる戦況に対応できるという面で真価を発揮する。例えば今のように、通常の矢では貫けず太い矢では速度が足りないという局面に、火薬で対応したりと。ユニークスキル故の汎用性なのだろう。
「――【マザーズ・ロザリオ】ッ!!」
更に熔鉄デーモンを襲うのは神速の
「流石はユニークスキル、火力がエグいな」
「使い難いスキルだけどね、コレ。まだシュユのスキルの方がマシだよ」
「そう言うな。アレはそうそう使えるもんじゃないし、使うべきじゃないんだからな」
ユウキが獲得したユニークスキル【幻影剣】の効果は単純で、自分の剣が描いた軌道を影の刃がなぞるだけだ。しかも厄介なのはソードスキルに効果が適応されない所だ。それ故にユウキはオリジナルで技を身に着けていたのだ。
「残り2割、これで吹き飛ばすッ!!」
アイテムストレージに入っていた鈎付きの縄を特大剣の持ち手に絡ませ、地面から引き抜くと同時にキャッチする。そのままクレセントを使用して三日月の軌道で高速移動、背後を取ると特大剣を突き出す。
その瞬間、剣の切っ先から衝撃波が発生。竜の咆哮の如き衝撃波は熔鉄デーモンの鉄の身体を粉砕し、残った体力バーすらも消し飛ばす。後に残るのは大量のポリゴンと残心を取るシュユだけだった。
「…なに、その剣?あの大剣はまだしも、何その特大剣?」
「私の矢なんて要らないと言わんばかりの威力ね。それで?勿論、説明はあるのよね、シュユ?」
「…この大剣は【狼騎士の大剣】、大剣だけど上手く使えば特大剣並の威力が出るらしい。あとリーチも長い。で、この特大剣は【翼竜の特大剣】って言って、能力で衝撃波が出せる。…まぁ、このザマだけどな」
シュユは右手に持つ翼竜の特大剣を見せる。その2枚刃の刀身には無数のヒビが入っており、刃溢れも酷いものだ。とても先程の様な威力を出せるとは思えない。
「威力が凄すぎて刀身が耐えられないんだ。普通に使うならまだしも、あの衝撃波は連続で使えて3回程度かな。今は多分これじゃあ斬れないんじゃないかな」
ボスの力を無理矢理武器の形にしている様なものだ、それも仕方無い話なのかも知れない。だが本来はこの能力すら使えなかったかも知れないのだ、リズベットとエギルの手腕にシュユは確かに感謝していた。
「…何か、来るよ!!」
ユウキの声にユノウは隠れ、2人は構える。始めは何も感じなかったが、確かに地面から伝わる鳴動は大きくなっている。こんな時の察知速度はユウキが1番早いのだ。
どこから来る?そう思った瞬間に
「レベル90…?嘘だろ、オイ」
現時点での3人のレベルは78。絶望が、始まった。
ユニークスキル【矢製造・改造】
アインクラッド内で弓を持つシノンに与えられたユニークスキル。名前の通り矢を製造、既にある矢を改造するスキルで成功率はDEXと若干LUKに依存する。レシピは無い為全部自分の匙加減で、ある程度のセンスも要求される。
造れる矢は多様を極め、素材と成功率の低ささえ乗り切れば大抵の矢は造れる。今回の矢は試作品の為、放った矢に次の矢を当てるという神業を必要としたが本来は地面に矢を擦り付けるだけで火薬で推進する矢となる筈だった(イメージはMHWの竜の一矢)。
追加効果でDEXに若干の補正が付与される。
ユニークスキル【幻影剣】
アインクラッド随一の素の連撃数トップを誇るユウキに与えられたユニークスキル。キリトの二刀流が最高峰の反応速度のプレイヤーに与えられるのなら、こちらは最高峰の反射速度と体捌きを持つプレイヤーに与えられる。
剣を振った軌道をなぞる様に影の刃が現れ、追加攻撃を加える。熟練度が上がれば影の刃単体で動かす事も可能。単発の威力は低く、手数で攻めねばならないがソードスキルで振った軌道はなぞらない為、かなり速い攻撃速度が必要。その為ユウキはオリジナルの技である【マザーズ・ロザリオ】を開発、使用している。幻影剣使用時はヒット数が倍になるので11連撃から22連撃と、キリトの二刀流にも引けを取らない連撃数を誇る様になる。
DEXとAGIに補正が掛かる。