かなり久し振りに書いたという事で短め、しかも書き方も迷子ですが、これからも楽しんで頂ければ幸いです。
――もう戦えないなんて、そんな事は言っていられない。いつだって俺は何かを得るのと引き換えに何かを失ってきた。
友達を得てサチを失い、専属を得てカーヌスを失い、強さを得て正気を失い、そして今回は幸福と引き換えにユノウを失った。何1つ変わらない、いつもの事だ。
「……クソッタレ」
だが、何も感じない訳ではない。哀しいし辛い、更に言えば何もかも投げ棄ててしまいたい。その程度には哀しんでいるし感情の激流は収まらない。それでも暴れずにベッドの上で悪態を吐くだけで終わらせられるのは、ひとえにユノウの言っていた言葉があるからだ。
『お父様は最強なんです』
その言葉がシュユに自死を、自暴自棄になる事を許さない。彼女が望む
鉛の様に重い身体をしっかりと両足で体重を支え、ハンガーに掛けてある狩装束を着る。着慣れたその服装備はまた一段と身体に馴染んだ様な気がした。
「…シュユ、起きたんだね」
「あぁ。どれぐらい経った?」
「3日かな。ずっと寝てたんだよ、シュユは」
「……シノンは?」
「気晴らしにエネミー狩りに行ったよ。身体を動かしてないとおかしくなりそうなんだって。後でしっかり構ってあげてね?」
「ユウキは、もっと暴れたり泣いたりしないのか?」
意外だった。荒れるのはユウキの方だと思っていたが、実際はシノンが荒れてユウキは至極冷静に過ごしている。今だってシュユの為に軽食を作りながら話していた。それはシュユが知る感情豊かなユウキではなく、どこか違う気がした。
「ボク?…まぁ、確かに暴れたい位哀しいけどね。でも、ボク達全員が暴れてもユノウは喜ばない。それに、いつもこういう時に暴れてきたのはボクで、それを止めるのが2人だったよね」
「…そう、だな」
「だから、たまにはその役割を交代しても良いと思ったんだよ。ボクとシノンの立場を交換してみるのも悪くないってね。…思ったより快適ではなかったけどね」
珍しくユウキが皮肉を口にした。勘違いされがちだが、ユウキは感情は豊かだが決して激情家ではないし馬鹿でもない。むしろ人間関係に於いてはシュユは勿論シノンを凌駕する程の機転や知恵を持っている。確かに抜けている所はあれど、ユウキはそれ以上に機転が利くのだ。
しかし滅多にマイナス発言をしないユウキが、皮肉を口にした事に驚きを隠せなかった。そういう事を皮肉るのはシュユかシノンのどちらかで、それをユウキが諌めるのがいつもの流れだ。今はそれが正反対で、それが良い変化なのか悪い変化なのかは今はまだ判らなかった。
「いっその事、隠居しちゃおっか。この家で、3人で」
「それも良いかも知れないな。…いや、オレには出来ないか。ユノウが俺に『最強』でいて欲しいって願ってたんだ。それを踏み躙る行為は、俺には出来ない」
「やっぱりキミは優しいね、シュユ。昔っから全然変わらず、優しいままだよ」
「本当に優しいのかどうなのか…少なくとも、ユノウの想いを踏み躙りたくはないと思ってる。だから、戦う」
「…そう、分かった。シノンにもその意思は伝えておくね。多分、今のシノンは誰にも手が付けられないからさ。後でボクから言っておくよ」
「ありがとう。オレはこれからKoBに顔出してくる。これからのオレ達のやり方を伝える為にな」
「やり方を変えるの?どんな風に?」
「なに、簡単だ。これからは――」
シュユは記憶の中の娘を思い浮かべながら告げる。例えアインクラッドの全員に拒まれようと、これだけは貫かなければならないから。
「オレ達が最前線を務める。――最強は、オレ達だ」