2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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 シュユ「中々に久し振りだな、前回のあらすじ」

 ユウキ「まぁ作者がサボってたからね。最近は作者内のブームもある程度落ち着いてきたから書けたらしいけど」

 シノン「GE2RBだけど、極々稀にマルチ部屋にMr.タピオカの名前で出没してるわ。ショートとブラスト使いで、それなりにやれる方だから気軽に『コイツ狩りに行くぞ駄作者』とか言ってくれれば喜んで着いてくわ」

 シュユ「話が逸れた所で本編だ。楽しんでくれ」


9章 Black iron collapse
84話 総力戦


 アインクラッド内トッププレイヤー35人が75層のフロアボス部屋の前に集結していた。全員が不測の事態に対応できる様に、本気かつコルに糸目を付けずに用意した装備を纏い、全員が闘気を漲らせるその光景は壮観だった。その中でも最も異彩を放つのはその先頭に立つ3人、シュユとシノンとユウキだった。

 比較的重装備が多い中3人は軽鎧又は服装備であり、一撃よりも手数を重視した武器。しかもその中の1人は手錠を掛けられている。

 

 「じゃあ、外すね」

 「あぁ、頼む」

 

 カキンッ、と小気味良い音を立てて手錠が外れる。地面に落ちたソレは元の所有者として設定されているユウキのストレージに収納され、手錠が外れたシュユは落葉を分割して両手に持った。

 シュユ達の1列後ろに構えるヒースクリフが淡々と指示と激を飛ばす。

 

 「知っての通り、これからは転移結晶は使えない。だからこそ死なずに戦い、そして生き残れ!!行くぞ!!」

 「「「オオオオオオォォォォォォォォッ!!!」」」

 

 野太い鬨の声が響く。開かれた大扉の隙間に身を捻って入り込ませ、シュユは駆け出した。

 

 【The SkullReaper】

 

 骸骨とムカデを合わせた様な異形がカラカラと大音量で骨を鳴らす。シュユは正面から突っ込み、リーパーの名の通り振り下ろされる死神の鎌を躱し、胴体に一撃浴びせる。

 

 (硬いっ…!)

 「こういう敵は、目を狙うものよね!」

 

 シノンの正確な一矢がスカルリーパーの虚ろな眼窩に突き刺さる。それでもダメージ判定はあるらしく、耳障りな音が一際大きくなる。

 葬送の刃のバフに任せ、大きく前方に跳躍する。その直後、エギルが使う特大剣が地面を割る勢いで振り下ろされる。その剣は刀身に焔を宿し、スカルリーパーの骨を数本纏めて叩き折った。

 

 「流石はソウルウェポンだな…」

 「気を付けろエギル!ソウルウェポンは、能力を使うと直ぐに壊れる!」

 「マジか、気を付けておく!」

 

 これは経験談である。以前シュユが使った翼竜の特大剣は衝撃波を2度放っただけで壊れている。今エギルが使っている熔鉄デーモンのソウルを錬成した【熔鉄剣】も同程度、良くても少し頑丈程度の耐久しか無いだろう。

 

 「フンッ!!って、硬えなコイツ!」

 「クライン、その武器はもっとチャンスの時に使え!オレのとは違って使()()()()()()()!?」

 「わりぃけどよ、俺はあんまり温存とかしねータイプでよ!!」

 

 クラインが複数本所持し、今1本使い捨てたのは製作者のリズベット曰く【無銘】。これはシュユが持つ千景の特性を踏襲、強化した武器――となる筈が、使い捨ての完全劣化版となったカタナだ。千景と違い、1度変形する(血を纏わせる)と刃が刃こぼれしてしまい、使い物にならなくなってしまうのだ。

 だが、千景とは違い一定量体力を消費するだけで規定の秒数血の刃を保てるのである意味では改善されたとも言える(威力は劣るのでやはり劣化に違いないだが)。

 

 「硬い…!コレを使う!」

 「シュユ、気を付けてね!ソレ、試作なんでしょ!?」

 「大丈夫、シミュレーションでは普通に使えてるからな!!」

 

 シュユが取り出したのは腕に取り付ける杭の様な棒。それを収納し、【歩法】のソードスキルである【ムーンジャンプ】でふわりと、足音を立てずにスカルリーパーの背中に着地する。

 背中の異物感に暴れようとしたスカルリーパーの目に突き刺さったのは1本の細剣。しかもその直後黒ずくめの剣士により1度深く押し込まれると、直ぐに引き抜かれて細剣は白い剣士の手元に返っていった。

 

 「つぅっ…攻撃、重すぎるだろ…!」

 「キリト君、無理しないで!」

 「悪いアスナ。ただ、アイツの攻撃に当たっちゃ駄目だ。多分ヒースクリフでもかなり持っていかれるからな」

 

 そのヒースクリフも、今はスカルリーパーの鎌を捌くのにいっぱいいっぱいで【七星剣】でカウンターをする余裕も無さそうだ。キリトの両腕にも痺れが走り、暫くは素早い連撃は無理だろう。

 

 「時間稼ぎ、結構――っ、ラァっ!!」

 

 暴れる右手をスカルリーパーの身体に叩き付ける。その直後、叩き付けた右手から黒煙が立ち上り、ポリゴンと成り果てた杭が排出された。

 今シュユが使ったのはリズベット謹製のオリジナルウェポン【パイルバンカー】だ。カーヌスとは違い、高威力の武器を繰り返し使うというコンセプトは実現不可だと思い至ったリズベットは発送を転換させ、コンセプトを変更した。それは『高威力の武器を使い捨てる』事だ。生産コストを最大限安く、重さを極限まで削って出来るだけ威力を高めた。それを実現したのが無銘とパイルバンカーの2つであり、卓越したカタナ使いであるクラインと一撃の威力に欠けるシュユにその2つが預けられたのだった。

 

 「腕、痺れて――!?」

 「下がって、シュユ!少しだけならボクでもやれるから、さ!!」

 

 だが、パイルバンカーの反動は未だに抑えられておらず、極大の威力の反動がそのまま腕に襲い来る。衝撃を逃したお陰で幾らかマシにはなっているのだろうが、それでも右手は痺れて少しの間使い物にはならないだろう。

 それを理解したシュユは退き、代わりにユウキが躍り出る。通常攻撃の回数を影の刃による攻撃で実質2倍にする【幻影剣】。これは小型より大型エネミーに効果を発揮する。それは防御の固さにも関係は無く、例え固くとも同じ場所に連撃を叩き込んでカチ割り、柔らかいならそのまま斬り捨てる。実は今の所確認されているユニークスキルの中で最も攻撃的なのはユウキであり、ソードスキルの追加も無ければ防御に関してバフが付与される訳でもない、攻撃一辺倒のユニークスキルを与えられたのだ。

 縦横無尽にスカルリーパーの身体を斬り、敵の耐久力を減らしていく。総ダメージがシュユを超えた辺りでターゲットが代わり、ユウキに移行する。それを見据えていたシノンは新たな矢をつがえ、放つ。

 

 「皆、ヘイトを肩代わり出来るのは少しの間だけよ!!その間にあの頭の耐久を出来るだけ減らして!!」

 「頭って1番攻撃しにくい所じゃねぇか!」

 「ホントに、無茶言ってくれるなシノンは」

 「いや、お前も大概だからなシュユ」

 「そっちもだろ、キリト」

 「2人ともだよ」

 

 シュユとキリト軽口を言い合い、それをアスナの一言でぶった切られる。互いに本気ではないのでニッと笑みを浮かべると、そのまま頭を目掛けて走り出した。

 シノンが射ったのは鏑矢だ。その音はエネミーに対して大量のヘイトを溜めさせる音であり、エネミーはその矢に対して注意を向ける。流石にエネミーも馬鹿ではないので直ぐに戻るが、それでも短時間注意を逸らせるのは凄まじいアドバンテージである。難点を言うなら先述した効果時間の短さとある特定のスキル持ちのプレイヤーの手を借りなければ製作できない所だが、それを補って余りある強さを持っている。

 今まで1人で左腕の攻撃を受け止めていたヒースクリフが注意が逸れた隙を突いて飛び上がり、人間なら額になる場所を剣で思い切り突き刺す。今までの攻撃の威力が蓄積された一撃は1人のプレイヤーが出したとは思えないサウンドエフェクトを伴い、スカルリーパーの膨大な体力を大きく減らす。だが、まだ足りない。

 

 「左手も喰らっとけッ!!」

 

 そう判断したシュユは大きく跳躍。パイルバンカーのチャージ中は大きく姿勢が乱れてしまうが、それを耐えつつ頭に到着すると左手を突き出す。炸薬が杭を撃ち出す音と骨に杭が当たる耳障りな音が響き、パイルバンカーが壊れるのと引き換えに大きくスカルリーパーの頭蓋にヒビが入る。

 反動に任せて後方に吹き飛ぶシュユの耳に、地面に金属を擦り付ける耳障りな音が響いた。

 

 「2人とも、ありがとう。これで貫けるわ」

 

 大矢の中に大量の火薬と炸薬を一定の割合で投入、調合し、衝撃を与えれば発火する様に。以前は実用段階に至っていなかったソレをどうにか実用まで漕ぎ着けたのだ。内部でバチバチと炸裂している火薬と炸薬のせいで暴れる照準を制御し、シュユとヒースクリフの攻撃で入ったヒビに狙いを定め、放つ。

 バギャッ!!という破砕音と共に矢がヒビを更に広げ、そのまま頭蓋をかち割る。硬い頭蓋とのせめぎ合いのせいで大矢はへし折れてしまい、スカルリーパーは直ぐに立ち直る。このままでは、とヒースクリフ達が構えた途端、野太い2つの声が響き渡った。

 

 「「オオオォォォォ!!!」」

 

 その正体はエギルとクラインだ。クラインは無銘で、エギルは熔鉄剣でスカルリーパーの身体を支える太い脚を切断、粉砕したのだ。

 

 「今だッ!!」

 「ブチかませ、2人ともぉ!!」

 

 崩れ落ちる巨体。それを確認したキリトは背中の2本の剣を引き抜き、シノンが開けた頭蓋の穴目掛け、二刀流突進系ソードスキル【ダブルサーキュラー】を使用する。左手の剣(ダークリパルサー)を突き出しながら突進、穴の中にダークリパルサーが埋まると同時に右手の剣(エリュシデータ)を左下から斬り上げ、最後に引き抜いたダークリパルサーを左上から右下に振り抜く。

 その背後から現れたのは流星の如き輝きを放つアスナだ。その細剣の切っ先は光り輝き、それを感覚で悟ったキリトは転がる様に右に避ける。細剣が誇る最上級突進系ソードスキル【フラッシング・ペネトレイター】だ。充分な助走を以て放たれたその技はスカルリーパーのラスト1本こ体力を5割持っていくが、まだ足りない。それを解っていた黒い影が、再び躍り出た。

 

 「スターバースト…ストリィィィム!!!」

 

 SAO内トップクラスの連撃系ソードスキル。システムの補助こそあれど放たれるその16連撃は神速へと至る。一撃一撃にキリトの想いが込められたその技は全てスカルリーパーの弱点へとヒットし、みるみる内に体力を削っていく。最後の一撃、突きがヒットするとスカルリーパーは動きを止め、莫大なポリゴンを撒き散らして爆散したのだった。

 

 「終わっ、た…?」

 

 ガクリと膝を付くキリトにアスナが駆け寄る。シュユもその場に座り込み、その近くにユウキとシノンも近寄ってきた。戦闘に参加したメンバーの殆どが座り込む中、ヒースクリフだけは立ったまま、剣を突き上げた。

 

 「勝った…私達は勝ったぞ!このフロアボスに、犠牲者を出さずに!!」

 

 その宣言に、ほぼ全員があっけらかんとした表情を浮かべていた。だが、徐々に勝利と生存の実感が込み上げてくる。1人が小さく「やった」と呟くとその言葉は感染し、段々と喜びが大きくなっていく。

 数分後はその喜びを身体で表現し、ボス部屋は歓喜の声で溢れ返ったのだった。

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