ユイ「銃が死ぬ程痛い、普通にパリィ入れてくる、ステップが死ぬ程速い、血質が高いから通常攻撃すら死ぬ程痛い。こんな感じです」
リズ「それは…あの作者が好きそうな敵ね。相手にするのは別として」
ユイ「だから出したんでしょうね。多分SAOでは凄く理不尽な敵ですから」
金属音が断続的に鳴り響き、戦闘が開始した場所からほぼ動いていない。二刀から繰り出される剣戟は全て大盾で受け流され、手痛い反撃を喰らう前に再び連撃を繰り出す。これがキリトとヒースクリフの戦いだ。
どちらが優勢かは一目見て判る訳ではなく、あくまでも現在は拮抗している。いや、
(クソ、あくまでも楽しんでるな!?だがソードスキルは全部ヤツがデザインした技、だからヤツの予想より疾く、そして効果的な面で使うしか…!)
解っていた。段々と仮想脳のギアが上がっていって連撃の速度は右肩上がりに速くなってはいるが、それを悠々と防いで流すヒースクリフは余りにも強い。
そもそもSAOの開発者という事はあらゆるゲームバランスを確かめる為にテストプレイをしており、つまりプレイ期間はキリト達より長い。しかも茅場晶彦はSAOの開発をほぼ1人で成し遂げた比類無き天才。そんな彼のVR適正が低い訳も無く、キリトと遜色ない反射速度で剣を受けるのだった。
(マズイ、マズイマズイマズイマズイ!どれだけ蓄積した!?どこかでリセットしないとこっちがやられる!)
攻撃面でトップに君臨するユニークスキルが【二刀流】だ。だが、防御面はそこまで強くはない。ヒースクリフの【神聖剣】は二刀流の対を成すと言っても過言ではない。防御に於いては最高峰だが、素の攻撃は普通の剣での攻撃と大差ない。だがキリトが異様に反撃を恐れる理由、それが神聖剣が持つたった1つの特性だ。
『盾で受けた攻撃の威力をそっくりそのまま次の剣の一撃に加算する』。単純ながら強力な能力である。ガードブレイクされればその溜めた威力は無効になるのだが、そんな弱点をヒースクリフが克服していない訳が無い。現に、全ての攻撃を防ぎ切っていた。
だからこそキリトは攻撃を続けなければならない。ヒースクリフが反撃を放つ機会を潰す為に、防がせ続けなければならないのだ。
逆転の目は未だに見えない。
もう1つの戦場はキリトとヒースクリフの戦いとは対照的に、場所は目まぐるしく入れ代わり剣が打ち合わされる事は殆ど無かった。
「…ラァっ!」
「………」
アイテムストレージから適当な安物の剣を取り出し、敵に向けて振るう。彼は動揺などする訳も無く右手に握る千景を無造作にシュユの剣に打ち合わせる。すると、甲高い音を立ててへし折れた。幾らNPCの店での購入とは言え、仮にも73層の剣なのだが。
幾ら店売りでも決して安くは無いんだが!と内心不満をぶち撒けつつ、懐に仕込んでおいた投げナイフを投擲する。扇状に投げられたナイフは軽く身を捻る事で躱され、千景が振り下ろされる。
「チッ…!」
その一撃を構えた短剣で受け止めるが、その異常なまでの攻撃の重さに斬撃のベクトルを逸らす事で流す。剣の対処に追われるシュユの目に、銀色の鈍い輝きが映った。
「グッ、オオォォ!!」
体勢が崩れる事を厭わずに全力で上体を反らす。目と鼻の先、帽子の
「ハッ、ハッ………随分と無口だな。オレが知る狩人は饒舌こそ人間性と信じて、大体は饒舌だった。所詮は偽物、誇りも持たない
「………」
連装銃を腰のベルトに吊り、腰の鞘にカタナを納刀。次の瞬間目にも止まらない速度で踏み込み、抜刀する。その性質を知っていたシュユは大袈裟に飛び退き、落葉を合体させて左手をフリーにする。
見かけだけのカタナならばどれだけ良かっただろうか。だが、その血液の飛沫は僅かな毒と明らかな攻撃力を保有してシュユの服の端を斬り裂いた。敵が――【カインの流血鴉】が持つそのカタナは紛れも無く千景だった。
「そのカタナはオレの専属の魂が籠もってる。ソレを貴様が、愚弄するなッ!!」
落葉を収納。取り出すのは細身の剣と巨大な鞘だ。細剣での攻撃は全て受けられるが、この武器はそれだけではない。シュユは背中の鞘に剣を納刀する。すると何かが結合する様なガキンッ!という音と共にもう1度剣を振るう。するとその銀の鞘が刀身となり、大剣の如き一撃を発揮する。
【ルドウイークの聖剣】だ。そのまま数度振るうが隙が大きく、容易く躱される上に反撃を貰いそうになる。それを見越してシュユはルドウイークの聖剣を投げる。そのまま取り出したのは
「これで終わる訳が無いだろ!!」
「…………!」
距離を取ろうとした流血鴉に蛇蝎の一撃が入る。そう、これは狩りに使われる武器の1つ。中に仕込まれた鞭刃は使い手により命を持ったかの様な軌道を描き、相手を斬り裂く。
シュユは巧みに仕込み杖を扱い、その鞭刃で流血鴉を拘束する。そのまま左手に持つ槍を敵の腹部に突き刺し、柄に付いている引き金を引く。くぐもった音と共に散弾が先端から放たれ、その勢いで流血鴉の身体は槍から抜け、地面に横たわるかと思えば受け身を取って跳ね起きる。
幾ら何でもタフだ、そう思ったシュユを尻目に、流血鴉はある物を取り出す。ソレを見たシュユの意識は一瞬固まり、千景を模倣された時よりも激しい憤怒が襲い掛かる。
「ふざ、けるな…ソレは、ソレだけは赦さない!!誇り高き狩人の生き様すら、貴様は馬鹿にするのか!?」
流血鴉が握っていたのは【古き狩人の遺骨】。シュユはそれをマリアを殺し、そのマリアの形見として受け取った。まだ千景ならば許容できた。それだけならばまだ冷静でいられた。だが、記憶を読み取ったからこそシュユは赦せない。最期まで誇り高く在ろうとした彼女の生き様を、死を馬鹿にされる事だけは赦せなかったのだ。
「……殺すッ!!」
シュユも遺骨を使い、【加速】の業を使う。これはゲームを終わらせる為だけの戦いではない。狩人の誇りを証明する為の戦いとなった。
それでも勝利の目は、未だ見えない。