P.S. ガルパはイベ限友希那さんが来ました。勝ち申した。
また病室で悠の手を握り、ひたすら目覚めを待つ無為な時間を過ごしていたそんな時、病室に扉の開閉音が響き渡った。
「2人とも、悪いけど来てくれないか?」
「…和人。どうしてボク達が行かなきゃならないの?」
「明日奈の手掛かりが見つかったんだ」
「悠の手掛かりが無いなら行く意味は無いわ。悪いけど、ね。出直して――」
「――確証は無い。でも、手掛かりがある可能性が有るって言ったらどうだ?」
「…どういう事?」
「明日奈も悠も、本来はSAOから生還しているハズだ。でも現に2人とも未だに昏睡状態で、眠り続けてる。そんな今、明日奈の情報が見つかった。なら、悠の情報が有ってもおかしくはないだろ?」
2人は逡巡する。確かに和人の言い分には一理あり、目覚める確率は高いだろう。だが、2人が病室に居るのは実は目覚めを待っている訳ではない。と言うより、目覚めを待つ目的が半分で、もう半分は彼の容態を心配しているのだ。
明日奈はSAO時代特別な――言ってしまえば『裏技』を使っていない。それに対して悠は
医者曰く、もし悠が裏技を連発する事が再び有ったのなら脳が酷使に耐え切れずナーヴギアとの接続を脳が拒否し、それを無理にギアを外そうとしたとナーヴギアが誤認して脳が焼き切れる可能性があるとの事だ。
「ボクは行くよ、ここで待ってても仕方ないもんね。詩乃はどうする?」
「……悠と私の立場が逆なら、きっとあなたと同じ事を言うわよね。私も行くわ。悠の容態の事は看護師さんに頼んで、万一の事が有ったら連絡して欲しいって言っておくわ」
「その用意周到な所、悠に似てきたね」
「あなたのその即断即決な所もね」
「…決まったみたいだな。行こう」
「おっと、まさか2人も来るとはな。こういう時はリアルの顔が見れたSAOに感謝だな。俺はアンドリュー・ギルバート・ミルズ、SAOでの名前はエギルだった」
「紺野木綿季だよ、よろしくね」
「朝田詩乃、シノンよ。よろしく」
「じゃあエギル、説明を頼む」
「分かってるよ。3人とも、まずはこの写真を見てくれ」
エギルは愛称らしく、和人はギルバートをエギルと呼ぶ。確かに地味に長いな、と2人は思いつつエギルが懐から出した携帯端末を覗き込む。その画面には手ブレが激しく、またピンボケした写真が映っている。その画面の中心には大きな鳥籠があり、その中に水色の髪の人が入っている様に見える。
「この写真は俺の友達が撮った写真だ。撮影したのはゲーム内、それも最近発売されて大人気のALO、アルヴヘイム・オンラインだ」
「この人っ映ってる人って…」
「…あぁ、多分だけど【アスナ】だ。髪の色とか耳は違うけど、判る。この人は明日奈だ」
「でもどうしてまたゲーム?2人はSAOをクリアしてもまだ眠り続けてるけど、それは脳のダメージとかそういうので…」
「いえ、それなら明日奈が眠り続けてる理由が説明出来ないわ。悠はゼロモーションを連用したせいで脳に過負荷が掛かったって説明は出来るけど、明日奈は私が知る限りゼロモーションを使ってない。つまり、普通の人と同じ負荷しか掛かってないハズよ」
「…それもそうだね。でも、なら尚更明日奈がゲームの中に入って、アスナとしてプレイしてるのかな?」
「…明日奈が意図しない理由で【アスナ】としてログイン
「させられた?どういう事だ?」
これは仮定と推測が混ざり合った推論だ、そう前置きしてから詩乃は話し出す。
「私はまだ学生の身分だから、本当に細かい所は知らないわ。でも、父さんが言っていたのだけど、本来ALOは運営出来ないらしいの」
「…どういう意味だ?現にALOはこうして運営されているじゃないか」
「その通りよ、エギル。でも、今の技術力では…正確には、茅場晶彦を抜きにした技術ではフルダイブ型のゲームを運営する程のスペックを持つサーバーは作れないらしいの」
「確かに、ボソッと零してたね。じゃあつまり、ALOは…どういう事?」
「……解ってなかったのね、まぁ良いわ。つまり推測に過ぎないし、実際にログインしてみてユイちゃんに解析して貰わないと正確な所は解らないけど、多分ALOはSAOのコピーサーバーを使ってる。そういう事よ」
「コピーサーバー…!そうか、それなら説明がつくかもしれない!カーディナルシステムは進化するシステム、まだ俺達が理解出来てない『何か』が有っても不思議じゃない!」
「そういう事。まぁログインしようにも、ウチは少しね…」
「何か問題があるのか?」
「うん…問題というか、お父さんがね。お父さんがボク達にナーヴギアをくれたんだけど、まだ悠が目覚めない事で引け目を感じてるらしくて…そんな時にまた新しいVR機器を買うのはお父さんに追い打ちを掛けるみたいで、少し嫌だねって」
「…まぁ、安心しろ。俺がその程度の事を想定してないと思ったか?」
「え?」
「シュユ…いや、悠から聴いてたんだよ。お前らの父親は何かしら引け目を感じてるだろうってな。で、今回はまた新しいVRMMORPGに足を踏み入れる訳だ。だから、今回は前貸しだ」
エギルは店のカウンターの中から木綿季と詩乃に2つずつ、ある物を渡す。それは【アミュスフィア】とALOの2つで、事前にエギルが買っておいたものだ。
「コレ…くれるの?」
「バカ言え。和人、お前にも渡すけどな、勘違いするなよ?これは前貸しだ。機会が有れば店を手伝ってもらうからな?特にお前ら3人は顔が良いし、口コミも広がるだろ…ククク」
「詩乃、エギルが黒いよ…」
「元々エギルが無償で物をくれた事がある?大抵無料の時は後で痛い目を見るのよ。だからコレが正常運転でしょ?」
「…それもそうだな。じゃあ2人とも、明日ALOのどこかの街で会おう」
「今日は駄目なの?」
「今日の所は色々な違いに慣れないとな。明日、ある程度やれる様になってからにしたい。駄目か?」
「私はそれで良いわよ。…それに、試してみたい事もあるし」
「詩乃が良いなら、ボクもそれで。じゃあ、また明日ね」
「あぁ、また明日」
そう言って和人は店を出る。それを追うように2人もエギルの店を出て、自宅へと向かう。自宅に辿り着いた2人が取り出したのはアミュスフィアではなくナーヴギアで、詩乃はドライバーを構え、格闘を開始した…