2度目の命は2人の為に   作:たぴぃ

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93話 相談

 「人は愚かしく、だからこそ愛しい。表と裏、その二面性が在るからこそ美しいと、そうは思わないか?」

 「獣にはソレが無いからか?」

 「あぁ、その通りだ。私達は全てに於いて愚かであり、恐れを知らなかった。だからこそ月の魔物に魅入られ、私は幾度もの夜を巡り、数多の狩人を介錯してきた」

 「それがアンタの【悪夢】だったのか?」

 「嗚呼…そうだ、その通りさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、突然レディーの家に押し掛けて何の用かしら?しかも私だけになんて珍しいじゃない」

 「あぁ、こういう事は木綿季より詩乃の方が良い意見をくれそうだったからな。木綿季は…なんか相談事は得意そうじゃないし」

 「私だってこういうのは得意じゃないわよ、全く。こういう相談事は悠が担当してたのに…早く見つけてあげないとね。じゃあまず、何が有ったのか話しなさい」

 「ありがとう。まず俺には――」

 

 和人が話したのは苦くも甘酸っぱい青春ラブストーリー…なんて訳もなく、その辺の昼ドラとまでは行かないが中々に複雑な話だった。

 まず話は3日前、和人がALOを初ログインした日に遡る。種族を【影妖精族(スプリガン)】にした和人(キリト)は本来の開始地点と異なる場所に飛ばされた(それは木綿季と詩乃も同じだった)。2人と同じくSAOのデータを流用した和人はユイの力を用いてストレージ内のアイテムの文字化けを直し、一先ずは飛行に慣れる為にフラフラと飛んでいたらしい。

 そんな時、数人がかりで追い詰められているプレイヤーを発見。飛行に不慣れだった事も有り半ば墜落する様に助けに向かい、【火妖精族(サラマンダー)】の1人を斬り捨てた。

 

 「また面倒ごとに首を突っ込んでたのね…」

 「仕方ないだろ、そうなっちゃうんだから。それで――」

 

 そしてたった1人で戦おうとしていた【風妖精族(シルフ)】の少女、リーファと共に戦ってサラマンダー達を撃退。木綿季と詩乃と殆ど同じ様な理由で放浪の身となっていた彼をリーファはお礼の意味を込めてシルフの領地である【スイルベーン】へ行き、リーファの奢りで一杯飲んだらしい。

 随意飛行に慣れていないキリトが塔に頭をぶつけるなどのハプニングもそれなりにあったものの、その日は何事も無くログアウトし、眠りに就いた。

 その翌日もトラブルに遭いながらも奮闘していたらしい。リーファも巻き込んで領地を捨てる云々の話になったり、リーファの案内でALOの中心である街【アルン】に案内されていた。

 グランドクエスト――つまり、世界樹攻略の為の種族間会議に向かう最中、彼等はサラマンダーの妨害を受けたらしい。絶体絶命の危機に瀕するがキリトは仲間を死なせないと激怒、スプリガンが得意とする幻惑魔法を使って自分をボスと同等の能力を持たせ、撃退したらしい。

 そんな報告はそこそこに、肝心な事は最後に話された。端的に言えば、リーファは和人の妹である【桐ヶ谷直葉】であり、彼女はキリトに好意を寄せていた。更にキリトを好く前には兄である和人に好意を寄せており、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 つまり、兄を好きになったが兄には想い人が居たので諦めて他の人を好きになったが、その人の正体は諦めたハズの兄だった、という凄まじく面倒な構図に仕上がっていた。それを聞かされた詩乃は嘆息する。

 そもそも、進路相談程度のものならまだしも詩乃は恋愛の事など殆ど解らない。確かに悠に恋をしているとは言え相思相愛な上に、ぶっちゃけ詩乃達3人の恋愛観は世間から大きくズレている。まだ普通の恋愛相談ならテンプレ的な答えを返せたが、こんな昼ドラもビックリなトンデモ恋愛相談を持ち掛けられても手に余る。恐らくここに居るのが悠でもお手上げだろう。

 

 「…あなたはどうしたいの?」

 「え?」

 「縁起でもない事を言うけど、もしALOでアスナを助けたとしても明日奈は目覚めないかも知れない。もしそうなった時、あなたはどうするの?妹に、直葉ちゃんに手を出すの?」

 「そんな事する訳が無いだろ!?幾ら実の兄妹じゃなくても、手を出す訳が無い!」

 「それならもう答えは出てるじゃない。あのね、確かにあなたは凄いわ。何度も救われたしSAOを終わりに導いた実力は本物よ。でも、あなたは所詮ただの人間に過ぎない事を忘れないで。何かを得るのに何かを喪う、それが摂理。冒険活劇の主人公みたいに、何も喪わずに全部救って大団円なんて有り得ない。…それに、今はあなたが何を言っても無駄よ。直葉ちゃんが自分でケリを着けるまで、そっとしてあげなさい」

 「スグが、ケリを着けるまで…」

 「即断即決なんてそう簡単に出来るものじゃないわ。出来ても、やった後にきっと後悔するものよ」

 

 そう言って詩乃は紅茶を一口含み、目を閉じる。その瞼の裏に映るのは2人が再開を渇望する彼だ。誰よりも強く、様々なものを喪っても尚戦い、畏れられた。その決断を後悔し、涙を流しても人である事に拘って戦い抜いた彼の姿を幻視する。

 いつその心臓が止まり、会話を交わせずに死んでしまうかも知れない。だからこそ、少ない可能性に賭けてやれる事を全力でやるしかないと再び決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、詩乃を待つのを止めて散策に出たのは良いけど…」

 

 ユウキは身構えつつ目の前の男の姿を見据える。つば付きの帽子を目深に被って背中に大剣を背負い、いかにも防御力が無さそうな服装備を着用する男はひたすらにボソボソと言葉を呟き続けていた。

 

 「殺す、好きだ、斬る、愛す、潰す、愛でる、殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」

 「…そこまでボクの事を思ってくれるなんて、嬉しいよ。でも、それは正気に戻った時に言って欲しいな。ねぇ…シュユ」

 

 彼女は目を血走らせ、普段使わない【獣肉断ち】を担ぐシュユを迎え撃つ。明らかに『敵』は『彼』ではないという確信めいた直感を信じて。




 実はALO編は私の身勝手のせいでプロットが180度書き変わったという問題児なんです(唐突な告白)
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