――コツ,コツ,コツ
看守の足音が近づいてくる
ユウは膝の間にうずめていた顔をあげた
看守が目の前で足音が止まる
「61052番,4時間後に引き取りに来る。準備しておけ」とぶっきらぼうに言ってすぐ去った
61052番はユウの番号
…んなこと言ったって何も準備するもんなんかないんだけど
そう思いながらユウはぼんやりとまわりを見渡す
周りは同じ9~10歳ぐらいの少年少女が20人ほど
もうすぐここからおさらばする
別にうれしくはない
ここから出て無事に生きられる保証なんてない
だからといってここで生きられるという訳ではないけど
* * * * * *
ユウがいたのは子供を専門にしている奴隷の店
奴隷の子供達はお呼びがかかるまでこの店にいる
ユウもその1人
この店は売買や
理由は簡単
借りる側からすれば食事代がかからないからだそうだ
だがユウはもう借りられる事も買われることもないと思っていた
前に貸し出し場所で大怪我をし、右足をまともに動かせなくなっているからだ
今では移動する時は引きずって歩くほど
子供の奴隷はその安さ故に大量に買われ、強制的に労働させられる
だから労働ができなくなったユウみたいな奴がいく所なんてたかがしれてる
あと4時間後には――――
「…もうこのセカイとおさらばか」
ボソッと俺――ユウはつぶやいた
* * * * * *
4時間後
――コツコツ,コツコツ,コツコツ
足音が2つ
看守が2人
鍵が解除され、扉が開いた
「61052番、こい」看守は面倒くさそうだ
ゆっくりと右足を引きずりながらユウは檻からでた
* * * * * *
檻からでたユウはどんな動物の前に餌として投げ出されるのか色々想像していたが――――
連れて行かれたのは奴隷の商談場所であり引き取り場所
ここでおっさんが俺を競技場のライオンの前に連れて行かれるのか?
「こいつだ。さっさと受け取って出ていけ!」
面倒くさそうな声しか聞いたことがない看守の声に初めて怒りの感情がこもっていた
この看守をキレさせた大物がいるらしい
でもそこにいたのは
灰色の髪に灰色の目
へんてこな帽子にだぼだぼのコート
そして黒い杖を持ったユウとたいして年が変わらない少年だった
「君か――――よろしく!」とその少年は明るく言った
そしてさっさと帰っていく看守達
「は?」
あまりの出来事にユウは一瞬固まる
こいつも処分される奴なのか?
いや待て、連れて行くやつは何処だ
こいつが俺を処分場所に連れていくのか?
だからって子供を寄越すか?普通
と悶々と考え始めたユウの思考を遮ったのは
「じゃあ行こうか!」という灰髪の少年の声
そう言いながら手に持ってた黒い杖をサッとふった
とたんに
バランスを崩すユウの身体
「うわっ?!」
地面に叩きつけられる!
そう思った目の前にふかふかの物体が顔に押しつけられた
ぼふっ
何なんだよ!
そう叫ぼうとガバッと起き上がって…再度ユウは固まった
今さっきまでいた街が足元に広がっていた
え?俺さっきまで地面で歩いてましたよね?
なのになんで建物の屋根が見えてるの?
なんとか分かったのは絨毯に座って空を飛んでいるらしいということ
あまりに突然な出来事に言葉を失っていると灰髪の少年が笑いながら言った
「師匠なら瞬間移動を使えるんだけどね。僕はまだまだだからこの絨毯を使うんだ!君、何て名前なの?」
「…ユウ」と何とか口を動かして答える
「僕はカイっていうんだ!よろしくっユウ!」とやけにハイテンションで灰髪少年―カイが言った
* * * * * *