ではではお楽しみ下さい〜
空飛ぶ絨毯に乗っていくらもたたないうちに草原に立つ目的地が見えてきた
ちょっと街から離れてるってこと以外、特に変わったことろはなさそうな家
でも歩いて行こうとしたら丸1日かかりそうだ
たぶんユウの足だと1日半
そんな事を考えていると絨毯はゆっくりと下降を始め――――やがてふわりと地面におりた瞬間、消えた
「師匠ぉー!ユウを連れてきましたよー!」
とカイが大きい声で家に向かって叫んだ
そのとたんパタッと誰もいない玄関の扉が開き、中の廊下にパパパパッと電気がついていく
流石は魔法使いの家…なのか?
そんな事を考えながら呆然と突っ立っていると
「ユウー?早くしないと先行っちゃうよー?」
とカイの声が玄関から聞こえ慌てて玄関に向かった
なに、いつも通りすればいい。雇い主に敬語で話し、言われたとおりの事をこなせばいい
そう頭の中で繰り返しながら
* * * * * *
外から見た割に廊下は長かった
というより外で見たサイズと内側のサイズが違いすぎる
しかも何かと物が空中に漂っていて移動しずらい
まだ花瓶やら本なら分かる
でも…
何でネズミとかネコまで浮いてんだよ!!!
しかも生物じゃない本とかがなんで俺の方に向かって飛んでくるんだよ!!
…流石にこの家で冷静になるのは難しかった
「あ、トミー!新しいお友達連れてきたよー!」
漂っているネコに対してカイが嬉しそうに声をかける
それに対してトミーと呼ばれたネコはフシャー!と明らかに機嫌が悪そうだ
トミーの脇をそっと通り過ぎながら何が飛んできてもいいように周りを見渡しながら慎重に進む
それはそうと友達?
友達を金で買うかっての
とが考えながらカイの後に続いているとばかでかくて重そうな扉に行き着いた
…もう何も驚かないぞ
* * * * * *
重そうな扉が勝手にギギギギギと開いていく
完全に扉が開くとやっぱり外のサイズとは釣り合わない馬鹿でかい空間があった
天井も床も壁も真っ黒
壁際には黒や白い物が沢山積まれていた
部屋の奥には馬鹿でかい椅子があり、何か布の塊が無造作に置いてあった
「あらら…師匠また寝てるや」
カイがつぶやきタタタタッと部屋を横切る
そして奥にある馬鹿でかい椅子に駆け寄って行った
「師匠ぉー!連れてきましたよ!!」
と椅子をゆさゆさゆする
「…ん?………おう、もうそんな時間か」
布の塊が返事しやがった!
ユウが驚き一歩引く
やがて布の塊がもぞもぞ動き、中から髭がもじゃもじゃの爺さんの顔が出てきた
布の塊ではなく爺さんの服だったらしい
「…お前さんがあそこで買った奴隷さんか」
眠そうな目のまま爺さんがユウに聞いた
「…はい」
ふむ、と爺さんが1人納得し
「カイ、少し席を外してくれ」
とカイに言った
「何かあったらすぐ呼んでくださいねーお師匠さまぁー」
とユウが聞いても明らかに小馬鹿にした口調で言いながらカイは来たのとは違う左側の扉の1つに姿を消した
カイの気配が完全に消えてから爺さんは
「なぜお前さんは買われたのか分からないって顔をしてるな」
とさっきと変わらない口調で言った
ただし目に鋭い光を宿らせて
ユウは何も言わずに頷いた
だが喋らない
奴隷には主人が許可するまで発言することはできない
先ほどのカイより立場が上と思われる爺さんでもそれは変わらない
だから背筋を伸ばしてただ次の発言を待つ
「ああ、別に発言しても構わんよ。ちなみにお前さんを買ったのはわしじゃ」
ということはこの爺さんが主人だ
「そしてお前さんはここに1週間、ここで過ごしてもらう。別に奴隷だからって働けとかは言わん」
そう爺さんは言った
…は?
「…どういう意味でしょう?」
言葉は丁寧にだが思考は驚きで停止し、主人が再び許可を出す前に喋ってしまった
「お前さんは奴隷としてではなく1人の家族として自由にこの家を動き回ってよい。食事も寝床もちゃんとしたものを用意しよう」
まてまて、怪しすぎるだろ!
この爺さんなに考えてんだ
「ひとつお聞きします。1週間後はどうなるのでしょう?」
レオは静かに聞いた
「アガモノになってもらう」
「…アガモノ?」
「償いの者と書いて『償者』じゃ。とても強力な魔法を使うとそれを使った者に悪影響をおよぼすことがある。その悪影響を代わりに――」
「身代わりになれ、ということでしょうか」
とユウは冷たい声で遮った
やっぱりな
そんなことだろうと思った
「まあ、そうじゃな。……ちなみにカイには何も伝えていない。それまであやつと仲良くしてもらってもいいじゃろうか」
と爺さんが軽く頭を下げる
「ご主人様の命令とあらば」
頭を下げながらユウは答えた
生きれると思ってしまった俺が馬鹿だった
「ご主人様なんぞやめてくれ。せめてカイと同じように師匠にしてくれ。ではしばらく仲良く過ごしてくれ」
そう師匠は言った
命令通り過ごせばいい。どう足掻こうがタイムリミットは変わらないから
こうして俺と変な少年、変な爺さんと不思議な共同生活が始まった
* * * * * *