滑稽な格好、行動、言動などをして他人を楽しませる者の総称。大道芸やサーカスのクラウン 、中世ヨーロッパの宮廷道化師 、歌舞伎の道化方、幇間など、世界各地にさまざまな形がある。
クラウン自体はおどけ役だがその中でも馬鹿にされる人はピエロという。つまりクラウンよりもさらに馬鹿にされる芸風を行うのだ。
クラウンとピエロの細かい違いは涙マークの有無であり、涙マークが付くとピエロになる。涙のマークは馬鹿にされながら観客を笑わせているが、そこには悲しみを持つという意味を表現したものであるとされる。
夜の九時、既に月が昇り夜も更けるが人は未だ眠らず享楽に耽っている。目に悪いネオン光、胡散臭い客引き、安い香水を振り撒く売女。我が物顔で歩く知性の足りない男共。人間の慾望の汚さを凝縮したようなこの街は、かつて滅ぼされたというソドムとゴモラの様だ。
そんな遊び耽る街に似つかわしくない男が一人、
目を光らせて夜を往く。
その男は身長は2メートル近くあり、その体躯に相応しく両腕は子供のウエスト程に太く、服の上から6つに割れた腹筋が浮かび上がっている。これだけならば何処かの極道であるが、刺青の類は見受けられない。寧ろ小麦色に焼けた肌からしてアスリートという印象が強い。
格好は黒のタンクトップにジーンズという、ラフなものであるが、暖かくなってきたとはいえまだ夜は冷える3月。肌を晒すのには適当ではない。
そんな服装の男に、すれ違う人々は思わず距離をとる。だが、彼等が男から離れた理由はその格好故にではない。
目が恐ろしかったからである。光を飲みこむ黒黒とした瞳、それは光すら逃れられないというブラックホールの様であり、しかも大きく見開いている。
まるで何かを見落とすまいとせんばかりに。
その目に映るはけばけばしいネオンか、それともこの眠らない街に隠れる何かか。道行く男に退く有象無象には分からない。
男は路地裏に入る。すえた臭いがする。乱雑に積み重ねられたゴミ袋から放つ悪臭だけではない。ここには豚や牛の肉以外の肉が棄てられているのは確かだ。男は己の右手を口元に近づけた。
「……マリティア、【奴等】の気配は分かるか。」
すると、男の右手は日に焼けた小麦色から転じて炭のように黒く染まり、手の甲に赤い瞳が浮かび上がり答えた。
「一時の方向に死臭がする、食い散らかして臭いを消していないのだろう。目と鼻の先だ、奇襲を推奨する。」
マリティア、と呼ばれたナニカは中性的な声でそう返した。
「了解、流法は何時ものだ。」
「OK、同調開始」
短い会話を終えると、手の甲の瞳は瞑り右手の黒ずみは全身にへと広がり、男を蛹のように包み込んだ………
過去に栄えたものの、今は閑古鳥が鳴くクラブの地下には部屋がある。
地下の部屋では複数の男が一人の女にへと顔を埋めていた。
女性の肉が食いちぎられている事以外、この街では珍しくない光景である。
目の前でOLが生きたまま食べられているのを、眼鏡を掛けた女学生―桐生藍華は現実として受け止めきれずにいた。
腹を割かれて剥き出しになる桃色の臓腑、骨を噛み砕く生々しい音、そして……人と同じ姿をしているのに、獣の如く屍体を貪る化け物達。
目の前で起こっていることは確かに現実であり、このままでは自分も同じ末路をたどるというのに動こうとする様子はない。
恐らく屍肉を貪る化け物共により、体の自由を奪われているのだろう。その証拠に顔は青ざめて涙を流している。失禁しなかったのは化け物が小水臭い肉を食べるのを嫌がるからであろうか。考えても詮無きことだ、すぐに彼女は食い散らかされる。
(嫌だ……嫌だ……こんな死に方なんて……嫌だ……)
食いたい部位を食い尽くしたのだろう、OLの屍体を無造作に投げ捨てると化け物共は爛々と輝く目を桐生藍華にへと向けた。
絶体絶命、彼女が自分の短い生を呪うその時、ふと気がついた。
化け物の数が一人増えている、しかも先程まで食い散らかしていた奴らとは違う。
それは全身を黒い衣装で身を包み、羽根の飾りをつけた帽子を被り張り付けたような笑みの仮面をつけている。まるで道化のようだ、対する化け物達は衣服は纏っているがどこかしら破れた格好をしている。道化の衣服は道化とはいえ上等なものに見える。故にアレは化け物たちのリーダーかと彼女は分析した。
しかしその予想は覆ることになる。
なんと、道化は目の前の化け物顎を蹴り飛ばしたのだ。硬いゴムが裂けるような音を上げて化け物の首が吹き飛び、吹き出る血はまるで赤黒い噴水の様、突如起こった凶行に他の化け物たちも異変に気がついたのだろう。
慌てて注目を桐生藍華から道化にへと移した。
そして、術を掛けた化け物が死んだ事により桐生藍華の拘束が解かれた。
すぐさま彼女は出口目掛けて逃げ出した。
「だ、誰だ貴様は!?」
化け物は震える声で問うた。
「好きに呼べ、クソコウモリ共………」
道化は問いかけた化け物の腹に素早く掌底を叩き込み、腹部を破裂させると吐き捨てる様に答えた。
「キィキィと鳴けるうちにな」
共に火蓋は切って落とされた。
一方的であった。最早戦いとすら呼べず、一人、また一人と化け物の血肉が地面を黒く染め上げる。化け物は必死に道化へ攻撃を当てようとするも伸ばした手は掴んで引きちぎられ、放った魔力弾は弾き消され次々に化け物達は物言わぬ肉塊と成り果てていく。勝敗は火を見るより明らかだ。そも、道化の侵入を許していた時点で化け物の勝ち目は最初からなかったのだ。
最後の1匹は恐怖で失禁し、仲間があらがう中必死に一人逃げ出した。
あの化け物に追いつかれたら終わる、そう思い必死に逃げようとするがその途中誰かにぶつかった。
「きゃあ!!」
「邪魔だ!!どけ!!」
突き飛ばしてドアに手を伸ばすものの、化け物は脚をもつれさせて転んでしまった。後から徐々に大きくなる道化の足音。絶体絶命の中化け物は己とぶつかった者を見て、ある策を思いつく。
遂に追いついた道化、あと1匹屠ろう近寄ろうとしたがーすぐに足を止めた。何故ならば……
「く、来るな!!こいつがどうなってもいいのか!!」
必死な顔で女学生の首元に腕を回して、今にもへし折るつもりだ。
女学生は青い顔をして目に涙を浮かべている。
なんと、化け物は桐生藍華を人質に取ってしまったのだ。
to be continued
登場人物
道化
本作の主人公。悪魔絶対殺すマン
マリティア
道化の体に寄生している生命体。
桐生藍華
哀れにも巻き込まれたJK
化け物共
はぐれ悪魔
OL
ただのタンパク質
◆桐生藍華を………
・助ける
・助けない