王子ひとり 騎士ひとり 見習いひとり   作:アルフレット

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どーも、アルフレットです!
何故今更アルスラーン戦記なのかと思う方も多いでしょうがこの作品を書き始めたのはアルスラーン戦記のゲームがリリースされたときでして調子に乗って書いたのはいいのですがずっと執筆中にしとくのはどうなのかと今更ながら思ってしまい、4月は新しい年度が始まるからちょうどいいなんて適当に理由をつけて投稿した次第であります…

そんな作品ですが最後までお付き合いしていただけると幸いです。



第一章

———王宮の中庭

そこには三人の人影があった

剣の稽古をしている白髪の子供とその指南役と思われる年老いた男、それを横から眺めている子供

パルス国王太子アルスラーンと大将軍(エーラーン)ヴァフリーズ、そしてシストルの姿だ

 

「はい上、はい中、はい下」

「わっわっ…待っ…あっ!」

 

ガラガン!

ヴァフリーズがアルスラーンの剣を落としたことで稽古が一段落する

 

「ひどいなヴァフリーズ

 そんな技を使うなんて…」

「はっはっはっ!この程度のものは技とは申しませぬ

 ただの剣の基本動作です

 ただしその基本を鍛えなければ技も威力を失います

 基本をお磨きなさいませ

 アルスラーン殿下」

 

ヴァフリーズはアルスラーンに膝をつきながら言う

それを聞き飽きたというような顔をしているアルスラーンにシストルは剣を差し出しながら言う

 

「次は私としませんか、殿下?」

「シストル、次はお主とするのか?お主も…」

「何ですか?ヴァフリーズ様よりも勝ちやすいと思いますが」

 

アルスラーンはやりたくないのだろうがシストルがそうはさせまいと少し詰め寄り、圧力をかけて言うとアルスラーンは渋々剣を構え、稽古の態勢に入った

 

「殿下からどうぞ」

「うむ。ならばいくぞ!!」

 

それからしばらくシストルはアルスラーンの剣を難なく受け続け、アルスラーンの息が切れてきたころに軽く剣を受け流し、剣を落とす

 

「殿下、まだまだですね」

「シストル、もう少し口のきき方に気をつけぬか」

「構わぬ。やはりシストルは強いな」

 

シストルがヴァフリーズに叱られるのはいつものことなので聞き流す

 

「お褒めにあずかり光栄です

 ですが私などまだまだです

 殿下をお守りできるようにもっと強くならねば」

「もう十分強いと思うが…」

 

拳を握り、意気込むシストルにアルスラーンとヴァフリーズは顔を見合わせ、苦笑する

そして侍女に足を拭かれながらアルスラーンは愚痴る

 

「それよりなぜ大将軍ヴァフリーズは

 父上の遠征に同行しなかったのだ?

 おかげで毎日剣の稽古に付き合わされて散々だ」

「ここ《王都・エクバターナ》の守護が此度私に与えられた任務です」

「それに西の“ルシタニア”だけでなく、

 東の国々もここを狙っていますから

 陛下はヴァフリーズ様を同行させるとこができなかったのでしょう」

 

二人がかりでアルスラーンの愚痴に正論を唱えると面白くなさそうに顔を逸らす

 

「忙しいのなら私に剣の稽古などつけてくれなくても良いのに…」

「そのような覇気のないことをおっしゃられていては立派な王にはなれませぬぞ!」

「それに殿下は初陣もまだなのですから鍛えておいて損はないと思いますよ」

「シストルまで…」

 

アルスラーンは自分とさほど変わらないシストルまでヴァフリーズの方についたのが気に入らなかったのか明らかにふてくされていた

そのとき、パルス国王妃タハミーネが通りかかった

 

「母上!」

「…剣の稽古ですか、アルスラーン」

「はい!父上のような…」

 

シストルは頭を下げ、アルスラーンとタハミーネの話してる様子をぼんやりと聞く

 

(王妃様は殿下のこと、どうでもいいのかな?)

 

シストルはタハミーネがアルスラーンに興味がないようで二人の様子は傍から見れば親子というより遠い親戚のように感じていた

それを以前、ヴァフリーズに言ったとき、こっぴどく怒られたのを覚えているためもう口には出さない

会話は終わったようでタハミーネは侍女を伴って去っていった

シストルは顔をあげ、去っていくタハミーネの背からアルスラーンに視線を動かすと暗い表情をしてタハミーネを見送っていた

タハミーネの姿が見えなくなるころ、鳥の鳴き声が聞こえてきた

外を見えると二羽の鷹が円を描きながら飛んでいるのを見て、アルスラーンは顔を輝かせて外に出る

 

告命天使(スルーシ)告死天使(アズライール)!」

「ほぉ!こやつらが帰ってきたということは…」

 

キシュワードが帰ってきたということだ

アルスラーンは手早く布を腕に巻き鷹を呼ぶ

 

「おいで!おかえり、アズライール!」

「スルーシ!こっちにおいで!」

 

アルスラーンの方にアズライールがシストルにはスルーシが、それぞれ腕にとまり甘えるように鳴く

 

「殿下!!ヴァフリーズ殿もお変わりありませんか?」

「キシュワード!!」

「キシュワード様、お戻りになられたのですね」

 

アズライールたちより少し遅れてキシュワードが姿を見せた

シストルはキシュワードが声をかけてくれなかったことに少しむくれて言う

 

「シストル…!!気付かなかったわけではない」

「いいですよ…所詮、私はその程度の存在ということですから」

 

シストルが卑屈を言うとその様子にキシュワードは少し慌てたようで少しわたわたしていた

その様子を見てヴァフリーズは深いため息をつく

 

「シストル…!!」

「わかっています…冗談が過ぎました

 申し訳ありません、キシュワード様」

「いや、私の方もすまなかった」

 

ついにヴァフリーズに怒られてキシュワードに謝る

それにばつが悪そうにキシュワードも謝る

それに対してシストルはすこしはにかむ

ヴァフリーズは二人のそんな様子を見て少し和むがすぐに気持ちを切り替えてキシュワードに声を掛けた

 

「ご苦労であった

 皆、無事か?」

「はっ!当方の損害は軽微にて!」

 

キシュワードはヴァフリーズに膝をついて報告する

どうやらマルヤムに侵入したルシタニア軍の撃退に成功したようだ

 

「すぐに陛下がご帰還されるでしょう」

「殿下、陛下をお出迎えに行きましょう」

「そうだな…シストルはどうする?」

 

アルスラーンたちはアンドラゴラスのお出迎えに行くようだがシストルはあまりアンドラゴラスに会いたくない

シストルは嫌われている自分が行けばきっとアンドラゴラスの機嫌を損ねるだろうと思い断る

 

「私は行っても仕方がありませんのでこれにて失礼いたします」

「シストル!!」

「ヴァフリーズ様、今日は一人で戻りますので私のことはお気になさらずに

 それでは失礼いたします」

 

シストルは一礼してから立ち去る

後ろから大きなため息が聞こえるが聞こえないふりをした

シストルが立ち去るとヴァフリーズはため息をついていた

 

「相変わらずだな、シストルは」

「申し訳ございませぬ、殿下

 あの者にはきつく言っておきますので

 参りましょう、早くせねば間に合わないかもしれませぬ」

 

ヴァフリーズのその一言で三人は歩き出す

アルスラーンの少し後ろをヴァフリーズとキシュワードが歩いていた

二人はアルスラーンに聞こえないように小さな声で話していた

 

「シストルはまだ陛下のことを…?」

「うむ…陛下がというよりもシストル自身が陛下を嫌っているようでな」

 

そう言うとヴァフリーズはため息をつく

一年ほど前に友人から託された置き土産は初めてアンドラゴラスに会った時から会うことを避けるようになった

タハミーネについても同様で先ほどもヴァフリーズの陰に隠れるように頭を下げていた

 

「あまり人嫌いをするような子でもないのだが…

 陛下と王妃様にのみそのような態度をとるのだ」

「たしかにシストルが人を避けるところを見たことがありませんね」

「これから陛下の御前に出るようなことが増えるだろうと思うのだが…

 何とかシストルにはそれを治してもらわねば」

「シストルがどうしたのだ?」

 

先ほどのヴァフリーズの言葉が聞こえたのかアルスラーンは足を止めて二人の方を見て訊いた

 

「なんでもございませぬ

 さあ、参りましょう」

 

ヴァフリーズはアルスラーンの問いには答えず急かす

アルスラーンもそれ以上訊こうとせず、三人はアンドラゴラスの元へと足を早めた

 

シストルは城を出て、町を歩いていた

町はアンドラゴラスの帰りに、パルス軍の勝利に浮き足立っていた

 

(暇になったな…

 このまま王宮にいれば陛下とお会いするかもしれないから町にでも行こうかと思って来たけれど…

 こうなることは分かっていたはずなのに)

 

なるべく大通りを避け、人気のない道を歩く

 

「そうだ!!ダリューン様のところに行こう!!」

 

ダリューンはアンドラゴラスのもとに行ってまだ帰ってきていないかも知れないが、それならそれで待てばいいと思い、ダリューンの家へと足を向ける

しばらく歩くと目的地が見えてきた

自然と早足になる

コンコン!!

ノックをするが返答がない

 

「ダリューン様!?シャブラング!?いませんか!?」

 

呼びかけても返事がない

まだ二人とも帰っていないのだろう

家の周りをぐるりと回ってみると少し高いところに入れそうな窓が開いていた

 

「よし!!」

 

そこから入ろうと決め、軽く準備運動をする

息を整え、隣家の壁を借りて窓に手をかける

そのまま腕に力を入れて窓から中に頭を突っ込む

そこからは身体をくねらしてゆっくり入り、無事に着地する

 

「よし!!成功!!」

 

シストルは積まれた藁に背をあずけ、一人と一頭の帰りを待つ

耳をすませば大通りの喧騒が遠くに聞こえる

それを聞きながら目を閉じる

賑やかなのは嫌いではないむしろ好きだ

しかし、その中にいるのではなく少し離れたところから眺めていたい

遠くから聞こえてくる喧騒を子守唄にして心地いい微睡みに包まれた

 

ダリューンがシャブラングを連れて戻ってくると誰もいないはずの家の中に僅かに人の気配を感じた

 

「ん?誰かいるのか?」

 

シャブラングを家の待機しているように伝える

そして腰にさしていた剣に手をかけて静かに扉の鍵を開ける

深呼吸をして、ゆっくりと扉を開く

しかしそこには人影はなく静けさに包まれていた

それでも用心したまま中に入っていくと視界の端に何かが写った

そちらを見るとシャブラングのための藁に背をあずけているシストルの姿があった

気配がシストルのものであるとわかり、腰の剣にかけていた手をおろす

なるべく音をたてずにシストルに近づくとシストルはぐっすりと寝ているようだった

シストルのあどけない寝顔に思わず顔が緩みそうになるが、何とか堪える

 

「シストル…!!」

「ん…」

 

肩に手をかけてゆらし、シストルを起こす

するとゆっくりとシストルは目を開けた

 

「ダリューン様…?」

「こんなところで何やってるんだ?」

 

シストルの瞳がダリューンをとらえるとシストルの顔は次第に嬉しさに染まっていく

 

「お帰りなさい!!ダリューン様!!」

「あ、あぁ」

 

シストルの勢いに若干気圧されながらもダリューンも顔を緩ませる

シストルは周りをキョロキョロ見回すとダリューンに少し眉を寄せながら訊く

 

「シャブラングはどうしたのですか?」

「人の気配がしたのでな、外で待機させている」

「そうなんですね…よかった

 人の気配って…まさか…」

「お前以外誰がいるんだ?」

 

シストルは少し考えたが自分以外に思い浮かばなかった

真剣に考えるシストルにダリューンはため息を吐くが、シストルは気づかずに笑みをダリューンに向ける

 

「ん~誰もいませんね…やはり流石ですね!!ダリューン様は」

「とりあえず立て

 シャブラングを中にいれてやらないといけないからな」

「はーい」

 

ダリューンはシストルを立たせると外で待機しているシャブラングのもとへ行く

その間にシストルはシャブラングのために藁を整える

そうしているとシャブラングを連れてダリューンが入ってきた

シストルはシャブラングの姿を見るや否や駆け寄る

 

「シャブラング、お帰りなさい!!

 ごめんね、外で待たせて

 ゆっくり休んで」

 

そのあとシャブラングはシストルにしばらく撫でられていた

 

「それよりシストル、なぜここにいるんだ?

 どうやって入った?」

 

ダリューンが聞けばシストルは自分が入ってきた窓を指差す

 

「あそこから入ったのか!?」

 

シストルは頷く

ダリューンが驚くのは無理もない

子供が通れるくらいの大きさはあるが、子供が忍び込むには高すぎる

いや、大人が忍び込むにも苦労する高さがあった

ダリューンはシストルの行動に頭が痛くなり、話題を変える

 

「お前は…ところで伯父上はどうした?伯父上と一緒ではないのか?」

「ヴァフリーズ様は陛下のもとに」

「で、どうしてお前はここにいるんだ?」

「どうしてって…陛下にお会いしないように逃げてきたから?」

「またお前は…」

 

ダリューンはため息をつきながら首を左右に振る

さらに頭が痛くなったのは言うまでもないだろう

それにシストルが苦笑を浮かべる

 

「陛下は私のことを嫌ってらっしゃるからいない方がいいんですよ」

「陛下にお会いしないためにここに忍び込んだのか?」

「そういうことです!町にいればお見かけしてしまうかと思いまして」

「なぜそこまで陛下にお会いしたくないんだ?」

 

悪びれる様子もなく言い放つシストルにさらに頭を抱える

ダリューンにはシストルがそんなにアンドラゴラスに会いたくない理由がわからなかった

パルス国民からしてみれば国王(シャーオ)に謁見するということはこの上ない名誉なことだ

それをシストルは逃げてまで避ける

 

「どうしてですかね…自分でもよくわかりません」

「さすがにこのまま避け続けるわけにもいかないだろう…どうするんだ?」

「簡単ですよ

 限界が来る前に殿下が国王にご即位されればすむ話です」

 

ふたたびダリューンが大きなため息をつく

 

「はぁ…それを伯父上にも言ったのか?」

「まさか!!言えば叱られるのは目に見えています」

 

シストルが言っていることは国王もしくは国に何かあり、その結果王太子が即位すると言うことで起こってはならないことだ

それを本人はわかっている上での発言としてダリューンは怒ることをしないことにした

いや、怒るだけ無駄だと考えた結果だ

 

「それは何十年先の未来の話だ?」

「未来なんて誰にもわかりませんから

 もしかしたらそう遠くない未来かもしれません」

 

そんなことを二人で話していると何やら外が騒がしくなっていることに気づく

二人は顔を見合わせて首を傾げる

 

「何かあったんですかね?」

「そうかもしれぬな

 おい!!何があった?」

 

ちょうど目の前を通りすぎていこうとした兵士にダリューンが声をかける

兵士はビクッと肩を震わせこちらを向くと声をかけてきたのがダリューンだとわかり、一瞬助かったという顔をしたがすぐに顔を引き締めて姿勢を正した

 

「はっ!!王太子殿下が…」

 

内容は捕虜として連れてきたルシタニアの子供がアルスラーンを人質にとり、逃げ回っているということだった

 

「何!?」

「殿下は…何とも言えませんね

 人質と言うことはすぐに殺されるようなことはないでしょうからひとまず安心ですかね」

「何が安心だ!?殿下に何かあったらどうする!?」

 

怒りに震えるダリューンとは対照的にシストルは落ち着いていた

ダリューンとシストルの言い合いに兵士はポカンとしていた

 

「とりあえず我らが王太子殿下をお迎えにいきましょう」

 

シストルはそう言うと二人を放って歩き出す

ダリューンはシャブラングを繋いでいた縄をとき、弓を背負い、シストルの背を追う

そんな二人を兵士は少し遅れて追いかけた

 

「どこに行かれるのですか?」

「どこって逃げるならあそこしかないでしょう?」

「まぁ、そうだな」

 

シストルとダリューンは逃げるのに絶対通る必要のあるところを目指し走る

 

「俺は先に行くぞ」

「ズルいです

 シャブラング、私も乗せて」

 

ダリューンがシャブラングにまたがり、走り出す直前にシストルはダリューンの後ろに飛び乗った

そのまま兵士をおいていく

後ろから何か呼ぶ声が聞こえてくるが二人はそれを無視した

 

「危ないだろ!?」

「平気ですよ~あっ見えてきましたね

 さすが、シャブラング!!そこらの馬より断然優秀だ」

 

数分とかからず目的地である城門が見えてきた

どうやらもうアルスラーンとルシタニアの捕虜はここに来ているようで頭上から色んな声が聞こえてくる

 

「急ぐぞ!!」

「はい!!」

 

二人が上に上がるとアルスラーンの服の襟を掴み、半ば引きずるようにしているルシタニアの捕虜がいた

ルシタニアの少年兵はパルス兵と睨み合っている

その様子を見て、ダリューンはパルス兵に加わり、シストルは単独で二人に近づいた

そしてシストルと二人の間が数ガズ(数m)になった次の瞬間、アルスラーンの襟を掴んだままルシタニアの捕虜が城門から飛び降りた

 

「っ!!」

「殿下!!」

 

ダリューンは急いでアルスラーンたちが飛び降りたところに行った

そのときシストルはアルスラーンを護るべく飛び降り、アルスラーンを捕まえ、頭を抱いたところだった

 

「シストル!?」

「口、閉じて!!」

 

アルスラーンは急に現れたシストルに驚きながらもシストルの言う通り口を閉じ、これからくるであろう衝撃に身体に力を入れるが、予想していたほどの強い衝撃はなく、気がつけばすでに水の中でシストルに引っ張られてようやく岸にたどり着く

同じように岸にたどり着いたルシタニアの少年に向かってシストルは殺気を放つ

 

「…次はない」

 

シストルの殺気によってルシタニアの少年は少し怯んだが近くの馬を繋いでいた縄を切り、逃亡を図る

アルスラーンは肩で息をしているとダリューンがルシタニアの少年に弓をむけるのが見えた

 

「待て!!ダリューン!!」

「っ!!」

 

アルスラーンの叫びに驚き、矢を放ってしまったがそれが当たることはなかった

それからしばらくしてダリューンは二人のもとに降りてきた

 

「殿下!!お怪我はありませんか?」

「あぁ!!シストルのお陰だ」

 

アルスラーンは兵士に乾いた羽織をかけてもらいながらそばに座り込むシストルを見ながら言った

 

「シストルも怪我はないか?」

「大丈夫です

 これくらい問題ありません」

 

実際はアルスラーンを庇い、水面に叩きつけられた時に肩と首を強打してしまい、まだ痛みが引いていなく、少し無理をしていた

そんな様子がダリューンにはわかったのか心配そうにシストルに声をかけた

 

「本当に大丈夫なのか?」

「心配性ですね、ダリューン様は

 これくらい平気ですよ

 さぁ殿下、帰りましょう

 早く着替えないと風邪をひいてしまいますよ」

 

シストルは立ち上がり先に歩きだしたアルスラーンとダリューンは顔を見合わせるとシストルのあとを追った

 

「ところで殿下、なぜあの者を討つことをお止めになったのですか?」

「いや…つい…」

「わかりました…

 私が討ち損じたことにしておきます」

 

アルスラーンは申し訳なさそうにひきつった笑みを浮かべながら、ダリューンは肩を落としながら、シストルはそれを肩越しに見ながらニヤニヤしていた

そして城門に入ったところで泣き声まじりの声が聞こえてきた

 

「殿下!!申し訳ございません!!」

「お許しを!!」

「お許しください!!」

 

今回の騒動の原因となった三人の少年がアルスラーンに必死に頭をさげていた

 

「放してやれ」

「何を言っているのだ!!許されるような…殿下!?」

「無事ならそれで構わぬ」

 

アルスラーンは責めることも怒ることもせず三人の無事を嬉しく思っていた

その様子を眺めていたシストルとダリューンは顔を見合わせると苦笑いをこぼした

そしてアルスラーンのあとに続く

ダリューンはアルスラーンを馬に乗せると横に並び歩くその少し後ろをシストルが歩く

“あの者の話は面白かった他の者にも話を聞いてみたい”とアルスラーンが言ったためルシタニアの捕虜がいるところに行くことになったその道中…

 

「いつか…殿下が王位にご即位された際には登用していただきたい我が友人がおります」

「?それは誰だ?」

「ダリューン様…もしかしてその方ってナ…」

 

ダリューンはシストルの言葉を遮るようにふたたび口を開いた

 

「いや、口が滑りました

 そやつはひねくれも者ゆえ、今の話はなかったことに…」

「なんだ思わせぶりな!」

「そうですよ!!言いかけたなら最後まで言っていただかないとモヤモヤします!!さぁ!早く!!」

「とりあえずシストル、お前は黙っていろ」

 

ダリューンはアルスラーンには何も言わず、その分シストルにきつく言う

きつく言われたシストルはどうして私だけと頬を膨らませていた

その様子にアルスラーンは少し笑い言った

 

「…まだこの先何十年も父上の王位はゆるがぬだろうよ

 父上がおれば我がパルス王国もここ王都エクバターナも安泰だ

 お主の友人とやらにはしばらく会えそうにないな」

「案外すぐに…いたっ!!ダリューン様、いきなり何するんですか!?」

「お前こそ何を言おうとしたんだ?伯父上に言いつけるぞ」

 

シストルが全てを言ってしまう前にダリューンはシストルの頭をおもいっきり叩いた

アルスラーンはそんな二人の様子に微笑みながら言った

 

「二人は仲がよいのだな」

「そうでしょうか?確かにダリューン様は年の離れた兄のような感じがしますね」

「お前の兄は疲れそうだな」

 

三人がそんなことを話していると目的地についた

しかしそこには生きたルシタニア人はおらず、奴隷商が死体を片付けているところだった

 

「なぜ…」

「殿下!?なりませぬ!このような汚らわしいところに!」

「殺して…しまったのか?」

「はい…先ほどの少年兵と同じで暴れてどうにもなりませんので…

 ルシタニア人など獣と同じです

 飼い慣らすことは出来ませんよ」

 

奴隷商は少し前まで生きた人間だったものをさっさと片付けていく

その様子をぼんやりと眺める

 

「何故…素直に奴隷(ゴラーム)になっておけば命を落とさなかったものを…

 何故なのだ…私には解らぬよ…」

「殿下…」

 

肩を落としているアルスラーンに気の毒そうにダリューンは声をかけた

 

「だから嫌いなんだ…」

 

シストルの囁きは誰の耳にも届くことはなかった

 

ここより三年後のパルス暦320年、王太子アルスラーンは14歳で初陣を迎える

その年、王都エクバターナは炎と血煙に包まれることとなる




どうでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのであれば嬉しい限りです。

さて、次の投稿ですが未定です
楽しみお待ちください…

アルフレット
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