鋼鉄の少女達は世界にどう接する?   作:弓風

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この小説を選んでいただきありがとうございます。
この話はエピソードですので、艦隊これくしょんは次の話をお読みください。
鋼鉄の咆哮をプレイしていたら小説を書きたくなったので書いた所存です。
至らない場所もございますが、よろしくお願いいたします。
ではお楽しみください。


終焉の戦い エピソード

 極寒の空気が無自覚で漂うその場所で、一発の火焔と轟音が大気を震わす。

 海面に浮遊する氷や波を押し退け、海上を進む巨大な鋼鉄の城。

 鋼鉄の城とは何か、名前位なら誰でも聞いた事のあるだろう───”戦艦“と。

 そしてここは地球の最も北に位置する巨大な氷の海域、北極海。

 辺りを濃霧で視界が悪く、極夜ともあって奇妙な光景を映し出していた。

 しかし何故だろうか?

 普段の静かな北極海の代わりに、無数の砲声や多数の悲鳴が木霊した。

 戦艦が巨大な三連装の砲塔を自身の敵に向け、砲弾を何度も何度も放つ。

 更に戦艦の後方に位置する友軍のイージス艦が、増速し戦艦を追い抜かしながら搭載するミサイルを雨あられのように連続発射する。

 飛翔する砲弾とミサイルが二隻の敵へと命中するが、被弾時に網のようなシールドが現れ無力化された。

 二隻の敵とはファンブルヴィンテルと呼ばれる。

 名は大いなる冬を意味し、形状はとても艦とも言い難い代物だった。

 鋭く尖った台形のような船体を、アメンボに似た中央部で左右に繋げ、紫とどす黒い赤色で形成された外見は狂気そのものだった。

 

 

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 戦艦の艦橋内では全員が忙しく、流れ続ける情報を捌きつつ報告及び指示を行っていた。

 

シュルツ 「───現在の本艦の状況を知らせッ!!」

 

 苦渋の表情をする将校の服を纏ったこの男性の名は、ライナルト・シュルツ。

 ウィルキア海軍学校を主席で卒業した、若きウィルキア近衛海軍のエリート将校。

 今はウィルキア解放軍の少佐であり、本人が乗艦する戦艦雨風の艦長に任命されていた。

 戦艦雨風───それは日本とウィルキア王国が共同で建造した新型の大型戦艦だ。

 戦いの最中において何度も改修を続けられ、戦艦の最終進化型と言っても差し支えない艦であった。

 しかし雨風に乗艦するシュルツの顔色は良くない。

 そして乗組員達の報告を聞き、更に顕著に表れた。

 

水兵1 「現在第五、第七、第八ブロックにて浸水が発生中!隔壁を下ろしていますが、現在の速力では海水の抵抗でそう長くは持ちません!」

水兵2 「第三、第四主砲使用不可!兵装弾薬、残弾残り一割を切りました!」

水兵3 「敵弾により第十、第十一、第十二核融合炉及び第四タービンにて異常発生。緊急停止を実行します。出力低下により、速力53.5ktから38ktに減速。」

水兵4 「護衛艦神弓に直撃弾!速力が低下しています。恐らく機関に何かしらのダメージが入ったものだと思われます!」

 

 現在雨風ともう一隻の神弓と呼ばれる艦は、高性能な電子機器と機動力を持つ汎用型護衛艦。

 二隻共に人類の持つ全ての技術を投入して建造、強化された艦であったが、戦闘は拮抗またはやや劣勢であった。

 何せ相手はあのフィンブルヴィンテル。

 超常兵器、通称超兵器と呼ばれる圧倒的な戦闘力を誇る兵器の一種。

 深深度潜航が可能な大型潜水戦艦、戦艦並み大きさを持つ大型航空機、氷山の船体で出来た巨大航空母艦。

 二つの船体を横に繋げた双胴戦艦など、たった一つの存在で一つの国の軍を捻り潰せる存在であり、国の戦略を容易に変化させる事の可能な兵器。

 そしてフィンブルヴィンテルは、数ある超兵器群のモデルになったマスターシップ(究極超兵器)と呼ばれており、禍々しく巨大な船体、レーザー等の凄まじい火力、70ktの速力を誇る常識では絶対に計れない艦であった。

 だがフィンブルヴィンテルの相手は、既に何隻もの超兵器を海の底に案内した雨風、神弓の二隻。

 しかし数々の超兵器を倒してきた雨風と神弓だが、超兵器の親玉であり、最強の艦であるマスターシップを相手に苦戦を強いられている。

 とは言え、フィンブルヴィンテル側も二隻の攻撃によって深いダメージを負っており、何かしら大きなダメージを与えられたら勝敗を決する状態でもあった。

 まぁ、それは二隻も似たような状態だが───

 

シュルツ「ナギ少尉、フィンブルヴィンテルの状態を知りたい。」

ナギ「はい。現在、フィンブルヴィンテル各所の損傷から火災を確認しております。と、同時にいくつかの兵装が使用不能に陥っていますが、まだ戦闘力を失ってはいません。」

 

 このような会話をしている間にも、雨風が自慢の61cm砲が黒煙を立ち昇らせ、神弓は多数のミサイルを発射、白線を描きながら目標に対して一直線に突撃する。

 一方のフィンブルヴィンテルは無機質に、残った火力を二隻へ集中させる。

 現在戦闘が拮抗しているのは雨風と神弓自身の性能もあるが、やはり数的有利が大きな要因になっていた。

 だが逆に言えば、片方でも脱落すればたちまち戦況が悪化するのが目に見えている。

 もしこの戦いに負ければ、もうこの世界にフィンブルヴィンテルを止める艦は存在しない。

 ここで、何射目か分からない神弓の放つ大量のミサイルがフィンブルヴィンテルの防御重力場に命中し、大半が無力化される。

 しかし一部のミサイルが防御重力場を強引に食い破り、内部で爆発、船体へダメージを与える。

 

水兵2「フィンブルヴィンテルに神弓のミサイル複数命中!防御重力場を貫通してダメージが入りました!」

 

 そのような朗報が聞こえて喜ぶ暇も無く、フィンブルヴィンテルの一ヶ所が小さくピカッと光った。

 雨風の艦橋から光を認識した途端、艦首付近から凄まじい破断音と衝撃が襲いかかり、船体が軋むような音が響き渡る。

 振動が収まり、シュルツが大慌てで艦橋の窓から艦首付近を見下ろすと、第一砲塔に大きな異変が見られた。

 轟音を発生させていたはずの大きな砲身が力無く下を向き、防楯に空いた穴から煙が漏れる。

 

水兵2「フィンブルヴィンテルの電磁加速砲、レールガンです!本艦の防御重力場を貫通し、第一砲塔に直撃弾!第一砲塔大破!」

水兵1 「今の衝撃で船体に亀裂が!クソッ、駄目です!浸水が止まりません!!」

シュルツ「ダメージコントロール!各所隔壁閉鎖、第一砲塔弾薬庫に注水!こちらもお返ししてやれ───!!」

 

 雨風の艦首付近に搭載する砲塔型レールガンが大きく右旋回し、レールの先をフィンブルヴィンテルに合わせる。

 そして、二本のレールの間にバチバチとスパークが発生した途端───

 レールガン独特の発射音を発しながら、目が痛くなる程の閃光を瞬間的に放出した。

 それと同時にレールで加速し飛び出した砲弾は、炸薬を含まないレールガン専用の重金属単体で構成された純徹甲弾。

 重金属の大質量と7000m/sの速度で桁違いの運動エネルギーを保持した純徹甲弾が、フィンブルヴィンテルの側面に食い破ろうと襲い掛かる

 しかし強力な防御重力場と分厚い装甲に阻まれ、空の彼方へ跳弾する。

 たとえ戦艦の装甲であろうと紙のように貫く純徹甲弾だが、フィンブルヴィンテルの防御重力場と装甲相手では貫通は容易ではない。

 更にレールガンは加速時に発生する摩擦によって大量の熱を発するので、連射が不可能。

 本来それを補う予定の主砲だったが、先ほどの攻撃で二基が大破したところに、更に一基破損してしまった。

 雨風の61cm三連装砲を五基十五門の火力は、今の状態では実質半減以下になっている。

 

水兵4 「神弓から通信。「我、ミサイル残弾ナシ。魚雷戦ヲ仕掛ケル、援護ヲ要請ス。」の事!神弓は最大船速でフィンブルヴィンテルに突撃中!」

シュルツ 「よし、ならこちらも接近して注意を向けさせろ!使える兵装は全部使用してでも神弓を守りきれ!相手は手負いだ!恐らくこの魚雷で勝負が決まる。機関、両舷一杯!!」

 

 艦首をフィンブルヴィンテルに向け、残った機関の出力を上昇させる。

 本来の出力こそ出ないものの、複数の核融合で熱せられた超高温高圧の蒸気がタービンに吹き付けられ、目まぐるしく高速回転し、耳が痛くなるほどの甲高い音を鳴らしながら雨風が急接近する。

 しかし接近すれば、無論フィンブルヴィンテルの攻撃密度も増加していく。

 レーザーに砲弾、当たったら敵の存在を決して許さない反物質砲。

 あるもの全てを使いこちらを沈めようと攻撃してくる。

 そしてフィンブルヴィンテルの高出力対艦レーザーが雨風の艦橋に直撃した。

 

水兵4  「うわぁ!!」

 

 レーザーの命中した窓の目の前の座席にいた水兵4は驚愕の声を上げ、危うく椅子から転げ落ちそうになる。

 しかし雨風の装備する電磁防壁に遮断され、レーザーが明後日の方向に跳ね返される。

 

水兵7  「主砲装填完了!」

シュルツ  「怯むな!主砲一斉射、撃てぇぇぇ!!」

水兵6  「第四十八射、一斉射撃ち方!!」

 

 だが雨風側もただでやられる訳つもりはない。

 シュルツの声に鼓舞するように、残存する六門の61cm砲から砲声が轟き、艦内に衝撃が伝わる。

 残った数少ない弾薬を使い尽くす規模で迎撃を行い、反撃していく。

 レーザーは電磁防壁で減衰又は跳ね返す。

 砲弾は防御重力場で威力を低下させ、装甲で弾き海面へ叩き落とす。

 反物質砲は荷電粒子砲と各種砲を使い、弾自体を消滅させる。

 が───全ての攻撃を迎撃出来るほどフィンブルヴィンテルは甘くない。

 迎撃もしくは防御しきれなかった攻撃が雨風の船体を焼き切り、破壊される毎に雨風全体に軋みや装甲の砕ける音がまるで悲鳴のように聞こえる。

 しかしその際あって、派手な攻撃はフィンブルヴィンテルの注意を引くという目標を見事に達成した。

 雨風が注意を引いている間、神弓が高速でフィンブルヴィンテルの側面へ廻る。

 そして神弓の側面に搭載していた魚雷発射管がフィンブルヴィンテルに予測針路方向に動き、圧縮空気によって発射管から魚雷が二本飛び出す。

 

水兵4 「神弓の魚雷発射を確認。このコースは・・・直撃コースです!」

 

 放たれた魚雷は、親の敵と言わんばかりに水中を走っていく。

 その魚雷に気づいたフィンブルヴィンテルが魚雷を回避しようと転舵を開始したが、ダメージで動きが鈍くなった事や至近距離だった事などが組み合さって避ける事が出来ず───

 フィンブルヴィンテル側面に光とキノコのような巨大な水柱が立つ。

 光から少し間を置いて、炸裂時の衝撃や爆音が轟く。

 

ナギ 「フィンブルヴィンテルに魚雷命中二!攻撃が止み・・・・・あっ、沈み始めましたッ!」

シュルツ 「皆、よくやったぁ!!」

水兵達 「うぉぉぉーよっしゃー!やったぜぇぇぇぇ!」

 

 艦橋にいる全員が歓声を上げた。

 いや艦橋だけではない、艦各所から歓声が聞こえる。

 神弓の方もきっと同じ事になっているだろう。

 

ナギ 「ついにやりましたね!」

シュルツ 「あぁそうだ。やっと・・・これで、世界が平和になる。」

ナギ 「ここまで戦った甲斐がありましたね!」

 

 雨風、神弓の乗員が勝利と喜びに歓喜しており、涙を流す者や胴上げを行っている者もいる。

 それもそうだ。

 これによって今後は超兵器が二度と暴れたりしないのだから。

 皆の待ち望む平和という時代が、この世界に遂にやって来たのだから。

 

水兵5 「ついに、やれたか。これで妻にまた会え───んっ?」

 

 水兵5の視界の端に写ったレーダーが妙な反応を捉えた。

 気になってレーダーをよく見てみると、フィンデルヴィンテルからの大量のエネルギー放出を観測していた。

 

水兵5 「なっ!フィンブルヴィンテルから高エネルギー反応を観測!」

シュルツ 「何?いったいどうなっている!?」

 

 瞬時に艦橋内全体へ緊張が走る。

 近くの窓からシュルツがフィンブルヴィンテルの姿を確認した。

 フィンブルヴィンテルは、壊れた武装やら船体から黒煙を吹きゆっくり沈んでいる。

 しかしそれよりも早く黒の何かによって少しずつ覆われて行く。

 

シュルツ 「──あれは一体・・・・・?」

ナギ 「観測班からの報告により現象が判明しました。あれは、フィンブルヴィンテルの超兵器機関が自壊を起こしています!」

シュルツ 「なんだと!?急速離脱急げ総員対衝撃姿勢!爆発に巻き込まれるぞ!」

水兵3 「神弓、離脱開始しま──!」

 

 フィンブルヴィンテルが黒い何かに完全に覆われると、視界を全てを覆い尽くす程の光を放射し四分五裂に爆発する。 

 その爆発は近くにいた雨風、神弓をも巻き込み、防御重力場によって軽減されていたのにも関わらず、これまでの直撃弾と比較にならない規模の衝撃が襲いかかる。

 艦の乗組員は皆、衝撃で壁や床に天井へおもいっきり叩きつけられた。

 

 

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??? 「艦長・・・艦長・・・起きてください。」

 

 シュルツの耳に自身を呼ぶ声を聞こえ、シュルツがそっと目を開ける。

 視線の目の前に居たのは、心配そうにシュルツを見つめるナギだった。

 

シュルツ 「ん?あぁナギ少尉か、痛っ!」

ナギ 「艦長、大丈夫ですか?」

シュルツ 「私の事は後だ。艦は?」

 

 シュルツが艦の状況を知りたいと思った時、今居る艦橋へ続く階段から足音が近づいてくる。

 階段から現れたのは、紙を持った水兵だった。

 水兵はシュルツの姿を見つけたら、一目散にシュルツの傍に走り紙に書かれた被害報告を読み上げる。

 

水兵9 「艦長、被害報告です。フィンブルヴィンテルの爆発により、各種の核融合炉にダメージが入りました。現在は緊急停止装置が機能して停止していますので、機関の爆発などは無いかと。しかしそれ以上に各ブロックから浸水が始まっており、浸水を押さえるのは不可能です。その為、長くは持たないと思われます。神弓の方でも同じような状態が起きている模様です。」

 

 水兵9が悔しそうな表情を滲ませて報告をする。

 被害報告の内容を理解したシュルツはため息をつき、諦めた顔をなって命令した。

 

シュルツ 「そうか。救難信号を発信後、直ちに総員退艦。急げ、一人でも生存者を増やすのだ。」

水兵9 「了解しました。」

 

 水兵9は報告を終えるとすぐに退艦作業へ向かった。

 そしてシュルツは壁に手を当て立ち上がる。

 

シュルツ 「さて私たちも退艦するか。一年か、随分といろいろありすぎて長かったのやら短かったのやら。」

 

 ふとこの艦に乗り始めての航海を思い浮かべる。

 その隣でナギが残念そうに口に出す。

 

ナギ 「艦長。せめてこの子を母国に帰らせてあげたかったです。」

シュルツ 「あぁ、でもしかたないさ。むしろあの爆発で浮いているだけ奇跡だろう。だが、やはり愛艦を失うのは心苦しいものだな。」

 

 話しながらシュルツが爆発の時に破損した箇所に座り、ごそごそと何かをしている。

 こんな行動に疑問を持ったナギがシュルツに聞く。

 

ナギ 「艦長?何をやってるんですか?」

シュルツ 「なに、ただパーツの一つ二つを取っているだけだよ。せめて、この艦の一部を持っておきたくてな。」

ナギ 「フフッ、艦長は思いの外ロマンティストなんですね。」

シュルツ 「そうかもしれないな。さて、話はこの位にして、退艦するぞ。」

 

 二人は生き残った兵を全員退艦させた後、救命ボートに乗って艦から急いで離れる。

 二艦はシュルツ達が距離を取るまで妙な位沈まず、沈没に巻き込まれない安全圏に離れた直後、急激に沈み始めた。

 これは偶然艦の浸水に間一髪巻き込まれずに済んだのか、それとも二艦が救命ボートが離れるまで意思があるように耐えててくれたのか。

 それは誰も分からない。

 

シュルツ「ありがとう、安らかに眠ってくれ。全員、雨風、神弓に敬礼。」

 

 シュルツの合図と共に生き残った全員が二隻の武勲艦に敬礼をする。

 別れを告げた艦はあっという間に姿を海中に没した。

 

 

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報告書

 北極海にて戦艦雨風、護衛艦神弓はフィンブルヴィンテルとの戦闘により、フィンブルヴィンテルの撃沈に成功。

 しかし超兵器機関の自壊により、両艦に回復不可能なダメージを受け、総員退艦を発令。

 総員退艦発令後、三十七分で沈没を確認。

 雨風、神弓、北極海の海に沈む。

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