鋼鉄の少女達は世界にどう接する?   作:弓風

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11:旋風のノイズ

 鎮守府の食堂で神弓は雨風と一緒に椅子に座り、ようやく食事が出来ると神弓は喜んだ。

 

神弓 「やったー!やっとご飯だ!」

 

 雨風と神弓のいつものコンビは、座学が予定よりかなり伸びて三時ギリギリ前と、遅めの昼食を味わっていた。

 そこに食堂の入り口から、提督と連れられたであろう瑞鳳が入ってくる。

 

提督 「もうぉー、なんであんなに長話をするのよ····」

神弓 「あっ、提督!」

 

 神弓が声を出すと提督が二人を見つけ、カウンターで注文した後、同じテーブルに座った。

 

提督 「あら、随分遅い昼食ね。何かあったの?」

雨風 「座学が長引いた。提督は?」

提督 「本当はこんな遅くなるはずじゃなかったのよ。食堂に行こうとしたら、上から連絡が来てね。気がついたらこんな時間よ。」

 

 提督は心底嫌みたらしく喋った。

 

雨風 「そう···それで、私たちの処遇は決まった?」

 

 雨風が口にした途端、隣で嬉しいそうに食事をしていた神弓の身体が即座に強張る。

 それを見た提督は、神弓を安心させるような声で話す。

 

提督 「大丈夫、ちゃんと条件を飲ませたから。」

 

 自信満々に伝える提督を見て、神弓は力尽きたように椅子にもたれ掛かる。

 

神弓 「良かったー!」

雨風 「ありがとう·····提督。」

提督 「別に良いって事よ。内容はまた後日話すから、この話はまた今度ね。それじゃあ他の話をしましょう。そうね···二人はここ最近はどう?」

 

 話を切り替えて二人に質問して、雨風が最初に答えた。

 

雨風 「····神弓が座学で死にかけてた。」

神弓 「───ちょ、ちょっと雨風ッ!!言わないでって言ったじゃんっ!!」

瑞鳳 「へぇー、どんな?」

 

 神弓が慌てて声を荒げたが、瑞鳳が興味を持ってしまい、聞き返される。

 

提督 「私も気になるな~。」

 

 同じく興味津々でニヤニヤ顔の提督も便乗して、雨風は神弓の制止を聞かず言う。

 

雨風 「座学の間、ずっと頭から煙が出ていた。終わりの方は机に死んだみたいに張り付いていた。」

神弓 「うー、仕方ないじゃないですか!私、漢字とかの暗記苦手なんですよ!」

提督 「フフっなるほどね。」

瑞鳳 「うーん····それは、頑張って貰うしかないよね···?あ、漢字と言えば、二人はどうしてその名前になったの?」

 

 そこにいた皆が、んっ?って顔をした。

 意味が理解出来てない周囲の、瑞鳳が慌てて説明する。

 

瑞鳳 「えーと、ほら!私の瑞鳳って名前は、おめでたいって意味があるから。」

神弓 「あーそういう事ですか。」

 

 神弓が納得したようで手を叩く。

 

神弓 「私はミサイルを積んでいますよね。ミサイルは絶対に外さない神の矢と呼ばれているので、神の矢を打ち出す弓、神弓となったらしいです。」

 

 神弓は満面の笑みで得意げに話す。

 

提督 「へぇ、そうなのね。雨風は?」

雨風 「私は···雨のように砲弾を降らし、大量の風切り音だけが周りに響く、から···そうなってる。」

瑞鳳 「言葉の意味で決める訳ではなく、行動の方で決める感じですか───あれっ?」

 

 などと話していると、妖精さんが机の傍に集まり、途中で落下したり転げ落ちたりしながらも、数人が机の上へ登ってくる。

 そして妖精さんの腕には、メモ帳サイズの紙とペンを持っていた。

 

瑞鳳 「この服装は、お二人の妖精さんですよね?」

 

 その妖精さん達は紙を置き、せっせと何かを書き始めた。

 その光景に皆は首を傾げ、顔を見合わせる。

 

提督 「何を書いているのかしら?」

神弓 「私達の妖精さんなら、私達に関する事でしょうか?」

 

 書き始めて数分が経過して、ようやく完成したようで、妖精さんが見えるように紙を広げた。

 

雨風⋅神弓 「·····────ッ!?」

 

 その絵を見て意味を理解した神弓は、思わず息を飲み、心臓の鼓動が加速的に早まる。

 あの普段からあまり表情の変わらない雨風ですら、目に見えるほど驚愕の色を見せていた。

 ガタンッ!と大きな音を立て、二人は急いで妖精さんを連れて駆け出し、食堂から立ち去る。

 

提督 「ちょっ!ちょっと待ちなさい!」

 

 突然の事で一瞬呆けてしまったが、すぐに冷静を取り戻した提督が二人の後を追う。

 

瑞鳳 「ふぇっ!?ど、どうしたの!」

 

 瑞鳳は提督を追おうか悩んだが、雨風と神弓が突然走り出した原因だと思われる絵に好奇心が刺激され、視線を絵に移す。

 妖精さんの書いたその絵には、一隻の艦が描かれていた。

 主砲と思われる三連装砲四基、副砲の連装砲が四基、更に魚雷までもがついており、形は全体的に曲線でスマート、特にV字型の煙突が目立つ戦艦である。

 一方雨風と神弓は、工廠に向かって全力で駆ける。

 その二人は、周りから見ても即座に分かるくらい焦っていた。

 外から見れば、二人が慌てるくらいの事が起きてる!と思うだろう。

 

神弓 (しまった!時間が経ったせいで、無意識の内にいるかも知れないが、いない···と、なってしまった!)

雨風 (現代を超越したオーバーテクノロジー、悪夢の再来、人の···過ちの···結晶。)

神弓 (超常兵器級、別名···超兵器!)

雨風 (V字型煙突···船体の形は──あの超兵器は···)

 

 そして二人はある艦の名前を同時に口にする。

 

雨風⋅神弓 「超高速巡洋戦艦───ヴィルベルヴィント!」


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