軍令部の建物内で、雨風達の処遇について話し合った会議室に再び人が集められていた。
会議がまだ始まっていないからか静けさは無く、そこら中から話し声が聞こえてくる。
(ショートランド)提督 「ようやく泊地に戻れたと思ったら、最悪だぜ。まさかのとんぼ返りだ。」
(ブイン)提督 「連続で緊急会議なんて珍しいですね?」
会議室で席が隣り合わせの二人の提督は仲良さそうに喋り合う。
彼らの管轄するブイン基地とショートランド泊地は近く──というよりは目の前なので、作戦行動も共同でやる事が多く関係も親密だったからだ。
(ショートランド)提督 「俺の予想だと、例の艦娘が何かの起こしたと思うがな。」
(ブイン)提督 「例の・・・あの艦娘ですか?」
(ショートランド)提督 「そうだ。少々の事なら連絡で済むからな。脱走でもしやがったか?」
(ブイン)提督 「聞いてみてからじゃないと断言は難しいと思いますよ。もしくは深海悽艦の新型でも現れたのでしょうか?」
各地提督達が会話をしている最中、会議室の大きくドアが開かれる。
ドアの開閉音に気かついた各地提督達が視線を向けると、ドアの奥から海軍上層部と海軍元帥が現れた。
その姿を見た各地提督達は口を閉じ、立ち上がって元帥閣下達へ敬礼する。
元帥閣下が椅子に着席し、周りの提督もそれに習って椅子に座る。
そして皆が着席するのを確認した元帥閣下はまず謝罪から入った。
元帥閣下 「まずは皆にとんぼ返りさせた事を謝らないといけないな、すまなかった。それで今回再び皆に集まって貰ったのは新たな敵を発見したからだ。」
申し訳なさそう謝罪し本題を口にすると、集まった提督の内一人が手を挙げて質問する。
(呉)提督 「元帥閣下。それは新種の深海悽艦が発見された、もしくは新たな泊地が見つかったという事ですか?」
元帥閣下 「残念だがそれは違う。」
(呉)提督の質問に元帥は違うと否定した。
質問内容を元帥閣下が否定した事により提督達は困惑する。
(呉)提督 「それでしたら・・・一体何が発見されたのですか?」
提督が全員を集められるレベルの会議の内容に新種の深海悽艦でも新たな泊地でもないなら、一体なんだ?と。
提督達の疑問に元帥閣下がハッキリと答えた。
元帥閣下 「今回見つかったのは新たな敵ではなく───新たな敵勢力だ。」
元帥閣下の申した言葉の意味を理解した提督達には動揺が生まれる。
元帥閣下 「ちなみにこの敵勢力は、今のところ一隻しか確認されていない。」
追加とばかり現れた一隻のみと言う単語が提督達をより混乱へ導き、お互いに顔を見合わす。
今度は別の提督が手を挙げた。
(舞鶴)提督 「元帥閣下。深海悽艦の分類ではなく、たったの一隻で新たな敵勢力になる理由とその勢力についてお教え下さい。」
元帥閣下 「君の言う事はもっともだ。まずはこの資料を見てもらいたい。」
元帥閣下の近くで待機していた秘書が資料を配り、各地提督達が目を通す。
配られた資料を読んだ者の様子は様々。
目を見開いて驚く者、資料の内容について考える者、一言一句逃さないよう慎重に読む者等々。
たが、複数の様子を見せる提督達に共通して言える事があった。
(パラオ)提督 「この資料を読む限り、近海に敵勢力がどうやって侵入し、それでいて我が軍の艦娘に攻撃を仕掛けられる事になった理由は何でしょうか?」
(パラオ)提督が言った事が他の皆に共通していた事であった。
夜なら攻勢を見逃す可能性があるが、今回の事件は敵を発見しやすい昼、それも哨戒の多い首都圏の付近の横須賀鎮守府担当の近海にどうやって敵が侵入してきたか。
元帥閣下 「儂の知っとる情報は、昨日の1530頃に横須賀鎮守府付近の近海へ謎の敵が一隻が侵入し、横須賀鎮守府所属の艦隊へ突然攻撃を開始したらしい。幸いにも増援にきた艦娘によって撃沈でき、大事には至らなかったようだが・・・」
(パラオ)提督 「敵はたった一隻で攻撃を仕掛けて来たとの事ですが、これは明らかに無謀な攻撃でしょう。そして侵入してきた敵の情報がこの資料には記載されていません。一体どんな艦が侵入してきたんですか?」
渡された資料にはピンポイントで敵の性能に関した情報が明らかに削除されていた。
元帥 閣下 「その敵について説明しようと思う。しかし儂より断然知っとる者がおる。」
(リンガ)提督 「えっ、元帥閣下よりもですか!」
あの海軍トップの元帥閣下より情報を知っている者がいることに驚く。
元帥閣下 「では、その者達を呼ぶとしよう。入ってきてくれ。」
元帥閣下が叫ぶとドアが開かれる。
そこ居た人達を見て、各地提督達は予想外の人物に驚愕する。
居たのは(横須賀)提督とその人物達だ。
(横須賀)提督達は一礼して会議室に入ってくる。
(横須賀)提督は空いている椅子の座り、その者達はモニターのある所へ行き自己紹介を始めた。
雨風 「雨風型戦艦一番艦・・・雨風。」
神弓 「初めまして。神弓型護衛艦、一番艦の神弓です。」
そこの会議室にいる者は皆が知っているであろう艦娘が目の前に現れた事に元帥閣下と(横須賀)提督以外の全員が驚愕と疑問に覆われた表情を露にさせ、この二人を呼んだ理由を元帥閣下が答える。
元帥閣下 「二人をこの会議に呼び出した理由は、今回の敵を撃沈した本人達であると共に、唯一この敵を詳しく知っている艦娘だからだ。」
(トラック)提督 「元帥閣下、それについて詳しく説明をっ!」
元帥 「まぁそう慌てるな。それは二人から聞くと良い。説明してやってくれんか?」
ます神弓が頷き、説明を始めた。
神弓 「皆さんは私達がこの世界の艦ではないと薄々気が付いていると思います。今回現れた敵艦は私達が艦の頃に戦闘を行ったとある一隻です。詳しく性能はこちらになります。」
神弓は壁に取り付けられたモニターを操作して、その艦を表示させる。
モニターに映し出されたのは二人の妖精さんが更に詳細に描いたヴィルベルヴィントの絵だ。
(舞鶴)提督 「なんだあの艦は!」
(トラック)提督 「初めて見る艦だな。随分とスタイリッシュな形をしているが。」
(ラバウル)提督 「どう考えても、我々の艦とは根本的に何かが違う・・・」
他にもその艦を見た提督達からは色々な呟きが漏れ出す。
神弓 「この艦は、超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィントと言います。分類では超兵器となっています。」
元帥閣下 「ヴィルベルヴィント、か───確かドイツ語でつむじ風、旋風の意味があったか。」
艦の名前に元帥閣下が小さく呟く。
神弓は続いてヴィルベルヴィントの性能を伝える。
神弓 「ヴィルベルヴィントの主武装は、主砲の28cm55口径三連装砲、副砲として12.7cm連装高角砲、その他20mm機銃や魚雷を搭載。装甲は対31cm砲に装甲を持っています。」
ここで提督の中から一人、質問をする為手が挙がった。
神弓 「はい、どうぞ。」
(トラック)提督 「神弓、だったな。この艦の性能を聞く限り、金剛型より性能が低く感じる、むしろ劣化型だ。この性能では近海に来るまでに発見できる時間もあり、充分発見も出来ていた思うが?」
神弓 「確かに今話した性能だけ見るのであれば、精々ポケット戦艦程度でしょう。しかし違います。」
神弓は(トラック)提督の質問を否定する。
神弓 「ヴィルベルヴィントの最大の長所は速力です。」
(トラック)提督 「速力?」
神弓 「私はこの世界のヴィルベルヴィントとは戦いましたが、艦の頃に戦ったのは雨風です。これに関して言えば、そちらの方が詳しいはずです。」
(トラック)提督 「それは本当か?それで雨風、どうなんだ?」
雨風 「本当。最大速力は85kt。」
(トラック)提督 「はっ85kt!?」
戦艦と言う大型艦が80kt以上出せる事に、周囲がどよめき始めた。
戦艦以前に80ktもの速度を発揮可能な艦は存在しない。
全員が微妙な艦だと言う認識が一瞬にして吹き飛ばされる。
雨風 「私達の世界の話。ヴィルベルヴィントの速力圧倒され、米海軍太平洋艦隊三個艦隊が壊滅した。」
雨風の口から予想以上の大きな被害を聞いて、元帥閣下は思った事を口にする。
元帥閣下 「今回の事件は、たったこれだけの被害で済んで運が良かったのか。」
雨風が元帥閣下に視線を動かし頷く。
雨風 「ヴィルベルヴィントは他の超兵器より楽な方。」
(舞鶴)提督 「おい待ってくれ!まだあんなのが他にもいるのか?」
(舞鶴)提督が冗談じゃないとばかり声を荒げる。
元帥閣下 「焦るのも分かるが、一旦落ち着いたらどうだ(舞鶴)提督?」
焦りにも似た感情を持ってる(舞鶴)提督を元帥が諭す。
(舞鶴)提督 「はっはい!申しわけありません・・・」
元帥に言われてハッと我に戻った(舞鶴)提督は元帥閣下へ謝罪する。
元帥 「分かればよろしい。それで雨風、さっきの質問はどうなんだ?」
雨風 「他にも超兵器は存在する。可能性は、ある。」
元帥 「そうか・・・・」
会議室に重苦しい雰囲気が流れる途中で、一人手を挙げる者がいた。
元帥 「むっ?(呉)提督、どうした?」
(呉)提督 「先ほどから超兵器という単語が出てきてますが、超兵器と通常兵器の違いについて説明を受けないと思うのですが?」
(岩国)提督 「そういえば、そうだな。」
(単冠湾)提督 「確かに、(呉)提督の言う通りですな。」
そこら中で(呉)提督や(岩国)提督に賛同する声が聞こえてくる。
ヴィルベルヴィントの性能や被害について意識が向いていた為、根本的な前提に気づかなかった。
そこで再び神弓へ視線が集まる。
神弓 「超兵器とは超常兵器の略称で、超兵器と通常兵器の違いは簡単です。超兵器機関を搭載しているか?搭載していないか?の違いだけです。」
(呉)提督 「超兵器機関?」
全く聞き慣れない単語が出てきて疑問の声が上がる。
神弓 「雨風、説明して。」
雨風 「技術士官エルネスティーネ・ブラウン大尉の研究で、超兵器機関の製造時期や製造法は不明。たった一つの部品になったとしても動き続ける機関。」
会議室にいるほぼ全員が超兵器機関の説明を信じられなかった。
何せ常識以前に科学の前提が狂っている。
機関は複数の部品から構成され、何れか一つでも破損すれば機能性に影響が及ぶ。
部品そのものが生き物と言われた方がまだ納得出来るだろう。
元帥閣下 「そんな機関を、一体どうやって手に入れたんだ?」
雨風 「火山付近で掘り起こす。埋没してる機関も常に動き続けてる。」
元帥 閣下 「ふむ。超兵器機関の元は古代の遺物、レリックに近いのか。」
(ブイン)提督 「雨風、貴重な超兵器機関を掘り起こしてまでわざわざ搭載するメリットはなんだ?」
雨風「凄く重い。でも出力が遥かに桁違い。」
(ブイン)提督 「なるほど。確かに、それなら搭載する可能性は出てくるな。」
高性能で高出力の機関は何処であろうと問答無用で大歓迎だ。
それが例え高重量だとしても、限界はあるものの搭載する船体を合わせれば済む話ある。
高い出力を持っているなら大和の設計で問題視された機関出力不足による速力低下が起こらず、それどころか速力を上げて尚有り余る出力を光学兵器に転用したり、シールドのような物を動かす事ができ、まさに最強の艦を造る心臓に変化するだろう。
(リンガ)提督 「次に私から質問なんだが、君たちは今まで一体何隻の超兵器を沈め───」
その時、会議室のドアが乱暴に開かれ、一人の兵が紙を持って突入した。
(パラオ)提督「今は会議中だぞ!!」
水兵 「申し訳ございません!すぐにお耳に入れて貰わなければいけない報告が、幌筵泊地から来ましたので。」
(幌筵)提督 「幌筵泊地から・・・?一体何があった!」
幌筵泊地を自身で担当している(幌筵)提督は、思わず聞き返す。
水兵 「はい。先ほど、幌筵泊地から北方海域に深海悽艦の大艦隊が発見されたと報告が上がっています。」
元帥 「深海悽艦の大艦隊、だと?戦力は?」
その兵の口から全員が驚愕せざる圧倒的か規模の戦力を報告した。
水兵 「今現在確認された中だけでも・・・五百隻以上。更に鬼級姫級を十隻以上含む、今までに観測された事のない大艦隊です!」