これからは二週間に一度どっちか投稿しますので許してください。( ;∀;)
北方方面漸減邀撃作戦が発動して一週間が経った今も未だに戦闘は終了していなかった。
現在は第一、第二、第三指揮艦隊がローテーションで防衛線の維持に努めていたが、人類側の戦況はあまり好ましいものではないのである。
初戦で大打撃を受けた第一指揮艦隊が復帰し、第一防衛線を防衛していた時、深海悽艦は多数の鬼級姫級で防衛線に対し多方面同時攻撃を行った。
多方面からの強力な部隊の進撃に第一指揮艦隊の戦力では到底防ぎ切れるものではない。
そこで最高の戦力である第二指揮艦隊を増援に回した。
第二指揮艦隊の準備時間を稼ぐ為に、第一指揮艦隊は第一防衛線を破棄しつつ遅延戦闘を繰り返す。
第一指揮艦隊は第二防衛線まで後退し、第二指揮艦隊と共に深海悽艦を迎え撃つ。
そして結果から言うなら防衛は成功した。
しかしこの攻勢で戦況は悪化の一途を辿っている。
第一防衛線を破棄し距離的余裕の無い第二防衛線で防衛せざる終えなくなった上、第一指揮艦隊はもとより第二指揮艦隊にも被害が発生し手持ちの戦力はあまり多くはない。
しかも予想外の現象が起こっている。
深海悽艦の攻撃頻度が低下しない事だ。
開戦初期で第二指揮艦隊によって百を超える艦に加え、他の艦隊が撃滅した数がおよそ七十、防衛戦では合計で推定百五十隻以上の深海悽艦を撃破した。
無論この数字には鬼級姫級も含まれている。
当初、深海悽艦の数はおよそ五百隻程だと考えられていた。
この数を信じるなら過半数の艦を撃破した事になり、この状態では今まで通りの連続攻勢を行えるはずが無い。
初期に観測した深海悽艦の数は全体のほんの一握りだったと言う認識が、大本営だけでなく現場の艦娘も感じていた。
このままだといずれ深海悽艦の攻勢を耐えれないのでは?っといった考えを持っていた者もいる。
しかしある時、その懸念については一切考える必要が無くなった。
別の大問題と引き換えに────
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ここ最近は連続で深海悽艦との戦いをしている艦娘達であるが、そんな艦娘達は唯一食堂などの施設内だけでも気を張らずにゆっくりする事ができた。
無論、緊急事態などが起きた時は例外になるが。
現在はまもなく防衛線を交代する予定の第二指揮艦隊の面々が食事を行っており、その中には一航戦の赤城、加賀と二航戦の飛龍、蒼龍が同じテーブルに座って話していた。
飛龍 「いやぁ、しかしあれよねぇ~。この前の防衛戦は本当に大変だったよ。」
蒼龍 「そうよそうよ。落としても、落としても次々増えていくのだから!」
防衛戦での飛龍の話に蒼龍も賛同する。
飛龍 「戦っている時、何機居るの!って思ったもんねぇ。」
赤城 「まぁでも、最終的には勝利したのですから良いじゃないの。」
加賀 「確かに戦術的に見れば勝利ですが、戦略的に見れば敗北ですよ。」
楽観的な物事を言った赤城に対し、敢えて口にしなかった言葉をストレートに言い放った加賀に三人の表情が曇る。
最初から加賀の言っている意味に気が付いていた赤城は、ため息をつく。
赤城 「いずれは守りだけでなく、攻めにも回らないといけないわね。」
蒼龍 「随分と分の悪い賭けですよねぇー。」
赤城の言った通り、このまま防衛に回ったとしてもいずれは突破される危険性がある。
つまり何処かでこちらから攻勢を行い、敵に大打撃を与えないといけない。
しかし攻勢をした場合、敵の反撃で手痛い被害を受けた暁には即刻防衛線が崩壊し、日本は深海悽艦に対する力が大きく減少するだろう。
加賀 「どちらにしても負ける訳にはいかないわ。そして少しでも勝率をあげる為にあの二人の協力は必要不可欠よ。」
蒼龍 「うーん、その通りですね。実際に指示も的確でしたし、それに・・・まるでこういった戦いを普段からしているみたいに。」
飛龍 「んぅー?確かに言われてみれば。艦の頃、どんな戦いをしたのかな?」
艦だった頃の経験や知識は艦娘になっても大きな要素を持ってた。
例えば赤城ならミッドウェー海戦の経験から常に慢心しないように行動し、飛龍は最後に残った空母だった事から攻撃的な戦法を好んだりするなど。
空母四人がこのように会話していると、隣から声を掛けられた。
? 「その話、私達の入っていい?」
四人が声のする方向に顔を動かし、そこにはおぼんを持った明石と霧島がいた。
赤城 「別に構いませんよ。どうぞ座って下さい。」
明石と霧島は近くから椅子を持ってきて腰掛ける。
そしていざ続きを言おうとした飛龍は何故か口を開いたまま静止した。
飛龍 「そしてえーと、あれ?何の話だっけ?」
蒼龍 「えぇ・・・飛龍、もう忘れちゃったの?」
さっきまで話していた内容を既に忘れたと言う相方に、蒼龍は微妙な表情をする。
飛龍 「えへへ!」
照れる様子を見せる飛龍に呆れ顔になりながら蒼龍は言葉を続けた。
蒼龍 「雨風、神弓の二人の事でしょ。それで二人は艦の頃、どんな戦いをしたかについて。」
蒼龍から伝えられてようやく思い出した飛龍はテーブルの皆に自分の意見を答えた。
飛龍 「そうだったそうだった!えっとね、そこで思ったの事なんだけど、強力な装備をつけているなら相手も同じような装備をつけてたと思うの、どうだと思う?」
明石 「んー確かにその通りなんだけどぉ・・・多分相手全てがそうとは限らないと思うわよ。」
最初に口をしたのは明石であった。
飛龍の予想に明石は半分賛成で半分否定的な印象を与える。
その曖昧な言い方に疑問を持った赤城が明石に内容を問う。
赤城 「明石、どういう事かしら?」
明石 「それがなんですが、試しにあの二人が搭載している装備を答えてみてください。」
それぞれが視線を上に向け、咄嗟に思い浮かべた装備を挙げる。
赤城 「遠くから攻撃できるミサイルって兵装でしょう。」
加賀 「大和型を超える巨大な火砲があるわね。」
飛龍 「艦載機を寄せ付けない程の弾幕を放てる対空砲よね?」
蒼龍 「広範囲まで索敵できる電探が複数あります。」
霧島 「海水を燃料にする高出力な核融合炉です・・・あっ成る程、そういう意味ですか!」
皆が各種装備を挙げて行ってから霧島が明石の言いたい意味に気づく。
飛龍 「えっ!霧島わかったの?」
霧島 「はい。先程仰った装備などは私達の目線から観ても異常なほど技術力が詰め込まれており、かなり精度の高い部品で造られているはずです。そのような高性能な装備を大量に生産出来ると思いますか?」
霧島の説明に全員が意味を理解して納得する。
加賀 「・・・とてもじゃないけど、無理ね。」
明石 「私達で例えると、大和型戦艦を大量生産するようなものだからねぇ~。」
明石はお手上げといった様子を見せた。
まぁ当たり前である。
あの大和型は大日本帝国がとんでもない量の国家予算を費やして建造したもの。
大量生産なんて困難であり、雨風達にも同じように適用されると明石は考えていた。
霧島の説明を聞いて、今度は蒼龍が首を傾げる。
蒼龍 「つまり、あの二人は元々圧倒的な戦闘力を持った艦として建造されたってなるの?」
明石 「うーん。それもなんか違う気がするのよねー・・・」
赤城 「何かそう思う理由でもあるの?」
明石 「彼女達の艤装はこう、ね・・・・あべこべって言えばいいのかなぁ?」
明石は自身が感じていた感覚を何とか言葉へ捻り出す。
赤城 「あべこべ?」
明石 「基本的には最新型の設計なんだけど、明らかに旧式の箇所もあるのよ。一応、蒼龍の話したコンセプトは自体は間違っていないと思うの。だから私は二人は何回か大きな改装を受けているのかなって、本人達に聞いてみないとわからないけどね。」
霧島 「私も蒼龍さんの言ったコンセプトは合っていると思います。あの二人、初めての射撃演習で艦隊行動をあまりした事がないと仰っていましたから。」
霧島も蒼龍の意見に賛同してそれぞれがどうなのかなと思考していると、飛龍がおもむろに立ち上がる。
飛龍 「よし!こうなったら、直接本人に聞いてみてよう!」
飛龍は大きくガッツポーズをしながらそう叫ぶ。
蒼龍 「飛龍!流石にそれはまずいって!」
加賀 「あの二人なら聞いても別に構わないと思うわよきっと。」
霧島 「そうですね。でも飛龍さん。もしも相手が嫌がったらやめて下さいね。」
飛龍 「そこら辺わかってるって、引き際位わきまえていますよ。それに蒼龍もいるから大丈夫。」
蒼龍 「えぇー!何で私もぉーッ!!」
飛龍の突然の巻き込みに蒼龍は驚きの表情を上げる。
そんな蒼龍を尻目に、当たり前だよね?と言いたげな飛龍。
飛龍 「なんたって同じ二航戦でしょ。それに蒼龍も気にならない?あの二人の過去。」
蒼龍 「ま、まぁそれはぁ・・・うん。」
飛龍の問いに、蒼龍はよそ見をしてモジモジしながら認める。
余談ながらあの二人についてのこういった考察は他の艦娘もよく行っていた。
それは防衛作戦が開始されてから更に増えた。
現状では娯楽等はほとんど無い為、こう言った話をするのが僅かな娯楽の一つとなっていたからだ。
何故二人かと言われれば、なんであんなに強いか?あの装備は何か?等、分からないからこそ考えるのが楽しいからだ。
そして話の盛り上がった時、食堂内に放送が流れる。
神弓 「「第二指揮艦隊所属の全艦娘に伝達。まもなく出撃時間になります。各自、出撃の用意を。」」
赤城 「あらあら、お話はまた今度になりましたか。」
赤城はそう言って巨大な皿が乗ったお盆を持って移動しようとする。
そして赤城に追従するように他の艦娘もテキパキと片付けを行い、出撃準備を開始した。
明石 「皆さん頑張って来てください。」
赤城 「えぇ、もちろん。」
赤城達は食堂を抜け、工廠に向かって歩き始めた。