現状のキスカ島は現在深海悽艦の泊地・・・いや、もはや基地や要塞と言っていい。
島には離島悽鬼、港湾水鬼が上陸し、その周辺を空母水鬼や戦艦水鬼を含む艦隊が警備している。
この防御は鉄壁であり、並みの艦隊では近づく事すら困難であろう。
もし近付こうものなら大量の航空機からの攻撃を受け、それを突破したとしても戦艦水鬼の艦隊と戦闘する羽目になる。
しかもキスカ島には強力な深海悽艦だけではなく、ヲ級やタ級と言った主力艦艇、ホ級やイ級である中小型艦艇が勢揃いしている。
その数はキスカ島周辺の海域を深海悽艦だけで覆い尽くす程であった。
もし戦闘になった場合、この全ての艦が戦闘に参加する可能性があり、たとえ勝利したとしてもお互いに凄まじい被害が出るだろう。
それほど恐ろしい数なのだ。
────ここで少し話を変えよう。
現在キスカ島周辺は深夜であり、辺りは真っ暗闇で波の音が辺りに木霊する。
しかし暗闇で響き渡る音の発生源であるその波ですら視認する事の難しい暗闇。
唯一の光源は、深海悽艦の目から放たれる怪しい眼光くらいなもののであった。
では一つ、疑問が生まれる。
なぜ───キスカ島が明るいのだろうか?
明るいだけでない、そこら中の至る場所から大量の爆発音が響く。
もしこの基地が危機に陥っているとしたら、一体何人が信じるだろうか?
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離島悽鬼 「急イデ!左舷カラ、攻ナサイ!」
離島悽鬼は慌てて配下の艦隊に命令を出す。
普段や艦娘との戦闘中でも余裕を浮かべるその顔には、何一つ余裕はない。
いや、むしろ恐怖が写っていた。
指示を出された水雷戦隊が目標の側面に回り込もうとした時、敵の歪な砲搭が向いたかと思った時には既に大量の白煙が吹き出し、水雷戦隊へ一本の白煙が伸びていく。
そしてほんの一瞬後、水雷戦隊の中心で凄まじい火焔が膨張し桁違いの熱量は水雷戦隊を蒸発させて消滅した。
それとほぼ同時に鼓膜を痛めつける程の爆発音がキス島全体に轟き、更に巨体な火焔によって周囲が一瞬照らし出される。
離島悽鬼 「一体・・・何ナノ、アレハ?」
離島悽鬼の瞳には、目標である敵の姿が若干だが視認出来た。
敵はたったの一隻。
だが、艤装の大きさは姫級や鬼級にも負けていない。
その敵は離島悽鬼の方を見ると、薄気味悪い笑顔を見せる。
離島悽鬼は体全体に謎の悪寒が走る。
そして離島悽鬼はその瞬間ハッキリ分かった。
あれは艦娘でも、深海悽艦でもない・・・と
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辺りは何もない大海原の中、旗艦神通を先頭にして単縦陣で第七艦隊は航行する。
神弓 「「こちら第二指揮艦隊。第七艦隊指令、敵艦をやり過ごします。針路、0-3-1から0-3-5に変針。」」
神通 「了解。針路0-3-5に変針します。皆さん、付いてきて下さい。」
神通がそう言って指示通りに針路を変え、神通から離れないよう川内、多摩が続き、駆逐艦達がその後ろを追いかける。
電 「ふぅー、寒いのです。」
最後尾の電は本当に寒いようで、少し体を丸めて手を擦り合わせたりして温まろうとする。
卯月 「うーちゃんも寒いっぴょん!早くこたつでぬくぬくしたいぴょーん!」
暁 「ふっふぅーん!この程度で根を上げるなんて、レディの片隅にも置けないわね。」
響 「暁。足ガタガタ言っているし、声も震えているよ?」
暁 「そ、そんなの平気だし!ハクション───ッ!!」
雷 「はいはい、暁は風邪ひかないようにね・・・」
当たり前だが北方海域は高緯度に位置する為、朝早いのも相まって周辺はかなり寒い。
多摩 「駆逐艦達は賑やかだにゃー。」
川内 「いいねぇ、見てて面白いし!ねっそう思うでしょ神通。」
多摩は穏やかな表情で駆逐艦達を見つめ、川内はニヤニヤと笑いながら神通に声を掛ける。
神通 「えっ!あっそうですね姉さん。」
川内に呼ばれてハッとなった神通が返事する。
これに川内は不審に感じた。
川内 「んーどうしたの?考え事?」
神通 「え、えぇ・・・何か変な予感がして・・・・・」
何か心配そうに神通が言う。
多摩 「でも、ここまで順調じゃいかにゃ?」
神通の台詞に多摩がよくわからないと言った風に答えた。
神通 「いえ、むしろここまで順調だからですよ。」
多摩 「良くわからないにゃー。」
神通 「正確に言えば、接敵が明らかに少なすぎます。」
川内 「んっ?えーと、今日の針路変更は二回だっけ。」
川内が記憶している中で、前回のローテーションの時はざっと十回程以上の変更をしている。
片道だけって考えてみても明らかに少ない。
川内 「確かに言われてみればそうだね。」
多摩 「そういえば、さっきの通信も単艦だったにゃあ。」
普通は電探からの情報だけであれば、大体ここら辺に艦がいるかもしれない程度しか分からない。
しかし神弓の電探は艦の場所どころか、反応の大きさで艦種まで把握可能だ。
神通 「つまり艦隊があまり居なくて、はぐれ艦ばかりなのだと思うのですけど。」
川内 「それは統制が取れてない?ひょっとして囮か罠かな?」
多摩 「神弓は気づいているかにゃぁ?」
神通 「神弓さんの事です、既に気づいているとは思いますよ。」
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神弓 「───むーむむぅ、やっぱりおかしい。」
神弓はレーダーを見つつ首をひねりながら怪訝な顔で悩む。
レーダーには細かい反応があるがこれは単艦であり、艦隊として動いているのは感知範囲で精々二個艦隊程しかない。
それにこの二個艦隊も統制が取れておらずバラバラに行動しているように感じられる。
神弓 「罠?いや、でもこれは・・・」
先程からずっと観察している間も法則は見えず、やはり艦隊や単艦でそれぞれ判断して行動しているように見える上、明らかに絶対数が少ない。
神弓は指揮系統が崩れてるのかと思ったが、あれだけの戦力でそれは考えづらい。
それに今の情報量だと深海悽艦の意図がほとんど読めないのは確実。
神弓 「とにかく情報を集めないと。」
神弓は各艦隊に偵察機を発艦させ、周囲の情報収集を命令し、神弓自身もハリアーⅡをキスカ島に送り込み、コマンドルスキー島には後方に待機している航空母艦からの偵察機に任せる。
それと同時に全体の陣形を変更した。
雨風を先頭に第一、第二艦隊を展開し、神弓を中央として第三艦隊、第六艦隊を左右に配置。
そして後方に第四、第五、第七艦隊を就かせ、第八艦隊は泊地連絡の為一番後方に用意する。
艦隊の展開を終えると、敵泊地の向け前進を開始した。
前進を開始して一時間程度経った頃も、未だに敵の総数はあまり変わらなかった。
一方各偵察機からの報告が少しづつ集まって来た。
しかし敵泊地偵察報告の内容は全て不可解なものだった。
敵両泊地に深海悽艦の存在が認められなかったのだ。
この報告を聞いた時には、神弓も大きな口を開けて唖然した。
あれだけ大量に居た深海悽艦の殆どが居なくなったと言うのだ。
ひとまず情報を集め終わると敵泊地を調べる為、罠を警戒しながら確実に前進する。
あの後の結論から言えば、泊地にはあれだけ居た筈の深海悽艦は一艦も居なかった。
それはキスカ島、コマンドルスキー島両方ともだった。
これによって深海悽艦の進撃が止み、北方方面の防衛戦は勝利したと言えるだろう。
しかし戦闘終了後すぐに調査隊が編成された。
それは何故か?
コマンドルスキー島はすっかりもぬけの殻で、理由は不明だが撤退したの確実だった。
しかし一方キスカ島の方が重大な問題であった。
何故ならば、キスカ島では恐ろしい数の深海悽艦の残骸が発見されたからだ。