古鷹 「ごめんなさい、急に呼び出して。」
神弓 「いえいえ別に大丈夫ですよ。それより急に呼び出しが掛かるなんて、なんでしょう?」
雨風と神弓は仮部屋で休んでいる時、いきなり古鷹に呼び出された。
ドアの前に居た古鷹が言うには、急ぎで(幌筵)提督が呼んでいるとの事で今は三人で執務室に向かっている最中だ。
古鷹 「さぁ、私にはわからないですね。」
神弓 「ふーむ。」
雨風 「・・・・・」
古鷹と神弓が一緒に考えながら歩いている間、雨風は呼び出された理由が概ね予想出来ていた。
キスカ島の内容で、情報提供もしくは自分達の拘束だと。
執務室の前に到着し、古鷹が一呼吸置いて部屋のドアを叩く。
(幌筵)提督 「入ってくれ。」
古鷹 「失礼します。」
中から声が聞こえ、古鷹、雨風、神弓の順番で執務室に入っていく。
執務室の中では、(幌筵)提督が奥の椅子に座って待っていた。
三人が集まったのを確認してから、(幌筵)提督が口を開く。
(幌筵)提督 「古鷹、呼び出しありがとう。下がってくれ。」
古鷹 「はい。では失礼しました。」
古鷹がドアを開けて退出する。
こうして三人だけになった時、(幌筵)提督がこっちに来いと手招きした。
二人はその手招きに従って近づく。
(幌筵)提督 「いきなり呼び出して悪かったな。それで君達を呼び出した事についてだが、君達はキス島の出来事を知っているな。」
出来事を知っているも何も、調査隊に含まれていた二人は当たり前のように頷く。
そして予め(幌筵)提督は念を押してから話す。
(幌筵)提督 「先に言っておくが、君達を疑っている訳ではないと言うことだけ分かってくれ。それで、だ。今回の件の原因は何だと思うか聞かせて欲しい。周りの意見ではなく、自分の意見を言ってもらいたい。」
(幌筵)提督の問いに二人は目だけを動かし、お互いの視線を合わせる。
考えが同じだと察し、まずは雨風が話し始めた。
雨風 「こんな事を起こせるのは、超兵器だけ。」
(幌筵)提督 「・・・やはりそうか。」
既にそうだろうと考えていた(幌筵)提督が深く椅子に座り直す。
神弓 「でも、どの超兵器かはわかりません。一部の武装や船体の型だけでもわかれば絞れるのですが・・・」
(幌筵)提督 「それはこいつが役に立つだろう。」
(幌筵)提督が机の引き出しから何枚かの写真を取り出した。
雨風が(幌筵)提督の取り出した写真を適当に一枚取り、神弓が横から覗き込む。
そして写っているものに二人は驚愕する。
真っ暗の夜に撮られた写真であり、所々に爆発のような光が写っている。
無数の爆発が作り出した光の映し出されるように多数の深海悽艦の影と、あと一つ、四角い砲身付きの砲塔を兼ね備えた一隻の艦がいた。
(幌筵)提督 「これらの写真は第一指揮艦隊所属第四艦隊の伊14が撮った写真だ。伊14は、深海悽艦の泊地に偵察を行っていた際に大量の爆発音を聞こえ、写真を取ったのち即座に撤退した。」
(幌筵)提督が経緯を説明し始め、異変に気が付いた第二指揮艦隊の出撃前夜とも伝えられた。
(幌筵)提督 「恐らくキスカ島を襲撃したのはこの艦だと思うが。それで二人はこの艦に見覚えはあるか?」
神弓 「こんな装備を搭載した超兵器とは出会った事はありませんから、うーん・・・」
特に思い当たりのない神弓は首を曲げ、唸る。
そんな神弓を後目に雨風が小さく呟いた。
雨風 「デュアルクレイター。」
部屋の窓越し聞こえる環境音にすら消されそうな呟きを(幌筵)提督は決して聞き逃さなかった。
(幌筵)提督は雨風に聞き返す。
(幌筵)提督 「んっ?今なんて?」
聞き返された雨風は少し悩んだ後、顔を上げる。
雨風 「(幌筵)提督、巨大な爆発を受けた残骸は?」
(幌筵)提督 「あぁ、確か外から強い爆風を受けた残骸がな。」
雨風 「───多分、デュアルクレイター。」
(幌筵)提督 「デュアルクレイター、一体どんな艦だ?」
雨風 「超巨大双胴強襲揚陸艦、デュアルクレイター。60cm噴進砲、38.1cm砲を兼ね備え、多数の小型艦や航空機を搭載した強襲揚陸艦。」
(幌筵)提督 「この写っている艦はそいつで間違いないか?」
(幌筵)提督は写真を手に取り、雨風に再確認する。
雨風 「大口径噴進砲を搭載している超兵器は、デュアルクレイターだけ。」
(幌筵)提督 「なるほど。だとしたらこの件の犯人は判明した。しかし別の問題が生まれるな。そいつがキス島を撃滅してからどこに行ったかだが?」
(幌筵)提督の話にある考えが浮かんだ神弓が言った。
神弓 「私の予想ですけど、撃沈されたのでは?」
(幌筵)提督 「なんだと?」
神弓の言葉に(幌筵)提督は思わず呆気を取られる。
無敵とも思える圧倒的な戦闘能力を持つ超兵器がされる意味に。
神弓 「いくら超兵器と言えど、兵器という範疇からは逃れる事は出来ません。艦であるなら浸水すれば沈みますし、航空機であれば翼が折れたら墜落します。ですので、既に深海悽艦によって撃沈されたと思われます。」
(幌筵)提督 「撃沈されたという根拠はあるのか?」
神弓 「はい。確かにキスカ島は壊滅しましたが、コマンドルスキー島は手付かずです。強襲揚陸艦という艦種が近くに位置するコマンドルスキー島を無視するとは考えにくいです。」
神弓は自分の考えを(幌筵)提督に伝える。
(幌筵)提督は視線を反らし、神弓の話を数ある可能性に当て嵌め考える。
そして数分の時間が経ち、二人へ視線を戻した。
(幌筵)提督 「もしも君たちがデュアルクレイターと同じ状況になったら、敵を殲滅する前提で生きて帰れる可能性はどの程度だ?」
(幌筵)提督の出した条件をまとめると、全方位を最低数百隻の敵艦に囲まれつつ、敵を撃破して帰還する事だ。
提督という海の戦いに精通した幹部の口から出される条件ではない。
たとえどんな素人が聞いても無茶だとわかりそうな条件だが、超兵器。
そして超兵器と戦える二人だから成り立つ条件でもあった。
神弓 「うーん。逃げるなら可能ですが、殲滅するとなると、私は運が良くて一割以下くらいです。ですが、弾薬などの問題で全ての殲滅は不可能です。ねぇ雨風はどう?」
雨風 「二割あればいい方」
(幌筵)提督 「やはり低いな。」
元から予想していたように(幌筵)提督は小声で言う。
とは言え、低いと言ってもそれは例外であり間違っても普通は帰って来れない。
もしただの戦艦などで生きて帰って来た場合、運よく何万発の敵の砲弾が当たらず帰って来れるという頭一つ抜けた幸運が必要である。
(幌筵)提督 「つまり、キスカ島がデュアルクレイターによって壊滅した後、コマンドルスキー島に向かう途中に撃沈された。確かに深海悽艦側も防衛で大損害を受けて撤退したとするなら、流れを考えてもおかしくはない。」
いろんな情報や考えによって、一つの仮説が浮かび上がる。
(幌筵)提督「しかし撃沈した証拠無いからな、一応まだ生存していると推定して動こう。もしも超兵器と出会ったら君達が頼りだ。頑張って欲しい。」
雨風・神弓 「了解。」