鋼鉄の少女達は世界にどう接する?   作:弓風

25 / 32
22:恐れ知らずのサブマリン

 いると知ってしまった神弓は微かに動揺する。

 しかし何とか冷静に今やるべき事に優先順位を付ける。

 

神弓 「えぇっと・・一旦落ち着いて、まず私がやるべき事。今は魚雷の対応が優先!」

 

 現在の魚雷の進路は五十鈴達に向いており、距離を考えるに通常魚雷なら回避も可能だろうが、この魚雷はアクティブソナー搭載の誘導魚雷。

 このままだと回避出来ずに被雷するのが目に見えている。

 火力の魚雷が軽装甲の五十鈴達に命中すれば、大損害を被るの必至。

 しかし回避出来ないなら、回避しない方法で対応すればいいと言う事も神弓は理解していた。

 

神弓 「対潜部隊の皆さん!最大船速、針路を北西に取って下さい!」

 

 対潜部隊に通信で即座に指示を送る。

 

五十鈴 「「えっ何!?北西?分かった、指示に従うわ!」」

 

 本来対潜部隊の指揮系統は異なるが、先程の魚雷回避を経験してた五十鈴達は、きっとこの指示にも何か意図があると考え指示に応じた。

 対潜部隊が北西に移動し始めたので、魚雷の艦隊に追従して進路を変える。

 ソナーからの情報を頼りに魚雷の予測進路を測定、そして───

 

神弓 「すぐにベッドフォンを外して下さい!」

 

 神弓はそう言って、127mm速射砲から三発連射する。

 三発の砲弾はそれぞれの別の仰角で撃ち出した為、着弾距離が僅かに変わって水面に着弾する。

 着弾した127mm砲弾は水中を進み、海面付近を走る魚雷に付近で爆発。

 三本の巨大な水柱が立ち昇り、全魚雷な起爆を確認する。。

 そして予め対潜部隊にヘッドフォンを外させたのは、水中聴音機は僅かな音を聴く為に水中の音を増幅する機器の為、魚雷は爆雷の爆発音で耳を痛めてしまう可能性があったからだ。

 

神弓 「対潜部隊の皆さん、直ちに本隊と合流して全速力で離脱してください!」

五十鈴 「「何を言っているの?一緒にやった方がいいんじゃないの?」」

 

 五十鈴は共同で撃退するよう提案する。

 実際提案した内容は正しい。

 隻数は多い方が潜水艦を発見しやすく、また撃沈への追い込みも簡単になる。

 しかし神弓はその提案を即座に切り捨てた。

 何故ならその戦法は通常の潜水艦であればの話だからだ。

 

神弓 「駄目です。この敵は───今の貴方達では手に負えません!」

五十鈴 「「それほどの敵なの?」」

神弓 「はい。」

 

 無線の通話に少し間が生まれ、数秒後五十鈴がゆっくり口を開く。

 

五十鈴 「・・・・わかった。そっちがそんなに言うのは、それ程の敵ってわけよね。了解、今回は従っておくわね。」

神弓 「ありがとうございます!」

五十鈴 「ただし、絶対に生きて帰って来なさいよ!」

 

 最後にそう言い残して五十鈴との通信が切れる。

 神弓は撤退し始めた対潜部隊を見つめ、充分離れたと判断してからスクリーンに視線を落とす。

 神弓のレーダーには、本隊に全力で向かっている対潜部隊が映し出されていた。

 

神弓 「アクティブソナー起動。」

 

 神弓も先程の魚雷が使用していたアクティブソナーを起動する。

 アクティブソナーはパッシブソナーに比べて音を聴くのではなく、音波を発して反射音を捉える機器であるので標的を発見しやすい。

 しかし音波を発する性質上、敵にも位置が必発見されやすい問題があるが、今回は問題なかった。

 アクティブソナーの探知結果がスクリーンに映し出される。

 

神弓 「えっ、なんでッ!?」

 

 スクリーンには、何も敵らしきものは何も表示されていなかった。

 パッシブソナーどころか、敵を発見しやすいアクティブソナーですら敵を見つけられない。

 

神弓 「いや、何かトリックがあるはず。」

 

 神弓は素早くスクリーンを操作して調べていると、今度は右舷側を通り抜けようとせる八本の魚雷が探知される。

 魚雷は神弓ではなく本隊へ真っ直ぐ突き進む。

 それも再び進路を変える誘導魚雷だ。

 神弓はすぐに魚雷と本隊の間に滑り込んで、127mm速射砲と各35mmCIWSが砲口を海面に合わせる。

 

神弓 「各CIWS、オールウェポンズフリー。自動迎撃モード。」

 

 艤装に搭載する毎分数千発のガトリング砲から火が吹き出す。

 水中では弾の威力が急激に落ちると言えど、35mmの大口径砲弾は水を叩き、水中を潜って行く。

 そして発射した一部が魚雷に命中し、魚雷の外壁を貫き内部で炸薬が爆発、魚雷を破壊する。

 全魚雷の破壊を確認し、その発射地点を予測しようとしたら連続で別の魚雷群が走って来る。

 その後神弓達は何度も魚雷群の雷撃を受け、発射地点の予測をシステムに丸投げしたり、ハリアーⅡを発艦させて対応しているが、依然敵の位置はわからない。

 敵を探そうにもソナーに反応は無い、魚雷群から予測しようにも各魚雷を別々の速度、更にランダムに加速減速を何故か行うせいで難しい。

 ここで神弓は考え方を変えた。

 理由は不明だが、敵は神弓を狙わず本隊を狙っている。

 更にソナーに補足されないトリックが判明した。

 変温層、通称サーマルレイヤーと言うものだ。

 サーマルレイヤーは水中で温度差が生まれ、音波が反射してそれ一定深度に届きづらくなる性質からソナーの効果が下がる現象だ。

 そんな状態でアクティブソナーを鳴らしていたら、自分の位置を暴露するだけなので停止させ、僅かに分かった敵の予測位置と本隊を狙いやすい位置を組み合わせて敵の針路を計測する。

 

神弓 「ASROCⅢ四セル四発、発射。」

 

 神弓から四本のミサイルが垂直発射される。

 ミサイルは空中でブースターが分離し魚雷が現れる。

 空中に投げ出された魚雷の先端からパラシュートを開いて、ゆっくりと降下する。

 そして水面に着水した途端スクリューが動き出し、あらかじめ設定されていた地点に到着した瞬間、魚雷が自動で爆発を起こす。

 これで水中の一定範囲をASROCで一掃する。

 だが特にこうと言った成果は無かった。

 本来、面制圧は神弓の本業ではない。

 あくまである一点を精密に狙う点攻撃を得意としているので、広範囲殲滅兵装は少ない。

 ASROC二射目も激しく水中を掻き乱すだけで特に反応無し。

 

神弓 「お願い、当たって!」

 

 神弓はそう願いながら第三射を発射する。

 ASROCは他のミサイルと違い搭載数が少なく、弾数もあまり多くない。

 もしASROCを撃ちきったら、神弓に水中を攻撃する方法は無い。

 神弓は必死の思いで当たるように祈る。

 ASROCが水面に着水そして起爆、再び四本の水柱が打ち上がった。

 ───その時だった。

 魚雷の爆発音に紛れた別の音をソナーが観測する。

 ゴボゴボと言う泡の音とミシミシと金属の悲鳴だ。

 

神弓 「これは───水中圧壊音!」

 

 それと同時に、水中でバラストタンクから大量の排水音も聴こえてくる。

 

神弓 「敵艦、緊急浮上!皆さん気をつけて下さい!」

 

 敵艦が浮上すると本隊に警告を送っている時、水面からある艦が飛び出す。

 

摩耶 「なんだよ・・ありゃ・・・」

 

 本隊の後方側に配置された摩耶があり得ないものを見たように呟く。

 その艦は青を基調とした水着を身につけ、水色の瞳を向けてくる。

 一般的な潜水艦ではあり得ない戦艦クラスの艤装を装備し、艦首や垂直発射型の無数の魚雷発射口が配置されていた。

 そして一番目立つ何故搭載されていると思われるであろう、異彩を放つ二基の38.1cm連装砲。

 神弓は知っている、その艦を───

 

神弓 「遂に来た・・・超巨大潜水戦艦ドレッドノート級一番艦。ドレットノート!」

 

 超兵器の一つであるドレッドノートは、潜水艦でありながら38.1cm連装砲を装備し対水上戦闘も可能な超兵器である。

 ドレッドノートはその38.1cm砲を本隊と神弓にそれぞれ一基づつ砲搭が仰角を上げながら旋回する。

 そして砲口から黒煙が噴き出した。

 

神弓 「敵艦発砲!」

 

 神弓の周囲に二つの水柱が立ち上り、残り二発の砲弾は神弓を越え、撤退中の本隊の筑摩に命中した。

 

筑摩 「痛っ・・・こんな姿、誰にも見せられません。」

 

 砲弾が命中した筑摩は服が破れ、腰に付けていた砲搭が粉砕される。

 そんな筑摩の姿に神弓が急いで攻撃を行おうとした瞬間、通信が入る。

 

ハリアー妖精 「「アロー。こちらスカイドミネーション02。現在高度5000、速度450kt、方位83。レーダーコンタクト(目標をレーダーで捉えた)、指示を乞う。」」

 

 上空を飛行するハリアーⅡから指示の要請が届く。

 神弓はハリアーⅡをレーダーで確認、ドレッドノートの攻撃を避けながら返答する。

 

神弓 「こちらアロー。武器の使用を許可する。攻撃を開始せよ。」

ハリアー妖精 「「アロー。もう一度言ってくれ。」」

 

 命令に間違いないかハリアー妖精は反復して要請する。

 

神弓 「こちらアロー。繰り返す、攻撃を開始せよ。」

ハリアー妖精 「「アロー。こちらスカイドミネーション02。ウィルコ(了解、実行する)。」」

 

 攻撃指示を受けたハリアーⅡが左に大きく旋回してドレッドノートの上空へ飛行する。

 

ハリアー妖精 「「こちらスカイドミネーション02。エンゲージ(交戦)、アタック(突撃)!」」

 

 ドレッドノート真上に差し掛かった時、機体を180度ロールしたまま逆落としを行う。

 エンジン出力を0%にして、エアブレーキを掛けながら急降下する。

 

ハリアー妖精 「「UGB(無誘導爆弾)投下。」」

 

 連絡と共にハリアーⅡのパイロンから二発の1500lb、つまり680kg爆弾を投下。

 爆弾を投下したハリアーⅡは機首を引き上げ、水平飛行に移る。

 投下された二発の1500lb爆弾は真っ直ぐドレッドノートに落下していき、甲板上にて強烈な爆発を起こす。

 

ハリアー妖精 「「アロー。こちらスカイドミネーション02。UGBの命中を確認。」」

神弓 「こちらアロー。確認した。引き続き攻撃を続けよ。」

ハリアー妖精 「「こちらスカイドミネーション02。ラジャー(了解)。」」

 

 ハリアーとの通信終え、神弓はドレッドノートを状況を確認した。

 ドレッドノートは先程の爆撃で黒煙を吹き、装甲に穴が開く。

 いくら超兵器と言えど、元の基本設計は潜水艦である。

 装甲自体恐ろしいほど硬い訳ではない。

 神弓は127mm砲の照準を合わせ、砲撃を開始する。

 潜水艦でも127mmでは有効的なダメージを与えるのは難しいが、装甲の薄い弱点を狙えば問題はない。

 そこで神弓はドレッドノートの垂直発射型魚雷発射口を覆うハッチを狙う。

 そこは開閉させる為に他より装甲が薄く、魚雷も搭載されているので誘爆も誘える。

 神弓の撃ち出した弾が何度も狙い通りにハッチに命中する。

 すると、攻撃に鬱陶しさを持ったドレッドノートが主砲で神弓に発砲する。

 しかし神弓は砲弾を回避して砲撃を継続。

 続いて、ドレッドノートは発射口から誘導魚雷を投射するが───

 

神弓 「CIWS、自動迎撃モード」

 

 以前と同じようにCIWSが動きだし、各魚雷に照準を合わせ、迎撃。

 魚雷は無残にも神弓に到達する前に全て起爆する。

 そしてドレッドノートは新たな魚雷を放とうもする瞬間、ドレッドノートの周囲に多数の砲弾が着弾した。

 

長門 「第二射、撃てぇ!」

 

 長門の合図と同時に本隊に所属する戦艦から炎が現れる。

 本隊から浮上したドレッドノートに対して、砲撃を開始された。

 

愛宕 「私達も魚雷発射よ~いっ♪」

 

 単縦陣を描きながら魚雷を装備した艦全員が発射管を水面に向ける。

 

五十鈴 「魚雷発射って、巻き込むんじゃないの?」

矢作 「大丈夫よ。神弓ならそれくらい避けてくれるわ。」

五十鈴 「それもそうね。」

 

 五十鈴の懸念は矢作の言葉で全て解決した。

 そしてドレッドノートの予測針路を想定し、愛宕が合図する。

 

愛宕 「みんなー、発射ぁ~♪」

 

 本隊から大中の魚雷が膨大な量発射される。

 その数、百本以上。

 ドレッドノートへ放射状に広がった魚雷の壁が、水面下から素早く迫る。

 神弓はギリギリ魚雷と魚雷の隙間を自慢の機動力と高性能ソナーですり抜けるが、ドレッドノートはソナーで探知出来たとしても元は巨大な艦であった事が響き機動力や旋回性能は高くない。

 概ね予想通りドレッドノートに四本の雷撃を受ける。

 全体から見れば被雷数はかなり少ないが、命中を重視した事やお互いの距離が遠いなどを加味すれば十分な成果と言えるだろう。

 しかもたった四本の魚雷とはいえ、一撃の威力が通常より強力な酸素魚雷。

 容赦なくドレッドノートの装甲を水面下から爆発の圧力で破壊していく。

 魚雷の被害で浸水が進み、速力が低下したドレッドノートに復帰させる時間は与えられない。

 続いて戦艦隊からの砲弾の雨が降らさせる。

 その中で武蔵の投射した46cm砲弾は、ドレッドノートの前部砲搭付近の垂直発射型魚雷発射口に直撃。装甲を突き破って内部で炸裂。

 内部に積載していた魚雷が爆発し、更に砲搭弾薬庫の装甲が耐えきれず火が回り、砲弾や装薬に引火。

 巨大な爆発で内部から艤装が引き裂かれ、砲搭が天高く弾け飛ぶ。

 そしてドレッドノートの全身が大きな炎に包まれる。

 ドレッドノートはその後一分ほど炎上が続き、火が弱まり姿が見え始める。

 全身の皮膚が焼けて爛れ、青かった水着は黒く焼け焦げ、艤装も前部砲搭が無くなり円柱状の基部が丸見えになっていた。

 

大和 「これでもまだ沈まないのッ!?」

 

 しかし流石超兵器と言うべきだろう。

 確かに至るところが破壊され弾薬庫が爆発したが、まだ沈んではいない。

 ドレッドノートは冷たく恨みに溢れた眼を向け、水中に潜航する。

 

神弓 「───えっ?!まだそんな状態で潜航出来るの!?」

 

 神弓自身もあまりに予想外の出来事に驚愕せざる終えない。

 潜航し始めたドレッドノートを逃さないように慌てて照準をつけるが、照準を合わせた途端に水面に消えていく。

 逃した!と神弓がそう思った瞬間だった───

 

ハリアー妖精 「「UGB投下。」」

 

 水中に消えたドレッドノートへ、ハリアーⅡが追いかけるように急降下しながら残った二発の爆弾をパイロンから切り離す。

 爆弾は重力に引かれて着水、そして今までと違う規模の水柱が噴き上がる。

 ボンッと音が鳴り、水面に大量の浮遊物が浮かび上がってくる。

 浮かび上がった残骸を見つめて、神弓はドレッドノートをソナーで捜索を行う。

 

神弓 「海面に浮遊物を確認。パッシブソナーに異常なし。アクティブソナーで確認する、ピンガー打て。」

 

 アクティブソナーからピンガーが打たれる。

 ソナーには人口構造物が少しづつ沈んでいき、かなり震度が深くなった時に二つに分かれ一緒に沈んで行くのがハッキリと確認できた。

 

神弓 「恐らく、敵の撃沈に成功したと思われます!」

伊勢 「「やったぁ!!やったよ日向ー!!」」

日向 「「あぁ、わかってる。」」

 

 伊勢の叫びを皮切りに、無線が喜びの大合掌。

 無線は歓喜で埋め尽くされ、遠くに居る本隊から無線無しで神弓の耳に届く。

 

ハリアー妖精 「「アロー。こちらスカイドミネーション02。エネミーデストロイ(敵を撃破)、指示を乞う。」」

神弓 「こちらアロー。スカイドミネーション02。帰投せよ。」

ハリアー妖精 「「こちらスカイドミネーション02。ラジャー(了解)。」」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。