鋼鉄の少女達は世界にどう接する?   作:弓風

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27∶欧州遠征軍

 作戦の概要が公開された数週間後、欧州遠征作戦及びマダガスカル島攻略作戦が実行に移された。

 実行の際、雨風達の遠征軍は攻略軍と共に南下しシンガポール付近のリンガ泊地で、東南アジアの各基地鎮守府から同行する艦隊と合流、スリランカ島を目指す。

 二つの作戦を平行で進める為、艦隊は目を見張る程大規模になったが、中には少し異質と言える艦───いや、陸軍の特種船丙型のあきつ丸が含まれていた。

 この特種船丙型という艦種は、簡単に言えば揚陸艦である。

 今回その揚陸艦のあきつ丸が呼び足されたのはスリランカ島に陸軍航空隊をピストン輸送する事だった。

 しかし本来であれば海軍の空母を使用すれば一回で済む輸送を陸軍は拒否した。

 理由は単純明解、陸軍が海軍を信用しないからだ。

 この陸軍と海軍の軋みは、昔も今も恐らく今後も頭を悩ませる問題であろう。

 やがて艦隊がスリカンカ島に到着し、陸軍航空隊の輸送が完了後稼働状態へ移った時、欧州遠征軍は地中海への裏口であるスエズ運河に進路を取った。

 太平洋とまでは行かなくても広大なインド洋。

 その空を、比較的低高度で一機の機体が飛行していた。

 独特の逆ガル翼に二千馬力を誇る誉二一型が唸りを上げるその機体の名は流星改。

 最高速度500km⁄s以上の高速機でありながら機動性も悪くなく、装備次第で爆撃機にも雷撃機にもなり、二挺の翼内20mm機銃はある程度の空戦も可能な汎用機である。

 流星改は翼を軽く傾け大きい円を描いて旋回し、搭乗妖精は海上を見渡し周囲を警戒する。

 しかし海上にこれといったものは見当たらず、時折進路を修正しつつも捜索続けた時、目的のものを発見した。

 浅い海面付近に沈む一つの黒い影。

 流星改はその黒い影に向かって機首を下げ、緩降下へ移る。

 降下と同時に爆弾槽が開かれ、中に搭載されたキラリと光る巨大な爆弾。八十番とも呼ばれる800kg爆弾であった。

 高度を下がり爆撃照準器に黒い影が写った時、爆弾が投下され、大きな水飛沫が上がり爆弾は海中に姿を消す。

 この爆弾は時限信管が設定されており、着水およそ三秒で時限信管が起動。

 大きな水柱が立ち上り、波が収まった海面には重油や残骸が撒き散らされた。

 その残骸等を確認した流星改は、撃沈の電報を所属艦に送った。

 

加賀 「「加賀から神弓へ伝達。五番機が敵潜水艦を撃破。」」

神弓 「こちら神弓、了解しました。にしても加賀さん凄いですね!もう三隻目ですよ!」

加賀 「「皆、優秀な子達ですから。」」

 

 加賀から内心嬉しそうな返答が帰ってくる中、神弓のパッシブソナーに魚雷発射管の注水音を捉える。

 

神弓 「二時の方向、距離95!一番近いのは・・・瑞鶴さん!三番機の直下に敵潜水艦です!」

瑞鶴 「「えっと、三番機?分かったわ!」」

 

 指示を受けた瑞鶴三番機が潜水艦を中心に右旋回して

攻撃態勢に移ってる頃、神弓は既にソナーが探知した複数の潜水艦に上空を飛ぶ空母の艦載機に指示を出していた。

 ここで一つ疑問に思うのは、何故潜水艦を捕捉した神弓自身が攻撃しないのかだろう。

 それは前にも伝えた通り対潜ミサイルであるASROCⅢの総弾数が少ない事と、他の理由としてパッシブソナーでは動かない潜水艦相手を発見するのは厳しく、アクティブソナーは位置を教えてるのと同義なので使用出来ない。

 一応欧州遠征軍はマダガスカル島攻略の囮となってはいるものの、元師閣下の乗る輸送船も含まれているとあっては行動は慎重にならざる終えない。

 それではここで一旦現状を伝えよう。

 まず神弓の所属する欧州遠征軍の規模は、神弓を旗艦とし一航戦、二航戦、五航戦を主力とした機動部隊に加え、随伴艦の主力である雨風を筆頭に、金剛、足柄と言った少しでも海外経験のある艦娘をメインに選択されている。

 そして今回は二隻の輸送船が含まれている。

 一隻は元師閣下が乗艦される輸送船、もう一隻は艦娘の補給や休息、簡単な艤装の整備が行える輸送船であった。

 あと艦隊の中に数人であるが、明らかに西洋の顔つきをした艦娘が混じっていた。

 日本には存在しない38cm連装砲を四基備え、副砲に15cm連装砲を装備するその戦艦はBismarck───かの有名な独逸の戦艦ビスマルク級戦艦一番艦だ。

 他にもいる。Z1レーベレヒト・マース、Z3マックス・シュルツ。

 それに独逸だけではない。

 イタリアの駆逐艦Maestrale級三番艦のLibeccio、リベッチオも含まれていた。

 

ビスマルク 「はぁ、潜水艦が相手なら私の出番はないわね。」

 

 ビスマルクは自慢の砲が火を吹けず、役に立たない現状に不満を抱く。

 すると近くに居たレーベがビスマルクを諭す。

 

レーベ 「いいじゃないか。日本に来てもう何年。ようやく僕達の望んだ父国の帰還だよ。」

ビスマルク 「ちゃんと分かってる。けど・・・折角の戦場よ!私だって派手に戦いたいの!」

マックス 「それなら安心していい。紅海の入り口に差し掛かれば、自然と敵と会うわ。」

 

 レーベと不満げなビスマルクの会話にマックスが入り込む。

 願った父国の帰還に心を躍らせるレーべは、ふと今までの出来事を思い浮かべる。

 

レーベ 「紅海を超えれば地中海、父国は直ぐだよ。でも、今考えるとよく日本まで来れたのが不思議な位。」

ビスマルク 「もうあんな寒いのは嫌っ!」

マックス 「北極海から回ったんだから当然よ。」

 

 今マックスが口にした通り、海外艦が日本にまで来れた理由は北極海を経由して日本まで航行したからである。

 元々欧州が強力な海軍力を誇る日本とコンタクトを取ろうと考え計画したが、紅海やインド洋は深海棲艦に占領され阻まれた結果、苦肉の策として北海から北極海のルートしかなかったのである。

 最終的に、彼女達は気合いでなんとか航海を終え日本に到着したが、直後北方海域を占領されて帰還不可能となっていた。

 日本にいる間は日本海軍に組み込まれ、東南アジアで優秀な戦力の一角を成していた。

 

ビスマルク 「雑談はこの程度にしておきましょう。にしてもあの艦娘。神弓・・だったかしら?よくもまぁこんなに連続で指示が出せるものねぇ。」

 

 ビスマルクの見る先は、忙しく入る情報を整理し指示を出し続ける神弓の姿があった。

 基本的に問題なく指示を送っていたが、時々間違えた指示を与えてしまい大慌てで修正する姿が見て取れた。

 

レーベ 「沢山レーダーを積んでるようだけど、僕は大量の情報を処理する事の方が凄いと思うな。」

マックス 「もしかしたら未来の装備はあんなのかもね。どちらにしたって、期待させて貰いましょう。」

 

 神弓に期待するマックスだったが、実際の所神弓は頭を抱えて嘆いていた。

 

神弓 「いくら敵の海域って言っても数が多すぎる!どれだけ潜水艦を潜ませているの!」

 

 神弓があまりの敵潜水艦の数に怒りながらも、自身の役目を務めようと努力する。

 

神弓「加賀七番機付近に敵潜水艦が───」

翔鶴「「神弓さん。一番機が潜水艦を発見しました!」」

金剛「「三時の方向に怪しい影を見たネー。」」

神弓「指示出しますから待って下さいっ!!」

 

 潜水艦の数は神弓が一隻に指示を出している間に、新たに複数隻発見されるループを何回も繰り返していた。

 日中の間ずっと哨戒機と協力して潜水艦狩りを続け、日が落ちて暗くなる頃には潜水艦の姿は殆ど居なくなっていた・・・はず。

 

神弓 「取り敢えず山場は越えた、のかな?はぁ・・・」

 

 常に張り続けた緊張感が緩み、身体が疲労で気だるくなるのを感じる。

 ただ戦場で完全に気を緩ませる訳にもいかず、最低限警戒は出来る程度に保つ。

 すると幸運が神弓に訪れる。

 輸送船で休んでいた雨風が、交代の時間で神弓の所に来たからだ。

 

雨風 「神弓、交代。」

 

 雨風がそう口にした途端、神弓の瞳がキラキラ光りお祈りをするようなポーズをする。

 

神弓 「ありがたやー!ずっと指示を出してたせいでもう頭が回らなくて。それじゃ後は頼んだよ。」

 

 待ちに待った休息を取ろうとハイテンションで輸送船に戻る途中、神弓はある疑問を持っていた。

 

神弓 「にしても妙だよねぇ。今まで潜水艦の配置的はこの付近を通るって知ってないと出来ない配置。しかもあの量は海域全ての潜水艦が集まっているんじゃ。」

 

 潜水艦は基本的に水中から魚雷で襲う狙撃手のようなもの。

 輸送船より遅く、浮上すれば追い付けるだろうが護衛に砲撃を浴びせられる。

 だから潜水艦の取る行動は絶対と言って良いほど待ち伏せに限る。

 しかし待ち伏せは目標がここを通る確証がなければ行い難い。

 だが今回は、明らかに艦隊の通る航路付近に集中的に配置されていた。

 つまりそれは───

 

神弓 「もしかして私達の情報が漏れている?」

 

 神弓がこう考えるのも必然だ。

 潜水艦は先ほどの通り速度か遅く、罠を張るにはその地点に移動しなければならない。

 移動に時間の掛かる潜水艦は前もって情報を獲得しておく必要性がある。

 

神弓 「誰が流したとしたら軍内部に深海棲艦の内通者がいるって事に。やるとしたら、うーん・・・やっぱり駄目だなぁ、頭が回らない。また明日にしよう、そうしよう。」

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