進行は凄く遅いですが、完結を目指して進撃していこうと思います。
金剛「撃ちマス!Fire~!!」
雨風「照準、撃って。」
艦隊の最前衛を担当する金剛と雨風の主砲が火を噴く。
放たれた砲弾は、紅海の入り口を防衛していた敵水雷戦隊へと着弾する。
水雷戦隊を率いていた旗艦のリ級は61cmの火力で即座に爆散し、二番艦のヘ級には金剛の砲弾が命中する。
そして突然旗艦を潰されたイ級などの随伴艦はパニックに陥り逃げようとするが、包囲するように両脇へ展開していた友軍の水雷戦隊が急接近して一艦残さず殲滅した。
神弓「正面の敵艦隊の撃破を確認、紅海への道が開きました。全艦、第一航行序列で進撃します。」
神弓の指示した陣形に合わせて各艦娘が行動を開始した。
第一航行序列は対潜を重視し被弾しづらい陣形である反面、持ち前の火力は発揮しにくい。
比較的汎用性の高い第二航行序列も存在するが、現状のみの戦力で紅海を突破する為には可能な限り被害を少なくする必要があり、護衛の輸送船や空母を守りながらとなると必然的に第一航行序列にならざる負えなかった。
進撃中は時折敵艦隊が攻撃を仕掛けて来る。
しかしそれらを問題なく撃退しつつ紅海を進む中、想定外の事態が発生した。
艦隊中央に位置する神弓が、レーダーやソナーで警戒している最中、神弓からそう遠くない距離に突如として一本の水柱が発生した。
神弓「な、何っ!?」
水柱に唖然していた神弓は少しして我に帰る。
神弓「一体何処からの攻撃!」
神弓は困惑した。
神弓の居る艦隊中央には空母や輸送船がおり、この水柱はつまり護衛対象を射程内に捉えたと言う事になる。
しかしレーダーに映る敵艦隊や敵機はまだ先、ソナーにも潜水艦の反応はなかった。
この事実が余計神弓を混乱へと導く。
神弓「レーダーやソナーに映らない敵がいる?そもそもどうやって攻撃をしてきたの?・・・取り敢えずレーダーから再確認。」
レーダーの記録をもう一度再生して確認する。
水柱の上った位置を重点的に確認すると小さな反応ではあるが、何かの飛翔体が艦隊から見て九時方向から飛んでいると発見した。
神弓「あった!犯人はこれかぁ。でも九時方向って・・・・・」
九時方向を視界に捉えた神弓は、大きく横に広がる山脈に困惑する。
すると神弓へ二件の報告が届いた。
赤城「「こちら赤城。偵察に出した瑞鶴二番機から、九時の方向の山脈に光を見たと報告がありました。もしかしたら先程の水柱の原因かも知れません。」」
雨風「「雨風から報告。八時の方向から黒煙を確認。」」
レーダーや二件の報告により水柱が砲撃によるもの、そして攻撃は九時の山脈からだと推定された。
しかし誰が、何の為に、どうやって艦隊に攻撃しているか分からなかった。
神弓「ハリアーⅡ発艦。偵察をお願い!」
すぐさま神弓がハリアーⅡを発艦させ、九時方向の山脈を捜索させるよう命令した。
発艦したハリアーⅡは推定発射箇所付近の山脈を重点的に飛行する。
神弓「こちらアロー。スカイドミネーション02。何か見える?」
ハリアー妖精「「こちらスカイドミネーション02。こちらからは何も見えない。以上。」」
目視偵察を行うハリアーⅡの芳しくない報告に神弓は少し落胆する。
だがそれも一瞬だけであった。
ハリアー妖精「「───いや待て。この色彩に雰囲気、深海悽艦だ!それもこいつは・・・沿岸砲台型か!」」
ハリアー妖精から告げられた敵は神弓の予想を越えるものだった。
しかし同時に、陸上型の深海悽艦が居るなら砲台型があっても不思議ではなかったと納得もする。
神弓「沿岸砲台型が一基だけな訳が無い!他にも配置されているとするなら・・・囲まれてる?」
艦隊の左右は山脈になっており、何時何処で両脇から砲撃されるか分からなかった。
神弓「神弓から全艦に通達!沿岸砲台型の深海悽艦が展開されています!左右の山脈の中から砲撃される可能性が高いです!」
沿岸砲台型の深海悽艦の存在に艦隊全体に衝撃が走る。
神弓「この深海悽艦を砲台小鬼と仮命名。直ちに空母から爆撃機を発艦!捜索及び破壊を命じます。」
慌ただしく空母が発艦に移ろうとした瞬間、両脇の山脈の複数箇所から砲撃が開始された。
艦隊全体へ小口径の砲弾が連続で着弾する。
神弓「えーと砲撃地点はここら辺。対艦ミサイル、発射セル五基二連射十発!目標砲台小鬼。発射!」
神弓のVLSから白煙を吹き出しながらミサイルが飛翔する。
そして現在砲撃をしている全て砲台小鬼に命中した。
しかし砲撃は一瞬収まったのみで、再び砲弾が艦隊へ投射される。
これに対し神弓は再度ミサイルを発射。
だが二発目でも破壊には至らず、何度も攻撃した結果、五発目にしてようやく撃破に成功する。
反撃の際、ミサイル以外にも周囲の艦娘が砲撃を浴びせたが、海上の不安定な足場かつ小さな砲台小鬼に命中させるのは容易ではない。
唯一金剛と雨風のみ命中に成功し、雨風はレールガンで撃破。
しかし金剛搭載の35.6cm砲の一発だけでは被害を与えても撃破まで及ばなかった。
この事から砲台小鬼は高い防御力を持ち、撃破する為にはかなりの命中精度と火力も必要だと判断された。
神弓「一基にミサイル五発。これじゃあ直ぐ弾切れになっちゃう。せめてこれに火力があれば。」
神弓は自身の装備する127mm速射砲を見つめる。
推定される防御力を考えれば最低でも20.3cm砲並みの単発威力が必要であろうと予想した。
例え127mm速射砲を連続で着弾させようと、結局は重い一撃が無ければ撃破は厳しかった。
しかし無い物は仕方ない。
それに敵は砲台小鬼だけではない。
レーダーに映る多数の敵編隊、そして敵艦隊がこちらへ前進している。
神弓「神弓から赤城へ通達。制空及び砲台小鬼の撃破を最優先してください。そして可能なら現場判断で艦隊攻撃を願います。制空は私も微力ながらお手伝います。」
赤城「「分かりました。」」
そして次に雨風に無線を繋いだ。
神弓「神弓から雨風へ。砲台小鬼を発見次第レールガンで狙撃を。」
雨風「「了解。」」
その後ハリアーⅡを敵編隊迎撃に向かわせる。
神弓「今はこれでいい。砲台小鬼が何処に潜んでいるか分からないけど、昼はまだ何とかなる。でも問題は夜。どう切り抜けよう。」
僅かに時間が空いた隙間で何度も夜間の対応を考えていたが、艦隊戦や航空戦が本格化すると考える暇も無い。
今回は雨風が派手に対空戦闘を行った為、敵艦隊も防御力の高い雨風へ向け優先的に攻撃を開始した。
これによって他の艦娘の被害が少なく、雨風へ火力支援や援護を容易に行えた。
しかし砲台小鬼の砲撃や、航空攻撃によって若干とは言え被害が出始めていた。
やがて日が落ちて暗くなり、視界が悪化する。
そして神弓の懸念は更に悪い方向で的中した。
神弓が夜間では行動が限られる空母を輸送船に帰投させようとした時だった。
対空用に備えて自動迎撃モードで放置していた35mmCIWSが、突然右斜めの海面に向け火を吹いたのだ。
弾薬ベルトに撒かれた曳航弾が砲弾の行く末を露にする。
神弓「こっ今度は何!?」
いきなりの発砲に神弓が驚いた時、雨風から通信が届く。
雨風「「雨風から報告。艦隊中央へ移動中の小型の深海悽艦を確認。」」
雨風の報告とCIWSの発砲は関係していると判断した神弓はCIWSの発砲先を凝視し戸惑った。
神弓「何、あれ・・・?」
ロ級の頭をした赤ん坊のような深海悽艦が三隻一組で艦隊に急接近しているのを認識する。
水上速度は速く、両手に魚雷を二本づつ握っている事から火力及び速度面から鑑みても放置は出来なかった。
神弓「神弓から第二水雷戦隊へ!二時の方向から高速で小型の敵が接近中!撃破は命じます!」
神通「「二時の方向?・・・・あれね!危険ですが一時的に探照灯を使用します!皆さんあの深海悽艦を狙って下さい!」」
神弓が右舷に展開していた第二水雷戦隊の見つめると、探照灯で謎の深海悽艦が浮かび上がらせていた。
小さく足の早い深海悽艦ではあったものの、高い練度を誇る第二水雷戦隊によって三隻全てが撃沈する。
そして夜間に探照灯を点ける事は、敵から攻撃が集中しやすい事でもあった。
しかし不思議と第二水雷戦隊には砲撃はあまり集まらなかった。
神弓は妙な違和感を持つが、自分の仕事を真っ当しようとレーダーやソナーに意識を向ける。
この時神弓は気が付いて無かったが、第二水雷戦隊の点灯に追って雨風が咄嗟に主砲を使用しながら探照灯を使用し敵の目を集めていたのだった。
神弓「神弓から第二水雷戦隊へ。先程の深海悽艦について何か情報はありませんか?」
神通「「こちら旗艦神通。あの深海悽艦は足が速いですが、機銃で有効打が入ったように感じました。恐らく装甲は無いに等しいのかと。」」
神弓の35mmCIWSでも撃沈出来た結果から神通の感じた内容は恐らく合っていると判断する。
足が速く、魚雷を装備し小型で装甲は薄い特徴から、魚雷艇に近い特性があると神弓は考えた。
神弓「神弓から全艦に通達。魚雷艇の特性を持った新たな深海悽艦が現れました。この深海悽艦をPT小鬼群と仮命名。艦隊に接近するPT小鬼群が居れば小口径砲や機銃等で撃退してください!」
新たな深海悽艦の登場は、艦隊へ良くない影響を発生させていた。
種類が増える=攻撃手段の増加に繋がるからだ。
いくら雨風が目立つように攻撃しているとは言え、全ての深海悽艦が雨風を狙う訳でない。
特に艦隊にとってレーダーに映らない二種の深海悽艦が厄介であった。
砲台小鬼は砲撃されるまで何処に潜んでいるか分からず、砲撃精度も高く確実に奇襲を受けてしまう。
PT小鬼群も波に紛れて艦隊に接近し、不意の魚雷攻撃で大きな被害を出していた。
既に輸送船からは予備の艦娘は全て出払っており、残っているのは損傷し後退した者ばかり。
夜間無力な空母ですら目視捜索担当として運用している状態である。
これ以上艦隊に被害が拡大すれば陣形の維持が困難になり、防衛に大きな隙が生まれる可能性があった。
神弓「このペースなら夜明け頃には突破出来る。この夜戦が正念場。」
砲撃や雷撃が飛び交う戦場で神弓は全旗艦へ通信を繋ぐ。
神弓「神弓から通達。現在の被害状況を報告願います」
まず最初に赤城が返答を返した。
赤城「「こちらは問題ありません。」」
神通「「三人小破しましたが、まだ行けます。」」
秋月「「照月が後退しましたので防空力にやや不安が残りますが、皆でカバーして対応します!」」
雨風「「戦闘可能。」」
ビスマルク「「戦艦で何でも相手行けるわよ!!」」
各旗艦から回答が帰って来て、神弓は少なくとも現在展開中の艦隊は問題なく戦闘可能と判断する。
そして次の指示を出そうとした時、秋月の驚愕と困惑の組み合わさった声が無線に走った。
秋月「「えっ!ちょ、ちょっと待って下さい!」」
秋月の言葉に無線をオープン状態にしていた神弓を含む全旗艦が意識を向けた。
そして数秒経って秋月が口を開き、無線越しに衝撃が走った。
秋月「「うん・・・間違いない。秋月から報告、雨風さんの損傷は最低でも中破に達しています!」」
あの桁違いの防御力を誇る雨風が中破している事実を聞いた息を呑む。
だが考えてみれば当たり前でもあった。
複数のPT小鬼群からの雷撃、砲台小鬼の高精度の砲撃、連続かつ波状的な航空攻撃、複数の防衛艦隊との艦隊戦。
いくら雨風と言えど、ダメージが蓄積し被害が拡大するのは当然なのだ。
秋月「「雨風さんの後退を要請します!」」
雨風「「駄目。まだ戦闘を続ける。」」
秋月「「それこそ駄目です!いくら雨風さんでも沈まない訳じゃないんですよ!!」」
心配する秋月は珍しく口を荒くし雨風を叱責する。
中破とは戦闘能力が大きく減少する規模の被害であり、中破からの轟沈は確認されていないが、絶対ではない。
それに中破した艦娘が連続で被弾し、大破から即轟沈すると言う不幸な事故も発生していた。
神弓「雨風は後た───」
反射的に後退を言い渡そうとした神弓は、咄嗟に理性で歯を食いしばり言葉を止めて耐える。
神弓「雨風に命令───戦闘を続行して下さい。」
秋月「「師匠ッ!!」」
まさか戦闘を続行させると言う想定外の命令に、突飛な叫びを秋月が発する。
そして神弓は自分の服を強く握り締め、理由を伝える。
神弓「「今、弾受けの雨風が居なくなれば前線は崩壊します・・・だから、現状の陣形を継続して下さい。」」
神弓の選択に秋月及び他の艦からは反論は帰って来なかった。
今のところ他の艦娘の被害が少ないのは弾受けを雨風がしてくれているからであり、前線から後退すればたちまち被害が急増するのは目に見えていた。
秋月の報告から始まった現在の状況は、紅海で深海悽艦から勝利をもぎ取れる時間を判明させていた。
神弓「この戦いに勝利を掲げられるタイムリミットは、雨風が戦闘不能になるまでです。全艦最大船速!暁の水平線に勝利を刻みましょう!!」
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
神弓の言葉によって、友軍の艦隊の纏う雰囲気が更に真剣見のあるものへ変化する。
それは前線に居る雨風も同じだった。
すると戦闘へ集中していく意識の片隅に、僅かな眠気の存在に気がつく。
雨風はポケットから眠気覚ましの薬を取り出し、口の中で噛み砕く。
あまり薬に頼るべきではないのは十分承知しているが、今は四の五の言ってる場合ではない。
そしてレールガンではなく、主砲で丘の上に立つ砲台小鬼に照準を合わせる。
現在レールガンは連続発射時の放熱の影響により、砲身が融解し変形、使用不可となっていた。
砲台小鬼を狙う間、隙と判断した敵戦艦隊が正面から攻撃を加えてくるが、意にも止めず測量を続けた。
雨風「・・・撃って。」
十五発の砲弾が雨風から放たれ空中を飛翔する。
そして十数秒後、砲台小鬼の周辺に連続で着弾。
土煙が砲台小鬼を覆い隠し姿が見えなくなり、突如土煙の内部から巨大な爆発が立ち上る。
雨風「撃破を確認。」
土煙の爆発が砲台小鬼によるものだと判断した雨風は、主砲を正面の戦艦隊へと移す。
そして視界の端に艦隊の二時の方向から、九隻のPT小鬼群が岩を影にしつつ接近しているのを最初に発見する。
雨風は35mmCIWSで殲滅しようと指向した。
しかし何故かバレルが回転するだけで肝心の弾は発射されなかった。
原因は連続的な戦闘による弾切れであった。
更に運の悪い事にパルスレーザーも長時間過負荷を掛けた結果、専用の給電機器がショートしている。
雨風「使えない?なら。」
正面の戦艦隊に向けていた主砲をPT小鬼群へ旋回させる。
すると正面からル級の砲弾が防御重力場の脆くなっていた箇所に命中、十分な減衰が掛からず砲弾が雨風に直撃した。
直撃した砲弾が艤装の対空兵装を砕き、左舷の荷電粒子砲を大きく破損させる。
被弾の衝撃で少しよろけるものの、構わず雨風が二基の主砲から六発の砲弾を発射。
61cmの桁違いの砲弾を前に至近弾とは言え、装甲の無いPT小鬼群はバラバラに砕けながら弾け飛ぶ。
そして次に戦艦隊を相手しようとした時、ル級二隻、タ級二隻の一斉砲撃が降り注いだ。
十数発の砲弾は大半が防御重力場によって減衰させられたが、二発の16inch砲弾だけがそのまま勢いで命中した。
一発が第三砲塔の防盾に直撃し炸裂、左及び中央の砲身を根元から引き裂く。
更に次弾が第四砲塔の基部に命中した結果、旋回装置が破損し旋回不可能となる。
だが幸いな事に砲弾自体は貫通しておらず、弾薬庫引火と言う最悪な事態は免れた。
しかし雨風の被害が広がり、使用可能兵装は数を減らす。
現状の兵装は無傷な61cm砲塔三基、たった一門使用可能な第三砲塔、右舷の荷電粒子砲のみだった。
そして弾数も少なくあまり長時間戦闘が困難なのも理解していた。
命中率を上げるには陣形から脱し敵に近づくしかない、そして派手に戦闘を行えば敵の注意が集まり、その間友軍を大きく前進させられる。
敵中で単独孤立する可能性も存在したが、このままではじり貧だと考えた雨風は出力を最大まで上昇。
まず正面の艦隊を叩く為急速に接近する。
道中無線が飛んできた気がしたが、戦闘に集中する為に気のせいだと切り捨てた。
自身の予想を越える速力を出す雨風に戦艦隊は意表を突かれ、咄嗟に放った砲弾は雨風を捉えられない。
お互いに顔を表情が分かる位接近して雨風はル級に向け主砲弾を一発発射しようとした。
雨風「撃って。」
すると発砲されると気がついた護衛の駆逐ロ級が盾になろうとル級の前に飛び出す。
しかし射出された61cm砲弾はロ級の体を軽々突き破り、無慈悲にも守ろうとしたル級に命中する。
次に別の艦を狙おうとした瞬間、十時の方向から別のロ級が口から砲身を出しながら急速に雨風へ接近していた。
だがロ級の主砲口径は5inch、至近距離からでも装甲で十分防げると雨風は判断していた。
しかしこれは雨風の判断ミスだった。
雨風の目の前に急接近したロ級は、口から伸びた砲身を器用に扱い鈍器を叩きつけるの如く体を捻る。
砲身を振る想定外の攻撃に雨風は反応出来ず、左頭部を思いっきり叩きつけられた。
一瞬意識を飛ばされそうになるが、口唇を噛み切り無理矢理意識を覚醒させる。
疲労、痛み、頭部への打撃や出血などで意識が混同する中、雨風は第二砲塔をロ級に合わせてほぼ零距離で砲撃した。
砲撃時の強烈な爆圧でロ級が潰されながら天高く跳ね上がる。
そしてロ級の死に際を一切見ず、それぞれの砲塔を残ったタ級二隻、ル級へ照準し、普段ではしないであろう吐き捨てるように発砲を命じた。
雨風「───撃てッ!!」
三基の砲塔に搭載された九門の砲身から砲弾が発射され、発生した大きな黒煙が敵艦隊の姿を消す。
そして黒煙が晴れた頃には二隻のタ級、ル級は存在しておらず、海面には残骸が浮かぶだけであった。
雨風は周りを見渡し敵が居ないか捜索する。
すると雨風を中心に半円陣形で魚雷を投下しつつPT小鬼群が十八隻も迫っていた。
夜間、頭部からの出血などで視界が良くない状況でありながら雨風は敵戦力を正確に把握する。
まず雨風が三時の方向へ移動し、PT小鬼群も変針しながら一直線に突撃する。
しかし雨風の移動の間にも海面下から魚雷は迫っており、包囲されつつ飽和的に放たれた魚雷を全て避ける事は困難であった。
結果的に二発の魚雷が被雷。
防御重力場で軽減されたとは言え、片側の舵を大きく損傷した。
しかし操舵が鈍くなっただけ航行に支障はないと判断した雨風は戦闘を続行する。
そしてある程度距離が縮むと、PT小鬼群から搭載する20mmや40mm機関砲が雨風へ放たれた。
しかし被害が大きくとも戦艦、雨風には大したダメージは与えられない。
やがて猪突猛進に進むPT小鬼群は雨風から見て縦一列に近い状態に移る。
雨風の主砲が縦に散布界を広げつつ砲撃、PT小鬼群が61cm砲弾の着水の衝撃で吹き飛びながらバラバラに砕けた。
PT小鬼群を撃破した後にする事を雨風は既に知っていた。
先程のPT小鬼群の雷撃に使用された魚雷投射数がPT小鬼群の数より明らかに多かった事を。
アクティブソナーを起動すると、案の定前方の海中に散らばった五隻の潜水艦を探知する。
狭い場所の潜水艦は友軍艦隊的にも大きな脅威になりうる。
潜水艦を確実に撃沈する為、少しばかり前進してASROCⅢを発射。
VLSから五発のASROCⅢがそれぞれの敵潜水艦に狙いを合わせ空中を飛翔し、海面にブースターを切り離した魚雷がパラシュートで減速しつつ落下する。
数秒後、五本の水柱が立ち上った。
水柱が消え去った後、雨風の周囲はついさっきまで鳴り響いていた砲声などは無く、ただとても静かな静寂に包まれた。
周囲を見渡しても、海中をアクティブソナーで捜索しても深海悽艦らしきものは居なかった。
と、同時に一気に出力を上げた結果、友軍艦隊とは距離が開けてしまったらしく軽く後方を見渡しても良く見えない。
そしてその時空が少しづつ明るくなっている事に気が付き、顔を空に向けたら視界にアンテナの先端が入り込む。
雨風「あっ。」
雨風はわざわざ目視で敵を探す必要はない事をようやく思い出す。
ここでふと戦いを振り替えると、後半から完全に目視で敵を探しており、レーダーと言う便利な代物の存在を使っていないと気が付く。
そこでレーダーを確認すると、五隻の艦隊が単縦陣で目視可能な距離まで接近していると示されていた。
これを敵残存艦隊だと考え、主砲を旋回していた雨風は接近する艦隊に視認した瞬間、一目で接近する艦隊は深海悽艦ではないと分かり砲身を最大仰角まで上げる。
迫って来る艦隊は、装備や服装は日本ものではなかったが明らかに艦娘。
そして作戦目標のスエズ方向から来たとなると、必然的に欧州の艦隊だろうと雨風は予想した。
大破一歩手前の雨風に気が付いた欧州の艦隊は被害の大きなに驚きを見せる。
だが周囲に大量に撒き散らされた深海悽艦の残骸で怪訝な表情に変化する。
そして満身創痍の雨風へ、欧州の艦隊全員が砲口を合わせて何時でも発射可能な状態に行動する。
???「Ugoku na! Answer your name and affiliation!!(動くな!名前と所属を答えろ!!)」
黄緑のセーラー服を着る先頭に立つ旗艦であろう艦娘から、警戒する口調で雨風に問う。
そしてその欧州の艦隊に対し、雨風は一瞬考えてから回答する。
雨風「Kingdom of Wilkia, Battleship Amakaze. Now working with the Japanese Navy.(ウィルキア王国、戦艦雨風。今は日本海軍と行動中。)」
???「Japanese Navy!?(日本海軍!?)」
最初にウィルキア王国の国名に頭を傾けていた様子だった相手は、最後の日本海軍と言う単語に欧州の艦隊全員が驚愕の色を見せ、動揺しつつ艦隊内で話し合っていた。
慌てふためく艦隊を前に、右後ろから光を感じた雨風が何気なく振り向いた。
そこには山脈の頂上から太陽が少しづつ顔を出していた。
この瞬間、雨風は紅海の突破に成功したんだと思い、少しだけ肩の荷を下ろす。
次に艦隊共通無線のオープン回線を開く。
雨風「雨風から伝達。欧州の艦隊と合流成功。以上。」
簡単に一言だけ伝え、無線を切った。
この後、言葉の意味を理解し無線内部が歓声で満ちるのにそう時間は掛からなかった。