雨風「暇······」
神弓「そうだね······」
二人は射撃演習を終えた後、鎮守府に戻って来たはいいが、やる事が無いので待ちぼうけになっていた。
雨風 「これからどうする?」
神弓 「うーん。休もうにも休憩場所を知らないし···」
雨風 「···神弓、瑞鳳が来てる。」
雨風の見る場所から、瑞鳳が駆け足でこっちに向かって来ていた。
瑞鳳「雨風さん、神弓さん。」
雨風「瑞鳳、どうした?」
瑞鳳「提督が、甘い物でも食べてきたらって言ってたの。だから····どう?」
瑞鳳はそういうと、懐から券を取り出す。
二人は断る理由も無いので了承する。
二人は瑞鳳に着いて行き、看板に食堂と呼ばれる場所に到着した。
中に入ると、数十人が一度に入れる位大きな食堂であり、机や椅子が所狭しに置いていた。
瑞鳳は食堂のカウンターとおぼしき場所にいた人に、券を渡していた。
瑞鳳「間宮さん。甘味処の券と初の券が二枚、お願いします。」
間宮「はい、わかりました。初の券は····あそこにいる二人の分ですね。」
瑞鳳「はい、そうです。二人ともー!ちょっと来てぇー!」
ここで周りを見ていた二人が、瑞鳳に呼ばれやってくる。
瑞鳳 「この人が間宮さんって言うの。」
雨風「雨風です。」
神弓「私は神弓と言います。」
間宮「雨風さんと神弓さん、間宮です。これからよろしくお願いしますね。それでは準備してきますので。」
間宮は挨拶をして、カウンターの裏に歩いて行った。
瑞鳳 「それじゃあ席はー、あそこに座ろう!」
指を指した端のテーブル席に座る。
座ってから料理が来るまで、今日の演習事などの他愛の無い話をしていると、瑞鳳がある事を思い出したようで、内容を伝える。
瑞鳳「そうだ!二人とも、妖精さん呼んでくれる?」
神弓「えっ?どうやって呼ぶんですか?」
瑞鳳「頭で念じて呼んだら来るよ。」
瑞鳳にそう言われたので二人が頭の中で集合と念じる。
これで本当に来るの?と思っていたら、数分程でポツポツと妖精さん達が本当に集まって来た。
ちょうど妖精さんが集まりきった所で、間宮がお盆に乗っけてやって来る。
アイスと熱めのお茶を瑞鳳達や妖精さんの所に置いていく。
置き終わった時、カウンターの方からジリリリと音が鳴り響く。
間宮「何かしら?あっ召し上がって下さい。」
間宮はすぐに音の鳴る方に走り去った。
あまり気にせずに、出されたアイスを食べる。
すると、食べた全員がすごく幸せそうな空気が流れる。
表情の乏しい雨風も、心なしか笑顔になっているように感じる。
神弓「癒されますね。」
雨風「美味しい····!」
瑞鳳「でしょう!間宮さんの作る甘い物は凄く美味しいからね!」
甘いアイスによって皆が上機嫌になり、ほのぼのする空気が流れる。
ふと神弓がアイスを食べている時に、妖精さんの様子を見ようと視線を向けたら、何故か妖精さん達が慌てたように動いていた。
妖精さんの世界
「甘い物っていいよね。」「あー美味しかった!」「やっぱそうだよね~、あっ·····!」「うわーっ!?砲術妖精に熱いお茶がぁー!!」「ちょ、熱い熱い!?助けて!!」「熱盛!!」「すいません。熱盛と出てしまいました。」
机の上で慌ただしく動く妖精さんを前に、神弓は困惑する。
神弓「···何やってるんだろう、妖精さん達?」
瑞鳳「でも、賑やかなのは良い事ですよ!」
雨風「にぎ··やか····?」
忙しなく動いている妖精さんを観察していた時、再び間宮が近づいて来た。
間宮「提督から執務室に来てほしいと連絡がありました。」
瑞鳳「ん、私だけ?」
間宮は首を横に振る。
間宮「いえ、皆さんです。」
神弓「何の用事でしょう?」
雨風「知らない。」
アイスを食べ終わってすぐに提督室に向かった。
妖精さんは···まぁ、放置で大丈夫···か?
瑞鳳「失礼します。」
瑞鳳がドアを開け、中に入る。
それに続いて雨風、神弓も入った。
執務室内には、提督以外にも長門や陸奥、あと見た事のない複数の艦娘が整列している。
提督「いらっしゃい~。」
提督は椅子に座った状態で笑みを浮かべる。
雨風「何の用?」
提督「まず用事を言う前に、始めて会った子は自己紹介をしてもらうよ。雨風と神弓が最初にお願い。」
提督にそう言われたので、始めて見る艦娘に向かって自己紹介をして、次に相手の自己紹介が始まった。
赤城「航空母艦、赤城です。よろしくお願いしますね。」
加賀「航空母艦、加賀です。貴方達が雨風と神弓?中々に腕が良いと聞いているわ。」
大和「大和型戦艦、一番艦の大和です。」
武蔵「大和型戦艦二番艦、武蔵だ。よろしくな!」
長門、陸奥は既に会っていたので、それ以外の艦娘が己紹介が終わったタイミングで、提督が呼び出した内容を話し始めた。
提督「よし、全員終わったね。それで呼び出した理由なんだけど、二人には主なメンバーに顔を合わせて欲しかったのと、明日に艦隊同士の演習をする事を伝えるためだったのよ。明日だけど二人とも大丈夫?」
雨風「別に構わない。」
神弓「大丈夫です。」
提督「なら良かった。それじゃあ雨風、神弓以外は一旦退室してくれるかな?」
瑞鳳「はい。」
雨風と神弓を除く艦娘が、提督室を出て行く。
扉がパタンと閉じると、部屋の雰囲気がガラリと変化した。
提督「二人は今後どうするの?」
提督が真剣な面持ちで見てくる。
その目には鋭い眼光を持っているように感じる。
雨風「可能ならここにいたい。でも、そっち次第·····」
雨風は、鋭い眼光を受けても動じず話す。
提督「こちらとしては、貴方達のような強力な戦力が手には入るのは嬉しい事なんだけど、本当にここにいるの?」
雨風「いる。ただし条件付き。」
提督「·····条件は?」
提督が条件を聞いてくる。
雨風は手で五を表す。
雨風「全部で五つ。一つ目、作戦とかで私達を敢えて殺すような事をしない事。二つ目、私と神弓を離れて配置をしない事、常に一緒。三つ目、もし別の鎮守府に配置変えになる時には私達に許可を得る事。四つ目、艦の頃の記憶はあまり詮索しないでほしい。」
提督は難しい顔をして悩む。
提督「一つ目と四つ目は理解出来るけど、二つ目と三つ目の根拠は?」
雨風 「二つ目は、私達はイレギュラー····だから、お互いに状態を把握したい。もし何かあったらここの艦娘だと対応出来ないかも。三つ目、私達の戦闘力が本来の艦娘も比べ高い。無理やり最前線に送られ沈められるかもしれない。それに、貴方はそんなことをしないと私達は信頼している。」
提督はいまだに難しい顔をしているが、信頼していると聞いて、少しだけ表情が柔らかくなった。
提督「それは嬉しいわね。わかった、上に掛け合ってみるわ。難しいけど、私が何とかしましょう。それで、最後の一つは何かしら?」
雨風 「最後に───私達はあくまで同盟関係·····」
緩んでいた提督の表情が戻り、またもや重苦しい空気が流れる。
提督 「それは···何故かしら?」
雨風 「この世界に存在しなくても、私達の祖国はウィルキア。それ以上でも···以下でもない。」
それを聞いた提督は、目を瞑り眉間に皺を寄せながら思考する。
しばらく経ってゆっくり目を開け、今まで以上に真剣な雰囲気をさせながら二人を見た。
提督「わかった、もう一度確認するわ。本当に約束守ったら、私達と一緒に戦ってくれる?」
雨風「本当····我がウィルキア王国の名に懸けて、行動で示す。」
雨風は提督に対して敬礼をした。
神弓の雨風に随行して敬礼する。
それを見た提督は、ため息をつきながら立ち上がると、
提督「改めてましてよろしくお願いします。ウィルキア王国所属、戦艦雨風。護衛艦神弓。」
そういうとお互いに握手する。
今まで凄まじい緊張感を纏っていた部屋から緊張感が抜け、いつもの提督室に戻った。
二人との話し合いが終わったら、提督は外で待っている艦娘達を呼ぶ。
提督 「よーし!あれの準備するわよっ!!」
長門「了解した。」
神弓 「あれの準備って?」
ガッツポーズをしている提督にあれの内容を聞くと、にやけながら内容を教えてくれた。
提督 「宴、パーティーの準備よ!」
神弓 「今日は何かの特別な日ですか?」
神弓は気になったので聞くが───
提督 「何言ってるのよ主役ぅ!」
神弓 「はいっ?」
神弓は、提督の言ってる意味がわからない様子でポカーンとしている。
ポカーンとしている神弓に、もっと詳しく説明してくれる。
提督 「私の所は新しく仲間が増えると歓迎会をするのよ。新しい仲間と言ったら貴方達じゃない!」
提督は雨風と神弓を見ながら説明していると、長門が話し掛けてくる。
長門 「ここはこれが恒例だからな。それで提督、人手が足りないから手伝ってもらうが、話し合いで疲れてないのか?」
提督「別に構わないわよ。それに明日は艦隊の演習だから、今日の内に全員に紹介したいし。」
疲れなんざありませんとばかりに張りきる提督。
そんな提督を見て、長門は心配する必要が無いと判断した。
長門「よし、なら急ぐとしよう。」
神弓 「私達も手伝いますよ。」
神弓は自分も準備を手伝うと名乗りを上げるが、長門に止められた。
長門 「主役は後で出番が山程あるぞ、だから安心しろ。」
提督「待っている間は···そうね、二人を部屋に案内させたいんだけどぉ───大和、行ってくれる?」
大和「承りしました。では私についてきて下さい。」
大和、雨風、神弓は提督室を後にする。
それから建物を横をいくつも通りすぎ、しばらく歩くと寮のような建物に入って行く。
廊下を移動中に、誰かの声が聞こえる。
?「どうも大和さん、彼女達が噂の艦娘ですか?」
後ろから声が聞こえたので後ろを向くと、パシャっと、音とフラッシュが光った。
フラッシュの光で反射的に目を閉じて、ゆっくり瞼を上げると、そこにはセーラー服にポニーテールの子がカメラを構えていた。
青葉 「貴方達が噂の艦娘ですね?ども、恐縮です、青葉ですぅ!一言お願いします!」
雨風 「····?」
神弓 「え、えっ!?」
雨風は首を傾げ、神弓はいきなりのことで軽くパニックに陥る。
大和 「困らせたら行けませんよ。それに質問は今夜の歓迎会に行いますから。」
大和が青葉を叱る。
青葉 「なら、名前だけでも教えてくれませんか?」
しかしここで引き下がらないのが青葉クオリティーなのか、せめて名前だけでも聞こうとする。
雨風 「雨風。」
神弓 「えっと、神弓です。」
青葉 「なるほど、雨風さんと神弓さんですね。では、次は歓迎会の時に!」
青葉は手に持ったメモに名前を書いた後、急いで離れる。
二人に対し、申し訳なさそうに大和が謝罪をする。
大和 「すいません。元からあんな子なんです。」
神弓 「いえいえ、気にしてませんから。」
雨風 「問題ない。」
大和 「それでは案内を続けますね。」
大和が案内した部屋は、二人が過ごすには十分な広さがあった。
机やクローゼットの他、二段ベッドが置いてある。
神弓 「ここが私達の部屋かぁ。」
雨風 「思っていたより広い。」
大和 「何かあったら私に言って下さい。それでは準備が出来次第呼びますので、それまでゆっくりして下さい。」
大和は部屋を退出する。
大和が退出した後、雨風は下段のベッドに横になる。
神弓 「雨風はベッドは下にするの?」
雨風 「上がるの···面倒だから。」
雨風は文字通り面倒くさそうな声で答える。
神弓 「雨風らしいね。でも歓迎会をしてくれるのは驚きだよね。」
雨風 「多分、艦の頃の進水式のようなもの···かな?」
神弓 「確かにそうかもね。どちらにせよこれから頑張らないと!」
そんな様子の神弓を見ながら雨風はボソッと呟いた。
雨風 「····空回りしないといいけど────」
神弓 「あーまーかーぜぇー!全部聞こえてるからねぇ·····!」